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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
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46 まちがい


「お前……よくやったぞ!!」



「くよくよすんなよ。らしくもねぇ」



「そうだよ!! いつもの雄二じゃなきゃ!!」



 二年生のリレーが終わってから、先輩の周りでは明里さんや中西先輩、クラスの人たちが温かい言葉を投げかけていた。


 私は入らない方いいかな……


 これは先輩たちのクラスの時間だから、邪魔しちゃだめな気がする。


 そう思い、わたしはゆっくりとこの場を離れた。





 次は一年生のリレーだ。


 私も頑張らないと……この三週間、毎日走ってきたんだから、前よりは速くなってる……はず。


 緊張はするけど、先輩だって急に任されても最後までやり遂げたんだから……!! ……でもその前に、ちょっと休んで緊張をほぐそう。早く行くと余計緊張しちゃうから……


 私が校舎近くの日陰スポットに向かっていると、ベンチで足を伸ばす見知った顔を見つけた。


 あっ……先輩だ。


 先輩は、タオルを首に巻いて俯いている。


 疲れたんだろうな……先輩、すごく頑張っていたから。


 そんな先輩の様子を見て、私は歩みを止めて近くの自販機へと目的地を変える。


 さっきは話しかけれなかったし、せっかくだから何か飲み物でも買っていこう。


 ジュースよりはスポーツドリンクの方がいいよね。


 



 自販機で買ったスポーツドリンクを持って私はまた先輩のいるところまで戻ってきた。


 先輩はまだ下を向いたままだ。


 なんか話しかけづらい……。どうしよう……


 そうだ! これを……


 私は少し考えた後、ちょっと悪戯しようと、持っていたスポーツドリンクを先輩の頬にくっつけてみた。


「冷たっ!?」


「あっ、ごめんなさい!」


 ……んだけど、思いの外先輩が驚いてしまったので、私は素直に謝る。


 よっぽど疲れてるんだなぁ。私が近づいてきたことに気づいてなかったみたいだし……


 って、早くこれ渡さないと! 余計不審に思われちゃう!


「これ……どうぞ」


 私はようやく、手に持っていたスポーツドリンクを先輩に渡した。


「いいの? ……ありがとう」


 先輩はそう言って嬉しそうに受け取ってくれる。


 飲み物飲んでないみたいだったし、ちょうどよかったかな?


 私はそんな先輩の様子を見ながら、先輩の隣に座る。


 そんな私の様子をどこか不思議そうに眺める先輩に、ここまできた理由……というか、スポーツドリンクを渡した理由を伝える。


「先輩、疲れてると思って……頑張っていたので」


「……そっか。ありがとう」


 先輩はそう言って、嬉しそうに微笑んでくれた。


 よかった。疲れてるとこにいきなり話しかけてしまったから迷惑かとちょっと心配したけど、そんなこともないみたい。


 一生懸命に走って、負けて心から悔しがって……

 

 そんな姿を見せられたら、私もこれくらいはしてあげたくなる。


 時々変なことを言うけど……


 でも、今日の先輩は……


「まぁ、その……今日はカッコよかったですよ……?」


 いつもとは違う真剣な先輩を見て、素直にそう思った。

 

 その気持ちを自然に言葉にしたつもりなんだけど……


 やっぱり恥ずかしい……!! 男の人に面と向かって"カッコいい"だなんて……!!


 しかもそれを先輩に言うんだから、なんだか変な感じだ。


 そんなことを考えてしまったせいか、いつのまにか顔は先輩ではなく地面を向いていた。


 …………?


 しかも、先輩からなんの反応もない……


 私が変なことを言ったからかな……? もしかして引いてる……!?


「な、なんで黙っちゃうんですか……」


 いい加減不安になった私は先輩に問い詰める。


「あっ、ごめん。あまりにうれしくて夢かと思った」


 けど、先輩はいつも通りだった。


 しかも、また変なこと言ってる……私だって、そんなことを言われたら恥ずかしいのに……!!


「もう! 大袈裟なんですから……」


 やっぱり先輩は先輩だ! カッコよくない!! 今日のは何かの間違い!


「とにかく! それだけですから! 私次出るのでもう行きますね!」


 私はそう結論づけると勢いよく捲し立て、リレーへと向かう。あまり空き時間もなかったし、今行けばちょうどいいと思う。





 笹森さんと別れてから俺もすぐに跡を追い、競技場まで戻ってきた。


「では続いて、一年生のリレーを始めます! 競技参加者の方はスタート地点に集合してください」


 透き通るようなきれいなアナウンスで一年生のリレーが始まろうとしていた。

 

 運動会始まってからずっとこの人がアナウンスしてるんだよな。テントが設営されてるとはいえ、ずっと声を出すのは大変だろうな……


 俺が何の気なしにアナウンスの聞こえる方を見ると……


「少年! さっきはいい走りだったな!! 私も思わず見入ってしまったぞ!!」


「…………」


 あれ? なんだろう……木浪先輩の声が聞こえる気がする。しかも、アナウンス席から……


「おい少年! 無視とはひどいじゃないか!」


「……なにやってんですか。木浪先輩」


 アナウンス席を陣取っている木浪先輩に俺はとりあえずそう聞いてみる。


 まったく、木浪先輩は……大方、暇になったとかでアナウンス席に座ってくつろいでるんだろう。他の生徒会を見習って欲しいものだ。


 そう、運動会が始まってからずっとアナウンスをかけてる人のように……


「見ての通り、アナウンスをしているんだが?」


「…………」


 なに言ってるんだ、この人は。と思って辺りを見回すが、ほかにアナウンスをしている様子の人は見られない。


 まさか本当に……?


 俺がそんな結末を予想して焦っていると、木浪先輩も何か焦ったようにマイクに顔を近づけ……?


「では、位置について……」


 凛としたよく通る声で合図をかけ始めた。


 うそだ。うそだ。そんなわけない。


「よ〜い……」


 俺はそう思おうとしたが、またしても木浪先輩の口からアナウンスが流れたように見えた。


「どん!!」


「…………」


 俺は呆然と立ち尽くすことしかできない。現実を受け入れることができない。


「どうした? 少年。鳩が豆鉄砲を食ったようような顔をして」


「……なんでもありません」


 木浪先輩がこんな声を出せるなんて! 何かの間違いだ!!


 俺は考えるのを放棄して笹森さんの出番を待つことにした。


 


 悪戯が許されるのは小さい子と可愛い子だけなのです。作者が悪戯をするとマジギレされる可能性が高いのです。



『本日のおねだりタイム』


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 毎日投稿を維持できるよう、頑張りたいので評価もしてくれると嬉しいです!! 一ヶ月で本一冊ペースになってきて焦ってます笑

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