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どうやらクラスの陰キャ君が実は人気アイドルグループのメンバーだったらしく、他の女性達はそちらにメロメロらしいので、私は今手薄になってるイケメン君をもらうことにした。

作者: ムドー

短編にまとめようとしたら長くなったんですけど。よかったら見てみてください。

 私の名前は宮本燈(みやもとあかり)


 突然だが、私は美少女だ。どのくらい美少女かというと、そこら辺にいる女子などではまず比較にならないくらいにかわいい。


 それこそ、芸能界で活躍している美人女優とかそういうレベルで可愛い。いや、それ以上に可愛い。


 つまり何が言いたいのかというと……。


 私は美少女なのである。


 事実、小学校では私よりも可愛い子に出会ったことがないし、ほとんどの男子が私に告白してきた。


 中学校でも、付き合いたい女子ランキング(男子が勝手に作った)で堂々の1位だった。


 まあ、そうな私なのだが、私には大いなる夢がある。


 それは、イケメンでかっこよくて頭が超良くて、運動神経も抜群で高身長でとかもう最高スペックの男性と付き合うことだ。


 なんでそんな夢を持ったかというと、理由は単純だ。


 美少女である私に見合う人でなければいけないからだ。こんなにも美少女である私がそんじょそこらの男と付き合うなど考えられない。


 そうなると、イケメンでかっこよくて頭が超良くて……(以下略)、と付き合うというのは必然なのである。


 美少女である私はそうしてイケメン君と付き合い、そのまま勝ち組として生きるのである。


 しかし、この夢を叶えるのは一筋縄ではいかなかった。


 なんと、小学校中学校と学生生活をしてきたが、そんな男子に出会うことがなかったのである。


 まあ、イケメン君がいなかったわけではない。しかし、頭が良いが、運動神経が悪かったりとか、運動神経は良いが、頭が悪かったりとか、運動神経も頭も良いけど身長が低いとかと私に見合う男性に巡り会うことがなかったのである。


 どうしたらいいかわからない私は経済的に余裕があったので沢山の習い事をさせてもらった。


 ピアノにバイオリンなどの習い事。バスケットボールやサッカーなどのスポーツもさせてもらった。


 色々させてもらったが、私は多才だったらしく、ほとんどのものは大体こなせた。


 極め付けは柔道である。中学校の時に助っ人で地区大会に出場したのだが、柔道団体戦にて何やら個人成績2位の選手を倒してしまったらしく、少し騒がれた。


 まあ、結局1位のやつにボコられてしまったがね……。


 というように私はそんじょそこらの美少女とは格が違うわけで、それでいて美少女なのである。 


 という感じで自分磨きをしたが、結局私の求める男性に巡り会うことはできなかった。


 結局、私は中学を卒業し、そのまま偏差値そこそこの高校に入学することにした。私が求める男性に出会うためにもっとレベルの高い高校に行こうとも考えたが、別に出会いは高校だけというわけではない。むしろ高校を卒業してからの方が出会いが多いのではないかと思い、高校は適当なところを選んだ。


 という感じで高校に入学した私なのであった。


 突然だが私が入学したこの高校では、入学時の成績1位と2位が登壇するというしきたりがある。


 私も勉強はそれなりに頑張ったつもりだったが、意外にも私はそれに入ることはできなかった。この高校は思ったよりもレベルが高いというわけか。


 入学式が始まり、適当に話を聞き流していると生徒らしき名前が呼ばれた。登壇したのは女子だった。多分彼女が成績トップだったのだろう。まあ、私は女には興味がないので呑気に周りにイケメンがいないかを気づかれないように横目で探していた。


 するといつの間にか、女子はステージから降りていたようだ。そして、男子生徒が登壇していた。多分、彼が学年2位のなのだろう。


 どれどれ、どんな顔なのだろうか?


 私は彼を見た瞬間、確信した。


 高身長でイケメン。そして頭がかなり良くて、スポーツをやってきた私だからこそわかる運動神経のよさ。


 み、み、み、見つけた!!



☆☆☆☆



 こうして私は運命の人に出会ったのである。


 私は入学式の後、近くにいた生徒に彼のことを聞き出した。彼の名前は相良海斗(さがらかいと)というらしい。もう名前の響きからしてカッコいいと思えてしまう今日この頃である。


 彼は中学校の頃はバスケットボール部に所属していたらしく、持ち前の高身長、高校1年生にして180センチは超えているらしいその身長とセンスによって先輩達にも一目置かれているらしい。


 それでいて頭が良くてイケメンとかもう最強かよ。


 しかし、相良君は少しヤンチャな男の子であったらしい。中学生の時はクラスカーストの低そうな男子を見つけてはいびったり、ぱしらせたりとあまり印象に良くないことをしていたらしい。


 まあ、別に私は理想の男性像ならば全然気にしないけどね。


 そんなこんなで私は絶対にこの男子、相良君を手に入れなければならないのだと固く誓ったのである。


 まずはクラス分けだが、この学校は1学年の人数が多く、クラスもそれなりに多くなる。


 だが、私は運良く相良君と同じクラスになることができた。


 もうこれは神様が私を応援しているのだ。そうに違いない! という感じで、私はもうそれはそれは舞い上がっていた。しかし、この物語はそう簡単にはいかなかった。


 

☆☆☆☆



 入学式からしばらくすると、相良君の周りに女の子が3人群がっていた。


 まあ、彼のことだ。イケメンだから女の子にモテるのだろう。そう思い席に座ろうとしたが、ある異変に気がついた。


 ……あれ。あの女子3人、私よりも可愛くね?


 今まで私よりも可愛いなんて思える女子がいなかったため、ライバルになるような女の子がいるなんて考えもしていなかった。


 なんだあの女子達は。めちゃくちゃ綺麗ではないか。

 私自身がスキンケアとか美容などに力を入れてきたからこそわかる。


 あの女子共は私よりも断然可愛い・・・・・・。もうなんていうか細胞レベルで違う。


 なんというかもうなんかチートである。肌はまるで真珠のようなツヤがある。顔だって今まで見た芸能人とかよりも断然彼女達の方が可愛い。


 まさか十数年生きてきてやっとチャンスが巡ってきたというのに。今まさに大きな壁が立ちはだかろうとしているのか。


 ふふふ、良いだろう。絶対にその壁を超えて私のダーリンを捕まえてやろうではないか。


 私はそうして、相良君を手に入れるために決心したのであった。



☆☆☆☆




 まず、私がしたのはあの彼女達の素性を調べ上げることだった。


 一人目は、犬飼涼香(いぬかいりょうか)。こいつは簡単に言えばスポーツ女子って感じだ。髪は短く、水泳部に入ってるらしく肌は日焼けしていて、身長は私よりも高く170センチぐらいありそうだ。胸も少し、ほんの少し私より大きい。・・・・・・そして私よりも可愛い。


 しかも相良君とは幼馴染らしくかなり馴れ馴れしい。この前なんて二人で肩を組みあっていた。


 さらに何を言おう、私を柔道の地区大会でボコってくれたのがこいつだ。


 え、何? こいつは水泳部じゃないのかって? 聞いて驚け、こいつもあの大会の時は私と同じようにただの助っ人だったらしい。


 ふざけるなよ! 私の魅力の一つが犬飼涼香に喰われてしまっているじゃないか!


 これでは運動神経の良さで彼にアピールできない……。

 とにかく二人目に行こう。



 二人目は岩下飛鳥(いわしたあすか)。こいつは委員長タイプって感じだな。腰くらいのツヤのある黒髪に色白の肌。スラッとした体型。そして吊り目で眼鏡をかけている。少し近づき難い雰囲気を放っているため、クラスメイトは話しかけたくても話しかけられないようだ。


 身長は大体私と同じくらいで160センチぐらい。胸は……、多分私の方が少し大きいはずだ。そして当然のごとく私よりも可愛い。


 こいつは入学式の時は気がつかなかったが、学年トップの成績で登壇した女子生徒だったみたいだ。


 あの時はイケメン探しに夢中になっていたから全然気が付かなかった。


 そしてこいつも相良君の幼馴染らしく、子供の頃から彼の素行の悪いところを注意しているらしい。彼からは煙たがれているが、何か見えない信頼感のようなものを感じる。全く忌々しい。


 また、こいつはピアノやバイオリンなどの習い事をしているらしく、その腕前は相当なものらしい。


 というか、こいつのせいでまた私の良いところが喰われてしまっているじゃないか! ピアノとバイオリンって見事に被ってるし、頭も私より良いとか、もう最悪なんだが?


 もうなんか犬飼涼香と岩下飛鳥に私の良いところがほとんど喰われているんだが? 完全にこいつら私の上位互換なんだが? と、とりあえず3人目に行こう。


 3人目は花守美保(はなもりみほ)。こいつはおっとりを体現しているみたいなやつである。茶髪のボブヘアーで身長は私と同じくらい。だが、胸がもう凶悪である。高校1年生でこれかよって感じである。もいでやろうか!


 そして彼女も相良君の幼馴染である。もうなんなんだよ! そして彼女はいつも何かしら忘れ物をしていて、そのたびに相良君に助けられている。見事に相良君の庇護欲を掻き立てているというわけだ。そして、家も相良君の隣らしく、赤ん坊の時からの付き合いだそうだ。


 えっと、なんというかこの時点でもう勝ち目がない気がするのだが。自分で紹介してて勝てる気がしない。


 いや、まだだ。私は相良君と同じクラスなんだ。そこで差をつければ……、って彼女3人も同じクラス?


 でも、進級の時にクラス替えがあるはずだ、そこで運が良ければ……、えっ何、3年間ずっと同じクラス?

 

 おいおい、いよいよ勝てなくなってきたぞ!


 いや、せっかく手にした機会なんだ。諦められるか!


 私はこうして、相良君争奪戦に高校1年を捧げることになるのだが。

 



☆☆☆☆



 ……1年後。



 私の名前は宮本燈。高校2年生である。


 まあ、とりあえず私が1年間してきた相良君争奪戦の状況報告をしよう。


 端的にいうと私は敗れた。しかも何もできなかった。あの美少女三人衆は強すぎた。彼女達はいつも彼の近くに誰かいて、私が近づく暇なんて全くなかった。


 色々頑張ったが、半年ぐらいであきらめモードに突入した。だが、それでも諦めけれなかった私は彼の目に留まるように勉強を頑張ったり、運動を頑張ったり、クラス委員長になって真面目イメージを植え付けようとしたら、クラスの陰キャ君とかと話して誰とでも仲良くできるとアピールするなど色々やりまくった結果。


 なんとか芽を出し、クラスでは優しくて頼り甲斐のある女子生徒という枠に収まった。


 しかし、結果的に相良君の目に留まることはなかった。


 こうして初めての恋は砕け散ったのであった。こんなに頑張ったのだからもういいだろう。大人しく彼らの恋を応援してやろうではないか。コンチクショー!


 こうして私の相良君争奪戦は幕を閉じたのであった。



 しかし、事件が起きた。



 ある日学校に行って見るといつも相良君の周りにいる美少女3人がいなかった。そして、なぜか窓際の1番後ろの席にあの美少女3人組がいる。いや、それだけではない。他の女子達もそこにいるではないか。


 確か、あの席はクラスでもカースト最下層に位置する陰キャの来栖幹也(くるすみきや)君の席だったはず、なのにどうして?


 するとクラスで仲良くしている女子生徒がこちらに気がつき私の方に向かってきた。


 私は何故こんなことになっているのか彼女に聞いてみると。


「見てみたらわかるよ! 早くこっち!」


 なんだよ、勿体ぶらずに教えろよ。


 私は彼女に連れられてその席に向かうとそこにいたのは来栖君ではなく、とんでもないイケメンだった。


 これはどういうことなのかを女子生徒に聞いてみると、実は来栖君は某人気アイドルグループのメンバーだったそうだ。たしかにテレビで見たことがある。


 そして昨日、相良君と美少女三人衆が遊んでいたところを不良に絡まれたらしく、相良君は不良に殴られダウンしてしまい、三人衆が危なかったところを来栖君が華麗に追い払ったらしい。


 そしてどういうわけか来栖君の正体がバレて今に至るのか。まあ、来栖君も私の男性理想像に当てはまるのだが、あの美少女三人衆がいるのだ、私には無理だろう。また、恋に敗れたばかりなのもあって私はすぐに席は戻った。


 しかし、席に戻る途中。ちらりと見えた相良君の顔がどことなく寂しそうになっていたのが少し気になった。



 翌日、相良君は学校を休んだ。



☆☆☆☆



 

 1週間後、私が教室に着くと今日も相良君はきていなかった。なんと彼は1週間ずっと学校を休み続けているのだ。



 しかし、美少女三人衆は彼を心配する様子はなく、来栖君とずっと話しているようだった。


 薄情な奴らだな。私はそんなことを思っていながらその後授業を受けた。


 放課後、先生からなんと、相良君の家にプリントを届けてくれないかと頼まれた。


 どうやら、初めはあの美少女三人衆に頼んだらしいのだが拒否されてしまったらしく、それでクラス委員長の私に白羽の矢がたったみたいだ。


 あれ、もしかしてこれって千載一遇のチャンスじゃないか? 今、美少女三人衆はあのアイドルに夢中で、相良君は手薄になっている。


 つまり、私の時代が来たというわけか。


 ということで私は相良家にプリントを届けに行くことになった。



☆☆☆☆


 


 相良君の家は至って普通の一軒家だった。


 呼び鈴を押すと美人な女性が出てきた。どうやら相良君のお母さんらしい。相良君にプリントを届けにきたと伝えるとニコリとお礼を言われた。しかし、何故だか顔が曇っているような感じがしたので事情を聞くと、どうやら相良君は傷心中らしいことがわかった。


 絶対あの事件のことが関係あるだろうと思った私は無理を言って相良君の部屋に乗り込むことにした。


 最初は相良ママも困っていたが、熱心に説得した結果。なんとか許可をもらった。


 そうして私は相良君の部屋の前まできて相良君を呼びまくった。しかし、相良君が返事を返すことはなかった。仕方がないのでプリントは相良ママに預けて退散することにした。


 私はそれから毎日、無理矢理相良家にお邪魔した。そして毎日相良君に呼び続けた。そうしている内に相良ママとはかなり仲良くなってしまった。相良ママのクッキー美味しいわ。今度作り方教えてもらおっ。



 相良家に通い続けて2週間経った頃、やっと相良君の部屋に入れてもらうことに成功した。


 久しぶりに見た相良君は髪はボサボサで目の下には隈があり、肌もがさがさになっているように見えた。


 とりあえず私は相良君とたわいもない話を始めた。


 最近どうだったとか、ご飯はしっかり食べているのかとか、勉強はどうしてるとか。


 相良君はああとかうんとかでしか返してはくれなかった。


 なんか面倒くさくなったので、思い切ってなんで休み続けているのか聞いてみた。


 すると相良君は静かに理由を語り始めた。


 先日あった事件の後、幼馴染である美少女三人衆が来栖君と話すことが多くなり、彼と関わる時間が減ったらしい。


 すると、相良君は幼馴染を来栖君に取られると思ったらしく、助けてくれたにも関わらず来栖君に殴りかかってしまったらしい。そして見事に返り討ちにされたみたいだ。


 後々分かったらしいのだが、来栖君はキックボクシングをやっているようで、素人では相手にならないくらい強いみたいだ。


 その後、その件が幼馴染にバレたらしく。幼馴染達にほぼ絶縁宣言みたいなことを言われたらしい。


 まあ、そりゃそうだよ。恩人にそんなことされたら彼女達も黙ってはいないだろう。でも多少は彼の話を聞いてあげてもよかった気はするが。


 その話を聞いた後、相当自分を責めたらしく、そのまま引きこもってしまったようだ。その後、彼は泣きながら自分を責め続けた。


 私はこの時こう思った。今は色々なことがあって気持ちに整理ができておらず、身体も心もぼろぼろ。ここで彼を慰めたらポイント高いなぁ〜と。


 チャンスと思い、私は(まく)し立てるように彼のことを肯定しまくった。


 逃げてもいいとか、仕方なかったとか、反省してて偉いとかもうとりあえず言いまくった。途中とかなんか適当なことを言いすぎて覚えてない。


 そうしているうちになんかいい雰囲気になったけど、結局そのまま家に帰ることになった。


 ええい、女子が一人で男の部屋にいるんだぞ。


 襲えよ!! と意味不明なことを考えていると、彼が見送りに来てくれて帰り際に。


「……ありがとう」



 と私に言った。ははーん、堕ちたな。


 こう確信し、私は家に帰ったのであった。



☆☆☆☆

 


 翌日学校に来ると、相良君が登校していた。


 生徒達は彼が来たことに驚いていた。私はすぐに相良君の元に行き声をかけた。


 声をかけた時は前みたいにとはいかないが元気な様子を見せていた。しかし、あの美少女三人衆が姿を現した瞬間、彼は急に下を向いてしまった。しかも、変な汗をかいている。


 どうやらまだあの件を引きずっているらしい。あんなにヤンチャだった彼が、ここまで弱々しくなってしまったとはな。


 でも、顔とか身長とかは今まで通りだからどうでもいいやと思い、本格的に相良君を落としにかかることにした。


 とりあえず、毎日彼と遊びまくった。遊園地に行ったり、美味しいパフェを食べに行ったり。


 あと、顔を出せていなかったバスケ部にも付き添ってあげた。その際、バスケ部のマネージャーになろうとも考えたが、相良君にそこまでしなくていいと拒否られた。・・・っち、チャンスだったのに。


 その後、バスケ部の練習試合の応援に行ったり、相良家での外食について行ったりともうほとんど彼女みたいになった。


 しかも最近では彼から遊びに誘われるようになり、もう告白秒読みというところまで来た。


 こうして私はあの負け確定のところから彼とこんなにも親密な関係にまで進展することができたのだ。


 けけけ、これであとは彼が私に告白するのを待つだけだ。


 そんなことを考えていて数日が経った。


 私はいつも通りの時間に登校し、席についていた。あたりを見渡すといつも通り、来栖君の周りに美少女三人衆を含めた女性陣がいた。あんなに集まって何が楽しいのかね。


 そんなことを考えていたら、急にその女性陣をかき分けらように来栖君がこちらに向かってきた。


 すると、宮本さん! と私に声をかけてきたのだ。


 一体なんだろうと思い彼を見る。


 来栖君を見ると今まで顔を覆っていた髪はしっかり手入れされており、整った顔を惜しみなく前面に発揮していた。


 そんな顔に少しうっとりしていると彼から衝撃的な発言が飛び出した。


「宮本さん、前から好きでした。僕と付き合ってください!」


 ……えっ、なんで? と私は驚いてしまった。そして周りの生徒、特に美少女三人衆を含めた女性陣は唖然としていた。

 

 その光景を見て普段の私ならどうだ参ったかとか思っていただろう。しかし、あの美少女三人衆を差し置いて私に告白してきたのは流石に想定外だったため、何も言葉が出てこなかった。


 なんとか振り絞るようになぜ私を好きになったのかを聞いてみると、どうやら私が相良君の目に留まるように、運動や勉強。クラスメイトとのコミュニケーションが功を奏したらしく、なんと来栖君の心を射止めていたらしい。


 また、最近私が相良君と一緒にいることが多かったため急がなければいけないと思い今告白した的なことを言っていた。


 いやーよかったな私。努力したら結果って出るんだな。じゃねーよ! どうしよう⁉︎ 一応来栖君って私の理想の男性像に当てはまるんだよ。でも、相良君も最近はかなり良い子になってきてるんだよなー。


 そうしてうーんと悩んでいると。


「今の話、どういうことだよ」


 おーのー、相良君来ちゃったよ。 しかも、どうやら話をほとんど聞いてたらしい。


「そのままの意味だよ相良君。君に宮本さんは渡さない」


「上等だよ」


 ま、まさかこんな状況になるなんて。私は一体どうなっちゃうのー。


 こうして私たちの長ーい三角関係が始まったのであった。




☆☆☆☆



《相良海斗視点》



 俺の名前は相良海斗。はっきり言って俺は自分のことを勝ち組だと思っている。頭は良いし、両親から受け継いだ顔とか高身長。それにバスケットボールだって全国に行ったぐらいうまい。


 それに加えて可愛い幼馴染がいる。


「おい、海斗。早く行こうぜ」

「海斗君、置いていきますよ」

「海斗君って、うわっ! 転んじゃったよー」


 俺の幼馴染の涼香に飛鳥に美保の3人。3人とも美人で、しかも俺に惚れてる。


「おい美保、大丈夫かよ?」

「うん、ありがとう海斗君」


 多分、将来はこの3人の内の誰かと付き合うんだろうな。いや、いっそのこと3人まとめてとか。それもありだな。


 そんなことを考えていると。


「あ、あの海斗君。これ、買ってきたよ」

「お、サンキュー」


 さっき飲み物を買いにぱしらせていた陰キャの来栖がやってきた。


「海斗君、また来栖君に頼んでもらったのですか。ちゃんと自分で買いに行かなくてはダメでしょう」


 また、飛鳥に注意される。


「別に良いじゃねえか。なあ、来栖」


 俺は来栖にそう言い放った。こういえば来栖もそう言い返せないはずだ。


「うん、僕は平気だよ。今日は宮本さんにも手伝ってもらったから」


 どうやら来栖は同じクラスの宮本に手伝ってもらったらしい。


 宮本燈。彼女は簡単に言うと誰からも頼りにされる同級生って感じだ。髪は肩くらいで短く切り揃えられていて、身長は160センチちょっと。正直、誰が見ても美少女と言える容姿をしている。クラスでも人気者で男女問わず人気がある。


 真面目な性格で授業でも手を抜かない。頭も良いらしくテストの順位も毎回高い。また、運動神経も涼香の次くらいに良い。この前のバスケの授業で涼香は女子にしてダンクを決めていたが、宮本はスリーポイントシュートを数え切れないほど決めていた。


 それに由来してダンクの犬飼とシューターの宮本と呼ばれていた。この前は女子バスケ部に泣きながら勧誘されていたな。


 しかも、球技大会でバレーをやった時なんか、涼香がスパイカーで宮本がセッターをしてまさに鬼に金棒って感じで、バレー部差し置いて優勝したからな。


 また、宮本は来栖を含むカーストの低い奴らともよくつるんでいる。それに加えて俺たちみたいなカーストの高い奴らとも仲が良いという変わったやつだ。


 まあ、これも宮本の人徳と高さってことか。


 まあ、俺には幼馴染のこいつらがいるから別にいいけどな。


 そう思い、俺はその場を後にした。


 俺はそれから毎日幼馴染3人と遊んだ。部活の関係とかで遊べないこともあったが、いつも俺たちは一緒にいた。


 それがまさかこんなことになるなんて。俺は自宅の部屋にこもってあの日のことを思い出していた。


 あの日、俺たちが遊んでいるところに不良が絡んできたんだ。最初は倒せると思い、不良の一人を殴ったんだ。だけどもう一人が隠れていたらしく、俺は不意打ちをくらい気絶してしまった。


 俺が目を覚ました時にはあのいつもぱしらせていた来栖が実はアイドルで俺たちの恩人ってことになっていた。そして、次の日から来栖に幼馴染達は釘付けだった。


 それに俺は納得がいかなかった。俺が不意打ちを喰らってなければ負けなかったし、来栖が不良を追い払うなんて無理だろ?


 だから俺は来栖に殴りかかった。でも間違いだった。来栖は間違いなく俺たちの恩人だったんだ。なのに俺はやつに酷いことをしてしまった。


 時すでに遅く、幼馴染達に俺の行なった最低な行為が知られてしまった。


 すると彼女らから丁寧に一人ずつ絶縁された。


「おい海斗、お前最低だな」

「海斗君、信じられません」

「…………」


 その中で美保だけは黙っていた。もしかしてと美保だけは許してくれるのではないかと思った……がそれは勘違いだった。


 美保は目に涙をためながら俺を睨んでいた。そして、そのまま3人仲良く俺の元から去ってしまった。


 俺はあまりのショックで部屋にこもるようになった。もしかしたらあいつらが慰めに来るかもと期待したが、この様子だとこないみたいだな。ずっと一緒に居た奴らがこんなにも簡単に離れるなんてな。まあ、そうなっても仕方ないことをしたんだ。


 そんな時だった。俺の部屋は2階にあるのだが、誰かが階段をぎしぎしと歩く音が聞こえる。


 いつもの母さんが階段を上がるの音じゃない。もしかしてあいつらが!


 しかし、俺の予想は大きく外れた。


「相良君、私です。宮本です」


 なんとそこに居たのは宮本だった。一体なんで? 理由は宮本の方から伝えられた。


「1週間分のプリントを持ってきました」


 なんだよ、ただ頼まれてきただけかよ。ていうか普通、こういうのって家が近いやつが届けたらするだろう。まさかそこまで幼馴染に嫌われているとはな。


 そんなことを思っていると。宮本が声をかけてきた。


「相良君、どうしたんですか? 1週間も休んで、大丈夫ですか? もしよかったらなんですけど、私を部屋に入れてくれませんか」


 はあ? 入れるわけねえだろ。どうせお前はお得意の人徳でどうにかなるとか思ってるんだろ。


 そう思いながら俺は宮本を無視し続けた。しかし、宮本はそれからも声を俺にかけ続けていた。


 しばらくすると彼女は帰ったようだ。こんな対応をしたんだ。嫌われるんだろうな。あの幼馴染達のように。


 俺はそんなことを考えた。そんなことを忘れるため、俺はすぐ眠ることにした。


 

 次の日、また俺は自分の部屋に引きこもっていた。すると誰かが階段を登って来る。まだ誰だかわからない。でも、昨日も聞いたような。


「相良君、私です。宮本です」


 なんとそこに居たのは宮本だった。


「相良君、私とお話しをしませんか?」


 なんなんだこいつは? 俺は意味が分からなかった。そこまで接したことがない奴がなんでまた来たんだ?


 俺は訳もわからず、結局無視し続けた。


 そして宮本はそれからくる日もくる日も俺の部屋にきて俺の名前を呼んだ。相良君、相良君と。


 ある日、ぎしぎしと誰かが階段を登ってくる。俺の部屋にきたのは母さんだった。いつもは朝食と昼食と晩飯を運ぶ時しか来ないはずなのにどうしたのだろうか?


 すると母さんは部屋の前で意を決したかのように俺に語りかけてきた。


「海斗、宮本さんがいるでしょう。彼女、私と話す時もずっとあなたのことを心配しているのよ」


 母さんは宮本の話をし始めた。俺はそれがどうしたと思った。別にそんなこと求めてない。


 「あのね海斗、あなたは当たり前だと思っているのかもしれないけど。あんなに毎日毎日心配して来てくれる人なんてそうそう居ないのよ」


 はっ! 確かにそうだ。普通、こんなにただの同級生である俺をかまってくれるやつなんてどこにいる。しかも俺は素行が悪く、あまり良い印象は持たれてないだろうし。


「あなたはそうやって塞ぎ込んでいるけれど、まだあなたを信じている人はいるのよ。そして、私もその一人なことを忘れないで」


 そう言って母さんは下に降りて行った。


 俺はその言葉を反復するように考え続けた。そして一つの結論を出した。


 明日、俺は宮本に会ってみよう。と。


 

 そして、その日になった。もしかしたら、宮本は来ないかもしれないと思いドキドキしたが杞憂だったようだ。彼女は()()()()ぎしぎしともう聞き慣れた音を出して階段を上がって来た。そしていつものように。


「相良君、私です。宮本です」


 と言い、俺の部屋のドアに向かって声をかけてきた。俺は昨日言われたことを思い出していた。そして俺は決めたんだ。意を決して自分のドアをこじ開けた。いつもは重く、そして遠く感じたドアが何故だか軽く感じた。


 そこに居たのはあの時と変わりない美少女、宮本燈だった。


「こんにちは相良君、やっと開けてくれましたね。お久しぶりです」


「お、おお」


 やばい久しぶりすぎて(ども)ってしまった。

 俺は咄嗟にドアを閉めようと思った。


 しかし、宮本は強引に俺の部屋に上がり込んできた。意地でも俺と話す時間を作るつもりみたいだ。


 そうして俺の部屋のベッドに座り込むと俺にたわいもない話をしてきた。しかし、俺は何をいえば良いか分からずただうんとかああとかしか言えなかった。


「あの、どうして相良君はもう1ヶ月近く休んでいるんですか?」


 それは突然きた。なんだろう急に心臓がバクついてきた。脂汗もかいている。そりゃそうだ、やっぱり気になるよな。ていうか1ヶ月も休んでるのか俺は。


 そんなことを考え現実逃避をし始める。話していいのか? 俺はまた嫌われるんじゃないのか。そんなことを考え始めた。


『まだあなたを信じてる人はいるのよ』


 ふと、その言葉が俺の頭に浮かんだ。そうだ、宮本は俺を信じてここにいるんだ。俺が悩みを打ち明けることを。そして俺を助けようとしてくれてるんだ。


 そして、俺はあの時のこと、そのあと起こしたことを全部宮本に伝えた。


 言ってる途中も、罪悪感と彼女に嫌われるんじゃないかという恐怖が俺に襲いかかり、俺はもう気が気ではなかった。


 全て言い終えた……。彼女はどんな顔をしているだろうか。軽蔑しているのだろうか。すると彼女は俺の頭を撫で始めた。


「すごいね相良君はこんなこと一人で背負い込んじゃって。私ならもうダメになっちゃうよ、本当に偉いね」


「俺は偉くなんか……」


「ううん、偉いよ。ちゃんと自分の悪いところを反省してる。そう簡単にできることじゃないよ」


 宮本、俺はそんないい奴じゃないんだ。


「違うんだ、宮本」


「違くないよ、ちゃんと彼女達を守ろうとしたんだよね、ただ運が悪かっただけだよ」


「そ、そんなことない。俺は来栖にも酷いことを」


「ただ少し考えすぎちゃっただけだよ。謝ったら許してくれるよ。相良君はちょっと動揺しただけで悪くない」


 宮本はほとんど暴論のようなことを言っていた。俺は意地でも宮本に俺は悪い奴だと言わせたくなり、彼女を俺のベッドに押し倒した。


「これでも俺は悪い奴じゃないのか。今ならお前を滅茶苦茶にできるんだぞ。どうなんだ!」


 すると彼女は俺の頭を抱きしめた。


「相良君は悪い人じゃないよ」


「な、なんで」


「じゃあなんでそんなに泣いてるの?」


 宮本に言われ、目元を触ると涙がボロボロと流れていることに気がついた。


「本当の悪人は泣きながらそんなことしないよ」


「お、俺は……」


「相良君はまだ大丈夫だよ」


 俺はまだ大丈夫なのか。あんなに酷いことをしたのに。まだ俺を信じてくれる人がいるのか。


「……俺を信じてくれるのか」


「うん、信じてあげる。だから相良君も私を信じて」


 宮本はそう俺に優しく囁いた。


 その後のことはあまり覚えてない。気がついたら部屋の外に出ていた。母さんは滝のように涙を流して喜んでいた。不安にさせちゃったな。


「もう、おばさんを困らしちゃダメだよ」


 宮本にも言われてしまった。俺は本当に返し切れないほどの恩を受けてしまった。


 俺は帰り側、宮本に心から込めてお礼を伝えた。しかし、緊張していたのか、思ったよりも声が出なかったため、ボソッという感じになってしまった。多分聞こえてないかなと思い家に入ろうとしたとき。




「どういたしまして、相良君」




 なんだよ、聞こえてたんじゃねえかよ。



☆☆☆☆



 俺はその次の日から学校に行くことにした。いつもは幼馴染達と一緒に通った通学路。正直寂しい。でも、学校に行けばあいつがいるし、母さんにもこれ以上迷惑はかけられない。そう思い、俺は重い足取りで学校に向かった。


 学校に着くとさまざまな生徒から奇異の目に晒されているような感覚に陥った。俺は逃げるように教室に向かう、周りの目が怖い。全員を敵に回しているみたいだ。教室に着くとすぐにあいつを探した。そこには宮本が居た。俺はそれだけで今までの感覚から解放された。


 俺は宮本を探していたことがバレないように自分の席に着く。するとすぐに宮本が声をかけてきた。


「おはよう相良君、久しぶりの登校だね」


「お、おはよう」


「ふふ、大丈夫? もしかして休みすぎて単位が足りるか不安とか」


「…大きなお世話だ」


 俺はちゃんと彼女に返事できているだろうか。そのことが今一番不安なことだった。


 そうして俺と宮本はたわいもない話をして時間を潰していた。なんか久しぶりに生きてる心地がした。こんなに楽しいことはない。ずっと続けばいいのにとさえ感じだ。しかし、その時間はすぐに終わりを告げた。


「ねえ、飛鳥と美保は昨日のテレビ見た?」

「勉強をしてて見てないわ」

「私は眠くて寝ちゃったよ」


 俺はその声を聞いた瞬間、すぐに下を向いた。どの顔をしていいか分からないからだ。彼女達が近づいてくる。……一体どうすれば。


しかし、予想に反して彼女達は俺に反応することはなかった。だが、理由はすぐに分かった。


「おはよう、来栖」

「おはようございます、来栖君」

「く、来栖君おはよう!」


 あいつらはすぐに来栖のところへ向かった。もうすでにあいつらにとって俺はいないものなのか。


 その事実に気づき俺はさらに具合が悪くなった。


「大丈夫、相良君?」


 そうだ、ここには宮本がいるんだ。あまり格好悪い姿は見せられない。


「だ、大丈夫だ。平気だよ」


 一応そうは言ったが、顔色は最悪だろう。その日中はずっと具合が悪いままだった。


 俺は一刻も早く帰ろうとした。宮本にこんな姿見られたくない。


「相良君!」


 宮本が俺の腕を掴んできた。俺はとりあえず返事を返すことしか出来なかった。すると……。


「あの、よかったらなんだけど。これから一緒に遊ばない?」


「ぜひ!」


 気がつくとさっきまでの体調のことなんて忘れて即答していた。


 それからというもの、彼女は学校が終わると俺をいつも遊びに誘ってくれた。多分、宮本は俺が学校で上手くいってないことに気づいていたんだな。それを少しでも和らげるためにやってくれていたんだと思う。


 そうして少しずつ俺は学校に馴染んでいった。すると宮本がバスケ部に行こうと俺に言ってきた。


 バスケ部か……。俺は入学当初、バスケ部に入ったが。


『もっと俺にパスをよこせよ、グズ!』


『おい! これはお前のためのチームじゃないだぞ』


『うるさい! 黙って俺にボールを集めろ』


 うわ、今思えば何考えてるんだ。どんな顔して部活に行けば良いんだよ。しかも無断で1ヶ月も休んでるのに。


 そんな心配をよそに宮本は優しそうな声で。


「相良君、私がいるから。ねぇ、相良君はバスケが好きなんでしょ。怖くても逃げちゃダメだよ」


 そうだ、これで逃げたらダメなんだ。俺はもう変わるんだ!


 そうして俺はバスケ部に顔を出した。すると先輩達は俺がきたことに驚き、そしてギロッと怪しむような目を向けてきた。何しにきたんだと言わんばかりだ。


 俺はすぐに土下座をした。


「今まで生意気行ってすいませんでした! もう一度、このチームでバスケをやらせてください!」


 俺は何度も頭を下げた。


「おい、相良」


「は、はい」


 声をかけてきたのは部長だった。俺がバスケ部で一番怒られた人だ。多分一番俺が嫌われているのも部長だろう。俺は一発殴られるのを覚悟した。


「お前はずっと同じチームだろうが。早く準備しろ」


「……へっ?」


「だから早く準備しろと言ったんだ。殴るぞ!」


「はい! わかりました。今すぐ準備します」


 なんと、俺にそう言ってくれたんだ。俺をまたバスケ部で。


「よかったね、相良君」


 宮本は笑顔で俺を祝福してくれた。


 ありがとう宮本! お前のおかげだ。とほんとは声を大にして伝えたかった。でも恥ずかしくそんなことは言えない。とりあえず俺はその言葉にコクリと頷き、部活の準備をしようと思ったが。


「というか相良、お前バスケの道具を持ってないじゃないか」


「あっ……」


 結局その日は今日体育の授業の時使ったジャージと学校の上履きで部活動に参加した。かなり恥ずかしかったが、久しぶりのバスケはすごく楽しかった。


 そうして俺は今までのワンマンプレイをやめて、バスケットボールに打ち込んだ。たまに宮本が遊びに来て俺と1対1のミニゲームをすることがあった。宮本がスリーポイントを決めまくるもんだから他の部員も目を点にしてたな。思い出しただけで笑けてくる。そして努力が結果に結びついたのだろう。次回の練習試合で俺はスタメン出場することに決まった。


 俺はすぐに宮本の元へ向かい報告した。


「よかったね相良君。絶対に私見に行くよ」


 どうやら見に来てくれるようだ。そして、有言実行というように、練習試合当日、母さんと宮本が見に来てくれた。


 俺は張り切ってプレイした。結果は勝利、俺も大活躍だった。母さんと宮本は抱き合って喜んでいた。


 その試合のあと、俺たちは3人でご飯を一緒に食べた。


「ねえねえ海斗、宮本さんとはどうなのよ〜」


 おい、母さん! 本人がいる前でそういう話なんかするなよ!


「そ、そんなわけ……」


 俺は即座に否定しようとした。だけど、その先の言葉が出なかった。言おうとしても、まるで喉になにかが詰まっているような。息はできるはずなのに。


 俺は向かいの席に座っている宮本の顔を見た。なんだろう、今まで見た女の中で一番可愛く見えるな。


 なんていうか全部が愛おしいというか。


 

 あれ、もしかして。……俺って宮本のことが好きなのか?


 

 その言葉はすとんと心にきた。そうだ、俺は彼女のことが好きなんだ。最近はずっと彼女が何を考えているのかとか、彼女が何をしているのかとか、何をしたら喜んでくれるのだろうかとかそんなことしか考えていなかった。


 その事実に気づいた瞬間。俺は宮本の顔が見れず、下を向いた。顔が熱い。なんだこれ、今まで幼馴染達といてもこうはならなかったのに。


「あらあら、海斗」


 うるせえよ母さん! とりあえず今だけは静かにしてくれ。


 俺はそう母さんに目で訴えかける。母さんはクスッと笑いご飯に集中し始めた。


 俺はその日決心した。学校で幼馴染達に謝り、来栖にもあの時のことを謝罪して許してもらえたら。


 

 宮本に告白しようと。




☆☆☆☆




 そう決意した次の登校日。俺は自覚した恋心にドギマギしながら教室に向かう。今日の宮本はどんな表情をしているのかなだとか、今日はどんな話をしようかだとか、自分でも少し気持ちが悪いことを考えてるなと思いながらお目当ての教室に到着した。


「宮本さん、前から好きでした。僕と付き合ってください!」

 

 そこで見たのは来栖が宮本に告白しているところだった。


「はぁ?」


 驚きのあまり思わず声が漏れた。だってそうだろう? あの来栖が急に俺の好きな女に告白してるんだ。思わず手を出したくなる。でも我慢だ。今まで努力が水の泡になる。


 そうこらえている間も来栖と宮本の話は続いていた。


「来栖君、どうして私なんか……」


「僕は今まで髪を伸ばしてアイドルとバレないように生きてきた。それで僕のことを陰キャだとか気持ち悪いだとか言って優しくしてくれる人なんていなかった。でも宮本さんだけは違ったんだ」


 確かに宮本はどんなやつに対しても平等に接するやつだ。そこに来栖は惹かれたってことか。


「それだけじゃない。最近は相良君とずっと一緒にいるだろう? 僕はそれが我慢できないんだ。絶対僕と一緒にいた方が良いと思うんだ。だから僕と付き合ってください!」


 なんだそれ? たしかに俺は来栖よりも劣っているかもしれない。簡単に人を殴るし、傷つけてしまうし、後先考えずに幼馴染達に愛想を尽かされた人間だ。



 でも、宮本を想う気持ちは誰にも負けてない!!


 

 来栖には悪いことをした、ちゃんと謝罪する。でもそれとこれとは別だ。ここからは男と男の真剣勝負だ。


「今の話どういうことだよ」


 俺は来栖にドスの効いた声で話しかける。宮本ははっと気づき、俺の顔を見る。どうやら困惑しているようだ。すまねえな宮本、またお前を困らせちまう俺を許してくれ。


「そのままの意味だよ相良君。君に宮本さんは渡さない」


「上等だよ」


 これ以上俺は大切なものを失いたくないんだ。俺は絶対宮本を手に入れる。勝負だ来栖!


 こうして俺と来栖と宮本の三角関係が幕を開けたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] クラスの中に宮本さんみたいな人がいたら絶対モテてたと思うなぁ。 誰にでも仲良く接することができて勉強も運動もできて... 宮本さんと相良くんの今後が気になる!! すごく面白かったので…
[一言] うゎ〜、、不完全燃焼だよ(笑) この先がどうなるか気になります。 相良君の成長と宮本ちゃんの黒が・・ 是非連載でお願いします!
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