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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグの後のお話
133/144

133 だから俺は感動したんだよ


「んー……俺はやっぱり、味付けが好みだったってのがあるなー」


「なるほど……!! 少し油を控えて、さっぱりめにしてみたんですけど……」


 笹森さんは、嬉しさと不安が混じったような声をあげるが、その工夫が俺にとっては本当に嬉しかった。


「そうそう!! それがすごい食べやすかった!!」


「よかったぁ……ほんとは余計なことなんじゃないかって不安だったんですけど、よかったです。ほんとに」


「笹森さん……」


 自然と口角が上がっているのを感じる。いや、でも仕方ないだろう。

 笹森さん、本当に嬉しそうだし……そこまで考えてくれていたことが嬉しくて仕方ない。


「……」


 ……さて、あっちはどうなったかな?


 総評をするに当たって、とりあえず満点をつけた方について言及することにしたんだが……


 俺なら笹森さん。そして明里なら優也だ。


 さっきから賑やかなお隣に目を向ける。


「だからー、どうゆう意味?」


「いや、だから俺は感動したんだよ」


「感動って……そんなに?」


 優也は、味とは一見関係なさそうなことを口にしているが、明里もまんざらでない様子で俯いている。


 くそっ……!! どんどん差をつけられている気がするな……このままじゃ手遅れになっちまうぞ……!!


「だってお前、あんな食い物とも呼べないようなものから今日みたいな唐揚げが作れるようになってんだぜ? そりゃあ感動するだろ」


「……それは素直に喜んでいいの?」


「もちろんだ。それに……うまかったしな」


 らしくねぇこと言うから……赤くなってんじゃねぇか、あいつ。


「……そう。……ありがと」


 ……。それはこっちも同じか。


 明里がほのかに赤くした頬を隠すように俯く姿を見て、そんな既視感を感じる。


「じゃあ、今度は交代するか」


 明里には満点つけられなかったから、総評なんてのは少し気まずいが……だからと言って、自分に嘘をついてテキトーな点数をつけることはできないし。


 まぁしょうがない、と自分に言い聞かせ、隣の優也と場所を代える。




 

 さっきの総評で、優也にはたくさん褒めてもらえた……はず。


 それでも……求めていたもの、目指していた結果とは明らかに違っていた。


 私の好きな人……ずっとずっと、大好きな人。……雄二に、満点をつけてもらいたかった。


 それだけを目指していたはずなのに……優也に総評をしてもらって、それはやっぱり嬉しくて。

 雄二に満点を貰えなかったのも、しょうがない、なんて思ったりもして。


 どうしちゃったんだろう……?


 もっと、悔しがるべきなのに。どうすればよかったのか、考えるべきなのに。


 なのに……!!


「……明里? 大丈夫か?」


 ……!


「あっ、うん大丈夫大丈夫! ごめんちょっと疲れて……」


 咄嗟に、そんなありきたりな誤魔化しの言葉を吐く。


 せっかく雄二が話しかけてくれてるのに……変なことばっかり考えて……


「そりゃそうか。あんなに頑張って作ってくれたんだしな。練習もいっぱいしてくれたみたいだし……ありがとな」


「……うん」


 優しい笑みを向ける雄二に、私はそう頷くのが精一杯だった。


 本当は、もう分かってるから。


 私の料理が、優也と雄二で評価が変わっちゃったこと。

 それは、優也が前の唐揚げを食べてたからとかじゃないと思う。もちろん、それもあるかもしれないけど……


 料理にとって1番大切なこと……それが、2人で違ったんだ。


 ずっと昔から、料理の隠し味は決まっている。隠し味なのに、それで全てが決まってしまうほどのもの。



 それは……



 ――愛――



 ――相手を、想う気持ち――






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