19 入浴〜girls side〜
先輩たちと分かれてから、私は明里さんと更衣室で服を脱ぎ、温泉に入る準備をしていた。
「今日は疲れたからゆっくり温泉浸かろう〜」
「そうですね。私も……あのゲームですごい疲れました……思いのほか夢中になっちゃって……」
あのゲーム、思い出しただけで恥ずかしい……
先輩にあんなに「愛してます」って言っちゃった……
最後なんてすごい顔も近かったし、ほんともう、忘れたい……
「あははっ、確かに! 奏ちゃんすごかった!」
「もう〜、からかわないでくださいよぉ」
明里さんは下着に手をかけながら、いつもの眩しいくらいの笑顔で私をからかってくる。
もうっ……あっ、ていうか……
「明里さんだってすごかったですよ?」
「え?」
キョトンとしている明里さんに、私はちょっとだけ仕返しをしてみる。
「顔真っ赤で先輩に告白してたじゃないですか〜。すごい真に迫ってましたよ?」
すると明里さんは驚いた顔から一変、下着を脱ぐ手も止めて、怒ったような恥ずかしがっているような表情を浮かべて私に詰め寄ってきた。
「あ、あれはゲームだから!! それに、私は二十八回もあ、愛してるって言ったんだよ!?」
あ、明里さん怖い……ていうか数えてたんだ……
「ご、ごめんなさい、ちょっとからかっただけですよ」
「もうっ! だめだよ奏ちゃん!」
「私が先にからかわれたんですけど……」
私の抗議の声も虚しく、明里さんは温泉の準備を再開してしまった。
私も早く服脱いで準備しよう……
明里さんに抗議するのを諦め、私は下着を脱いだ。
◆
「よっし、じゃあ行こっ!」
「あっ、はい」
服を脱ぎ終わった私たちは、お風呂セットを持って温泉へと歩き出した。
「わ〜! 広いですね!」
「ほんとだ! 温泉も結構いっぱいあるね!」
温泉の中はかなり広く、いろいろな種類の温泉がある。
なにか効用みたいなのがあるのかな?
そんなことを思いながら、私たちはシャワーを浴びに行った。
「奏ちゃん……胸、大きくない?」
「え?」
私がボディソープをスポンジにつけ、体を洗っていると、隣で明里さんが怪訝そうな目を向けている。
「服の上からはあんまり分からなかったけど……」
「そうですか?」
「そうだよ」
なぜか食い気味に明里さんはそのことを強調してくる。
……もしかして、胸が小さいのを気にしてるとか? でも……
「そういう明里さんだっておっきいじゃないですか、胸」
明里さんだって、同年代の女の子よりも胸が大きいと思う。同年代の女の子の胸なんかじっくり見る機会もないけど……
それでも、明里さんのそれが、かなりの存在感を放っているのが伝わってくる。
私が明里さんの胸を見ながらそんなことを考えていると、ふいに私の胸に変な感触が……
「ひゃっ!? 何するんですか明里さん!」
いきなりのことに驚いて変な声が出てしまった。
私の胸を明里さんが両手で鷲掴みにしていたのだ。しかも、そのまま指を胸に沈ませたり軽く離したりして、胸を揉むのを止める気配がない……
「ちょっ、ちょっと明里さん……」
「そういうことじゃないんだよ〜、奏ちゃんより小さいことを気にしてんのっ!」
「な、なんで私と比べて……」
「それは……とにかくそうなの!」
「どういうことですかっ……」
それからも明里さんは私の胸を揉み続けて……
「とにかくっ! もうそんな無神経なこと言っちゃいけません!」
「えぇ……」
私の胸を揉むのに満足したのか、ようやく私から離れた明里さんにお母さん口調でお説教をされた。
ちょっと腑に落ちないところはあったけれど、それからも私は明里さんとおしゃべりをしながらシャワーを浴びた。
◆
「じゃあ温泉入りましょうか」
「だねっ! なんかシャワーに結構時間かかっちゃったし」
「それは明里さんが……」
「さあ! まずはあの泡風呂からだー!」
私が言い終わる前に、テンション高めに明里さんはそう言って歩き出してしまった。
「あっ、待ってくださいよー」
私は明里さんの跡を追って泡風呂へと向かった。
「はー、気持ち良い〜」
「ですね〜」
勢いよく噴射する泡を肩と足裏に当てながら、私たちは温泉に浸かっていた。
旅の疲れが癒やされるとはまさにこのこと。絶え間なく噴射される泡が体の疲れを取り除いてくれる。
「まさか一緒に温泉旅行に来れるなんてね〜」
「そうですね。まだあって一ヶ月ちょっとですもんね」
私と明里さんが廊下でぶつかったのがきっかけで、一緒に遊ぶようになったんだっけ。最初はパスタを食べに行って……あっ、そういえば……
「そういえば、明里さん。あの後好きな人とはどうですか?」
先輩たちがいる時は明里さんと二人で話す機会もあまりないから、私は気になっていたことを聞いてみた。
「ん〜……私なりに頑張ってるつもりだけど、なかなか振り向いてくれそうにないかなー」
「そうですか……」
やっぱり、他に好きな人がいると、簡単には心変わりしないものなのかな。
「明里さん、優しいし可愛いんだけどなぁ」
明里さんくらい可愛ければ気になっちゃうと思うんだけどなあ。
「ありがとう。でも私、諦めずに頑張るよ。奏ちゃんに諦めるな! って言ってもらえたからさっ」
初めて会った時、私が言ったこと覚えててくれたんだ……
「はい! 私も応援します!」
なんだかそのことが嬉しくて、顔の前に拳を突き上げてしまった。
「……そういえば奏ちゃんはどうなの? 誰か気になってる人とかいないの?」
明里さんは両手でお湯をすくいながら私に話題を変えてきた。
「え? 私ですか?」
「だって〜、私だけ恋バナしてるし、奏ちゃんのも気になるからさ」
……たしかに。私だけ明里さんの話聞いちゃってる。
でも……
「私はそういう人いないですね。クラスの男子ともほとんど話さないし……」
「え〜、でも告白とかはされたことあるんじゃない?」
告白……
「告白は……一回だけ……」
「えっ! それでそれで!? どうしたの?」
お湯をすくう手も止めて、明里さんはすごく興味津々といった様子で私に続きを促してくる。
「断りましたよ。……あんまり仲良くなかったし」
告白……中学校の時に一回だけされたことがある。
あまり話したこともない人からだったから、断ったのだけど……
「そうなんだ。……じゃあ彼氏募集中なんだ?」
「べ、別に募集するほどではないですよっ」
「募集するほど困ってないってこと〜?」
「そういうことじゃなくてっ……」
そう言って更に明里さんは私をからかってくる。
なんか今日はすごいからかわれるな……
「じゃあ、あの二人は?」
「あの二人?」
「雄二と優也。あの二人と付き合おうとは思わないの?」
安達先輩と中西先輩か……
「中西先輩は、ちょっとふざける時もあるけど、明るい先輩って感じだし、安達先輩は……」
そういえば、安達先輩とは……
「実は、私が入学してから初めて話したのが安達先輩だったんですよ」
「えっ、そうなの?」
「はい。中学校からの友達も一人も同じクラスにいなかったから、結構不安だったんですよね……」
「で、そのまま帰ろうとしてたところを先輩に声をかけられて……それから不安だった学校生活も、なんか心配してるのがバカらしくなっちゃって」
初めて会った時はいきなり話しかけられてちょっと怖かったけど……
「今ではそのおかげで明里さんとも知り合えたし、感謝はしてます」
「そうなんだ……たしかに、そう考えると雄二に感謝しないとだね」
明里さんはそう言って私の顔を見たかと思うと、両手ですくったお湯を顔にバシャっとかけて、勢いよく立ち上がった。
どうしたんだろう? なんか気合いを入れた感じ? に見えたけど……
「露天風呂も行ってみようよ! さっき見つけたんだ!」
「あっ、はい!」
私は明里さんの後に続き、この薔薇の湯の温泉をいっぱい満喫した。
今回は奏ちゃん視点での温泉回です!
結構長くなってしまったので、最後まで読んでくれてありがとうございます!
そしていつも見てくれてる方にお願いです!
『本日のおねだりタイム』
ブックマークの登録と、下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価をしてくれるとこの作品にポイントを入れることができます!
一人でもポイントを入れてくれると、めちゃくちゃ励みになります! もしいつも見ているけどまだ評価してない! って方は、ぜひお願いします!
ではまた次回もよろしく!




