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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第28話『エクセレントチェリー VS ルミルミ!ピュアシルバー VS ダイソン!!』
81/267

Aパート

ルミルミの出現。

東京駅、超警戒避難体制。



ブロロロロロ



そこからは避難する車達とは逆に向かう車。

後部座席で寝転び、クッキーを食べているのは網本粉雪。



「まったく……」

「あの。そーいう怠けた姿をしないでくれません?」


一方で、運転しているのは白岩印だった。


「そろそろ東京駅に。具体的にはみんなが逃げているところにですね」

「分かってる分かってる」


そう言いながら、袋を車の下に捨ててしまうクソぶり。掃除が困るだろうと、白岩は言いたげであった。

因心界専用の車であり、それは救急車やパトカーと同じく、優先的に道を空けさせてくれる。



「!見えて来た。戦闘ですよ」

「え~~、めんどくさぁ~」


胸を揉みながら、出たくないという顔をする粉雪。

車は目的のところまで着き、降りる2人。



ガチャッ



野花が突破口を開き、数人生き残った妖人達が先頭を走って、避難に迅速を尽くしていたわけだが。それでも後方からジャネモンの追撃は来ていた。

そんな絶体絶命の時、正面に現れたのは因心界。



白岩印と網本粉雪。



「粉雪様!!それに、白岩も!!」

「助かった!!」


まだ、因心界の内部はゴタついていて情報は確定ではなかった。それに


「あーぁ。じゃ、やろうか」

「そうですね」


粉雪も、白岩も何か様子がオカシイ。そんな違和感を感じると、足は止まりだす。何かオカシイ。


「……待て、白岩は因心界を抜けたはず……」

「なんで粉雪様と一緒に……」


バレるだろうって分かっているし、目的は足止め。そして、完全なる封鎖。


「ジャネモン。あいつ等をやりなさい」

「残念でした~~~」


現れた粉雪も白岩も、仲良く2人でスマホからジャネモンを召喚し始めた。野花が開けた突破口も、こうして塞がれてしまう。


「じゃね~~~」

「な、なんで粉雪様と白岩が……ジャネモンを出してるんだーー!?」

「どーいう事だーー!?」


ジャネモン達に取り囲まれ、逃げている者達は一気に蹂躙されていく。その様子をのほほんとした表情で見つつ、襲われる住民達を無視して東京へと歩いて向かう……。


「あーもー、疲れたー」

「まだ10mも歩いてないですよ!!」

「幻術解いちゃうね」



パァァァァッ



粉雪と白岩の姿が徐々に解かれ、現れたその姿は寝手食太郎と、その妖精であるアセアセ。


「おんぶして」

「嫌ですよ!恥ずかしい!!」


仕方なしに手を引っ張って、東京へと向かうアセアセと寝手。


「シットリってば~。人使い荒いねー」

「いや、寝手のやる気のなさが問題ですよ!!それにシットリ先輩より、ルミルミ様のご勝手が問題でしょ!?」

「それ一理あるかも……」


ルミルミを心配し、シットリがすぐに2人に面倒を見るよう通達した。


「で?シットリは何をしてるの?ルミルミ様、東京駅に現れて暴れてるのに……すぐに向かってもいいじゃないか。なんで僕達に行かせるんだい?」

「知りませんよ!野暮用って言っておられました!」


ルミルミが危険な目に合っているのに、それを部下や仲間に押し付ける辺り。やはり、シットリもルミルミの実力を疑っていない。


「……ふーん」

「なんですか、寝手!その顔は!」

「いや、別に……やっぱり、シットリがいるといいねぇーって」

「本人いないですけど!?」


シットリの事だ。あのキレ者がこんな時、一目散に駆けつけないのには本当の野暮用なんだろう。色々とやっている妖精だ。なにを企んでいるか、分かった時が楽しみだ。


「ところでアセアセ。なんで白岩に化けたの?」

「え?そりゃあ!ヒイロ様がSAF協会に来たのですよ!まだお会いできてませんけど!!白岩の姿になってれば、抱きつかれたりしないかと……っ!!」


"聖剣伝説Ⅱ"の大ファンであるアセアセ。両頬を抑えて、妄想が止まらねぇポーズ。そこになんら嫌な気持ちもなく


「猫臭いアセアセに抱きつくわけないじゃん。分かるでしょ、さすがに……」

「がぁっ!?ちょっとーーー!!寝手ーーー!あんただってなんで粉雪に化けたの!?」

「とりあえず、お手ごろな胸揉みたいから。キッスに化けるのはなんかあいつに悪いかなと……って言っても、幻術だから無いものはないよ」

「にゃーーー!イカ臭い上になんの恥じらいもねぇとこ、腹が立つーーー!!」



寝手食太郎とアセアセ。東京駅に到着。

因心界、革新党、涙一族達の対応よりも早く、SAF協会がその戦力を固めて現実世界にSAF協会の拠点を作り始める。

とはいえ、



「じゃあ行こうよ、アセアセ」

「やる気でねぇとか言ってたの、あんたじゃん!」


急にアセアセを引っ張って、進む寝手。


「ルミルミちゃんが負けるわけないけどさ。もしがあれば、ここで解散かもよ」

「ええええぇぇ!それ困ります!!ヒイロ様にまだお会いしてませんから!!」



◇      ◇



東京駅前の広場……というより車やバスが行き交うターミナルでの戦場。

ジャネモン共も大人しく見守るほど、両者の実力はズバ抜けていた。


「じゃあ、礼に尽くしてあげる」


SAF協会の統括、ルミルミ。


対するは


「ひー、あひぃっ……」

『妖人化しろよ、ルミルミ』


エクセレントチェリー+セーシ。

10数mの間合いながら、剣の届く範囲内。尻上がりに調子を上げていくルミルミに、さらに力を出してみろと。煽り、仕掛けない。

その余裕をぶっ潰してやると、ルミルミが赤ちゃんの妖精とは思えないほど気味悪く微笑んだ。


妖人化には人間が必要だ。しかし、ルミルミに今。"その人間がいない"。

だが、あまり困らない理由がある。

それはルミルミの妖人化としてのタイプが、飛島とラクロのペア。ピュアシルバーと似通っているタイプの妖人化であるからだ。



シュピィンッ



ルミルミの下から青色の魔法陣が現れ、背後には誰かの人影らしきものが映る。

それが彼女の元パートナーの幻影だろう。


「『金色こんじきに輝く月の輪』」


発動と同時にルミルミの体は金色に、魔法陣からは暗闇の煙が立ち込める。ルミルミが放つ光は強く、暗闇でも輝いている。



「『ブライトエンジェル』」


ルミルミが妖人化のために放った光が、魔法陣の暗闇を消し去って完了!



キラーーーーンッ



幼い赤子の天使が一気に急成長を遂げ、少女ぐらいの大きさに成長。それでもエクセレントチェリーとは身長差がまだあるが……。剣を持てる体格にはなり、それに合わせた格好になる。



「さぁー、決めようか。セーシ先輩」


余裕綽々な笑み。


「あなた仕込の剣術で倒してあげる」


ルミルミの余裕とは裏腹に、エクセレントチェリーが気にしているのはその周囲だった。妖人化までさせて、ルミルミに力を引き出させた……というわけではなく



「ヴァーカ……」

『お前がな』



周りへの安全が確証されたからだ。

全力で戦える準備が整ったのは、ルミルミの方でもあり、エクセレントチェリーの方。


「波浪剣」


剣の一振りを波立たせ、斬撃の衝撃を飛ばし、



「うおぉっ」



ガギイイィィィッ


当然奥行きにも衝撃があり、さながら津波の攻撃。だが、受け止めたルミルミはやや後ろに下がる程度。その後ろでは


ガゴオオォォォッ


ジャネモンと建物を波で抉り取った跡を残す。

ビリビリと来る緊張にようやくその自覚を始めるルミルミに、エクセレントチェリーは対照的な表情で詰め寄っている。楽しい、快楽。それらは分かるが、違っている。



バヂイイィィッッ



剣と剣のぶつかり合いだが、その強度はセーシが上回っており、ルミルミが握る剣を欠けさせた。


「っ……作り物でセーシ先輩を止めれるけど、……」

『俺を止めるだと?俺が誰だか言ってみろよ』

「あはは、元最強」


剣を交えた距離で、エクセレントチェリーは上へ跳んだ。押され気味のルミルミが追いかけずにいたが、それは地上にドンと構える間もできず、思考中に繰り出された神速の攻撃であったから。



「落雷刃!!」



ドゴオオオォォォッ



どシンプルに、超高速で上空から頭上に突き刺す剣技。

ジャンプして上から剣で突く。このターン消費が確定しているような、ノロ過ぎる攻撃も。エクセレントチェリーの戦闘力ならば、連撃の1つにはさんでしまう。

完全な防御はできず、左肩に傷を負うルミルミ。反応がやや遅れている。



バギイイィィッ



テメェの土俵で戦う。ルミルミが必死な顔でエクセレントチェリーに反撃を繰り出すも、その動きを簡単に見抜かれ、止められる。

そして、


「液状斬」


ルミルミの握っていた剣が欠けていたところを、さらに高速で斬りつける。その剣術は刃物で斬った跡を生むのではなく、滑らかな表現を完全に表したもの。


ドロォッ


「うっそ……」


鋼鉄を液状化させるほどの剣術。ルミルミの剣をまず、破壊してみせたエクセレントチェリー。


『ルミルミ、本気になるかは勝手だが』

「!」

『俺は本気を出すぞ』


妖精の国、史上最強と呼ばれる妖精、セーシ。その実力は疑うべくもないもの!



◇      ◇



ボオオォォォォ



遥か昔の、妖精の国。

そこには世界中を燃え上がらせる炎が灯っていた。


「もう止めてくれ、セーシ」


旧友の言葉を待っていたかのように、剣は向けられる。


「ふふふ、ようやく戦う気になったな。俺はお前の強さを認めている。だから、俺とどっちが上か。勝負しようぜ」

「その戦いのためにこの世界を滅ぼす気か」

「お前が俺との戦いを拒否したからだ。それにこっちの方がいいだろう?お前も、俺を仲間と思わずに強さを向ける」

「…………ああ、そうだな」


セーシ。史上最大の戦闘狂として、妖精の国で恐れられたのは。彼が一度、たった一頭の力で妖精の国を滅亡に追い込んだからだ。

その滅亡を阻止した仲間は、



ズパアァァッ



「っ!テメェっ……どーいうつもりだ!!なぜ今、力を抜いた!」

「…………分かっているからだ……だが、まだ見ぬ未来はある。その強さは壁になる」

「……………」

「お前の戦いはまだ終わらない、はずだから……」


セーシの刃に切り裂かれ死んでいった。だが、その死はセーシを止めるには最良であり、彼を死なせないための緩みでもあった。

無論、全力の敬意で応え、それでこそセーシが受けたからだ。

殺すことは決めていたが、もっともっと。強さの限界って奴を越えたかった。が、その戦闘を経緯に考えを始めたセーシ。彼が辿り着いた結論は、罪を償う理由も込めて、封印されることだった。

もし、この自分を封印から解くものがいれば、きっとセーシが望む強さの高みに行けるだろう。

今の時代に自分は、心の中で絶望していたんだろう。


そうして、妖精の国で眠りについた……。



伝説と語り継がれ、眠りについた剣を解放しに行く者が現れる。それは完全に



「伝説の剣だって(笑)そんなもんあるのかねー」

「止めた方がいいよ、ルミルミ姉さん」

「そうだよ。ルミルミ。先生達が近づくなって言っていたじゃないか」

「怖気づいてんのー?ヒイロくんに、サザンもー。男のくせに」

「危険なもの危険だろう」



ノリノリの悪ガキ軍団の手によって、目覚める事となる。

ともあれ、優秀な妖精達3名。現実から見ても、そー言われる妖精3名は自分の実力を疑うことなく、セーシが封印された土地に踏み込んだ。

危険な怪物達が巣食う場所でも、ルミルミ達は難なく撃破し、進んでしまう。あれよあれよと進んで、辿り着いた聖剣の眠る地。


「ホントに聖剣が刺さってる。伝承の通りだ」

「でも、サビちゃってるね。仕方ないか」

「抜いてみよっか!もしかして、襲い掛かったりして!」

「うわぁっ!もうルミルミ止せ!」

「大丈夫大丈夫。どーせ、ちょっと強い程度でしょ。私達って無敵じゃん!」


なまじ強かったルミルミは、そこらへんの怪物に毛が生えた程度だと慢心しており、セーシの封印を解いたのだった。


「…………俺を起こしたのは、お前等か」

「聖剣が喋った!これが妖精、セーシ!凄いパワーを感じる……!」

「わー!面白ーい!ねぇねぇ、あたしの剣にならない!?」

「る、ルミルミ!失礼だろう!この方が聖剣、セーシさんなんだぞ!伝承の通りだ!」


確かに強いが、セーシが思っていた相手と全然違った。近所にいそうなガキ共が、この封印を解きに来た。メチャクチャ強い怪物共が巣食う山に封印してもらったのに、いつの間にか平和になってしまったのかと思ったが……。


「……ほう、減らず口を叩くだけの実力はあるようだな。クソガキ共」


ガキにしては、確かに優秀な力がある。この山を昇れるだけの資格は確かにあるとみた。


「果たして、お前等に俺を振るう権利があるか。試させてもらう。特に口が生意気な奴は覚悟しとけ」

「ふーん!やってみろっての!」

「ええええぇぇぇっ」

「ルミルミ姉さん、相手のオーラがヤバイですけど!」


セーシ VS ルミルミ + サザン + ヒイロ。



現実でやったらとんでもねぇバトル。

ルミルミ達がガキの頃ではあったが、


「ぎゃああぁぁぁっ!ごめんなさい!生意気な口をして、すみません!」

「い、命だけはとらないでください!」

「参りました……」


肩慣らしにもならず、3人をボロボロのギタギタにしてしまうセーシ。世界を滅亡に追いこんだ妖精が、そこらへんの子供妖精に負けるわけもない。


「分かったならいい」


とはいえ、子供レベルに自分の封印が解かれる辺り。殺すには惜しい存在であり、自分もこの封印で寂しさの辛さを感じた。

勝利者の権限的なもので


「ヒイロと言ったな。お前、俺を持ってけ」

「え!?」

「それとサザン、ルミルミ。お前等、特別に。俺がビッチリ鍛えて、強くしてやる。才能だけ見ても十分お前等も高い」

「えええぇーーーー!?」

「よーし!あんた以上に強くなって、リベンジしてやるわ!」


自分がヒイロの剣になり、サザンやルミルミといった存在の師となる事を告げた。今の妖精の国は昔よりも成長しているが、まだまだ自分がやるべき戦いにはない事は感じた。そんな戦いを前に、出会った妖精達と交流を深めるセーシ。

自分の強さがなんのためにあるか。

ただ無闇に振り翳すこと、その強さを更生に引き継いでもらうこと、取り返すため、護るため。色々とあることだろう。



"時代に託す、相応しい強さ"

"そうして、立ちはだかれ"


セーシは封印の中でかつての仲間殺しを思い、待ち続けていて、まだその思いのままにいる。



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