Dパート
トンネルの中に流れ込む風は冷たい。
怪物の襲来。その破壊活動に、心を動かす邪念を湧かせる叫び。
大勢の人間が混乱、死亡、意識不明になりつつも。正気のままでいる者達もいる。
ピュアシルバーとラクロによって階段の一部が壊され、舞った埃がその近くで倒れこんでいるカーディガンと長めのスカートを着ている学生服の少女の頭につく。
傍には参考書のいくつか。勉強一筋と思える学生か。
「っ……っ……」
ブルブルと両手足が震えながら、見上げる。穴こそ空いていないが、度重なっている異常現象に正気を保つのがやっと。
薄く、喜んで
「終わり」
理由を付けるには十分過ぎること。
過度なストレスが抜けた瞬間。効率の良いこと、正しいべきことも要らないという結論に至る。死を傍に感じながら、笑う異常者。
悲しい……薄いけど。どうせなら、もう少し。愛されたいものだ。
【勉強をしろ!もっと良い大学を目指せ!!】
【将来を考えなさい!夢はそれからでいいの!】
純粋な子供時代に身に染まったのは、高い希望。欲しいものを自分で考えることも許されなかったこと。友達がいないし、みんなが自分と違っている。
家族の考えと周囲の考えの違いに苦悩し、どこにも居場所は無くなった。
何もかも嫌だったところに、何でも許されるような悪夢だ。笑いが吹き出る。
「あははは」
死ぬ。親の言う事を聞いて、友達の笑顔を見て苦心して。それだけで終わっちゃったよ。
堕ちていく瞳が悲しすぎる。
『手を貸してくれ。聴こえるだろ』
人の声じゃない。自分の心に届いている声って感じ。
『握ってくれ。傍に俺がいる』
助けて欲しいと言う声。なんだ?なんで?こんな状況で助けを求める。
真っ当に壊れた人間ならばその声に気付いても、逃げ出すか立ち止まるか。彼女の心は荒んでいるが、多少の愛については理解を得ており、困った何かに手を差し伸べるくらいはした。
「えっ、箒?」
『俺の名はダイソン。箒の妖精だ。訳ありでお前に助けを求めた』
「ほ、箒が喋ってる!?」
良心は痛まない。それにどうこうする相手でもない。
ダイソンが彼女を発見した時。心に溜め込んでいる邪念の濃さを見て、彼女との契約を果たせば……この状況でもやり過ごせると考えた。
嘘偽りもなく、純粋な契約だ。
『長くは話せない。俺は狙われている、力を貸してくれ!契約を……』
◇ ◇
『お前までもが降りて来たのか、シットリ』
人間界にはシットリやヒイロよりも先に、ダイソンが降り立っていた。
因心界に属している身だが、まだ飛島が子供であったため、フリーに近い状況。ルミルミが因心界から離反した時、それに続く様に不法な手段で人間界にやって来たシットリに顔を合わせたダイソン。
このまま行けば、因心界とぶつかるだろう。
「力を貸してくれ、ダイソン。ルミルミ様の事情を聞くだけでもいい」
『……知らないわけではないが』
「私はそれを含め、ルミルミ様を選ぶ。次に、お前と戦うことも躊躇いはない」
『お前とはもう戦いたくねぇ』
戦力差を理解していても、戦いたくない奴もいる。
そして、これを頼むに辺り
『俺にやって欲しいのは、"裏切り"だろう』
因心界の戦力を大きく削がねばならないこと。
特に、その幹部。"十妖"。
「ルミルミの追跡と捕獲」
№9
涙キッス。(当時)
「聞けば、強力な妖精が傍に付いた」
№5
飛島烈。(飛島の父親)
「ルミルミには睡眠期がある。そこで捕えるのが理想ですけども」
№6
金森祥子。
「にしても、そんなにショックだったのかねぇ?」
№7
村尾月緒。
「口、閉じろ。村尾」
「ルミルミの気持ちを分かってあげないの?」
№1
涙ナギ。(現在、サザンが妖精の国に帰ってしまったため、妖人化できず)
№10
涙カホ。(ナギと同じく)
ルミルミの離反には賛否両論があった。今すぐ、ルミルミを捕えるべきと判断するものと、そうする必要もないこと。彼女を捕えるには、あまりに危険過ぎること。
ナギとカホが動けないため、ルミルミを抑える役割は
「キッス。お前ならルミルミを抑えられる」
「分かりました。父さん」
「飛島と金森達は、キッスがルミルミと一対一で戦えるようにサポート。村尾は、ルミルミが呼んだらしい妖精を相手にしてくれ」
「ま、構わねぇけど」
キッス達が力を合わせて、捕まえに行くことになった。
ナギとカホの戦力的な不在。粉雪など他4名はルミルミとの交戦を避ける意志を出しており、幹部の力で捻じ伏せていくよりも、
「戦ってくれる妖人は可能な限り、ルミルミの捕獲に当たらせる」
300名以上の妖人を投入。
"パートナーを失ったルミルミ"に対して、コレでもかという戦力を出した。
その戦力の中には飛島華の姿もあった。
これが飛島華が経験した、3000人以上の人間を消すことになった戦いの序章。
ダイソンの裏切りと、ルミルミとシットリの強さ故に甚大な被害をもたらした悪夢。
◇ ◇
笑わせてくれるよな。
『変身して、あの怪物を倒してくれ』
「……あたしにできるの?」
どっちが怪物か。
『お前の強さならその怪物を掃える!』
俺達の方であり、人間を滅ぼすために人間と契約するんだ。
気が互いに狂っているのに手をとり合い。
「掃える?なんでも?」
『望み通りだ』
「なら、消したいことがあるの」
今を消したい。
『俺も同じ事を考えている。過去を消したいんだろ。大丈夫、ふざけた能力じゃないぜ』
「……別に期待はしてない。思うのは、思いたくもないこと」
お互い、相性の良いカードを引いたようだ。
『なら、名前をこの契約書に書いてくれ』
「なんか変だね」
女学生の名は"黛波尋"
『波尋。今からお前に授ける名は、"ナチュラルズーン"。あとは意味を唱えば、超常的な力を宿す変身になる』
正式な契約。彼女と一蓮托生を決め、かつてのパートナーとの戦いを挑む。
もし、彼女を失えばダイソンも死ぬ。契約の破棄ももう許されない。
人間を滅ぼすために、人間と正式な契約を結ぶことになるとは。
黛は思い描いた言葉のまま、
「『ナチュラルズーン、映えよ!四季の風!』」
カラカラカラ
体の中から現れた始めたのは、腕の太さぐらいの動いて回るフィルム。それが肘と膝を固定するかのように巻かれた代物。フィルムの中には自分の過去の断片が刻まれている。
映写機の光りと似た光源が頭上から三箇所で黛を照らし、流れるフィルムを消し去る冷たい風が流れ込み。その風が黛を包み込み、ナチュラルズーンへ変身させる。
パアァァァンッ
学生服姿に違いないのだが、一昔前の昭和の香。長いスカートと暑いくらいに感じていたカーディガンだった黛の姿が、半袖とミニスカの夏仕様にしては際どい感じのセーラー衣装になる。
胸元で谷間も作れるほど少し胸も膨らみ、露出度アップになっている妖人化に
「趣味悪くないですか、妖精さん……」
『そうか?人気の変身だぞ。意外な事言うけど、俺はかなり良い部類だぞ』
胸にルビーが埋め込まれたリボン。手には白いグローブ。
太ももも強調させつつ、真っ白で美しいニーソックスとハイヒール型のブーツが装着。
スカートを抑えなきゃいけないくらいの短さ。
胸のスマートさにコンプレックスはあったが、膨らめばそれだけ気にもなる。
綺麗な口紅も塗られた大人の雰囲気。
妖人化した姿にナチュラルズーンはたった一言
「エッチ」
『なんでその反応!?』
憧れちゃう大人の女性の魅力~~~。そんな雰囲気を
「モテない男子が考えそうな、理想な女学生のイメージを植えつけられた変身な気がします」
辛辣な言葉をもらす。地味も派手も色々あるが、
「なんていうか、その……。冴えない上に結婚もできない、仕事もできないおっさん達が考えている女子高生のイメージを出している感じですね。古臭いのも、時代に取り残されている感じです」
『ちょちょ、辛辣過ぎない?』
だが、だべりはもうできないようだ。
揺れて動く駅の中。地響きと共に
ドゴシャアアァァッ
上の階の床をぶち壊して、降り立ったのはラクロ。その上に乗るのはピュアシルバー。
「……ダイソン」
『ナチュラルズーン。あいつが全ての元凶なんだ』
ようやっと、面と向かって対峙した。ピュアシルバーとダイソン。
戦闘経験もなく、契約をしただけのナチュラルズーンにはどう考えても荷が重い相手。
『俺に戦う力が沸いた。だが、あいつに勝つには俺1人で戦う必要がある』
力を貸して欲しいから、身体も貸してくれとの要求。
『体はあとでしっかり返す』
アイーガの完全洗脳ではない。だが、そんな保障はどこにもない。聞こえてはいるが、ダイソンの重なったやり方に不安を覚えているのも事実。
「えっ、ちょっと……」
不正な契約か否かは、判断がとれないが。
妖人化したばかりでぎこちなさを隠せない。どー手段を変えようが。構いやしない。
ピュアシルバーは左手で右手首に付けられたリードを握り締め、右手の中指はダイソンに向けて立てる。彼の下にいるラクロも凶戦士のような表情を出し、
「貴様に生きるも死するもさせない……何千回と殺してやる」
歳の差はそこまでなかったが、ピュアシルバーの殺意はおぞましく。混乱に陥る状況をより暗くさせ、
「ひっ……」
ファックユーポーズだけじゃない。この目の前にいる怪物と、従わせている人間は言葉異常に残酷な事を平気でやりかねない。
腰が抜けそうなところを支えてやったのは、ダイソン。箒の先が地面に刺さり、ナチュラルズーンを支える。
『悪かった、初めから俺がやる』
「!」
瞳の影が濃くなり、光を失った目になるナチュラルズーン。
意志が不安定ならば、隙を突けばすぐに身体を我が身にできる。
箒を手に持ち、居合いのような構えをとってピュアシルバーを迎える。ナチュラルズーンの口を操って
「"飛島華"。俺を殺す権利は、確かにある。実力はまだまだ足りんがな」
復讐者を返り討ちにする。それも、ただの復讐者ではない。
ピュアシルバーが殺意に満ちていながら、意外過ぎる言葉を告げる。
「……誰だよ」
あまりにも。とても。
残酷な状況で生きた人。
「飛島華って………誰だ?」
それを本人の口から言うのだ。
◇ ◇
ルミルミの因心界離反。
その後、捜索と捕縛を行なうために動いた因心界。ルミルミは高速移動を行なうが、長期戦の逃亡戦となれば数と時間がモノを言い。ルミルミの致命的な欠点、睡眠期に持ち込みさえすれば、捕縛は容易である。
戦うことは覚悟しているが、大勢は時間稼ぎを。ルミルミの居所をすでにキッチリとさせることで役目を果たせる。
「まずはルミルミを捕捉。それからが本番だ」
因心界の№5。
飛島烈が率いる妖人達は、その調査に長けていた者が集まっていた。
飛島一家は彼に預けられ、家族全員でルミルミの調査を行なっていた。
「ルミルミは様々な生物を生み出すことができる。不用意に近づきすぎてはいけない」
最大の警戒でルミルミの調査を行なっていた飛島のチーム。
飛島華も、調査する者の護衛として役割を与えられていた。
『…………』
ルミルミの強さを知っているダイソンにとっては、今は単純な戦闘力を持つナギやキッス、粉雪よりもこの情報を担う面子を消すべきであると判断していた。
組織の厚さが異なる。
『…………』
シットリがいてもできない事。ルミルミでもできない事が、今の自分にできる。
因心界のままでいる事に正しさがあるのかもしれない。人間としてならば……。
だが、自分は妖精だ。
納得できる者、同情する者、怒る者。色々有る立場。
人間達がそうして抑えようとしているのなら、妖精としての反逆も必要だ。我々は道具ではない。
メギィィッ
「……!?だ、ダイソン……?」
飛島華と契約した時。まだ、彼が幼かったことで本当に全ての契約に了承を得たわけではなかった。ダイソン自身も、シットリと同じく、ルミルミの弟子の1人。力を抑えることで幼少期の飛島華とのパワー関係を五分としていた。だが、その制限をこちらから解除し、あわよくば飛島華の体を乗っ取ろうとした。
『人と妖精。そう上手くいかないな。飛島、お前とは楽しかったぞ』
「!?ちょ」
『成長を見守る事が、これほど嬉しいと思った事はない』
ルミルミがどーしてその行動をとったか。
妖精と人間が本当に異なるというのなら、見せてもらいたい。
「っ」
身体の自由が奪われ、自分も周囲も理解ができないまま。
「華!しっかりしろ!」
「に、逃げて!父さん!止めて、ダイソンっっ!!」
右手に握った箒を振り翳し。
ガリイイイィィッ
自分の父親を真正面から、ダイソンの力で消失させた。その突然な出来事に飛島自身もその周囲も、心を失うものになる。
飛島本人の動揺に付け込み、完全に肉体を支配するダイソン。口を操り
「ルミルミ様の悲しみを受け止めて、……果たして人間はどうするのだ?」
母親も、姉も、妹も
「華から離れなさい!ダイソン!」
「身体を返して!!」
「どーしてこんな事をするの!?」
怒りを交えた混乱。しかし、肉親を操られ手が出ない。言葉だけの応戦。
「人間の出方を見る。それだけだ」
そんな間を狙い、絶対の優位から翳される攻撃は。
ガリイイイィィッ
母親も、姉も、妹も無慈悲に消されていった。
家族を自らの手で殺させ、さらに近くの仲間までにも攻撃をさせる。肉体を操られるも、心臓に電気ショックを喰らったみたいな衝撃の数々は、意識を無理矢理に呼び起こされる。
心の中で叫び、体をとり返そうとする。
『止めてくれ!!止めてくれよ、ダイソン!!』
見えない心の壁を叩き続け。ダイソンから肉体を取り戻そうとする。
悲痛な叫びでダイソンの行為を訴える。
『母さんも、父さんも、姉さんも、妹も!!返せ!返せぇぇっ!!みんな返せぇぇっ!もう止めてくれ!!ダイソン!!』
発狂的な邪念が身体から噴出し。徐々に飛島の姿がジャネモンのような怪物に変化し始める。怪物となって、妖人だけでなく住民にまで襲い掛かる化け物。
『許さないぞ、ダイソン!!』
これが3000人以上の人間を失った事件の一幕。
ダイソンの裏切りによって、飛島は操られ、ジャネモン化。自分の家族を含め、大勢の人間を消し去り、殺した。
そして、ダイソンだけではなく。
「な、なんだ。このナメクジ野郎……。レベルが違う!」
「こんな強い妖精が、ルミルミ以外にいるなんて」
「ルミルミ様に危害を与える奴等は、俺が許さん。因心界、人間共。お前等を必ず、根絶やしにしてやる」
怪物シットリが、"十妖"№7村尾月尾と、№6金森祥子の2名を戦闘で殺害。
因心界はこの事件による敗北によって、半分もの"十妖"を失ったと言えた。
ダイソンとシットリ。この2名が、ルミルミの部下であり、忠臣と見なされる。
ほぼほぼ、完敗の内容ではあったが。
1つだけ……。
「飛島……。お前の家族と、その仲間達は死んだ」
涙キッスがジャネモンとなってしまった飛島を倒して、救ったことである。
意識と自由を取り戻した飛島華であったが、その意識は虚ろに染まっていて半植物人間状態になっていた。今はベット上でただただ言葉を聞くだけでしかなかった。
「ダイソンがどうしてお前を残したかは分からない。私がお前を助けられたのも偶然だ」
キッスの言葉に返せるものは、今はなかったが
「半分以上もの幹部が戦えなくなった因心界だ。この機にルミルミ達が準備を整え、いずれ全面戦争をするだろう。ダイソンを知っている者は欲しい。奴に恐れない奴が欲しい」
自殺しかねない精神に、わずかに宿っていたのは復讐鬼のような心。
時間と共に自殺する心から復讐する心になっていく。
姉と妹を、両親を、殺して……。他の仲間を、住民も……。
自分のパートナーは殺した。
「っ……」
自分の信じてたものに裏切られ、愛されていたものを失って。それでも死ねなかった今の自分は……一体……。
「ね、姉さん……」
姉はもうすぐ20になる。まだ自分には分からなかったけれど、色んなファッションに興味を持っており、異性との付き合いも始めたらしい。
妹はそんな姉を見て、真似るようにしていた。
母は姉達にそーいう手ほどきを教えたり、父とのなり染めを教えてもらったり。
自分はそんな家族をずっとずっと見ていた。
みんながやりたかった事をやりたかった。家族ができなかった事をしてやりたかった。
そして、それは自分も。俺のやりたい事をしたかった。
ガーーーッ
「…………こう、だったかな?姉さん」
立ち直るきっかけは色々ある。
消えた家族を忘れぬよう、その者達の事を覚えている事を真似る。忘れてしまえなんて、できない。したら、僅かに残っているこの自分が死ぬ。心臓が止まるとか、脳が止まるとかじゃなく。自分が死ぬと、分かっている。
姉の残したワンピースを着て、自分の姿を捨てて、心を立て直した飛島華。それ以来、自分を姉や妹に見立てるように女装をし、生活をし始める。名前もたまたま中性的だったことで、自分の性別が不明のような状態で因心界は出迎えてくれた。
肉体は消えても、魂は消えても、その思い出を引き継いでみんなを因心界にいると思いこむ。
そうすると、どこにも自分の姿がいつもの日常にはいなくなった気がした。
飛島華は、気付いていた。あの時、飛島華も死んでいたんだ。
ずっとずっと……。およそ2年近く。
死んでいた。
クンックンッ
「はぁはぁ……くんかぁっ、飛島ちゃんの匂い。匂いのするパンツぅぅっ」
女装してからのこと。周りも彼がどーいう性別で、どのような境遇があったか語られない。故にあるトラブルが起きた。
「飛島ちゃんのパンツぅっ、穿き穿きぃ~」
飛島の部屋に不法侵入し、パンツを漁って、舐める穿くの超変質行為を行なう奴。1人しかいないだろう。蒼山ラナの因心界加入の時である。
大胆に奴は、飛島の部屋に潜入し。彼の女性物の衣類を身体で弄んでいた。その時、
ガチャッ
「!!な、な、何をしている!?」
「ぎゃああ、飛島さん」
蒼山は驚きつつも、実はパンツが犯されている事で、慌てふためく顔を見るのが好きでもあった。変態性もどM性もある中。
「私は男だぁぁっ!!何してんだああぁぁっ!!」
「へああぁっ!?」
まさかのカミングアウト。いや、飛島からすれば女装する男の衣装に、これでもかという変態行為をする男がいたら。勘違いでなくても、ドン引きである。
飛島はすぐに蒼山を床に叩きつけ、マウント体勢。
「気色悪いぞおおぉっ!この変態眼鏡!!」
「ぎゃあああぁぁぁっっ!!」
飛島は蒼山の顔面を殴る殴る。殺す気で殴りまくる。顔を物凄く真っ赤にしながら
「キモイキモイキモイ!!お、お、俺の服を嗅いだり、着たりしやがって!!」
「おえええぇぇっ!?なんで、飛島ちゃんが男の子……!?じゃあ、僕は男の匂いに興奮していたのか!?嘘だああぁぁっ!!」
これが飛島と蒼山の出会いであった。なんていうか、ごめんなさい。
その後も、蒼山はあんなに可愛い飛島を男とは絶対認めず。まさかの大胆発言。
「一緒に風呂入ろう!!そこで確かめてやる!君は女だ!!違ったら、軽蔑する!」
「キモイ!!お前、その気持ち悪さはなんとかならんのか!!分かったよ、入ってやるよ!!」
女装をしてからの因心界で、初めて自分の性別を自ら話したのは蒼山だった。
その日の内に、一緒に男湯に入るほどだ。
チャポン
ぶくぶく……
「お前、身体も汚いな。蒼山……湯船に顔をつけるな!行儀が悪い!」
「なんで君。男なんだよ。華って、女の子の名前じゃん……」
「"華"の名前は、父が『美しい』を一文字で表したかったからだ!家族全員、名前は一文字だったんだよ!お前こそ、"ラナ"ってなんだ!?女みたいな名前じゃないか!」
「!ああ、……それはねー。色々あるんだ」
「ふん!くだらなそう!」
「くだらなくないよ!!」
出会いは最悪だったが、新たな出会いが自分を発見する。




