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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
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47 今すぐ

 多くの生徒たちの声援に溢れる競技場。

 

 俺は木浪先輩の放送部顔負けのアナウンスに衝撃を受けながらも、なんとか吹っ切って笹森さんの出番を待っていた。


 笹森さんが走るのは四走目。今レースが始まったばかりだからまだ先だ。と言っても、一人百メートルくらいだから一分ちょっとだけど。


「少年、しかし君はどうしてリレーに出ることになったんだ? 確か名簿に少年の名前はなかったが……」


 アナウンスを終えた木浪先輩がそう言って不思議そうに俺を見ている。


「俺の名前覚えてるんだったら名前で呼んでくださいよ……」


 俺のそんな願いも儚く、木浪先輩は聞こえないふりをしてそっぽを向いている。


 ほんとに自由なんだからな……まったく……


「アンカーだったクラスのやつが腹が痛くなったとかでトイレから出てこなかったんですよ。それで、最近ランニングをしてた俺が代役に選ばれたんです」


 俺は説得を諦めて木浪先輩にことの経緯を教える。


「なるほどな……それは急だったな。しかし少年、いい走りだったぞ!!」


 そう言って木浪先輩はグッと親指を立てている。


「……ありがとうございます」


 さっきはほかに気になりすぎることがあって流してしまったが、面と向かって褒められると照れるな……


「はっはっはっ! さては照れてるな? 少年」


「別に照れてないですよ……」


 木浪先輩に言い当てられて素直に認めるのも嫌なのでそう言って誤魔化したが……


「いいんだ。頑張った時は目一杯褒められればいい」


「木浪先輩……」


 目一杯褒められればいい……か。俺は笹森さんに褒められるだけで嬉しいが、たまにはこういうのも悪くないかもな。


「あっ」


 俺が木浪先輩と話しているうちに笹森さんの出番はすぐそこまで迫っていた。

 

 現在の順位は、二位に結構な差をつけての一位。


 すごいな……これだけ差があるなら、笹森さんもリラックスして走れるかもしれない。頑張れ!! 笹森さん!!


 三走目の選手が今、笹森さんにバトンを渡す。



 バトンを受け取った笹森さんは走り出す……はずだった。


 

 それが起きた瞬間、笹森さんのクラス、一年B組を中心に、大きなざわめきが起こる。


 俺はその光景をただ見ることしかできなかった。


 


 はぁ……心臓がすごい……


 ついさっきリレーが始まってから、私の心臓は鳴り止んでくれない。


 一走目の走者から二走目の走者へ、二走目の走者から三走目の走者へ、距離が近づくほどに私の胸の鼓動は加速していく。


 そして次は私だ……先輩も頑張ったんだし、私だって……!!


 三走目の走者が近づき始めると、私はゆっくりと走り出し、徐々に速度を上げる。


 走らないと……! 毎日走ってきたんだから、今日のために……!!


 そんな私の後ろではバトンを持って手を伸ばすクラスメイトが。


 私もバトンを受け取ろうと、後ろに手を伸ばす。


 そして、私の右手にバトンの先が触れる。


 その瞬間、私は伸ばした手を前に振り上げ、加速した……つもりだった。



 私は心のどこかに自分でも分からない"焦り"が生まれてたんだと思う。


 だから……こんなことになったんだ。


 勢いよく振り上げた腕の先には、何もなかった。


 握ったはずの、バトンがなかった。


 私は、落としたんだ。みんなが繋いできたバトンを……





「奏ちゃん元気出して! 奏ちゃんだけの責任じゃないよ!」


「そうだよ! それに、順位だって三位で悪くないんだし、気にしなくて大丈夫!」


「これから巻き返せばいいんだよ!!」


「……うん。ありがとう……」


 バトンを落としたことに気づいて私はすぐにバトンを拾い直して走り出した。


 ……けど、一度止まってしまった勢いを取り戻すことはできなかった。

 大差だったはずの距離はあっという間に巻き返され、瞬く間に順位を落とした。

 私がどれだけ走っても、もう一度一位になることはなかった。


 私のせいで、勝てるはずだったものを捨ててしまったんだ……


 クラスのみんなは「気にしなくていい」「大丈夫」と励ましてくれるけど、やっぱり私が取り返しのつかないことをしてしまった事実は変わらない。


 それがどうしようもなく悲しくて、それと同じくらい、悔しかった。


「……ごめん。私、ちょっと休んでくるね……障害物競走までには戻ってくるから」


 クラスのみんなと顔を合わせられる気分じゃなかった私は、逃げるようにこの場を離れる。

 

 そんな時にも、みんな優しい言葉を投げかけてくれるけど、私はそれを素直に受け入れることはできなかった。





 笹森さんは、バトンを落としてしまった。


 俺はその瞬間を黙って見ていることしかできなかった……でもそれでいいのか? 笹森さんは、なにも感じないのか? ……そんなわけないだろう……!! きっと今も悔しく、辛い思いをしているはずだ。


 そう思った俺は、クラスメイトから距離を置いてどこかへ行ってしまった笹森さんを探し出した。


 絶対に見つける……!! 


 明日じゃだめなんだ。今日、今すぐ会わなきゃいけない気がした。


 でもどこにいる……? あまり人気がなくて、ここからそれほど遠くないところ……


 そうだ! あそこなら……


 俺は一つの目星をつけ、走り出す。




 ハプニング続きの運動会になっちゃいました!


 楽しい運動会にする……? はてなんのことだか……



『本日のおねだりタイム』


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 読者の気持ちを受け取れるなら転げ回りながら叫びます。近所迷惑です。でも嬉しいです。

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