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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第30話『抗争!構想!!戦争!!!涙一族 VS ルミルミ、まで』
90/267

Cパート

………



「……ん……」


くちゅ……むちゅ……


「んん?……」



口の中。……舌のところに感じる、奇妙な柔らかい感触。

頭にほわ~んって入ってくる気持ち。

一体何が起こっているんだと、長く閉じていた瞼を開けたとき……


くちゅ……ちゅ……


「……!なっ……」



ドーーーーーンッ


て、自分の上に跨ってキスをしてくる上半身裸の相手を突き飛ばす。それになんの躊躇なく。むしろ、恥ずかしさ。行為的な事よりも、人物的な事での恥が全身を一気に元気にさせてしまう。



「ぎゃーーーーーーっっ」

「あら、起きたのね。さくらんチェリー!!」

「お母さん!!?なんでこんなところにいて、こんなことすんのーーーーー!!?」



因心界の病院に響き渡る、野花桜の大絶叫。


「んもぅ~~、このお母さんが服を着ないほど忙しい合間をぬって、お見舞いに来ているのに?その声はないんじゃない」

「いつも服くらい着てよ!!この変態夫婦!!なんでお母さんが来るの!!?」

「南空さんにお願いしたのー」


驚きに戸惑い。いや、因心界の病院に来ていることで。秘密にしていた家族の痴態が周囲にバレて軽蔑される恐れを感じる野花。

そんな娘の心など気にせず、むぎゅーっと。服を着てない上半身で娘を抱きしめながら


「大丈夫、大丈夫。今は心配しなくていいのよー」

「お、お母さん……」

さくらんチェリーはよく帰ってきたわ。よくやったわ。……セーシのことは心配しないで。あいつは絶対に帰ってくるから。みんなを信じて……」

「……!……」


目覚めたら母親がいた事で驚いたが、自分がこうなっている理由。思い出してきて、いつものあいつがいない事に気付いた。

それに不安も動揺もしたが、母親の抱擁でその感情が少し軟いでいた。


「…………?」


ドタドタドタ


無事なんだろうか。

その心配はまだまだいくつもあっていて、野花とセーシが確実に守った者達の足音がこちらに近づいていた。それに野花壌が気付いて、抱擁を止めてあげて娘から離れてあげる。



ドーーーンッ


「野花さーーーーーん!!無事で良かったですーー!!」

「病院走るな!気持ち分かるけど」


野花の叫びを聞いて、ダッシュでやってきた表原とくっついてきたレゼン。


「わっ!」

「ありがとうございます!!野花さんと、セーシさんいなかったらっ!!あたし、……あたし達、やばかったです!!」

「野花さんがいなかったら、あそこで死んでたってのに……」


表原は泣きながら野花に抱きついた。

あの一瞬で自分が捨て駒になって、ルミルミを足止めした。最良の選択でも、その覚悟はそうできるものではないだろう。

そして、表原はそんな野花の行為に対して



「ごめんなさい。ごめんなさい。……私、ロゾーちゃんや浦安くん。……飛島さんまでも、助けられてないんです……。野花さんが、頑張ってくれたのに。ごめんなさい……」

「……あの……?ごめん、起きたばっかで……」

「ロゾーは…………俺達が見捨てちまった。飛島さんの死体は東京駅近くで発見できたって、さっき報告が来た」


泣きじゃくっている表原よりも、しっかりとした声でレゼンが。表原だけじゃねぇって事を含めて、野花に謝った。そして、


「って、うわああぁぁっ!!変態裸おばさん!!いたんですか!?」

「失礼な子ね!言ったでしょ!私は桜んチェリーのお母さん!野花壌だって!!」

「手ぶらしながら自己紹介されても、納得できるかーーーーー!!!初対面でいきなり胸掴んで来るしーー!」

「まだまだ成長してない可愛い胸だったわねー。でも、頑張るのよ表原ちゃん」


何してんだよ、この母親はって……野花桜は家族の事を知られて落ち込んでしまう。

妙なあだ名をつけられているし。


「でもでも、野花さんがホントに無事で良かったですーーー!!」

「……セーシのおかげよ。私だって、そんなにできなかったから」

「3日は寝てたわよ。相当、絶頂してたのね」

「お母さんがそーいう事を言わないで」



3日。ルミルミと戦って、東京駅がどうなったか。

そして、今の状況も含めてというわけ知りたい事だ。

表原だけではなく、野花の絶叫を聞いて安心してやって来た者。


「大きな声を出せて良かったですね。絶叫ではありましたが」

「!古野さん」

「あなたが起きたら、ナギさんに連絡するようキッス様に言われておりました。起きて早々悪いですが、私達のご指示をあなたからお願いしたい」



因心界の本部は、涙メグによって魔改造されており。因心界の人間が入っているのはごく僅か。涙一族の勢力が占拠している状況。

ごく僅かという人間は、ナギとカホしか入れていない状況。仕方なく、因心界が抱えている病院を拠点とすることにした。

病院の警護をしているのは録路とルル。構成員達は戦力不足として、多くが不参加。(家に帰っている状況)。現場を仕切れるキッス、粉雪の両名が東京駅の奪還作戦に参加しており、北野川は失踪中。野花に白羽の矢が立つのは当然だろう。



野花が目覚めてから、録路達の招集もかかり。テレビ電話であるが、因心界の本部にいるナギと連絡を取り合う。


「!!」

『おー!目覚めたか、桜ちゃん。ルルを命懸けで守ってくれてありがとう。俺達も、君と同じ覚悟で戦いに挑むつもりだ』


家族を守ってくれたお礼を言うナギよりも、画面にナギと同じくくらいのサイズで映っているメグに目がいってしまう野花達。


『不満かね?因心界の様子を知っちゃ。革新党の壌もいるんだろ?』

『あー。メグはただ動向を知りたいだけだから、気にするな。特に意味はない』

「……はい。こっちは私の他に、表原ちゃん、ルルちゃん、録路、古野さん、……それとお母さんを含めて、6人です。飛島の訃報は聞きました」


現場で使える人材だけをひとまず集めた。

そこからナギの口から、今入手している情報を野花に伝える。この会議をやる前に表原とレゼンから聞いてはいるが、生の声をもっと聞きたかった。



『今。キッス達が東京駅を包囲して、3日が経っている。初日こそはジャネモン達も出てきたが、今の奴等は篭城している』

「奴等っていうと」

『ルミルミ、シットリ、ダイソン、……ヒイロや白岩とかもだな。キッス達が確認する限り、全員いるよ。地下はすでに完全に封鎖したから、頃合を見て、キッス達が攻めこむ……よりも先に。ルミルミ達が仕掛けてくるだろうってところが今の状況』



SAF協会メンバー全員の居場所が分かるだけで、少なくとも安全なところに自分達がいるのは分かった。因心界から派遣されたのは3名、キッスと粉雪、蒼山。


「蒼山さんって役に立つんですね」

「ボロクソな事を言うな。表原……。あいつの能力は、後方支援ならメチャクチャ強力だからな」

「ただの下着バカじゃなくて良かったです」


表原とルルの毒舌はともかく、蒼山も現場で頑張っている模様。


『キッス達と話し合っていてな。東京駅の包囲は、ルミルミが意地で破ってくると想定した作戦でいる』

「包囲を破られる想定だと?」

『ルミルミは俺達、涙一族を根に持っている。あいつの性格は分かってるから、あいつが因心界の本部にやってくるのは織り込み済み。メグが結界やらなんやら張ったのも、ルミルミ対策だ』

『あの赤ん坊は私達に任せてくれたまえ……というわけだ』


早々、時間が経っても性格も本人も変わりはしないだろう。



『東京駅を占拠した時点で、SAF協会がそこで何かを企んでいる。だが、ルミルミは私怨も片付けたいところ。キッス達の包囲は戦力を分断させるためにやっている……ここまでは分かるな』

「ええ」

『キッス達はルミルミだけを一旦通して、SAF協会の野望を潰すために東京駅を奪い返す。革新党やブルーマウンテン星団が、その援護に回るわけだからそっちの心配は奴等に任せる』

「つまり、私達はルミルミ以外が因心界の本部に乗り込もうとする連中を抑えて欲しい……。それが作戦ですか?」

『その通りだ』

『ああ。失敗しても構わん任務だよ。ルミルミ1頭も、他が加わろうと私には関係ないからな』


嫌な事を言ってくるメグ。めっちゃ腹立つおじさんだと、画面外でイライラな顔をする表原と壌。一方でルルは複雑な顔。メグとはぶっちゃけ、顔も見たくなかった。


『キッス達の標的はシットリだ。あいつも突き抜けて強い事を理解している者は、分かっているだろう』

「……うぇぇっ、キツそう。でも、キッス様達があの不気味なナメクジを相手にしてくれるのは嬉しいですね。私、パスしたかった」

「ルミルミ(赤ん坊)を蹴飛ばしてた辺り、弱い者虐めは得意だもんな」

「表原、性格悪い」


シットリは見かけがああなので、表原はホッとした声で毒を吐いたが。録路は真面目に


「あいつが実質SAF協会を仕切っているからな。ルミルミは強いんだろうが、シットリは仲間に慕われてるし、あいつが死ねば総崩れする。その作戦は正しいんじゃねぇか」

『簡単に倒せる相手ではないがな。その辺はキッスと粉雪に任せるつもりだ』

「分断と言っても、粉雪達はシットリとその他を相手どるわけですよね」

『ああ。どーいう分断になるかは、その時じゃないと分からない。だが、ルミルミが1人抜け出し、残ったSAF協会のメンバーと包囲しているメンバーの総戦力は五分と俺達は見ている』


それはちっと甘いんじゃねぇのか。そんな考えと、ちょっとした気持ちもあり


「その計算に白岩とヒイロが入っているのか?あいつ等の強さはシットリと互角かそれ以上だ」

『……俺の娘、キッスをナメるな。粉雪だって切り札の1つや2つ、隠し持ってるし。お前等は知らないだろうが、蒼山ラナ達も異常に強いぜ。ヒイロと白岩を世代の違う俺が、少々見誤っているかもしれないが。その事を録路くんが気にする事ではない』

「ちっ……」

「白岩さんが因心界と戦うとは思えないんですけどね」

「モチベで動く人間だし。あっても、逃げ切ってくると思う。今はそう思うところ」


その2人の心配を組織関係なくしてくれる表原と野花。

やるべき任務は分かり、まだ時間があること。因心界の本部に入れないながらも力になれる事がある。もちろん、任務がないならそれでいいけれど。

作戦を聞き。それをこなすかどうか。指揮権を持った野花が出した言葉は


「ナギさん。メグ。私達は、ルミルミ以外の妖精を相手にします。ですから、因心界本部近くまで戦闘許可をお願いします」

『だってよ、メグ。答えてくれ』

『あー……まぁ。範囲外での戦闘なら頼むよ。本部に入れば巻き込む。私は因心界にも、出来損ないにも期待してないんで、怖かったら病院でも守ってくれ』



◇      ◇


東京駅包囲。

4日目の朝。

SAF協会に動きがあった。


「俺には物理攻撃など効かん!心配を司る、このフィアーに貴様は勝てーーーんん!!」



バギイイイィィィッ



「すまんな。そーいう物理攻撃無効系は、イスケの力で無意味なんだ。手加減も減るから痛いぞ」

『そんな小細工で敗れるようなら、キッスが最強なわけないだろ……かませ犬過ぎる』


キッスの攻撃手段が徒手空拳である事を知った事で、物理攻撃を無力化できるジャネモンが出陣し打開策を狙ったが……。あいにくながら、キッスにはその手の対策は完璧な模様。

むしろ、初めて殴られる衝撃がトラックの突進よりも上回っているんだから、相手が可哀想でしかない。

イスケの言うとおり、小細工で倒そうとするには無理のある相手だ。


SAF協会はこの結果を受けて、完全に手詰まり。



「ふあぁ……あーっ。なんだぁ。まぁ、知ってたけど。大広間に顔を出すかな」



ルミルミが目覚めた時。結局、状況は打破できないまま。それは分かっていたと起きてきて、SAF協会のメンバーを集める。シットリがその間も、待機を指示していたのはルミルミの機嫌を待ったところがあるのは否定しない。

全員はルミルミの招集前から集まっており、人間達は駅の中にあったパンやサラダを食べながらのこと。


「あーんっ」


パクッ


「えへへへ」

「……印……美味しいぞ」

「こーいうのもたまにはいいね」


白岩とヒイロのイチャ付き。

その様子を嫉妬染みた表情で見ているのは、黛とアセアセ。パンを食いながら


「なんなんですか。あのリア厨デカおっぱい女は!あんなイケメンとイチャイチャしてて」

「ヒイロ様の適合者だからって、……あの、妖精の国の英雄に。あのような……サインこっそり貰いましたけど。アピール酷くないですか。私達の目の前でやりますか!?普通!」


妬みで仲良くなることもある。そこに、白岩の心配的な嫉妬。見せ付けたい心がないわけでもないんだろう。一方で、もう1人の女の子であるアイーガは


「いいじゃないですか。そもそも新参2人が」

「良くないわよ、お子様!!」

「そうですよ!アイーガ!!あの伝説的な妖精の国の英雄が、人間の女性とイチャイチャするなんてっ!!」

「ええっ!?」

「朝からあんなイチャイチャ見せ付けられた女子は、みんなイライラするんですよ!!」

「なんでこんなに責められるの、あたし……」


女ではあるけど。小学生を使役しているため、そーいう関心が薄いアイーガ。そんな彼女にレクチャーするアセアセと黛。

それを面白がってか。


「なら、黛ちゃん。僕とイチャイチャするのはどうかな」


気配もなく、背後をとって後ろから胸を鷲づかみ


フニッ


「思ったより、こーいう感触も悪くないよ。形は良いと思うなぁ」

「ぎゃーーー!何いきなり胸触ってんだ、このエロ男!!」


寝手が、その貧しくても悪くないと評価する黛の胸を遊んで楽しむ。お前じゃ意味ねぇーって顔で黛は、暇がてら読んでいた駅内にあった漫画雑誌を片っ端から投げつけて応戦。


「……どーいう本ですか、これ?」

「それはまだアイーガには早い領域かもしれません」


アセアセと気が合ったのも、若干。同じタイプであったからか。

確かにカッコイイ男達がいる漫画なんだが、男だらけで組み合っている理由がよく分からないアイーガ。色んな人間を洗脳し、操っては経験値をも得ていたが。この手の経験は0だった。


「むふー」

「アセアセもこーいうの好きなわけ」

「べっ、べっ、別に好きとかじゃなくて。イケメンが好きなだけで!別にそーいうのは、ちょっとの興味っていうか」

「キャラ変止めてくれない?ようは好きなんだね……」


大人って大変だなって。

人間としての感情が分かってしまう、アイーガ。それと気になっているのは


「ちっ………うるせー連中だ」

「………」

「なんだよ、アイーガ!!こっち見やがって」

「ごめんごめん。いやー、大人しいね。此処野。いつものあんたなら我慢できなくて、特攻して死んでるような気がしたんだけど」

「一言余計だな!!どこの女の態度を真似たんだテメェ!?」



そうイキリ立つ此処野なんだが、アタナを出さないし、暴力的なことを振るう様な態度もとらず。口だけにする。

なんかこいつが一番、白岩の影響を受けているなって。アイーガには分かってしまった。それがどーいう感じなのかは本人も戸惑い染みたものがある。


「あ、そこまで言うつもりなかったよ」

「お前は空気読め!ったく」


フラストレーション。でも、なんか違う気がする。

アイーガ達、お気楽組みはなんやかんやで仲良くはやっていけている。その一方で大人組という括りがいいんだろうか。


『……………』

「………ダイソン。1つ、聞きたい事がある」


ヒイロとダイソンはこの場において、ある違和感を持っていた。

その質問がどーいう混乱を招くかどうか。ヒイロも分かっていて、ダイソンも分かっていたから即答で


『知らない。それは事実だ。嘘は言っちゃいない。お前に斬られたくないぞ』

「そうみたいだな。……じゃあ、みんなに言わないでおく。ルミルミ義姉さんも、みんなと一緒で感じてないようだからな」

『……ただ、ヒイロが思っている事は俺も感じてる事だ』


"なにかオカシイ"


それだけは二人の確かであり、その事に何も言ってこないところを察すると、……。

言うべきじゃない。

アイーガには特に言いたい、空気を読めって事だろう。今は読めているぞ。


「どうしたの、ヒイロ。ダイソンと何を話してるわけ」

「なんでもないさ」


この違和感。それを伝えるかどうかで、戦局が変わる予感をヒイロとダイソンは感じ取っていた。

信頼があってできること。大博打でもあった。



◇      ◇



ピロリロリロ



「内部の状況が分かりました」

『追えない者なんて、ない』


ブルーマウンテン星団、並河全。

彼の妖精、デシーアには対象を付き纏う能力がある。

売れないアイドルがストーカー被害妄想によって、自殺し。妖精として生まれた変わったタイプ。

本体である右手を頬でスリスリとしながら、並河はブルーマウンテン星団のメンバーに内部情報を伝える。



「東京駅、地下3階の大広間にて。メンバー全員が食事をしながら、話し合いをしている」

「全員ってのは、メンバーって事でいいんだな?」

「そうだよ、宇多田」



衛星に干渉し、あらゆる手段を用いて対象者を追いかける。しつこくて鬱陶しいストーカーだといわれると、そのヤバさがよく分かるだろうか。おまけに追いかける存在は早くは動かないが、破壊不能かつ並河以外は感知不能。

私生活の全てを覗き見て、知るためにいるようなこの能力。可愛い女子の様子を眺めるためにはこれほどエグイのもそうないだろう。


「音声が拾えないのがの~……」

「それは妄想でカバーする。ひとまず、中の様子を見れるように」



バヂイィィッ



「イメージの映像化をしなきゃね」


田所翔也の作成したアイテム。ヘルメットの形状をし、その頭の上にいくつものコードが延び、その先にはモニター。並河のイメージを映像化する。ちょいと映りはまだまだ良くないが、状況把握するには十分。



「おおおぉっ、女の子多いじゃねぇか!!妖精中心と言われてたのに、意外だな!」

「こりゃあ、頭を壊してヤる時がたまらないな」

「スリープハンドもいやがるな。羨ましいハーレムを作りやがって」



メンバー全員が女を見つけるや、真面目さが吹き飛んでしまう……。


「まったく、お前達。真面目にやりたまえ!!キッス様に怒られるだろ!」

「統括!!」

「ラフォトナ様!!」


ここで蒼山登場。


「スリープハンドが僕達を苦しませようと、ハーレム作ってリア厨プレイを見せ付けてこようが!!僕達は股からパンツと、上から胸を見られるんだよ!!隣に座ってたらできる事じゃないんだぞ!!イチャイチャすんじゃねぇ!!パンツの柄を教えてやるぞ!!教えられたら、覗く楽しみが減るぞ!!」

「そうだ!!スリープハンド!!俺達は変態だろうが!イチャつくんじゃねぇぞ!!」

「女の子を虐めるなんて、犯罪なんだからな!」

「女子高校生ぐらいの子の胸を掴んでるんじゃねぇ!!あまり大きくなくとも、それは胸なんだぞ!!もう一度言う、胸なんだからな!」

「これ別に向こうから訴えられてないからセーフだしーー!」


寝手にはまったく聞こえてないが、あまりのリア厨変態ぶりを見せ付けられ、猛る蒼山達。

ドンチャンドンチャン、あらぬ方向で盛り上がりつつも。戦況を確認している。

それはブルーマウンテン星団のみならず。



「あの馬鹿共はホントに必要だったのか?」

「中に入らずとも、調べる術はこちらにもあるというのに」


協力とは言え。邪魔としか思っていない革新党の調査部隊。

革新党も独自の手段で東京駅の様子を知る事ができていた。

情報が鍵となるだけに、あらゆる手段でSAF協会の情報を得ていた。

食料の残りなどを考えれば、まだまだ篭城はして来そうだったが。



キュッキュッ


「そろそろ来るでしょ」

「そうでしょうな」



粉雪は自分が持って来た、"とある物"を綺麗に整備する。いよいよ、本格的に戦場に赴くことになる。一方で南空は


「想定通りに来ますかな?キッスの考えですよ」

「面子が読めないのは一緒だけどね。無駄に雑魚と戦って消耗したくはないから、ブルーマウンテン星団に正面を譲った」

「馬鹿にふざけてはいるが。幻。伝説。そーいう伝承を持った連中には、決まってそれだけの価値を持つ。……雑魚は雑魚に任せるのも正しいかと」


馬鹿にはしているが、戦力としては数えている南空。どっちの意味での言葉だが。

せめて、粉雪の邪魔をしないで任務を全うして欲しいと思っている。

情報をこうも見られている事で打つ手がゴリ押しになってくるのは、分かっている。


「動いた!」


相手がとって来るだろう戦略。注意して確認するのは、


「なんでヒイロとダイソンばかりを映すんだ!」

「くぅぅぅー!!フリータイムだったら、女の子のパンツを流したんですけどね!」

「おいおい!というか、ヒイロと白岩が動いたぜ!!報告だ!」

「いよいよ、出番かの」



◇      ◇



正午、SAF協会の打開策がついに行われる。

その少し前の作戦会議から


「シットリ!なんとか作戦考えて!」


どーにもならない状況にルミルミから無茶振りをされているシットリ。慣れていたというより、知っているような態度を見せ


「まずはクールスノーの雪をどうにかしないとマズイ。キッスがいくら強かろうと、送り込まれる事がなければ問題ない」


地雷のように転送される元を切るより、その地雷の位置を特定する方法をとるのが楽か。

クールスノーのフィールドの強さはハンパではない。転送よりも虐殺されるだけかもしれない。

そこで


「雪雲をぶっ飛ばすには、それ相応の力が必要だ。ヒイロ、白岩……。お前達ならできると思っている。それだけでも構わないぞ」

「なーんか釈然としない言い方」

「その言葉に甘えよう。分かった。なんとかしてやる」


道を切り開くことを了承するヒイロ達。


「それからルミルミ様。私はここに残る他ないですが、ダイソンとアイーガの"2名"をご同行してもらいたい」

「!えーーっ!ちょっと、あたしの事だから!あたしだけでいいよ!!」

「ダメです。あなたを危険な目に合わせたくない。本来、私がかって出たいところではありますが。ここを守る戦力として、私がいないとなりません。ダイソン、アイーガ」

『ルミルミ様。俺じゃあ力不足かもしれないが、俺にも借りを返す相手がそこにいる』

「あーっ……私。戦うの嫌なんだけど。ここにいても、あまり変わらないから行こうかな。黛も来るでしょ?」

「引き篭もっているのも飽きたし。ダイソンの借りにも、協力したいしね」


ダイソン、アイーガ、黛の計3名。

ルミルミの補佐に回る。その事に頬を膨らませて、なんか納得できないって感じのルミルミ。


「寝手。お前は正面南口にいるブルーマウンテン星団をやれ。私と此処野は、後方北口の革新党だ。配置を変えてる可能性があるがな」


東京駅の包囲はクールスノーの吹雪が中心となって行なわれている。外の状況など、見えるものではなかったが。シットリにもなんらかの手段で因心界側の配置を知れていたようだ。


正面南口で機を伺っている、ブルーマウンテン星団のメンバー5名。

後方北口の革新党は300名以上の戦闘部隊。全員妖人というわけではなく、銃火器で戦う者の方が多い。


「ヒイロと白岩。余計なことをするんじゃないぞ」

「ジャオウジャンは部下達を集めて守らせてるし、場所は教えてないよ。シットリ」

「するつもりはない。だが、そーいう警戒は必要だな」

「不安だったら、戦ってる間はどこかに身を置くよ。それなら安心でしょ」


シットリの作戦では、駅内の防衛力が手薄に思えるが。ジャオウジャンがジャネモンを産み続け、その多くを防衛に当てていることでそう軟くはない。少々、懸念事項を挙げればヒイロの存在。その彼等も戦場から姿を離れるという条件を出し、安心はとれた。


「俺の担当は革新党かい。因心界に殴り込みの方が気分的には良かったんだがよ」

「因心界の主力ってこっちに集まってるから……」

「逃げたいだけなんだね、此処野くん。弱っ」

「ダサッ」

「んだ!?このクソ女トリオ!!クソガキ!!新入りの貧乳!!それから、デカデカ天然巨乳女!!殺すぞ!」


役目に不満のところ、さらに妙なイジリを受けて怒る、此処野。

それと


「人間が攻めてくるのなら、我々も引き篭もってるわけでもない」

「トラスト」


SAF協会のメンバーではないが、ジャオウジャンの使用人としてトラストがこの会議に参加。とはいえ、発言権などなく意見を聞くだけにしているのはプライドのようなもの。


「邪念を求めて襲うとする」

「邪魔をしなければいい。ただし、私と同じく革新党だ。奴等が次の要だ。私は粉雪とキッスのために、温存はしておきたいからな」


シットリの描き伝えた作戦。各々に役割があり、重要なところがあるわけだ。

こうまでスンナリに決まっていた事に違和感はないのだが、作戦を聞く限り。この中で何も反応を見せておらず、不審な動きをしている者。



「……………」

『……………』


裏で糸を引いているのは、"あいつ"か。


「……作戦が決まったなら、正午にやらせてもらう。みんながしっかりと休息をとってからな」


ヒイロとダイソンがその事を感じ取って、それがどーいう事を引き起こすか。

時間を少しだけ空けさせたのは、色々と不審な点をヒイロが察知したから。

信用ならない。が、それをして見せるのが器だろうか。

それを知ってか知らずか。みんなに反対はない。昼飯とくだらない喋りをして、正午を待つ。




◇      ◇



ザッザッザッ


11時55分。

ヒイロと白岩の2名が東京駅の外へ出てきた。

少し休憩の間に


「印。終わったらどうする?俺はシットリが少しに気にかかっている。あいつの不安を少しでも取り除いてやりたいが」

「ヒイロの気持ちは分かってる。それにあたしも、ちょっと外でやりたい事があるの。シットリがキッス様達と戦っている間に行こうかなーって」

「…………そうか。その方がまだシットリにはいいかもしれないが、無事に帰って来るんだぞ」

「へーき!……それより、粉雪さんには気をつけてね?手加減しない人だよ」

「彼女の場合、加減が下手なだけだよ」


心配事に毒を持って返すヒイロ。白岩のことが分かるから彼女の自由を止める気はなかった。ただ


「なにか、……あたしに頼みたいでしょ?」

「……分かるか。俺もお前の事が分かるからな」


立場も居場所も考えて、ヒイロは今。ここでSAF協会を護る必要がある。まだこの中でも仲間は少ないし、彼等の行動と実力が予想を超えているのを目の当たりにした。

もしかすると、ホントにあるのかもしれない。

それをただ傍観に近いことで良いのか。



「人に会うのなら"これ"を渡してきて欲しい」

「ん……」


長方体の箱。土産コーナーにあった箱を再利用して、リボンを結んだものを白岩に渡す。

中身は訊かなくても、分かっている。


「悩んでるね」

「まだ、どちらに傾くべきか。俺達もそうだから」


今、SAF協会に協力しているのも自分達の答えを出すため


「『愛してる』」


互いの通信機器で連絡をとり合い、妖人化。


「『繋がる力に愛を込めよ!』」


SAF協会と因心界の戦い。

それをするきっかけに、自分達がいるのは


『愛のメタモルフォーゼ!』

「みんなの愛を繋ぐ!"レンジラヴゥ"」


レンジラヴゥもヒイロも、紅く光り輝く大剣を持ち。ヒイロは南へ。レンジラヴゥは北へ。

空の雪雲に向かって、剣を振り下ろした。



「『紅魔聖迅剣』」



ドオオオオォォォォッ


クールスノーの雪雲は2人の剣技によって、東と西へ斬れながら移動。そして、雪は地上に落ちる事無く舞い上がる。



ドゴオオォォッ



雪雲のみならず、蒼山達が張っていたバルーン状のトラップ装置。その多くも2人の剣から放たれる力によって破壊される。

景色は一振りで快晴となり、罠のない道も幾つか見えた。


「さすが、ヒイロくん!これくらいはやれるよね!お姉ちゃんの力を使わせないのは偉いぞ!」

『ルミルミ様、ばさないでくださいよ。俺はあまり速くない』

「飛べるのよね?ダイソン」

「うぅーー、今からでもここに残りたいんだけど…………此処野と交換しない?」


快晴となってすぐ。ルミルミが飛べないアイーガを持ち上げる話となり、ダイソンは黛に乗ってもらう形となる。箒で飛んじゃう魔法少女のような光景。

飛べるかどうかよりも、妙な不安を感じているアイーガ。



ドウウウゥゥゥゥッ



レンジラヴゥが切り開いた北側、東京駅のほぼ正面から空を飛んでの脱出&移動。張り切り効果か、ルミルミの飛行移動は飛び抜けて速かった。シットリ達が因心界や革新党を惹きつけている間に涙一族を始末する。


「あばばばばばば」

「あーははははは!!待ってなさい、ナギっ、カホォッ、そしてぇ、メグゥゥ」

「ルミルミ様ぁぁ!あたし、その前に死にますぅぅーー!!」


腕が引き千切られそうなほどの速度をモロに感じるアイーガ。命乞いも、お願いも、まったく通じない。


「ホントに飛べるのね!凄いわ、ダイソン!」

『……やっぱり。アイーガもこっちにしておくべきだったかな』


少し遅れてダイソンと黛が必死に追いかけるのだが、完全なスペック差で離されていく。

クールスノーの雪雲と吹雪をぶっ飛ばしてから、ものの5分の出来事


「ルミルミとダイソン、アイーガ……それと新入りか?確認できてねぇ奴がいる……って、女じゃねぇーか!!あまり成長しちゃいねぇが、あれは間違いなく女子の胸と尻!!」

「ひとまず、ルミルミの脱出を確認」

「方角は間違いなく、因心界の本部です」


戦場は事前に開いた作戦会議とほぼ同じ。ブルーマウンテン星団、革新党、因心界。いずれの勢力も独自の情報網でそれをキャッチ。

ルミルミとシットリという2大戦力がバラケた事を確認さえすれば、本格的な東京駅奪還作戦のスタート。

東京駅正面に向かうのは、


「行くよ!ブルーマウンテン星団!今日は伝説を作ろう!!」

「おおおぉっ!!」


蒼山の率いるブルーマウンテン星団、合計6名!

対するのは



「これで誰にも邪魔されない、僕と君との勝負だ」

「ちょっと!そんな事情をどうして今教えたんです!?寝手!」

「役目が終わったからだよ。さぁ、スリープハンズ教団。信者達、ここに集いなさい」


寝手とその妖精、アセアセ。

さらには彼等が率いる謎の組織、スリープハンズ教団。合計人数、……不明!?

正面での戦いながら、因縁の組織同士の対決。

一方。



「革新党、出るわよ」

「はいっ!!」


東京駅裏口に向かっているのは、粉雪の率いる革新党。粉雪の指示の元、大幹部である橋下明太と遠江タチサラの2名。そして、彼等の部下合計175名。

対するのは



「楽しい殺戮ショーになりそうだぜぇぇ」

「…………相手は革新党か」

「ここにいる方々は個人行動が好きなようですね。困りませんよ」


此処野神月、シットリ。

トラストが率いる、"二十四皇征にじゅうしこうせい"級のジャネモン、6体。


そして、東と西からは1名ずつ。

東は、網本粉雪


「先に行ってるわよ、キッス」


西は涙キッス。


「ああ。先にシットリを捕捉してくれ。私もすぐに向かう」


因心界の最強の2人が狙う相手は、シットリ。



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