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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第32話『お断りです!ブルーマウンテン星団VSスリープハンズ教団!性癖爆発のギリR_18バトル!』
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Bパート

趣味、不可能的恋愛情事の展開観察。


「かずくん」

「ゆきよちゃん」


夜の電車の中でたまたま向かい合ったカップル同士に幸せな幻を見せる。


「いや、誰もいないからって……」

「ゆきよちゃんが綺麗だから」


お互いの唇を合わせ。肉体的な繫がりを果たし、電車は停車駅へ。

一緒に手を繋いで降りて行き、駅から見えたホテルに向かおうとする2人……。そんな2人に、届かぬが悲鳴と同義な訴えが



「いやーーーー!!かずくん、何をしてるのーーー!?」

「ゆきおさーん!!どうしちゃったのーー!」



幻術をかけられ、なんの縁もない男が2人。駅から降りる。一方、イケメンの男を奪われるにしろ、男によって奪われる超展開を喰らった女性2人であったが、すぐにまた幻術により、幸せな魅了に浸る。


「あひぃぃ……素晴らしい、素晴らしいですわぁぁ」

「スリープハンド様ぁぁ。私のおパンツを見てください」


ある男に服従することだけで幸せになる回路を作られ。こんな電車内でエロい下着をつけたお尻を曝け出し、電車の床に這い蹲る様に理性の欠片もない。そんな女性達の姿……。

女性達を服従させた男は


「趣味が悪いな、アセアセ」

「すみません!これやってるのは、寝手スリープハンドですよね!?私はここまで酷くないですよ!!」


再び電車が動き出し、それでも女性達は幻術から解かれない。


「男と男を絡ませるのは良くないよ。理解に苦しむなー」

「お前が一番理解に苦しむんですけど!!」

「イケメンはどーでもいいけど、可愛い子を見たら僕……屈服とか理性を圧し折ってやりたいんだよね」

「ううぅっ」


失敗したと思った。大分前から思っていたが、……。

妖精と強く適合するのは人間として何かしら大きな欠落があるらしい。所謂、ダメ人間。救いようのない人間。それと契約を結べば確かに強力なのだが、


「家に帰ったらご飯作って、お風呂用意してねー」

「あなたのペースに嵌められてばかりの私……」


ホントに後悔ばかり。力だけを求めてはいけないというのを感じる。介護に仕事、異常性癖との付き合い。少しはこっちを気にして欲しい。

寝手と契約をして5年ほどの年月が経った。なんだかんだでお互い、気の合うところもあり。続いた関係だ。



「私は世界中の男性をイケメンに見せる世界に変えたいのに……。おっさん以上は顔判断で、抹殺焼却、地獄行きにしてやりたいのに……。汚らわしい世界と人間は消毒です」

「ぶつぶつ何言ってんの、アセアセ」



幻を見せる能力ではあるが、それを使っての夢。寝手の力にはそれだけのものがあり、自分がこうして下手したてに出るのは、普通なこと。

死なせてはならない。護らなきゃいけない存在。



◇      ◇



メロォ~~~ン


猪野春が懐から取り出したのは、自分の妖精。中心に穴の空いたコンニャクの妖精、テンスケ。

彼の穴に唾液を零しつつ舌で舐めまわし、



「『ドンパチ・ハジケロ』」



妖人化に至る。


「『ジージジジー』」


頭のバーコード禿。弱りきった毛根。それらが急激に活性化、若返りを行なう。グングンと成長していき、丸み掛かった髪型に。グラサンをかけ、2つ,3つ前の時代にあったようなハジけたチャライ服装。やや筋肉質となったその姿こそ、彼の妖人化。


『ジージジジー』


アセアセの前で地獄に堕ちろとサインを送りつつ、


「ROCK ON ROLL!!」



綺麗にポーズと台詞を決める。

それを観て、アセアセ


「はぁ~~~~、ダサイ」

「なにを!?若いもんは分かってくれないね……」


不快過ぎるもので、溜め息かつ酷評。

だが、そんな感想はこのジージジジーの能力を味わってから。ブルーマウンテン星団の中で、洗脳と拷問の役目を担っていた彼の実力は現メンバーの中では、1番だろう。


「しぇえええぇぇっ!!」

「…………」


ジージジジーはアセアセの能力が分かった上で、見えている彼女を正面から殴りにかかった。

正直アセアセの力は、事前には対策のしようがない能力の1つだろう。



スカァッ



彼女に繰り出した拳が通過した。見えているのに当たらない。そこから声が聴こえるのに、そこにいない。匂いもする。ほとんどの感覚はそこにアセアセがいると告げているのに、届かない。

そして、



グサグサグサッ



「!おおぉっ!?」



おそらく、正面から。突き刺されたところからの判断だが、投げナイフ4本が綺麗にジージジジーの身体に刺さった。刺さってから分かり、不意を突かれた事もあり、転倒。


「ビックリしたわい」


グサァッ


「顔は止めんか!お~~、いてぇ……」


愚痴愚痴言いながら、立ち上がる。

投げられるところも感知できない。当然、自分の体に刺さるまで感知できない。アセアセが投げてきた投げナイフを避けるというのは困難。激しく動き回るという手もあるが、この攻撃をしてくる辺りアセアセを感知できなくても、間合いはあまり離れていないのは明白。

透明になるとは違っている。



ヒュッ



ブルーマウンテン星団の実力がこの幻術に屈するのであれば。キッスや粉雪達が警戒するわけもないだろう。

2度の攻撃を喰らい。


「透明なら投げた瞬間、目に見えるはずだ」


アセアセに拳が通過したようにこの視界が幻そのもの。また自分の感覚も、奴に操られてるとすれば。思考のまま、防げばいい。

ナイフが飛んでくるのは


バヂイィィッ


1本、足に刺さったが。3本を打ち落とした。


「まいったなぁぁ。もらい過ぎて、血を出しすぎた。失敗失敗」

「!!」

「へへへ、儂が見ているお前さんはお前さんじゃないんだろう。幻術のカラクリもだいたい掴めてきたわい」

「なにを」


挑発に乗った形で繰り出す投げナイフ。しかし、今度は


バヂイイィッ


全部、払い除ける。アセアセの攻撃を的確に拳で護ってしまう、ジージジジー。

そして、早くもアセアセのカラクリを見抜いた。


「お前の位置は確かにそこにいる!儂の感覚を狂わせており、儂の位置までも儂自身が誤認しとるんじゃろ。じゃないと、止まっていた儂に対し、ナイフが飛んで来る角度に変化がないのは不自然」


若返ってきたのは勘。

いかに狂わされている感覚の中でも、培ってきた経験が違う。

ベラベラと喋っているのも、アタリハズレ関係なしに、アセアセにプレッシャーを与えるため。

現在、アセアセの優位は変わりないが。幻術を見せる能力は、破られたり対抗策が見つけられた場合。たちまち崩れてしまうところが弱点だ。



「不用意に近づかん方がええよ。特に儂の拳と脚が届く間合いなら、お前さん。死んどるでぇ」

「……そうしたいですけど、随分と近づいてくるじゃないですか」


決して、遠くはない。

幻を使っての間合いの誤認。



◇      ◇



「ひとまず、私が2人と戦おう。田所、並河。後ろに下がってくれ」


そして、こちらは田所、安住、並河3名の戦場。


ジ~~~~ッ


安住はおもむろにズボンのチャックを開け、そこから背泳ぎを始めるかのように身体を後ろへ傾ける。ブリッジの体勢となり、ズボンのチャックから出してはいけないものに覆いかぶさった、自身の妖精。コンドームの妖精、ドンコが現れる。なんといけない光景か。


「『メリメリクリーマス、"リヴォーア"』」


妖人化と同時に、

ブクブクと膨れ上がり、太く伸びていくドンコ。それに追従するように安住の身体も折り畳まっていき、すぐに1本の大樹のように変型。


「うわぁ、きしょっ」

「なーに。この品のない妖人化」


人間形態ではなく、無生物に近い存在になる妖人化も珍しい。

彼等の相手となる、アユチャンとマリアは安住の妖人化、リヴォーアの姿に嘲笑ちょうしょう


「おいおい、お相手さん。リヴォーアを舐めてるみてぇだな」

「ブルーマウンテン星団、最大の"要塞"だぞ」


一方で、リヴォーアを信頼している田所達の言葉。妖人化に癖こそあるが、真の姿になった時の堅牢ぶりは凄まじい。巨大化すると同時に、身体の一部の中に田所と並河を匿う。

サポートという役目も色々とあり、その中で多くの仲間から護る盾への信頼は厚い。


妖人化をし終えると、高さ30mにも及ぶ巨大な大樹となった。東京駅周辺のビルと比べると、やや高さに見劣りするが、こんな不思議な変身はそうないだろう。

そんなブルーマウンテン星団側に対し、アユチャン達はというと


「あはぁっ!ペッチーン!」


アユチャンはいきなり自分の右の頬を叩いた。すると、体がブレ始めていき


ズズズズズズズ


「きゃは」

「えふふふ」


1人が2人になった!そして、同じように


「ペッチーン!」

「ペッチーン!」


2人が4人。4人が8人。8人が16人……。リヴォーアの妖人化を待ってでも、こちらの準備を整える隙と考えていた。

両者の準備が整い。


「アユチャン達はアバターだからぁ」

「沢山増えるし、沢山のコスチュームも持ってる」

「ネットアイドルだからぁっ」

「お前達みたいな汚物に屈するか」


アユチャン。およそ、数百人が群れとなってリヴォーアに襲いかかった。

分身を作り出す能力ではあるが、


「知能は極めて低そうだ」

「武器を持たない分身とはな」

「どこかにいるんだろう司令塔さえ潰せば、分身は崩れるだろう。(まぁ、感覚を乱されてるから捜すのは困難か)」


数百人、一斉に押されるリヴォーアであるが、ビクともせず。想像以上に堅い。だが、これが敗れた時。理不尽な人海戦術が田所達を襲い、たちまちやられてしまう事だろう。

そんな恐怖もリヴォーアの中にいればあり得ないと、信頼しきったところで2人も動き出す。妖人化。

元アイドルの手に宿った妖精、デシーアを持つ並河。


「『付き纏うこと、亡霊の如く!!追い回すこと、自害するまで!』」


デシーアで頬をすりすりしながら、


「『カスタード16』」


数字の名が刻まれたこれまた珍しい名前を持った妖人化。ちなみにデシーアが宿っている元アイドルが所属していたグループ名である。


ピポロパ


『準備完了です』

「『マーヤ、レンダリング!』」


こちらは田所と、その妖精。3Dソフトの妖精、マーヤによる妖人化。蒼山と似ているタイプであり、蒼山とフォトも彼等を意識しているところがあった。

事前に作り上げられたコスチュームをダウンロードしていき、光と共に身体の各部と入れ替えていく。改造人間のような感じの変化と共に、


「『リアルを超える表現職人、スリーディーシー』」


ブルーマウンテン星団の中で、物凄くまともな妖人化。


「あはぁっ」


ドゴオオォォォッ


数百人が大樹を揺らすパワー。折れずとも内部に溜まっていくダメージは確か。

リヴォーアが耐え凌いでいる間に、スリーディーシーがこの状況を打破する兵器の製造を行なう。耐えれるか耐えられないかの違いと、完成できるか完成できないかの違い。ブルーマウンテン星団の強みは、因心界とは違った固いチームワークにある。

この戦いで決着を迎えるとき、確かに発揮されるだろう。


そして、


「かーーーーーっ、べろべろろろろ」

『始めよーね!ウダウダ言わずにね、宇多田』

「……痰くらい吐かせろ。ターン」


ペッ


1対1の勝負。実力は猪野春に次ぐ、2番手。組織の役割としては、……まとめ役。個性的なメンバーが多い中で万能な実力である。その一方で猪野春からは器用貧乏と馬鹿にされていた。まぁ、宇多田も気持ち悪い爺などと口にしているほど、仲は悪い。

舌に取り付いた妖精、ターンが口の中から伸びていき


「『ナメ腐れ、ミガミノウ』」


妖人化と同時に、宇多田の身体が透けていく。仲間達と分断された時に身体が透けてきた現象とは違う。時折見せる、七色の光がある。

対峙する鬼武からもそれは目に捉えられており、透明化。あるいは保護色になるかのどちらか。

いずれにしても、身体の色を消せるという能力。


「それだけじゃねぇけど」


3箇所。ほぼ同時に戦闘。

刀を扱う鬼武に対して、武器を持たずに素手で立ち向かうミガミノウ。

その様子を寝転がって見守る、フーロンが東京駅の入り口にいる。

大きく口を開け、左目から涙を零しながら


「ふぁ~~……あー……雪で寒いし、眠い……」


やる気がないような発言ではあるが、幻で能力持ちの生体を3体も作り出すレベル。彼の眠気は相手にしていないという、高みからのレベルと見ていいだろう。

そもそも、彼の狙いは自分以上にふざけている奴だ。

東京駅の上から落ちてきたかと思えば、情けない声も出している。


「わ~~~~~~、パンツの色はまだ叫ばないーーー!!」

『ひょ~~~~!!』


ドゴオオォォォッ



頭からドッカーンと、地面に突き刺さった蒼山スカートラインの姿。なんとかして頭を引っこ抜き、ようやくじゃないがご対面。


「キッス様がお前を倒せと命令しているんだが」

「この深い眠気がとれそうな言葉だね」


いよいよ、ボス同士の交戦か。


「ところがね、僕はお前の幻に興味はない。あるのは、キッス様が好きだという純粋な気持ち。彼女のために戦ってやる。それだけだ」

「じゃあ、君は彼女達が僕に壊されるのを阻止する勇者的な立ち位置を気取るのかい?」

「いいや。……キッス様達を壊すのは僕達だっていう、ゴブリン気分なんだけどね。自分の獲物を奪われる事が我慢できない雄はいるもんだろ」


邪悪なオーラが両者に沸々と沸きあがる。フーロンもやる気になったのか、ゆっくりと起き上がる。そして、アセアセやアユチャン達に念波を送るように手を翳した。その力は自分がネット上からかき集めた信者達の妄想力、願望。



「ふあぁっ」

「おおおぉぉっ」


応援されている。期待されている。そんな事かもしれない。だが、それが力になるのも事実。

アユチャンの増殖も、鬼武の剣術も、マリアの編集能力も……いずれも強化されて、ブルーマウンテン星団達に襲い掛かった。

特にリヴォーア達の被害は酷く、あと少しで突破されそうなところ。ミガミノウも鬼武の剣術に身体をやや斬られていた。


「あんまり、ナメないで欲しいぞ。スリープハンド」

「ん?」

「お前の妄想の信者ってさ~~。自分を若いと思ってる、中年共が多いだろう。独身ばっかで、女との経験を妄想でしか測れてない連中」

「…………」

「冴えないところは同じだけど、ウチは本気で今日からやるぞ。世界中の女に人権なんて与えない、クソみてぇなハッピーな世界を今日から作っていく」



◇      ◇




バギイイィィィッ


「あははははは、スリープハンド様から」

「素晴らしい力を頂きましたわ!」

「お前達を消せと!」

「願われたのだ!!」


人海戦術+身体能力強化。アユチャンの群れは、狂気の微笑みを見せながら。ついにリヴォーアの身体を圧し折り、その中に隠れていたスリーディーシー達を視界に捉えた。これから猛獣が子羊2匹に喰らいつくように、中へと侵入……。


「いや、お前達が壊してくれねぇと」

「俺達も出られないのが、ちょっとリスクだった」


スリーディーシーとカスタード16。2名の顔には不気味なマスクが装着されていた。そして、彼等の後ろにはタイムカプセルのような、楕円体の代物が製造されていた。

そして、その代物にスイッチが押されるタイミングで入れ替わったのだ。



「ふあっっ!?」

「お前の位置と範囲を解析していた」

「猪野春がシミュレートしてくれたから、この毒ガスからは逃げられねぇぜ」


ジージジジーの位置と、スリーディーシーとカスタード16の位置の入れ替え。やったのは、ラフォトナだ。位置情報を受け取り、それに従っての行動。



ドシューーーーーッ



「!!っ……」


臭いも、音も、煙も、酷いもの。アセアセは直撃を避けても、効果範囲にはおり、膝がついた。

一方で毒ガスの中にいても、特注のガスマスクを装着していた事でガスの効果を受けず。



ベギイィィッ


「ぶはぁっ」


膝をついたアセアセを蹴り飛ばし、さらに毒ガスを吸引させるスリーディーシー。

自らの道具で何かを拘束するときの快感が良い。


「えひゃひゃひゃ」


相性の悪さ。一度、とっ捕まったら能力でも誤魔化しきれない。アセアセが身体の自由を奪われ、衣類も切り裂かれ、痛い姿を曝け出す。そんな彼女に邪悪な視線を向けるスリーディーシーとカスタード16。勝者とはなにか、敗者とはなにかを見せ付けるところで。



「待った」

「おっ……ととと、なんだい?お前さん、自分の妖精が傷付いてることにあーだこーだ言うタイプだったかい?」

「ス、スリープハンド……寝手……」


自分自身を映す幻術ながら、アセアセを庇ったのだ。そして、ちゃんとした指示も生声で届く。


「そこまでにしといてくれ。獲物が違うだろ。こっちに向かってくれ」

「統括の指示もか。分かりました」

「こっちが本物の可能性もあるか(周りの毒ガス効いてねぇからあり得ないけど)」


早期に決着をつけ。ラフォトナのところへ向かう2人。



◇      ◇



格闘技を10年も続けた屈強な大男でさえも、奴の格闘でこうむるトラウマは再起不能に持っていく。

身体を傷つけるのではなく、積み上げ固めた精神を破壊していく。

それがどれだけ恐ろしいものか、今分かる。

ブルーマウンテン星団、最強の爺。


「お前等ぁ、パンツとブラを脱いでおけ」


どんな忠告やねん。


「ヌレヌレタイムの始まりじゃーーー!!LET'S SEX!!」


アユチャンの群れが飛び掛って来ているというのに、ジージジジーは太極拳を放つ構えを作り、応戦。


「死ね、爺っ!」

「ひょい」


バシィッ


「!!」


ジージジジーに向けた拳を弾かれると同時に、アユチャンの脳内に付けられたのは写真のような光景。アバターとはいえ、ここでは書けないようなお恥ずかしい姿がこんな時にイメージされる。


「っ」


無論、そんなことなどないわけだが。アバター故の創作はあり得るかもしれない。


バギイイッッ


顎を拳で撥ね上げられるも、痛みを訴えたり、意識を断ち切るものではない。

敗北女騎士が魔王軍に囚われて、陵辱されるようなイメージがこびりつく。


「ひぃっ」


生まれた隙に鳩尾を蹴られれば、気持ち悪い男達に囲まれ、その身体を全て奉仕するという屈辱。体験していく。

感じていく。

頭に残る強烈な、恥。身体が疼いて震え、行動も思考もままならぬほど。



バギイイィィッッ



「いいいいぃぃっ」


アユチャン達の全てのアバターがその場で倒れ、身体についているイケない穴から血を噴出し、悶え苦しむ。とてつもない屈辱を今に引き起こさせ、さらにここで無様にジージジジーに向ける恥。


「"邪裸乱我じゃららんが"」


アユチャンを絶頂でイカせて、ノックアウト。

圧倒的な数の差を一瞬で引っくり返す。


「さーて、次はお前じゃあ」

「……アユチャンを倒すとは」

「どーいう辱めをされるか、想像しておくんじゃなぁぁ」


マリア・スカーレス。

アユチャンが戦闘中は後ろに篭っていたわけだが、ジージジジーの前に立つ。マリアは手を広げると同時に



ビイイィィィィッ



「おっ」


辺り一面にグリッド線のような物を浮かび上がらせる。

その編集領域にジージジジーもリヴォーアもいる。


「一言。私はお前に近づけない」


空間を操作する類い能力。蒼山スカートラインのそれと似ているものかもしれない。


「ほーー、面白いのぅ」

「貴様は接近しかできない」


マリアの言葉を疑いもせず、ジージジジーはゆっくりと距離を詰めたが、その分だけ動く動作も見せずもマリアは下がっていく。完全に近づけられないと見て、


「儂からもっと近づいてやろうか?」

「言ったはずだ。すでに貴様は近づけ……」



ドゴオオオオオォォォォッ



マリアが言葉を続けようとした時、突然自分の真上から素っ裸な人間が降臨した。


「ま、儂が近づかんでも近づいても変わらんか」


マリアはその人間の下敷きとなり、即死した。そいつにジージジジーは


「HAPPY BIRTH DAY TO YOU」

「…………猪野春か。うーむ、少々記憶を戻すのに時間がかかる」


子供の状態から元の年齢まで一気に成長していく。その過程で記憶なども更新されていく。


「にしてもお前さんも変な能力じゃのぅ、リヴォーア。これの場合、安住って言った方がええんか?」



リヴォーア。大樹のように変化する妖人化であり、その能力は単純な要塞のような大樹になるというものだけではなく、それはあくまで一時的なことだった。

今の身体を犠牲に新たな自分を中で生殖、そして放出するというのも役目。


「……大丈夫だ。記憶は戻ってきた」


新しく生まれた自分は前の自分が決めた場所へ、砲撃をするかのように地面へ降臨させる。それに巻き込まれたマリアであった。

安住が無事、新たに生まれ。大樹となった元の自分は急速に枯れていき、そして、消滅する。要塞並の堅固さに加え、転生に近いことも可能。折れたところで転生ができないわけではない。



「んじゃあ、行くかの」

「ああ。ちょっと、この女の服を借りるわ。素っ裸で寒いし」

「着たいだけじゃね?」



◇      ◇



チンッ


一度刀を抜いたら、また鞘に戻さねばならないが。居合い技術に特化した実力の間合いは、宇多田ミガミノウを寄せ付けなかった。


「腕が少し切れちまったじゃねぇか」

『べろろろーーんっと』


切られた箇所に唾を拭きかけ治してやると舌の妖精、ターンが勝手に動く。

鬼武はゆっくりとした歩みでミガミノウに近づきながら



バシュウウッッ



バスの停留所を居合いで切り刻む。

クールスノーの大雪の余波がこちらにも影響しており、雪道の上を走るミガミノウは



「俺はイケメンが嫌いだ。奥さんと子供を見捨てるような、不倫男は特に嫌いでなぁ。死ねクソ野郎と呪い続けた日々がある」


身体を周囲の色と合わせ始め、透け始める。

そして、ターンはクールスノーの雪をかき集めては取り込んでいく。なんの企みかは知らないが、鬼武はミガミノウの保護色による透明化の弱点を看破した。

身体を透明にするのではなく、周囲の色を合わせるが故に、ミガミノウのいる場所が一時的に写真で言うところのピンボケのような現象になる。


「斬」


その周囲を切り刻み。保護色では隠し切れない致命傷の血飛沫が吹いた。

手応え有り。

追撃を加えんとさらに間合いを詰めたところ。


ガシィィッ


「ひでぇじゃねぇか。俺の胴体をぶった斬るんじゃねぇよ」

「!?」


確かに透明化している違和感は拭えない。それを知っているからこそ、斬られる覚悟でいた。位置が特定できても、ミガミノウの状態までは把握できなかった。

ミガミノウは鬼武の手首をとり、舌のターンが鬼武の首筋に巻きついた。絶対の優位から保護色化を解除していき


「あの女の力を借りたくはなかったが、お前さんが強いんでな」

「!雪が、斬られた箇所を埋めている……」


確かに斬られたが、その瞬間に切断面を強制接着。

クールスノーVSヒイロで観られた、身体の部分をくっつける技術がミガミノウの身体で行なわれていた。

ミガミノウの本当の能力は、ターンが取り込んだ物体の性質をミガミノウにも一時的に身体へ与えるもの。クールスノーの能力の一部を再現したのだ。


「じゃあ、あとは変顔になって死んでいろ」

「!!」


ターンがさらに伸び、鬼武の左耳の中から身体へ入っていく。


「!おおぉっ!?いいっっ」

「耳の奥から出る血は、脳へのダメージだ」


激痛に加え、身体が膨張していく。風船みたいに膨れ上がっていく姿に、鬼武のイケメン面はなくなった。苦しむ姿に恍惚するサイコパスぶり。

そして、


ドバアアァァァッッ


鬼武の体が中から破裂し、ミガミノウがこの勝負を制する。

これによりブルーマウンテン星団の全勝。そして、全員がまだ動かない寝手の方に歩を進めた。メンバー5人が、蒼山の後ろに並ぶ。

そして、蒼山は寝手に向かって言い放つ。


「僕達が強すぎるんだけどさ」

「…………」

「お前達が思った以上に弱すぎるせいでもあるな」

「この結果は僕自身が受け止めるべきかな?」


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