織田くん、おせっかいで地雷を踏む
今日は朝から冷食のから揚げ、お昼も冷食のから揚げ。
誰かさんのリクエストにしっかり応えた結果である。
2限目が終わっての休み時間。朝からニコニコしていた織田が不機嫌そうだった。
「どうしたんだ?朝はニコニコしていたのに」
「……」
むっすりとした織田は何も言わない、明智さん何か言ってやってくれ。
そういえば明智さんがいない。
「明智さんどこ行ったんだ?」
「なんで俺に聞くんだよ、しらねーよ…金田一に呼び出されていったよ。」
知ってるじゃん。金田一…クラスの男子生徒だ。
勉強のできるしっかり目の言動をする学級委員。いつも砕けている織田とは反対のタイプだ。
そういえば昨日、明智さんの弁当発言で泣きそうな顔をしていた。
「なあ大樹…俺も勉強したほうがいいんかな…」
「よく分からないけどしないよりはした方がいいんじゃないか?」
「言葉遣いとか改めたほうがいいんかな…」
「どうした?体調でも悪いのか?」
そんな話をしていたら明智さんが教室へ戻ってきた。疲れた顔をしている。
授業が始まる寸前に金田一も戻ってきた。目を赤く腫らせている。
織田はそれを見てほっとしたように息を吐いていた。
お昼、明智さんが織田に用意したお弁当にはハートマークが載っていた。
織田と明智さんの顔はサクランボのように真っ赤だった。
★
翌日、朝のホームルーム前に織田から明智さんと恋人になったと報告された。
「いや、もう、ほんともう、昨日は生きた心地がしなかったわ…」
「私が少しいないだけでそんなに慌ててくださるんですね。」
「そりゃ…明智が金田一と付き合ったらと思ったら怖かったんだよ…」
「大丈夫です、私はあなたの恋人ですから他の誰の所にも行きませんよ。」
クラスメイトはにやにやこっちを見たり金田一の肩を叩いたりしている。
「なあ大樹。俺はお前たちに感謝しているんだよ。一カ月前にお前の結婚発言で明智が喋ったのが仲良くなる切っ掛けだったし、その後もお前たちと一緒にわいわい過ごしていたから明智と親しくなるのがが早かったと思っている。」
「気にすんなよ友達だろ?」
「明智さんと仲良くなれてボクも嬉しかったしねー。」
「ああ、だからこそちょっとおせっかいするんだが…お前らって恋人にならないのか?」
「恋人ってよく分からないんだよな…」
ひまと遊びに行ったときにナンパ除けで恋人のふりをしたことくらいならあるが、恋とか以前に俺たちは強い絆で結ばれているのでわざわざ恋人って立場になる必要があるんだろうかと思ってしまう。
そんな考えを口にするとひまは同意し、織田は考え、明智さんは頭を抱えていた。
「あー、その、ほら、恋人になるとキスとかできるぞ?」
「……したいんですか?」
「2人ともすまん。恋人のメリットを言おうとしたが俺が死ぬんでデメリットの話するぞ。」
「デメリットってボクと大樹が恋人にならないと問題が起きるの?」
「ちょっと想像してみてくれ、例えばだな――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【???】
「ひま、起きて。朝だよ」
「もう朝?大樹起こしてー」
「違うよ君はイケメンで御曹司の僕と付き合い始めたんじゃないか。大樹くんはもう来ないよ、これからはずっと僕が傍にいるからね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みたいな事が起こらないように恋人になっていたほうが…って大樹?佐々木…?」
無いない無いナイない無いソンナ未来ハ無い。
俺はひまとずっと一緒でひまは俺とずっと一緒でお互いにそれが分かっているからそんなことはありえない
ありえない、ありえないが万に一つでもとそんな事を想像するだけで全身から力が、気力が、何もかも抜けていく
心のダムに大きな穴が開いて何かが流れ出ていくようなそんな
「ひ、ま…」
口からなんとか絞り出す。隣にはひまが絶対にいる、居る。横を見る、ひまがいる、ひまも俺を見る。
俺は何とか体を動かし、ひまの手を取り引き寄せ、ひまも震えながら俺に倒れ込むように近づいてくれる。可愛い顔が真っ青に台無しになっている、俺も多分同じくらい青いと思った。
俺の膝の上に横向きに座るようにひまをのせ抱きしめる、絶対に離さない、絶対にだ。
ひまも俺を体の奥へ引き込むかのように抱きしめてくれる、大丈夫、大丈夫だ、俺たちは離れない…
ホームルームがいつのまにか始まって終わっていた、気づいたのは高橋先生に早退を勧められてからだった。先生曰く「少しでも離したら2人して身投げしそうな雰囲気だしているから授業が始まって引きはがされる前に早退したほうが良い」とのこと。
落ち着いたらまた元気に学校へ来てねと高橋先生に見送られながら学校を後にした。
今日はもう、ずっとひまの事だけ考えていたい…
心の隅で先生に感謝しつつ、俺の心の残りの全てがひまで埋まっていた。




