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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグの後のお話
142/144

142 先輩との、思い出……とか


 笹森さんの告白が強く頭に残る週明け。


 未だに夢なんじゃないかと思うが、昼休みにも「一緒に食べましょう!」と満面の笑顔でやってきたし、そうでもないみたいだ。


「……それで、早速本題なんだけどよ」


 そんな俺の回想をよそに、優也はいつになく深刻な表情で話し始める。


 放課後の屋上。本当は、掃除当番だったりするのだが、斉藤たちに頭を下げてここにきている。


 そうまでして優也と2人でいるのは、おそらくこいつにも、伝えたい大切なことがあると分かっているからだ。


「……週末、ようやく明里から告白の返事をもらった。……それは、俺の求めていた答えだったよ」


「あぁ。……ったく、そんな申し訳なさそうにすんなよ」


 ガラでもねぇ。こっちがやらせない気持ちになるわ。


「けどよ……俺がおまえを煽んなきゃって考える時もあんだよ。……それも、俺が望んだことなんだけどな」


「……たしかに、俺は今悩んでる……というより、決断が下せないでいる。けど、これだって俺が選んだ道だ。おまえに言われたからじゃない」


「おまえ……」


「俺も、笹森さんに告白されたよ」


 驚く親友をよそに、俺は続ける。


「何度夢見たか分からないくらい願ったシチュエーションなのに、返事は保留にしちまった」


「……」


「……でも、必ず自分の気持ちにけじめをつけて、返事をしようと思ってる」


「あぁ……ったく、俺が気遣いすぎてたのか? 随分清々しい顔じゃねえか」


 親友は、そう言っていつもの気持ちの良いくらいの笑顔を浮かべる。


「ははっ、まぁな」


 同じく笑顔を返したところで、スマホに通知音がなった。



『今日、私の家に来ませんか?』



「お、早速か?」


「おい、何勝手に見てんだ?」


 凄い自然に俺のスマホ覗き込んできやがる。しかも楽しそうだ。さっきまでの塩らしい顔はどこいった?


 ……まぁ、それは置いといて。笹森さんからの誘いか。行かない理由がないな。


「行ってこいよ」


「言われなくてもな」


 最後に軽く手を挙げ、親友と別れる。





「お邪魔します」


「あら〜! 雄二君、久しぶりね〜。ゆっくりしていってね!」


 笹森さんの家にあがらせてもらうと、早速里美さんが出迎えてくれた。


 的場の一件以来だな……


「貴様……!! 何をしにき――ぐふっ!」


「お父さん? お客さんにそう言う言葉遣いはよくないんじゃないかしら?」


「……はい……」


「あはは……」


 竜之介さんもあいかわらずだな……


「ごめんねぇ、雄二君。この人、今日が非番だからって浮かれてるみたいなの」


「非番ですか?」


 そういえば、まだ5時前なのに龍之介さんが家にいるな。


「えぇ。この人警察やってるから」


「え! そうだったんですか!?」


 いやびっくりだ。こんなに里美さんに弱い人が、警察なんて……


「奏に何かしたら、お前なんかすぐに逮捕――ぐっふっ!?」


 懲りないのも変わってないなぁ……


「引き留めちゃってごめんね〜。今お茶でも――」


「あ、お母さんいいよ。私の部屋に行くから、私が用意するね」


「……あらぁ〜? 奏、いつの間に……うふふ、じゃあゆっくりしていってね」


 そう言って、里美さんは楽しそうな笑顔で招き入れてくれた。


 その横で目から身を流しそうなほど睨んできた龍之介さんは見ないようにした。





「先輩、ごめんなさい。急に誘っちゃって……」


「気にしなくていいよ。特に予定もなかったしね」


 笹森さんの部屋も久しぶりだなぁ。相変わらずなんかいい匂いがする。


「……そういえば、前に先輩が来た時は、的場君の時間の時でしたね」


「もうあれから4ヶ月近く経つんだね……」


「ですね。文化祭だって来週まで迫ってるんだから、ほんとにあっという間です」


 かなり印象的な出来事だったのに、今となっては遠い昔のことのような気さえする。


「あの時は、本当に嬉しかったです。先輩を好きになった今だからこそ、はっきり分かります」


「笹森さん……」


「好きな人に危機から守ってもらえるなんて、少女漫画みたいで憧れちゃいますよね」


 そう言って、笹森さんは軽く微笑む。そんな姿すら、やっぱり絵になる。


「……それは、俺も同じだよ。好きな人を危機から守るなんて、ラブコメみたいで憧れる」


「先輩……」


 なんだこの幸せすぎる時間は。もうここだけ時が止まっても構わないぞ。


「なんか、こうしてると色々思い出しちゃいますね」


「思い出す?」


「先輩との、思い出……とか」


 ちょっと笹森さんやめて!? そんな恥ずかしそうにしないで! 俺まで恥ずかしくなってくる……!!


「土砂降りの時に走ってきてくれたから、その後風邪ひいて。でも先輩、自分のせいだって嘘ついて」


「……ばれてたんだ」


「……まぁ、それも含めて嬉しかったんですけどね」


 笹森さんと初めて会った時から、何かと理由をつけて話しかけて。


 連絡先ひとつ聞くのに部活作ろうとして。


 何をするにも必死で。……必死で、笹森さんを喜ばせたいと思ってきた。


「……うぅっ……!」


「先輩!? ちょっ、泣かないでくださいよ!?」


 そう言われても、もう止まりそうにない。好きな人の前で泣き崩れる姿なんて見せたくはないものだが、俺の涙腺ダムは決壊した。


 積極的になって、今度こそ後悔しない恋愛をしようと思った。


 正直、積極的に攻める! なんて言っても、やったことないし抽象的すぎて不安もあった。


 それでも、あの時から俺は、笹森さんを好きな気持ちだけで進んで来たんだよな……そして、それで――


「笹森さんを、喜ばせられていたってのが、もう……!!」


「……先輩。……はい。先輩と過ごしてきた時間は、私を幸せにしてくれました。それは絶対そうです」


 笹森さんは、力強くそう言い切ると、俺の背中に腕を回してくれる。


 そのまま、手を優しく重ねて、さすってくれる。


 その優しさがまた堪えるんだけど、今はこのまま甘えさせてもらいたい。



 

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