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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第22話『決戦!因心界VSキャスティーノ団!その1!』
60/267

Bパート

ウイイイィィィンッ


予告より早い攻撃ではあったが、粉雪達もすでに配置についており突入の準備はもうできていた。

ここから突入すると、キャスティーノ団の本部の地下2階に通じている。

地下は3階建ての構造となっており、出入り口となる地下2階を抑えればキャスティーノ団は佐鯨と表原を倒さなきゃ逃げられないようになっている。


「南空、いけるわね?」

「ええ。大丈夫です」


そういって、本人からしたら控え目のサイズとなっているチェーンソーを起動させる。

あんな重そうで危険過ぎる代物を左腕一本で固定し、手の一部のように振り回す南空に少々退いている表原とレゼン。生身の人間で老齢であり、これほどの馬力を持つ。粉雪が信頼しているのも納得のいくスーパー爺。


「『てつき白染しろぞめ、クールスノー』」


そして、粉雪も妖人化し、クールスノーになる。

地下からの出入り口を抑え、佐鯨と表原の両名が待機している。


「佐鯨くんはしないの?」

「俺の妖人化は連続でできても、長時間維持ができねぇ欠点がある。暴れるぐらいの時間はあるが、待ち構えるのならしない方がいいからな。そーいう表原とレゼンは?」

「粉雪さん達ほどじゃないが、全力を出せない。そんだけだ」


本気になる能力を1回使ったら、1時間経たないと次の能力を使えない。此処野戦での大苦戦はそれが原因なのだから。身体能力だけの強化では有り難味が少ない。力を残すという意味で表原も妖人化をしない。



「録路は任せるわよ、佐鯨」

「おうっ!!」



第2陣の突入。

クールスノー&南空茜風。地下から突入し、狙いはキャスティーノ団の黒幕の正体とその首。

手加減はしているが、南空もあのチェーンソーを装備しながら素早い動きで進んでいく。なんだあの爺って言ったところである。



「……来るまで暇だからしりとりでもしねぇか?」

「幼稚園児っぽいです。あ、やっぱり電波が届く!」


そう言いながら、スマホを取り出して動画サイトの閲覧をし始める表原。なんとまぁ、やる気を出していない態度だ。一方で佐鯨は


「じゃ、俺はスクワットして待つか!準備運動だ!」

「暑苦しいんで止めてくれませんか?汗とか臭いとかするんで!」


こっちもこっちで、突入の時を待っているとは思えない待機をする佐鯨。

そしてそのクールスノー達の突入は、進みそのものは順調。黒幕を捕えるという意味では進んではいないが



「じゃね~~~~」

「やっぱり、こっち側はジャネモン主体ね。制御のしにくい怪物だもんね」

「しかし、私共の敵ではありませぬな」


護衛というより足止め。警報代わり扱いのジャネモンの群れ。弱っちいが少し数が多い。こちらはレンジラヴゥの戦場とは違って、デカブツがいれば一々倒さないと進めそうに無い狭さ。それで構わないとクールスノーと南空は1体ずつ仕留めながら、前へと進んでいく。


レンジラヴゥがこの地下にまで響く暴れぶりの衝撃が届けば、それに続いて人間達の混乱する騒動も情報として届く。息を殺すように揺れる戦場を見守る者、いち早く逃げ出そうとする者。色んな可能性はあり、その色んな可能性を潰す配置をしている因心界。

だからこそ、潰される可能性というのも入れるべきなのだ。


ドゴオオオォォッ


「じゃね~~~~!?」

「歯応えのないジャネモンね。ホント……」


クールスノーの想定通りにして、想定以上の進撃。レンジラヴゥの方に戦力がいっているとしたら、悔しさも多少ある。ま、それはそれとして好都合。


「地下3階にいきますか?それとも上に行きますか?」

「降りるに決まってる。上はレンジラヴゥ達に任せてる」

「でしょうね」



地下3階は主に駐車場という車の倉庫だ。3つある階段で降りるのと、地上と繋がっている車用のエレベーターを使っての移動で行ける。クールスノー達は当然、階段で降りている。


「車は全部、壊しなさい」

「元々壊れておりますよ。廃車になってる奴を受け入れているそうです」

「そーいう意味じゃなくね」


隠れてるなら火を使ってでも炙り出せってか。

容赦ない事。

そんな粉雪のやり方を察知していながら、あえて口にしたのは南空なりの返しなんだろう。



「!!」

「!………いますね」



大胆に2人を前にして、現れたのはセールスマンとして。クリーニングをし終えたスーツを着用し、クールスノー達の前に姿を見せた。


「そう敵意を剥き出しにする気持ち、抑えていただきたい。私はあなた方とビジネスをしに来ただけであります」

「沼川だっけ?あんた、やっぱりキャスティーノ団とつるんでいたのね。保険会社がそんなことして良いのかしらね?」

「おやおや、政治利用するあなた方と一緒にされたいがため、このような手段でじっくりとお話をしたかったのですよ。あなた方はお忙しい、キャスティーノ団を利用し、会談の場を作るのはこちらもやる事でしょう。今の状況は互いにメリット」


何かがおかしい。粉雪と沼川の会話に疑問を抱く南空もまた、人を外れた領域に届く人である。

疑問の1つが消えたことを確認する。


「……網本党首。私をこの場に呼んだのは戦力ではなく、"相談役"としてというわけでしたか」

「あったり~。ま、ぶつかるかどうかは運次第だったけど」

「いえいえ、クールスノーさんは分かっておられた。私がここに待機している事を知っていた」

「さっきから食いつくように言うわね、沼川」


沼川が何かしらのことをしていて、クールスノーと同等のような振る舞いをしている。


「ま、あんた経由で、決戦直前まで情報を得られたことは感謝するわ」

「感謝して欲しい言葉ではないですね。いえ、こちらの方こそですよ。あなた方にお話を聞いていただくだけで、私は嬉しいのです」


妙な力を使っているな。


「南空さん、そう警戒しないで宜しいですよ。革新党を立ち上げたあなたがご足労して頂いたこと、真に感謝いたします」


お辞儀をする姿が白々しい。だが、それよりもこの違和感に1つの答えを出してきた南空。


「沼川。お前、妖人になったのか?先ほどからのやり取りを見て、どうしてかこちらより1つ先を進めて話している。違和感の答えは」


洞察力のピカイチ具合は、一般人の感覚ではない爺。


「"人の心を読む"能力を宿しているな?」

「!……どこか、私の言動にミスがありましたかな。なるほど、南空さん。老齢と言えば聞こえは悪いが、熟練の達人と言えば、良き者になりますね」

「網本党首」

「そんなところでしょうね。北野川と似てて、ムカつくわね。でも、せっかくだからあんたの計画を聞いてあげようじゃない。キャスティーノ団を使ってどーしたいのかをね」



妖人の類いではない。雰囲気が違うが、危険な匂いがする。



「お互い様でしょう。では、私の真意を言葉にして!あなた方にお伝えしましょう!」


クールスノーVS沼川左近。


地下3階で行なわれる、不気味で立ちながらという会談から始まった戦闘。

沼川の目的とはなにか。

彼が裏からキャスティーノ団を操っていたという事なのだろうか。



◇      ◇



ドゴオオォォッ



たった一人に、命知らずが5人も飛び込んでいった。


「見せてもらおうじゃねぇか、レンジラヴゥ」


戦闘と呼べることは未だにない頭鴉。喧嘩程度のレベルで、レンジラヴゥの強さを測る。

四方八方からやってくる敵をどう料理するか。

床に置いていた旗を拾い上げ、掲げて見守る頭鴉。


「お前のくだらねぇ愛とかほざいたものをなぁ」


レンジラヴゥはほぼ同時に打ち抜いた。

格闘素人の振り抜く拳であるが、いずれもその動作を丁寧かつ打っては戻し、打っては戻しと。同時に拳の前に弾け飛んだ3名、続く2名も凪ぐように放った横蹴りが巻き込んで蹴飛ばされる。

破壊音と時間が合っていないほどの、瞬殺。



「おおおぉぉっ!?」

「ひ、人が飛んで来るーー!?」

「敵だーーー!!」


壁を突き破り、アジトをやや壊してしまう威力は、囲んでいた因心界の者達にまで人間を届けていた。

見守るなんざ。


「なにか見えた?」


できねぇ事だった。

身体能力の極致はあらゆる小細工と数を嘲笑する。

まるでオリンピックの金メダルとその他の格下を表す、えげつないレベルの差。待ちに待ってくれたレンジラヴゥも、"ついに"という言葉で表すにはあまりにも早すぎる瞬殺の乱舞を披露。



ドゴオオォォォッ



ガゴオオオォォォッ



外から様子を見守っている因心界の者達も不安を感じるほどの破壊。衝撃。人間達の飛び方。



「あ、あのままいったら10分と持たず、倒壊するぞ!!」

「レンジラヴゥが暴れてる」

「落ちついて。吹っ飛んだ人間を回収していくのよ。生きてたらね……」


ヒイロがいないのだから、あれでも本気でやっていて本気じゃない。

心配した顔を見せずに、部下に指示をする野花。

不安をあげるならあれだけの出力で戦っているわけだ、力の消耗はあり、回復し合えるヒイロがいないこと。長期戦がやや不安を残す。



「残り6人」


拳で殴る。足で蹴る。投げ飛ばす。

どれもこれも、単調で基礎とも言えない攻撃の連続で、相手を押し切ってしまう。

"愛"の力を本気で爆発させた身体能力は他を寄せ付けない。

それでも、


「は、ははははは!!その程度かぁっ!?お前の力ってのはよ!!」


頭鴉は高笑い。

握り締めた旗を振り回す。その旗こそが、頭鴉が捜し求めていた妖精。


「録路と此処野がビビる奴と聞いていた割にその程度!俺達の敵じゃねぇ!そうだろ!?ポルロ!!」

『当然だ。俺と頭鴉は、より深ききずなで結ばれている』


旗の妖精、ポルロ。


「『とどろいかずちれ、ライダーズルーン』」


妖人化すると同時に頭鴉は黄色に光り輝く。

彼もまた、白岩と似ていて周囲への危険がハンパではない能力だった。


バヂイィッ


空気を裂く電撃が周囲を襲い、通電性のあるものへ飛び交う。

広かろうと建物の中だ。ピンボールのようにライダーズルーンは飛び交って、一時的な制御不能になって暴走。その動きは雷速。一撃の電力も雷に相当。電磁波すらも発生させ、瞬時に大爆発を引き起こしての倒壊を演出。



ドゴオオオォォォッ



レンジラヴゥ突入からわずか4分足らずで、キャスティーノ団のアジト。地上部分は半壊以上となった。

お互いの速度は目に映らぬ者達にとっては互角に見えるが、


「!……」


レンジラヴゥにはライダーズルーンの姿を一瞬でしか、捉えられなかった。それも、何かが通ったという曖昧なイメージでの捕捉。


キイイィィッ


「!へー、そんな妖人化があるんだね。飛島さんとまた違ったタイプ」


相手が停止してくれたとき、その姿が変わっているという事に気付けた。

また珍しいタイプの妖人化を知ったレンジラヴゥ。自分達が変身するという点では、同じなのだが。よもや


『見た目の良さってのは、人の価値観だぜ。どー思われても、俺が最強になった』

「カッコイイけど、あたしにはその良さが分からないな」


人間がバイクになってしまうという珍妙な妖人化。

ミラー部分が目となり、ヘッドライトが口だろうか。どもっている声で妖精が喋っているような感じだ。ジャネモンの一種と感じながら見ているレンジラヴゥに対し、



『レンジラヴゥ、お前の力はチンケな心が作る"愛"ってところか?』


ライダーズルーンは自信満々に自らが強いと公言する。


『俺は、"かみなり"だぜ!』

「雷……」

『誰もが恐れ慄く、雷の力!!俺はポルロを捜し続け、ポルロもまた俺を捜していたのさ!!』



妖人化となる場合を例えるならば、人と人が結ぶようなもの。簡単に、より雑に言えば、友達のような信頼関係でまるで構わないこと。

レゼンが表原を選んだが、それはそこに彼女がいただけであり、才覚は確かにレアであるが、レゼンと適合できる人間は世界中のどこかにいるだろう。それでも選んだのは運命と言っていい。


「棒を下に1つ伸ばしてあげれば、"でん"になってかっこ悪いんだけどなぁ」


失礼なこと言うなや。生まれた漢字に罪はねぇだろ。


『出会いってのは自分を大きく変えるもの。それをより強く抱き、選んでいけば自分を高みへのし上げる』


軽くいなして、昂ぶるままに力説する。

互いが互いに出会うまで、捜し求めたものが手に入った時、生まれる力は絶大。


『適正が合わなきゃ、運が悪いと思ったが。俺達はそんな平運も超えて来た。神がいるなら、俺達はその神を超えるために出会わせた!その実力、たっぷりと味合わせてやる』


ビリビリとしてくるのは電撃を飛ばされているかじゃない。強さの先までいくと、どれも変わらないと目利きしてしまうもの。そんな目利きを超えている相手が敵として、久々に現れた。

戦いをする度に心のどこかで、弱き者に強さを誇示しているような事を"うんうん"って首を横に振って、倒すべき奴がいつか現れるためのことと繋げられる。


「早く実力見せてよ」


沸いてくる気持ちは人間に対しては久方ぶりのもの。能力的には、此処野に似ているだろうか。彼もこのような自信家。だが、それは常日頃ではない。

超常的な強さを持てば、溺れに入る。頭鴉の様相はそれである。


「その強さは幻想だってこと。あたしが教えてあげる」


互いにシンプルさを売りとしているが、その汎用性の広さは2つも3つも、ライダーズルーンがいっている。



バヂイイィィッ


『まぁ、見せてやるさ。そう急くなよ。いちお、録路達も仲間だ。巻き込むつもりはねぇ、避難させる時間くらいとってやるさ』


先ほどから何発か、電撃が発せられ、キャスティーノ団のアジトを覆うように広がり、光始める。奴が準備している事を認知した上で、レンジラヴゥも抜け目なく彼以外の構成員をしばき挙げる。

その最中、敵を電撃に触れさせて威力を確かめた。



「ごべばぁ!?」


体が焼かれるような熱に、髪の毛も逆立つ。生身の人間では、触れるだけで重傷になるだろう。電撃が走っているところは視認できるため、野花達も警戒して入らないはず。

1対1の盤面を創り上げたところで、改めて向かい合う。


『雷を操った者こそ、世界を支配する』


今世界中で電気というエネルギーは最重要なものであり、それがどれほど有用であり、危険なものか分かっていること。1つの生命体に操作の権限があれば、どんな使われようでも神の御触れとなろう。

能力だけをとれば、確かにレンジラヴゥの能力を超えている。


『そして、今!この俺の世界にお前は入った!』


ほぼ破壊されたアジトがライダーズルーンの雷で纏われる。火花飛び交い、閃光も四方八方から起こりうる。目で追いかけるには早すぎであり、数が多い。

重心を低くし、ライダーズルーンのみに敵を絞る構えをとる。レンジラヴゥの戦闘の教えは、もちろんヒイロからだ。こーいう敵には目の前の事に向けという。その上で、迂闊には攻撃を仕掛けず、攻撃の性質を見抜けと言われていた。彼がいなくても、彼と共にいた事は刻まれている。


「君も、あたし達の世界に入ってる」


強敵だ。素質という面では1つ2つ、彼が劣っていても。やっぱりだよねっていう同情がある。

運命の出会いは強いもの。自分は運だった、彼は最後まで選び抜いた。



バリイィッ


光、音の発生=着弾。

反応が遅れているどころじゃない。四方八方から発せられる電撃の弾は、レンジラヴゥの周囲に着弾した。威力は直接触れるよりも少ないが、このスピードに加えて標的を狙っているという威嚇にはなっている。


「!」


真正面からならともかく、全方位から繰り出される雷は、シットリの粘液全方位弾の上位互換。スピード、威力の上昇はよく感じ取れる。

さぁ行くぞと、弾幕の雷が光と轟音、熱を持ってレンジラヴゥに襲う。



ドゴオオオォォォッ



雷の中、レンジラヴゥもまた素早く、自分自身も分からぬほど駆け回って、的を絞らせない手に出た。

型のない動きではあるが、いかんせん数の差がある。体を4箇所ほど、雷弾で貫かれて出血とその傷口が焼き焦げる。


「!っ……」


ガードをしても、そう軽減はできない攻撃。


「髪の毛立っちゃうなぁ」


雷の嵐が続く中、ライダーズルーンの姿を見失う。音と光の爆発により、視覚と聴覚を奪われ、痛覚がさらに状況把握を遅らせる。大型バイクを見失うのは早々なかろうに、背後をとられる。

超高速回転するライダーズルーンの両輪がレンジラヴゥに襲い掛かった。



ドゴオオオォォォォッ



「うああぁぁっ」


ぶっ飛ばされ、雷の結界に触れて追加の電撃をもらう。

それでもなおすぐさま起き上がり、ライダーズルーンの追い討ちを回避するというこちらも負けていない身体能力で勝負!レンジラヴゥの底力も恐るべきもの。


「っっと!」

『避けたか!だが、お前達じゃ俺達には勝てねぇ!!』

「!!」

『求め続けた俺達の強さは!テメェ等のできちゃった婚とはワケが違うんだよ!!』

「どーかな?出会いの進展は、深まっていくこともあるよ」


今の攻撃でいくつか、ライダーズルーンの攻撃方法は8割方想定できた。

もちろん、対処も6割方。

問題はライダーズルーンがその欠点に気付いているかどうか。それでカウンターをもらうかも……。実力が拮抗している時こそ、落ち着いて状況を掴んで対応する。ヒイロが知らない格上と戦う時に、よく教えてくれた事だ。強い奴が常に強いわけじゃない。また、勝ちというのも見方によっては、薄れてしまうものがある。



バリイイィッ


止まない電撃の結界の中、2人の戦闘は中盤戦。


「君のこと、ちょっとずつ分かってきたよ」

『それがなんだってんだ?』


スピード、数、飛び道具、結界。戦闘における様々な要素で、レンジラヴゥを上回る力を見せるライダーズルーンであるが、彼女がどのような戦いをしてくるか。



◇      ◇




「白岩とガチったところで、粉雪が控えてんだ。弱点に気付いてねぇ、頭鴉の負けは決まってらぁ」



派手なアジト半壊に巻き込まれるも、無傷でやり過ごしている録路。確かに頭鴉は相当優秀な妖精を手にしたが、厳しいものだと録路は見ている。外では包囲されており、地下ではジャネモン達の悲鳴のようなものが聞こえている。

録路は無理なんかせず、まだ希望のある逃げを選択している。そんな彼の前に立ったのは、権田飴子。彼女もまた妖人となっている。ほとんど対等と見て、録路に確認する。


「加勢してくれないの?」

「頭鴉、……いや、ライダーズルーンの能力の欠点。その1。周囲を問答無用に巻き込む。乱射している雷弾は、奴自身が制御できてない無作為な攻撃だ。レンジラヴゥも気付いてるな」


すでにサシのやり合い。

男の邪魔なんかできるわけもない。


「飴子は頭鴉を信じろ。俺はあいつの負けだと見ているが、何が起こるか分からない」

「あーもぅ、まったく。私はね、沼川もあんたも信じたくは無いの。だけど、頭鴉は信じたい」


録路の言葉通り、自分の力では助太刀なんてできない。足手纏いになるのは分かった上で、脱出するという選択が厳しいものだ。


「金が第一だから!金を稼げる頭鴉がいなくなったら、どーすんの!?」

「はー……ま、好きにしろ」

「むー……」


頭鴉と共に戦う者、逃げ出そうとする者。録路と飴子は後者であるし、そうすると頭鴉にも伝えている。


「今までコソコソとやってきた奴だが、成り上がる男になったんだ。見守ってやるのが筋だろ」

「マジで逃げるの?」

「悪いが、俺はお前達とはそもそもの目的が違っている。頭鴉はこれから新たな組織作りをするだろう」


録路にも、自分の未来がどっちにしろ見えている。これから自分がどうするか、どうしていくか。迷ってはいないが、ひとまず。


「俺には借りを返す奴がいるのと、借りを作っている奴等がいるからな」


本命が動いた。向かう先は地下からの逃走経路。包囲している幹部の数からして、逃亡は困難であるだとかより。粉雪と佐鯨の姿が見えない事で、地下から攻めて来ているのはその二人だと察していた。

このまま居座っても、レンジラヴゥとライダーズルーンの攻撃に巻き込まれるだけだ。


「あんたって幸せになれないタイプでしょ?」

「経験に価値を見出せないのは良くない事だと思うがな」


録路は焦らず、ゆっくりと地下へと降りていく。そして、飴子も躊躇いつつも地下から逃げる選択をする。

真正面から行く録路と、変則的なルートで行く飴子。

粉雪は地下3階で沼川と対峙しており、地下2階からの出口まで、彼女とぶつかる事はないだろう。



バヂイィッ



「あれ?」


ライダーズルーンの電撃の余波か、これまで地下まで通じていた電波が届かなくなる。スマホを弄っていた表原はすぐに、それを知ったが。スクワットしていた佐鯨は違うもので察知する。男の勘は女と違って、熱い血で沸き立ってくる。


「電波が急に、届かなくなったよ」

「上でなんかあったんだよ。始まってんだ!」

「………粉雪さんもいい感じに暴れてるわけだ。本命が来るんだよ!」


スクワットを止め、自分の妖精を出させる佐鯨。


「バーニ!」

『気合バッチリだね!いい汗掻いてさ!』

「おうっ!!燃えてきたぁっ!!」


自分の勘に連動するように、男の器がち上がる。


「悪いが!ここは任せるぞ、表原ちゃん!」

「へ!?」

「俺は、録路空梧の担当だ!もう来たんだよ。すぐにぶつかる!!」


あの時、取り逃がしたのは屋上だったから。だが、この地下なら逃さねぇ。


「熱く燃え上がるぜぇっ!!俺の正義がよ!!」


複雑な事はわかんねぇが。今、録路を倒せば平和になれる奴がいる。

俺はそーいうちっぽけな数だけ救える存在でいい。

この拳と熱で、救える世界がありゃあいい。

迷うなんざめんどくせぇ。


「しゃあああぁぁっ!!熱くなってきたぁぁっっ!!」


地下に響く雄叫び。それによって、佐鯨がいるっていう事が分かり、別のルートをとる構成員達もいる。

だがそんなもん、しなくていいぜと。向かってくる男はアイスクリームを食べながら来る。

どっちもどっちで、偏った思想か正義か。

男と男の比べ合い。大義も人によって、くだらない。

キャスティーノ団のアジト、地下2階の激闘。骸となったキャスティーノ団の構成員やジャネモン達が戦場のあるべき姿と伝えるような、大広間。


「佐鯨。今日はちっと、お前を見習ってやる」

「来いよぉぉっ!!俺はお前達みたいな悪い奴等が、大っっ嫌いだからな!!」


佐鯨貫太郎VS録路空梧


両者、再びの激突。檄熱。檄食。

この戦場最大の乱打戦確定!!



トプンッ



そして、表原にも相手がやってくる。


「ど、ど、ど、どうしよう!レゼン!!」

「もう遅い。佐鯨の奴、録路とぶつかったみたいだ!」


向かってくる足音は複数いるぞ。ジャネモンはいないみたいだが……。

粉雪さんはどうした?黒幕と当たったから余裕がねぇって事か?


「妖人化するぞ!何人か来る!!」

「ええええーーーっ!!?」



ボォォンッ



レゼンは大型ドライバーとなって、表原の頭に突き刺さり、彼女を超回転させる。


「ぎゃあああああああ」


グイイイィィィィィッッ


デカイ戦場の緊張も手伝って、それはまるで慣れてない頃に戻ったような状態。

逃れたいところで逃れられない場面がある!

四つん這いになってもだ。


「『あたしだけかいっ!マジカニートゥ!!』」



オボロロロロロロ


汚いゲロ。


「うぇ~~……き、緊張で、体がぁぁっ……」

「お前さっきまで、スマホで動画視てたりしてただろうが!!リラックスしてただろ!」

「そ、それはね!!うぷっ!現実逃避!!」


粉雪と佐鯨がいるから平気だろうと思っていた。だって、二人共凄く強いから。自分の出番なんてないとタカを括っていたからの、スロースタート。

ハプニングが起こってしまったという、面だった。マジカニートゥの顔はそうであった。


一体どうすりゃあいい、戦うしかないのか。しかし、複数相手?

そんな思考にノイズを加える衝撃が、表原の口から起こりえた。汚い口元についたヨダレが



「きったない事するんじゃなーーーーいい!!」

「!?」



ドゴオォッ



一気に膨れ上がったと思えば、人間が急に飛び出してきて、マジカニートゥの顎めがけて、膝蹴りをかましたのだった!


「だぁっ!?」

「なにーーー!?」


マジカニートゥの中から現れたのは、権田飴子。いや、彼女の妖人化した姿。

とんでもねぇところから出てきたが、人間と魚が合体した形状だが人魚という色っぽさではない。尾ひれとカラフルな模様がついたその姿。


「こいつはっ……」


飴子からしたら、因縁のある相手の一人。だが、そんなことよりも逃げるが勝ちと倒れたマジカニートゥを無視して、出口から出て行く。

続く様に


「レイクレイクに続くんだーー!」

「逃げろーー!」


キャスティーノ団の構成員、4名がマジカニートゥを少し踏みながら出口から出る!

足跡まで体につけられこんな醜態を晒し


「ひ、酷い……」

「いや、お前が悪い」


レイクレイク及び、5名の逃走を外へ許してしまった。こっち側は奇襲のため、囲っている人数はないに等しい。それにレイクレイクだけじゃない妖人もいた。

それでも


「だが、チャンスだ!逃げる相手なら戦意は薄い!お前の得意分野に持ち込める!」

「全然それ褒めてないでしょ!?得意でもない!」

「追いかけるぞ!録路達は粉雪さん達に任せればいい!」

「わ、分かった!でも、とりあえず!野花さん達に連絡するよ!応援も込みで!」



マジカニートゥもついに戦う。相手は権田飴子と、その連れ4名。

複数相手の追撃戦。果たして、上手くできるのか!?



キャスティーノ団アジトでの総力戦。

これで対戦カードの全てが出揃う!

どこが先に崩れるか、どこが崩すか。


おまけ:


挿絵(By みてみん)


白岩:コマ割り初挑戦!!今後もちょいちょいやってみるって!

頭鴉:おい、どーいう意味だ?この話(怒)!

白岩:それよりも、近藤くんも私の胸を見てる事が気になるな~。

頭鴉:メンチ切ってんだよ!家系が不良設定なんだからな!テメェ、次のパートでぶっ飛ばすからな!

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