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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第27話『ロゾー編!東京駅襲撃事件!ルミルミの生殺与奪!』
79/267

Cパート

ブロロロロロロ


野花が運転する車には、表原、ルル。そして、浦安の4名が乗車中。

向かう先は……


「東京駅へ行くのに、車を使って悪いわね」

「……ふん」


浦安はマジカニートゥの力によって、肉体を完全に治癒させてもらった。手に入れた自由で望んだことは、東京駅でやっているグッズ売り場。


「まったく、子供ですよ!浦安さんは!」

「いや、お前も賛成してただろ?」


レゼンにツッコまれる表原。外出の許可をもらい、一緒に行きたい場所に東京駅が候補に挙がった。なんでも、オタクほどではない。ファン層レベルの人達、ゆかりのグッズショップがあるらしい。

表原の家を訪れ、彼女が大事にしているような物を見つければ、オタクのような重傷的なものではなく。あくまでファンレベルのこと。これからやろうかなってレベルで


「今、東京駅でキャラグッズがあるんですよ!ストラップとかスマホケース!ネットで買おうと思ってたんですけど、お父さんが五月蝿くてー。病院を指定するのもなーって」


関心を持つのは良い事だが、ほとんど物欲である。

キャッキャッとはしゃぐ表原にルルも、野花も少々呆れている。まぁ、そんな物欲を釣って外に出たのは浦安。そんな彼も多少の物欲はあるらしい。だが、表原のように表に出すようなものじゃない。コッソリと隠れて楽しんでいるタイプ。自己主張は薄い。

そもそも、情熱的なものでやっているとは思えない。


「………気持ち悪い」

「な、なにをーー!!」

「そんなもんを集めて何になるんだ?自慢のためか?」

「五月蝿いなー」


人と一緒に行動するなんて、いつ以来だろうか。周りが全員女性というのは、人生初めてのこと。

助手席に座らされ、興味や関心を見せない浦安。

考えている事が、自分自身も分かっていない様相。周りに流されつつ、周りを嫌っている。掴みどころがないというより、掴むものすら見えて来ない。外の風景が変わっていくことをほんの少しだけ、羨ましいと思っていた。



駅に入り、複雑に入り組んだ中を4人で行く。少々迷ったが、表原が行きたがっていたお店に到着。アニメや漫画グッズを売っているところ。とはいえ、家族連れや友達連れで行く感じの雰囲気で、表原自身初めて訪れた。


「友達いなかったから、こーいうところ来れなくてー」

「あたしはそーいうの好きじゃないんだけど……」


ルルと一緒にグッズを手にとって、語り始める表原。友達って感じに思っている事に嫌な気分はないが、ルルにはこーいう不真面目というか遊ぶ気質に慣れないでいた。気分転換は大事というが、今は浦安の護衛の任。緩みっぱなしの表原をライバル視しているのが、どうかと思ってくる。


「ルルちゃんのお姉さんって」


表原がそう呼んだのは、上司としてではなく。相手の家族としての思いやりである。


「漫画とか好きそうじゃない。結構お茶目だよね!」

「んー……」


姉妹を持たない表原にとって、姉妹っていうのは家庭内で一緒にいる事が多いんじゃないかと思っていた。だが、そういうわけでもなく。ルルの場合は……

確かに父親の影響があると思っているが、自分のイメージでは堅物なところもある姉のイメージ。


「ちょっとかな」

「そーなの?」

「父さんはかなりの漫画好きですけど、お姉ちゃんが読んでるとこはあまり見ないから。あたしはその……勉強ばっかりで」



その答えに



「ええーっ、ルルちゃん。それ嫌じゃないの?」

「うーん?まぁ、その。この前に会ってると思うけど、メグさんの罵倒が凄くてね」


身震いまで見せる。幼少の思い出はホントに辛いものばかり。ひたすら怒られないよう歩んで、因心界で生きる事を決めている、ルル。


「それにお姉ちゃんを少しでも助けたいって気持ちがある。だから、あたしが辛いのは少し耐えられる」

「はへー……」


表原も改めて感じるんだが、このルルとキッスの感性は姉妹であるとは思えない。環境の違いを教えてくれる姉妹の思想感。

表原からすると、キッスも父親同様に楽観的な人間性があると思っている。責任感が全面に出ているルルは、母親寄りなのだろうか。

でも、見た目はキッスは母親のカホに似ていて、ルルちゃんは父親のナギに似ている。

血の繋がった家族だと思えるんだよな。



「でも、お姉さんはルルちゃんのことを心配してくれてると思うよ。仲が悪くて良い事なんてないし、傍に近いならなおのこと。なんか買ってこようよ。ここじゃなくてもさ」

「え」

「お菓子とかいいんじゃない?ケーキとか、チョコとか」

「あんたの趣味や好みじゃなくて?……そうだね、お茶の葉でも買おうかな。おせんべぇとか」



表原はフリーダムに動き、それに付き合うルル。そんな2人でやれるのにも、2人の妖精であるレゼンとターメ。そして、野花とセーシが浦安を見守っているからだ。


「抱えすぎだな、ルルちゃん。表原がいい加減過ぎるけど」

『ははは、……あいつは幼少の頃から、涙一族はエリートって看板を背負っているから』

「その"言い方"はちょっと違うんだよな。当たってると言えば、当たってるけど」


涙一族の妙な噂を知っているレゼンだからこそ、そんな言い回しである。

ルルとキッス。そして、ナギとカホ、メグなどの涙一族の血を持つ連中が、特殊な人間であるのは事実。

その中でルルは極めて人間に近いと言える存在だろう。平凡な家庭であれば、良き娘として育っただろうに。努力がそう認められない一流の家系。


「まぁ、いいさ」


涙一族の持つ秘密と、一般人より下であろう表原と浦安が持っている力量には違いがあるということ。

そして、その1人である浦安は


「……………」


たまに目をやっているのは、男子オタクが好きそうなアイドルもの。……まぁ、表原も表原で。女性オタクが好きなアイドルもの目当てでここに来た。

彼女の家族を見て来たレゼンからすると、表原はめちゃくちゃ父親に似ている。超嫌っているけれど、血は逆らえんって事か。

あーいうのが好きなんだろうが、人に言う事はないし。女の前で好きですとか、高らかに言えるわけもないか。



「そー警戒しなくていいんじゃない」


アイスクリームを食べながら、浦安の気分転換と護衛に付き合っている野花。


「あんた等はこの前みたいな怪物と戦うのが仕事なんだろ?」

「一日中、毎分戦ってるわけじゃないわよ」

「怪物が出なくなったら、お前等無職じゃん」

「それもそうね。その時が来たら、平和ってことで。私はファッションデザイナーになろうって決めてるの」


ベンチに座ってアイスを食べる様。


「まさか。気になるわけ?あいにく、好みじゃないんだけど」

「違う」


どっかいけこいつ等って感じなのは分かる。からかっている言葉を少々受けて、視線を逸らす浦安。それでもいいとして、野花は浦安の人としての悪さを指摘する声を伝えた。


「否定するのは構わないけど、なーにも知らない風に当たり構わず言ってるのはどうなの?」

「なんだと」

「言葉にすれば、意味は同じになるのが不思議よね。誰が言ったか、どうしてそう言ったか。顔を合わせたり、自分で考えて理解できること。浦安はなーにも考えてないよりも……分かり合おうとしないわね」


生き方を否定してないし。軽く流して結構ってこと。

相手など要らない、興味ない。そんなフリを続けていたが、その実では自分を理解してくれようとする変わり者を欲する心理を野花は感じた。


「五月蝿い」

「はいはい」


ロゾーという力を手にしても、それはやっぱり一瞬の出来事。

それだけの力を持っていても、何に、どのように。使うかという判断がなく、それがなければ因心界から離れて暮らすなど、笑い事だ。

甘く見ていると、本人も少し思っているが。野花の見た目ではまだまだ甘い。

けど、ここはゆっくりと対話すべきこと。


「表原ちゃんが羨ましいの?」

「はぁ?」

「だって、彼女。たぶん、あんたと似てる……似てたと思うよ。生い立ちは知らないけど、そんな雰囲気はあんたを見てれば察する」



たぶん、表原も気付いている気がする。

抑圧してきたんだろう。



「自信をつけた子が気に入らないんでしょ」

「……あんたも嫌いだ」


上手くいった人間、初めから上手く行く人間。他人の成功や笑顔が憎い。それを心で隠しているつもりだろうが、周りには伝わっていた。

ゆっくり時間をかければいい。そんな時である。


「!」


野花達の方に向かってくる、黒服スーツの団体様。明らかに会社に行くようなサラリーマンではないのが雰囲気から分かり、のんきにお土産を選んでいた表原とルルもそいつ等に気付いて、野花の方に急いで向かった。


「こんなところにいたのか、野花」

「ここは我々の管轄だぞ」


知り合い?と思いきや、一組織内のこと。向こうは顔を知っているからの声であった。


「革新党の皆さん、ご苦労様です」

「……なんだよ、こいつ等」


浦安はやや足を下げながら、この威圧的な黒服達を見ていた。ロゾーも呼んだ。

だが、敵ではない。それを伝えるための情報を教えてくれた。


「今、この東京駅にジャネモンが出ているという報告があった」

「!ホント?」

「誤報かもしれないが、我々も警戒して周囲を調べているところだ」


因心界が手を出すことではないが……。そう言って、去っていた。助言って事だろうか、非難しろって事だろうか。


「ジャネモンがこんなところを襲うんですか?」

「でも、噂は本当かも!暴れる前に倒しましょうよ!」


ルルは言葉を間に受けて、買い物気分をキッパリ払って、ジャネモン退治に意欲を出す。表原は冷静。革新党のような怖そうな組織がいる中でのこと。

SAF協会が来たのか?


「うーん……」


野花はこの3人のお守りでもある。幸い、革新党の方からの声だ。粉雪ほどではないが、自分にも動かせる力はあるし、情報も得られる。


「信じられないけど、調べようかな。キャスティーノ団は壊滅してるし、小さい組織じゃこんなところで暴れるなんて考えられないんだけど」


誤報という線の方が高い。だが、それが真実であり、まだ弱い第一波だとしたら危険なこと。情報を得る上での調査。


「行きましょ、みんな!」

「「はい!」」

「俺は嫌だ」



◇      ◇



ジャネモンが東京駅に出現した?

そんな動きは感じ取れていない。


「なんか、ざわついてない」

『ああ、奴等にしては妙だな』


革新党や涙一族の面々が東京駅の中を、グループごとに割って行動している。その様子を人混みの中に自分を紛れ込ませ、この読めない戦況にいるアイーガとダイソン。

2人はまだ何もしていない。

だとすれば、バレちまったから包囲でもされんのかと思いきや、そうでもなさそうだ。


「どうする、ダイソン。あたし。一人くらい洗脳して、情報を得ようか?」

『止めろ。向こうはグループ行動をしている。それに俺達に気付いている様子はねぇ』


嫌な予感がする……。


『ルミルミ様がなんかやるのかもしれない』

「ええーーーー!?」

『大きな声を出すな、怪しまれる』


気付かれない内に沢山ある女子トイレの個室に入っていく、アイーガとダイソン。


『やりかねない。正直、止めねばならん。場所が違うんだ』

「そ、そうなの!?でも、シットリなら止められるんじゃない」

『あくまで推測だ。でしゃばる必要はない』


様子から見ると、彼等の動きが絶対の自信ではなく。確認しろという程度の情報だということ。ダイソンも本当なら、止めなきゃ行けない。だが、ルミルミの位置を確認する手立てがない。下手に動いて、足を引っ張る可能性もある。

様子見。


『……シットリは何をしているんだ?』


意味もなく、ルミルミを探しているとは言い辛い……。


『ここに篭っていれば、まだ大丈夫だろう。下手に出口で捕まったら面倒だ』

「う、うん」



ダイソンとアイーガはトイレの中で待機。

そして、話しはズレるが。ブルーマウンテン星団は電車で東京駅から離れていた。


現状、革新党と涙一族の者達。

因心界からは野花、表原、ルル、浦安。そして、4人には知らされていないが、飛島もこの東京駅内にいた。

そして、革新党と涙一族。はては東京駅の混乱を作り出している者はただ1人。


「……まったく」


実行していたのは、ヒイロであった。

ルミルミを諌めて東京駅の中を混乱させていた。ジャネモンが出ている噂を流していたのは彼であり、ジャネモンではなく。彼自ら混乱を作っていた。


ルミルミが目指したいのは、東京駅の地下10階に位置する場所。

そこに"ジャネモン"の発生源となる核を埋め込み、この場所から世界に向けて、ジャネモン達を発生させようとしているのだった。



「ちゃんと俺の作戦をするのかな?ルミルミ姉さん」


そこが不安である。

東京駅でやるか?って感じではあるからだ。

シットリは違う場所を選択していたんだろう。ここでは敵との距離が近すぎる。もっとも、ルミルミがそれを納得できない頭の悪い馬鹿だというのも、考慮できる。

ヒイロがルミルミに授けた作戦は至極、簡単な事である。


まず、ジャネモンの出現を噂程度で流し、全組織を警戒させる。

その警戒の中で、ルミルミの力で一気にジャネモンを生産し、東京駅の中をメチャクチャにする。

非常に不思議なもので。警戒通りに物事が進むと、組織は別の警戒をしなくなる。見える対応に対応をしていくのだ。

その隙に予め、道を作っておいたヒイロがルミルミを素早く通し、目的を遂行する。ルミルミが辿り着けばいいだけの事。


重要なのは相手が対応できる程度の量に抑えることだ。これが大事だ。

あまりに多い量、あまりに強いジャネモンを出現させたら、キッス達への応援要請が来るだろう。現場としては、対応できることはその場で対応するものだ。

わずかにラインを上回る程度……。加減ができるだろうか。


「……あ、ダメだ」


空気のひずみを感じ取り、ヒイロは両耳を塞いだ。相変わらず、能力が小賢しいくせに本体が大雑把という変わった使い手だ。



「おぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ルミルミの、弱い邪念を怪物化させる咆哮が東京駅の中を駆け巡った。


「きゃあぁぁっ」

『うおおぉぉっっ!?』



ダイソンもアイーガも、



「ぐぅぅっ!」

「ひいぃぃっ!」


地下3階にいた表原、野花、ルル、浦安にも。

そして、駅の利用者。革新党、涙一族の者達に、この悲鳴は轟いた。

瞬間の悪寒は凄まじく、両耳を塞ぐことはもちろんのこと、地面に膝をついてしまう者も多かった。


「あ~~~~、ヒイロくんもシットリも~、舐めすぎじゃない?……。あたしはさいきょーなんだよ。作戦なんか要らないよ」


あの馬鹿姉……。

そう、口に出したいヒイロの気持ちを力で抑え込む、ぶっちぎりの力。


「じゃね~~~」

「じゃね~~~~」


ジャネモン、総勢。2034体。大小種類とも様々であるが、被りも何体かいる。

東京駅の出入り口だけでなく、周辺をも囲んでしまうジャネモン達。まるで壁のようになるよう、配列させた召喚方法。

多少、馬鹿な頭でも考えたようだ。


「……怖い怖い。ルミルミ姉さん、相当我慢してたんだね」


外を数と怪物で覆い。中を自分と邪念を持つ者達で制圧するつもりだ。

ルミルミという個が現れたのに、それを対応するためにジャネモンと戦う必要性が出てくる。あの数から見るに、外部からの応援に躊躇と選出は長引きそうだ。



「じゃね~~~」

「た、助けてくれぇー」

「なんで怪物がこんなところに現れるのー!」



駅の内部にも瞬時に召喚されたジャネモン。そして、そこから逃れようとする人。事態の把握は困難なものであったが、


「『牡牛座ラームフェザー』」


ミサイル攻撃によって、ジャネモンの数体が浄化され、消し飛ぶ。

涙ルルのハートンサイクルは、ジャネモン達に向かって善戦をしていた。


「逃げて!ここはあたし達がなんとかします!」

「は、はい!」


1人でも助けるべく、とった行動もまた正解だろう。

何が起こっているか分かっていないが、言えることは



「……ルミルミが来てる」


その姿も知っている野花の嫌な予感。


「ハートンサイクル。これ以上、踏み込むのは止めるわよ!」

「で、でも!まだ中に人がいますよ!」

「私達が死ぬ!外の状況も分からないのに、ここで助けられる方法がない!」


野花を除き。

表原のマジカニートゥ。浦安のグランレイ・プルーフ。

妖人化をして、自分の身は自分で守る態勢はできている。


「力がない奴は死ねばいいんだよ!無視無視!」


お前が言うんかいって顔をするマジカニートゥは、プルーフの正論が正しいとは思ってはいて。


「無理です!絶対に外も嫌な予感がする!あたしも死にたくないし!」


早期の撤退が大事と、ハートンサイクルの無茶を指摘した。

事態が変わった。

すでにもう、因心界の本部には連絡がいっているだろう。それはルルも分かっていて、少し耐え凌げば。最強のお姉ちゃんが来てくれる。……けど、それはルルの本音からしたら、望みたくない。


「わ、分かりました」


見捨てる事も大事。だったら、なんのために力があるんだと。

もう少し、自分に力があればと願った。


表原達もこの東京駅から撤退の動きを見せると同時に、革新党、涙一族の面々も。戦場的な時間の流れからすれば、ゆっくりとこの東京駅から撤退を始めていた。

ルミルミ、シットリの2名の存在を感知したら、すぐに場を離れる事が言われていた。まともにやりあって、勝てるわけがないからだ。特にルミルミは策に嵌める方が対処がしやすい。



「本気にならない方がいいよね?」

「"今"は止めてくれ」


正直、ルルの行動を意地でも止めるべきだと思っていたレゼン。

あの咆哮を聞いた瞬間。感じ取った恐怖がどんなものか。生涯初めて感じる悪寒。シットリと出会った時よりも遥かに上だ。サザンの言葉通り、最強の妖精ってのは間違いない。

マジカニートゥの力なら撤退戦は容易な方だが、相手が悪いし。なにより、相手の気配が掴めないこと。高速で動き回れるタイプだと奇襲される。

空間ごと変化させるマジカニートゥの第2段階では、敵にも気付かれるデメリットがある。一度、本気になったら次の能力が使えないのもデメリット。

そーいう細かいところまで理解してはいないだろうが、


「そうだよね。まだカードを切るべきじゃない」


本気になるタイミングを計っている。

成長したなって、関心もある。なんでもできそうに思えて、それは使い手次第だということ。


「あ、あたしの力なら外の様子が分かります!」


声を上げたのはロゾーだった。プルーフはその提案に不満そうであったが、手甲のライトを付けてあげた。


ピカーーーー


「この光で何か分かるのか?」

「地上に向かって照らしてください!上の方に……」


言われるがまま、プルーフが地下3階の天井。つまりは地下2階の床を照らしていくと。


「!上の構造が見えてきた」

「照らされたところが、透けるようになってるー」


なんか新手の盗撮技術かって思えるような光景であるが、確かにこの力なら上の様相が把握できる。救った人達がどうやって外に出られるか。その道を確保できるか。


「やりましょう!助けられる命は助けないと!」


ルルの正義感ある言葉とは裏腹に、戦いをよく学んでいる野花は


「欲張らないことよ、ルルちゃん。相手が誰だか分かってんの?」


自分達が逃げれる手段のために捉える。


「じゃ、先頭をプルーフが行って。ルルは彼を守って。私とマジカニートゥが後列」


先頭をやれなんて、危険過ぎないか。そんな発想が彼にあって


「ふざけんな!なんで危ないことをしなきゃいけないんだ!」

「全員危ないっての。声デカイし……あー……」


状況を分かっていると口にするも、その規模を分かっていない浦安。それを咎めたいが、する暇もない。声を聞いて、ノッソリと通路の奥から現れたジャネモンがこちらを見ていた。ハートンサイクルがすぐにミサイルを生成し、放とうとしたが。

それよりも先に動いたのはマジカニートゥ。


「っていっ!!」

「じゃね~~!?」


改札機に邪念が詰め込まれ、生まれたジャネモン。それを蹴っ飛ばして、自分に注意を引きつける。


「野花さん!ここはあたしとレゼンが、足止めします!」

「ロゾー。しっかりと道を照らしてくれよ」


後ろを守る意味は、殿しんがり

危ないのはむしろ、野花と表原であった。


「ごめんね、マジカニートゥ」

「大丈夫です!一通り、時間稼いでから追いかけます!」


前を走るのも危険であるが、時間を稼ぐ役目は逃げ道を狭めることに繋がる。


「……行きましょう!プルーフ!」


正直、なんで。表原はあんなに判断が鋭いんだろうか。自分と違うはずなのに、あいつの考えはいつも自分よりも上。年下なのに……。妖人として比べたら、もっと差があるのに。

そんな劣等を感じた事であったが、生き延びるべく。東京駅からの脱出が始まる。


ピカーーーー


プルーフが放つ光は壁を透過視させていく。無論、向こう側からは見えていない。


「階段を上がればいいだけだろう!」


そりゃそうさ。地上に出るだけだ。構造が入り組んでても、階段は地下から地上まで繋がっている。ルミルミがそこまで考えてジャネモンを配置しているわけないが、ジャネモン達は独自で人間達を襲うよう制御されているだろう。

そして、逃げ惑っている一般人達が駆け込むのも事実。


「わーーー、怪物だーー!」

「逃げろーー!」

「でもどこにーー!?」


助けた人間達のせいで、脱出が難しいとは……。


「ここには来るな!我々がジャネモンを抑える!」

「別のルートを探せ!」


階段付近では、東京駅の警護に当たっていた涙一族の妖人達がジャネモン達と戦っていた。広い階段だが、ここを切り抜けるのは容易じゃない。一般人を引き連れる形で野花達は別の階段を探すことに。


「なんでエレベーターが動かねぇーんだ!」

「緊急事態だからよ」


ヤバイ。脱出できない。

一般人に声をかけた覚えはないが、妖人達の傍にいようと自分達に固まっている。これじゃあ、強行で上に駆け上がるなんて、難しい。

1つ目、2つ目。……どの階段でもジャネモンとの戦闘があり、その度にそこで足を止めていた一般人達を拾ってしまう状況。早いところ、ジャネモンを退治して欲しいが、……。向こうも相当な数を……



「一転突破しかないです!」

「ルルちゃん……」

「力で強引に、突破しないと!ジャネモン達の侵略が止まりません!」


野花に提案するルル。その声に、涙一族の者達は視線をやり。野花もそれしかないと思っているが、多大な犠牲と突破力が必要となるわけだ。


「私が先陣をやります!!」

「……あなたね。上にどれだけいるか分かってるの?」


プルーフが地下2階の様子をチェックする度に、ジャネモンがところどころに映っている。かなりの数が地下2階にも。そして、地上にもジャネモンがいることは想定できる。

野花が考え始めたのは、革新党と涙一族を纏め上げ、この東京駅の一箇所に防衛ラインを築くかどうか。今の自分でここにいる革新党を操縦できるが、涙一族を纏められるのはナギの娘でもあるルルしかいない。彼女の言葉なら、耳を傾けてくれる。


「粉雪とキッスが来れば助かる確率も上がるわ。それにナギさんとカホさん。あの2人だってそう」


すでにもう何十回も連絡は行っている事だろう。外の状況がどーなっているか、まだ詳しく分かっていないが……。ルミルミの事だ。人質なんて器用な真似はしない。

脱出はできると読んでいたが、ルミルミの力を甘く見ていた。だが、生き残れる可能性があるのはルミルミの慢心から感じられる。



「私はそう信じてる!あなたも、あの最強の姉を信じるでしょ!?」



一転突破で生き残れるのは、妖人ぐらいだろう。走りながら振り返るのは無理だ。ここは広い。周辺のジャネモンを一掃して、みんなを留められるスペースは確保できるかもしれない。

そんな野花の想い。



「……っ……でも!待ってるだけじゃ……」


来て欲しいと思っていても、姉を頼る自分に葛藤するルル。そこに


「ふ、ふざけんな!こんなところに閉じ込もろうってか!お前は妖人化もしねぇくせに!!」


我慢の限界が来たような、プルーフの。……浦安或の本音が出てきた。


「お前等みたいな連中が頼りねぇからこーなってんだろうが!!巻き込むんじゃねぇよ!!さっさと出ようぜ!死にたくねぇ!!」


空気の読めねぇ奴……。そう野花が、怒りそうな時。プルーフは勝手に先頭を走った。そして、ルルも。ハートンサイクルとして能力を発動させながら!


「私だって、やれます!!みんなの道を開きます!!」


階段で戦っている涙一族VSジャネモンのところにミサイル攻撃を放ち、強引ながら道を作り出す。


「つ、続くんだーー!」


誰かが言った瞬間、感染したように階段を昇りにいく。野花も巻き込まれまいと、ハートンサイクル達の後を走り。涙一族の戦闘員達も続いた。



「はあぁぁっ!!」


見えているジャネモンに照準を合わせるハートンサイクル。

ミサイルの形は獅子のデザインとなり、


「『獅子座レオラグーン』」


攻撃と破壊に特化したミサイル。相手を一撃で倒すという気持ちで放った技。



ドゴオオオォォォォォッ



「じゃね~~~~」

「みじゃ~~~~」



ルミルミが作ったジャネモンとはいえ、あまりの数のため、強さも特異さも少ない。ルルの一撃でぶっ飛んでいく。

その横をプルーフとほぼ並んで、階段を駆け上がっていく。


「ははははっ!生き残れるぞおおぉぉっ!!」

「!えっ……」


1階まで一気に駆け上がった2人。そこに映った外の光景は、地下で戦っていたジャネモンとは比べ物にならないほどの数で囲まれていた光景


「じゃね~~~」

「じゃね~~~」



野花が懸念していた通り、包囲が厚い。おまけに自分達が強行で突破した箇所に、人が集中して引き返せず、中にいるジャネモン達も集中して来る。


「あああああぁぁっ、な、な、なんだこの数!!なんとかしろよ、ルル!ロゾー!」

「っ……」


数十体は突破できる。運が良ければをつけて、自分と浦安は助かるかもしれない。だけど、一般人や後ろの人達が切り抜けるなんて事は難しい。

やるしかない。でも、それは……正しいって言えるか?

迫り来るジャネモン達に選択を迫られているところで、



「なにを止まっている!」

「走れ!!道を続けるんだ!」



後続の涙一族の妖人達が、ルルを鼓舞しながらジャネモンと戦った。彼等はすでに死ぬ覚悟を決めて、ジャネモンの群れに飛び込んだ。


「!そ、そうだよ」


やらなきゃ。ここで……。


そう瞬間に再起を心に促した。

反射の瞬間は壁に当たった。

怖気が体に犯されるように、死を感じさせるオーラ。

秒数を数えられるほどよく目に映り、向こうの生殺与奪がハッキリとしていた。


「おぎゃあああああぁぁぁぁぁ」


ジャネモンの悲鳴と同じくらいの絶叫が、戦いを挑んだ妖人達から出されたもの。

瞬間に黒ずんで死んでいく姿を見たルルは心がポッキリと砕けた。

これが……この妖精が……



「ねぇー。大勢引き連れて、逃げられると思ってんの?」



ルミルミ。



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