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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグの後のお話
141/144

141 ちゃんと分かってるからよ


 なっ……!? 私じゃダメですかって……笹森さんが俺のことを……!?


 待ってくれ。一切整理がつかない。解決策どころか、余計に頭がこんがらがる。


「……すぐには、決められませんか?」


「……っ!」


 笹森さん……少し前から変わったなと思っていたけど、今日ほど積極的な時はなかった。



 もう俺には逃げ道がないってことか。


  

 優也にも言われた。困難な道だと。



 それでも構わないと進み続けているようでいて、俺は何も進んでいなかった。


 それを今、変えないでどうするってんだ?


「……俺が前から好きなのは、笹森さんだよ。ずっと一緒にいたいし、何度付き合うことを夢見たか分からない」


「ふぇっ!? そ、そうでしゅ……そうですか」


 あ、なんか今、いつもの笹森さんを感じた。


「だから、今すぐ返事をしたい。けど――」


「け、けど……?」


 また笹森さんを不安がらせてしまっている。


 男なら、好きな人にそんな思いをさせたくはないが、今返事をするのは、笹森さんをもっとおざなりに扱っているようで絶対に嫌だ。


「俺が心から、笹森さん()()を好きだと思えるまで、待って欲しい……!! ごめん。本当に。こんなしょうもない男で、本当に……!!」


 こうやって頭を下げても、全く気が収まらない。


 夢見ていた、かっこいい自分なんてのはいない。好きな人に、まともな姿一つ見せることもできないのが本当に情けない。


「顔をあげてください。……でも、待つのは嫌です。もう十分待ちましたから」


 だよな……他に好きな人がいるから、気持ちを整理するまで待って欲しいとか……そんなこと言われたら、愛想も尽きるってもんだ。


「ただ黙って待っているのは嫌です。私が、先輩を、私だけしか見えないくらいに夢中にさせてやるんです!」


「……っ!!」


 な、なんて……? てか、顔近っ……!!


 俺の両頬をがっちり掴んで顔を近づける笹森さんに、なす術なんてあるわけもない。


「だから、後少しだけ待ってあげます」


 そして得意げに笑う顔を見せられたら、顔を上げることすらできなくなった。


 情けないぜ……簡単に悩殺されるなんてな。





「自分から言っておいてなんだけどさ、付き合うとかそう言うのは、もう少し待って欲しいんだ」


 1日を買い出しに費やした夕暮れの帰り道。


 明里はそう言って切り出した。


「……雄二のことだろ?」


 優也は、分かっている、と明里に顔を向けた。


「……うん。私が雄二の気持ちを振り回したんだから、ちゃんと最後まで見届けてからにしたいの」


「それは俺も同感だ。俺のわがままもあったからな」


「わがまま?」


 明里にそう訊かれ、しまった! と言った表情を浮かべてしまった。


「あ〜……いや別に、たいしたことじゃねぇよ」


 ごまかすが、一度見せてしまった表情を、明里は見逃していない。


 それが分かっているからか、優也は今一度明里に顔を向け直す。


「……いやさ、俺はお前のことが好きなんだけど」


「う、うん……ありがと……」


 夕焼けに照らされた明里の頬は、それだけじゃないくらいに赤みを帯びていた。


「お前にも、俺だけを好きでいて欲しいなって思っただけだ」


「〜〜っ!! や、やっぱりそれくらいで……!!」


 もう恥ずかしさ爆発5秒前ってくらいだ。優也の持てない分の荷物をいくつか持っているせいで、顔を隠すことができないのが何より辛そうだが。


「だから、明里には雄二への思いを断ち切ってほしかったんだよ。それで、雄二の気持ちを後押ししたってわけだ」


「……そうだったんだ。私も、雄二の気持ちには気づいてたよ」


「……あぁ」


「でもその上で、私は雄二との可能性を捨てた。自分を誤魔化すのはもう、辞めたかったから」


 これが明里の本心なのだろう。雄二を好きなら、その好意に気がついた時点で間違いなく動いていた。


「……だから、さ。……そんなに心配しなくても、私は優也だけしか見てない……っていうか……!! そ、その……!!」


「恥ずかしいなら言うなよ……ちゃんと分かってるからよ」


 優也は人にあまり見せることのない、柔らかな笑みを明里に見せる。


 全てを断ち切り、進むことのできた2人は、親友のサポートに回る。





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