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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
48/144

48 ずっと、見てたから

 

「笹森さん」


 やっぱりここだった。


 笹森さんの行方を探して数分。俺の予想通り、笹森さんはさっき俺が座っていたベンチに腰掛けていた。


 ここなら、人も来ないし、涼しいから快適だ。……ということをさっき身をもって知った。


「……先輩」


 そう言ってか細い声をあげる笹森さん。


「まだ障害物競走まで時間あるからさ、ちょっと涼もうと思って」


「そうなんですね……私も、そんな感じです」


 本当は一刻も早く笹森さんと会わなきゃいけないんだと、本能的にそう思った。けれど、今の笹森さんにそんなことを言っても困惑させるだけだから口にはしない。


 笹森さんは疲れ切ったように相槌を打つ。多分、精神的なものが大きいんだろう。


 "自分のせいで負けた。何もできなかった"


 もしかしたら笹森さんはそんなふうに思っているのかもしれない。


 ……でも、それは間違っている。そんなことを俺が肯定していいわけがない。


 一目で無理をしていると分かる笑顔を浮かべている笹森さんの隣に俺は座る。

 さっき、笹森さんが俺にしてくれたように。


 誰かが寄り添ってくれるだけで気持ちは楽になるはずだ。

 ……それが俺なことに笹森さんは嫌がるかもしれないけど。……いや! そんなことはない! ……はず。


 俺まで悲しくなるので考えるのはやめ、俺は笹森さんの方を見て口を開く。


「さっきのリレー、見てたよ」


「そうですか……先輩も見ていてくれたのに、先輩は頑張ってたのに……私は……!!」


 笹森さんは悔しそうに顔を歪めている。


 けれど、ここで何も言わなかったらそんなのは惚れた男のすることじゃない。


 怖いから。好きな人を傷つけるのが怖いから。


 そんな理由で行動できなかったら、笹森さんをもっと悲しませるだけだと俺は思う。


「バトンを落として……」


 笹森さんは悪くない。そういうのは簡単だ。でも、それだとなんの解決にもならない。


「それが原因で一位だったクラスが三位になった……」


 笹森さんは俺の話に何も口を挟むことなく、静かに聞いている。


「それはもちろん、残念なことだと思う」


 そんな笹森さんに俺は残酷とも取られることを言う。


「そう……ですよね」


 それを聞いた笹森さんも暗い表情をさらに曇らせている。


「私がバトンを落とさなければ、勝てたはずなのに……」

 

 笹森さんの言っていることはその通りだと思う。あの場面はやはり勝敗を分けた瞬間だった。


 でも、今重要なのはそこじゃない。


「でも、笹森さんはクラスのために何もできなかったのかな?」


「……」


「俺は、そうは思わないよ」


 俺ははっきりとそう言い切ることができる。


「ありがとうございます……先輩は優しいですね……クラスのみんなも、みんなそう声をかけてくれるんです」


 しかし笹森さんは表情を変えることはなく、何かを思い出すようにそう口にする。


「……私がバトンを落としたせいで三位になっちゃって、やっぱりその事実は変わらないわけで……そう思うと、みんなの優しさを受け入れられない自分がいて……」


「……」


 ……責任を感じているからこそ、その気持ちを素直に受け入れられない……笹森さんらしいな……


「俺がさ、見てたのは今日のリレーだけじゃないよ」


 だから俺は、さっきの話を続ける。きっとそれが笹森さんの気持ちを変えることにも繋がると思うから。


「……え?」


「昨日も、一昨日も、ずっと前から見てたよ。笹森さんが今日のために……クラスのために頑張ってるとこ」


 そう。俺はずっと一緒に笹森さんと走ってきたんだ。だから知っている。


 走り慣れてないのに、少しでもクラスに貢献できるよう、毎日走り続けていたこと……


 始めた時よりも足が早くなって喜んでいたこと……


 最後まで、やりきったこと……


「それは絶対、クラスのみんなに届いてる」


「先輩……」


 笹森さんの曇っていた表情に少し光が差したように見えた。


 それから……もう一つ、言いたいことを俺は言う。


「それからさ……"頑張った時は目一杯褒められればいい"みたいだよ」


「……?」


 さっき木浪先輩に俺が言われたことだ。まさか木浪先輩の言葉を借りることになるとはな……でも、褒められて嬉しかったのは本当だ。


 "自分がされて嫌なことは他人にするな"


 これは誰もが一度は言われたことがあると思う。じゃあ、"自分がされて嬉しかったことは他人にしてあげるべき"なんじゃないか?


 なんのことだろう? といった様子で首をかしげる笹森さんに、それを実行する。


「頑張ったね。笹森さん」

 

 そう口にすると、自然と笑みがこぼれてしまう。


 大丈夫だよな? キモいとか思われてないよな? そうだよな!?


 若干、いやかなり不安になりながらも笹森さんの反応を待っていると……


「えっ……?」


「先輩……ありがとうございます」


 ただ一言。そう言って笹森さんは顔を俺の肩に当てている。


「……」


 俺から笹森さんの表情を(うかが)うことはできないが、というより笹森さんの方を見れないが、笹森さんの体は少し震えている。


 一人で溜め込もうとしてたんだな……少しは手助けできたかな……?


 きっと、笹森さんはもう大丈夫だろう。


 俺はそう確信してこの幸せな状況を堪能することにした。


 さっきまで走っていたのになんでこんなにいい匂いするの!? 笹森さん、なんかあったかい……かわいすぎんだろ!!


 ……何度も叫び散らしそうになりながら。

 

 運動会の話だけでかなり投稿しちゃってます……


 しかもまだメインイベント終わってないという……


 読者の皆さんにはブックマークと評価をして最新話を待っていてくれると嬉しいです!(ハードル上げちゃった……)


 

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