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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
41/144

41 ぶつかる二つの思惑

 

「じゃあ、次障害物競走なー。出たいやつは前に来て、被ってたらじゃんけんとかで決めてくれ」


 各々自由に出場種目を決め、全体での話し合いへと移っていた。


 ってか教師がじゃんけんで決めろとか言ったらダメだろ……


 愛と勇気の借り物競走に出場する俺は、教卓の前に集合する。


「あれ? 明里も障害物競走出るの?」


 教卓の前には俺の他にも数名の参加希望者が。その中に見つけた見知った顔に俺は声をかける。


「ま、まぁね……」


 障害物競走は愛と勇気の借り物競走以外にも、ぐるぐるバットやピンポン球運びなどの普通の種目もあるからそっちに出るのかな? 


「これで全員かー? なら始めてくれー」


 松中先生のやる気のない合図によって集まった俺たちはそれぞれ出たい種目を挙げていく。





 障害物競走の各種目に出る選手がだんだんと決まっていき、次は愛と勇気の借り物競走という時。


「じゃあ、借り物競走出る人ー」


「あ、俺出ます」


「あ、私出ます」


「「え?」」


 もう一つの声が聞こえた方を見ると、そこにはキョトンとした顔の明里が。


 まさか愛と勇気の借り物競走(こんなの)に出ようとする物好きが他にもいたなんて……しかもそれが明里なのだから余計にびっくりだ。


「え? 雄二も出るの? 借り物競走……」


「ああ、まあな。他に出れそうなのがなかったから」


 俺はこんな異質な種目に出たがる理由を聞かれる前にそう答えた。


「そ、そうなんだ?」


 明里は何かを考えるような素振りを見せると、「私もそんな感じかな」と言って同調してきた。


 まあ、明里も部活はやってないからな。そういえば去年は応援団だった気がする。俺もだけど。


 でもなんでよりにもよって愛と勇気の借り物競走(この種目)なんだ? 他にもできそうなのがあると思うが……


「被ったみたいだな。じゃあじゃんけんでぱぱっと決めちゃってくれ」


 俺の疑問を解消する前に、松中先生は俺たちにじゃんけんを促してきた。


 さっさと終わらせようとしてんな? 絶対そうだ。明らかに退屈そうだからな。


 俺がやる気のなさそうにギシギシと椅子を揺らしている松中先生を見ていると、


「じゃあ雄二……やろっか」


 そう言って明里は真剣な眼差しで拳を前に突き出している。


 そうか……理由はわからんが、明里はやる気みたいだな……


 ならば、俺も真剣に向き合うべきだろう。


 俺にも負けられない理由がある。勝つ意味がある。


「よし……分かった」


 俺は明里と向き合う覚悟を決め、握った拳に力を込める。決着は一瞬だ。


「「じゃーんけん!!」」





「はぁ……」


 放課後。俺はまだ立ち直れないまま廊下を歩いていた。


 なぜこんなに時間が飛んだのかというと、それはもちろん、俺がじゃんけんに負けたからだ。

 そしたらもう語ることなんてない。ただ悲しいだけだからな。


 じゃんけんに勝った時の明里の顔といったら…


 俺は嬉しそうに跳ねる明里の顔を思い出し、敗北の味を噛み締めていた。

 こんな物を味わうくらいなら笹森さんの手料理でも味わいたいものだ。


 俺が変えられない過去を悔やみながらもなんとか足を動かしていると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「少年じゃないか。どうした? 宝くじに当選したと思ったら一桁ずれてたみたいな顔して」


 そんな妙に具体的な例を持ち上げて声をかけてきたのは……


「木浪先輩……」


 俺は自然と暗い声になってしまった。


 一応先輩なんだから失礼かな? とも思ったが取り繕う元気もない。


「どうしたんだ?」


 そんな様子を見た木浪先輩が興味深そうに質問を投げかける。


「……じゃんけんって、残酷ですよね……」


「ふむ。それはよく分かるぞ?」


 俺のなんの脈絡もない答えに木浪先輩は同意してくれた。


 そういえばこの人もじゃんけん弱いせいでパシられてたな……


 まさか俺も木浪先輩と同じ気持ちになろうとは……


「それでじゃんけんがどうしたんだ?」


「……運動会のやりたい競技に出れなくて」


「なるほど。じゃんけんに負けたせいで出られなかったんだな?」


 木浪先輩の質問に俺は無言で頷く。


「そうか……ちなみに何に出たかったんだ?」


 慰めてくれるかと思いきや、すげー興味津々といった感じだな、この人。


 私のやつ? 私のやつなの? そうだよね? と期待しているのがビシビシと伝わってくる。


 答えたくねぇ……


 木浪先輩の期待通りの返答をし、それを見てはしゃぐ木浪先輩を見たくねぇ。


 それを見るのはなんか悔しい。ただでさえ明里に負けて悔しいのに、これ以上そんな思いはしたくない!


 そう思い俺はありったけの発想力を駆使し、そして答える。


「別に……普通のですよ」


 しかし俺の口から出たのはなんともぎこちない答えだった。

 やるせなさから思わず目を逸らしてしまったくらいだ。


 くそっ! これといって良い誤魔化し方が思い浮かばなかった!


 俺の乏しい発想力ではこれが限界か……無念。


「なんか誤魔化そうとしているな? 普通ってことは普通じゃない物をやりたかったんだな? ということはやっぱり……"私の考えた"愛と勇気の借り物競走だな!?」


 俺のそんな思いも虚しく、木浪先輩は嬉しそうに俺に詰め寄ってきた。


 愛と勇気の借り物競走(あれ)が普通じゃないっていう自覚はあったんだな……


「そうかそうか……やっぱり好評だったかぁ。仕方ないなぁ」


 俺の返事を待たずして、木浪先輩はそう結論づけ、にやにやと楽しそうな笑みを浮かべている。


 まあ、答えるつもりもなかったが……やっぱりこの顔を見ることになってしまった……


「しかし少年……」


 木浪先輩は満足したのか、今度は真剣な眼差しで俺を見ている。


 木浪先輩……まさか俺を励まして……?


「強く生きろよ!」


 ニカッと気持ちのいい笑顔を浮かべて木浪先輩は俺の肩を力強く叩いた。


 ……少しでも期待してしまった自分が情けないぜ。


 今日会ったばかりだが、木浪先輩は自由な人なんだ。


 それを去っていく木浪先輩の後ろ姿を眺めながら思い出したのだった。






 

 たいそうなタイトルですが実際はじゃんけんです。


 しかし、じゃんけんに強いというのは人生に強いといっても過言ではない……


 なぜなら、学生生活たいていのことはじゃんけんで決めるから!!(偏見)



『本日のおねだりタイム』


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