真・イチャイチャの序章
下校しながら考える考える考える。
俺とひまがもしも離れてしまう未来…
頭の中がぐちゃぐちゃしているので頭の中を1つずつ口に出す。
「ひま、俺さ…正直に言うと『恋人』ってものを下に見ていたかもしれない。」
「うん、ボクもたぶん同じ気持ちだよ。」
「恋人って俺達よりずっと脆い絆だろ? って思っていたんだ。」
「でも、恋人とか結婚とかって立場はボクらを引き裂ける物かもしれないと。」
そうだ。問題の1つ目はそれだ。考えるだけで嫌になってくる。
「かといって恋人って恋愛感情があって成立する関係なんだろ?」
「ボクたちには無いね。恋人ごっこなんて難しいと思うよ」
これが2つ目の問題。
思いやりとか愛ならあると思うが恋人らしいことができる気がしない。
恋人って関係は俺達には向いていない。
俺はもう何もかも嫌でふとな顔をしていたが隣のひまは何か覚悟を決めたような顔をしていた。
ひま、妙案でもあるのか?
「大樹は『恋人らしい関係にはなれないから俺達は恋人になれない』って考えている?」
「まあ、一言で言えばそうだな」
「ボクに妙案があるんだ」
「ボクらを引き裂くものの全てを、ボクらで埋めておこう。」
「ん?どういうことだ?」
ひまは語りだす。
「まず、恋人って存在がボクらを引き裂く未来が万に一つあるならボクらで恋人になろう。」
「結婚って存在がボクらを引き裂くのなら結婚しよう。婚約もしよう。」
つまりひまはこう言っているのだ
『感情なんていらないからとりあえず不安要素潰しとこうぜ』と
「色々悩んだけどそうだよな…恋愛感情無くたって恋人になっちまえばいいんだよな。」
「欲を言えば結婚だけどね。結婚しちゃえば引き裂くには離婚届…ボクらの意思で離れようとしない限り離れられないようになるわけだし。」
「よし、じゃあその方向で行くか」
方針も決まり、少しだけ気が楽になった。まだ色々と感情が整理できていないが家へと帰る足取りは軽くなっていた。
★
「ということがあったんだ。」
「お父さん、お母さん。ボクに息子さんをください。」
夕食を食べながら両親に報告をする。
両親は顔を見合わせ父さんは頭を抱え、母さんは困ったように笑っていた。
「えーっと、あのね2人共?正直に言うと君たちが結婚を前提にお付き合いをすることには一切問題が無いと思うよ。」
「まあ、動機は頭を抱えたくもなりますけど…婚姻届けの証人はお父さんとお母さんが書きましょう。」
父さんと母さんは賛成してくれた。よしこれで俺たちはずっと、これまでと変わらず一緒だ。
隣のひまと目を合わせて笑いあう。
しかし、父さんから1つお願いをされた。
「大樹、向日葵。君達は感情が無いまま恋人になろうとしている。でもせっかくだから恋人らしいことは出来る限りやってみなさい。」
「そうねぇ…あまり言いたくないのだけど……今のままだと子供が出来たときに愛せるのか心配ではあるのよね…」
「そう。君達はお互いが大好きなのは良く知っている。でもそれは幼少期からずっとだろう?『新たに人を好きになる』『もっと人を好きになる』そういう感情もできれば学んでほしいんだ。」
父さんたちの言うことは分かるような分からないような…
まだ今日1日で感情がぐちゃぐちゃしているのかしっかり受け止めて考えることが出来ない。
「要するに恋人って立場だけじゃなくて『恋人ごっこ』でできれば世間一般の恋人みたいになってね、って事かな?」
ひまの纏めでなんとなく分かったかもしれないような気がするような…
とりあえず恋人らしいことをしてみようとひまと相談しながら湯船に浸かった。
★
「よし、じゃあキスしてみようか。」
恋人らしいことってなんだろうと考えてみたが真っ先に浮かんだのが織田の言っていたキス。
俺とひまはベッドの上で膝立ちで向かい合い、唇を合わせる。
「…恋人らしさって感じる?」
「落ち着くとか癒されるとかならあるけどたぶん違うよな…」
なんだろう、この感情じゃないってのだけは分かるけど正解が分からない。
ひまも同じようで悩みながら数度唇を合わせ、そしてまた悩む。
そして――それは俺のちょっとした思い付きだった。
「確か織田は…金田一に明智さんが呼び出されて落ち着かない様子だったり、弁当で2人共顔を真っ赤に感情豊かだったから…キスも何か心が動くような事をしつつやったらいいんじゃないか?」
「感情かー。最近一番感情が動いたことってなると…」
俺たちは日中の、早退した理由を思い出してしまった。
もしも、俺から、ひまが、離れ……
「ひま!!」「大樹!!」
どっちが早いか俺たちはしがみつくように、絶対に離さないようにとキスをする。
唇を合わせて終わりではなく貪り合うように、相手を取り込むかのようにキスをする。
どれくらい時間が経ったろう、気づけば離さないようにと必死だったのがお互いがお互いを求めあうように距離をゼロではなく自分の中に入れてしまいたくなるような心の距離でキスをする。
止め時を失いそのままベッドに横になり布団をかけ、お互いを食べ続ける。
癒しや安心感以外に、初めて不思議な充実感が胸を満たした。




