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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第21話『お祭りなのです。因心界、まったりタイム』
56/267

Bパート

「ついに、この時が来たようだな」

「そうねぇ。意外にも、全員参加。北野川もよく来たわねー」

「うっさい……」

「わーい!祭りだよー!」


翌日の事である。わいわいと騒がしくなっている因心界の本部。しかし、集まっている人の8割ぐらいは女性。

別室ではあったが、因心界の"十妖"達はそれぞれ集まっていた。

すでにバッチリ決めている格好をしているキッスや粉雪。今現在、最終調整的なメイクをしている北野川。そんな3人と比べると地味目な格好をしているが、その特徴的過ぎる明るい顔と性格に、この中で一番大きい胸でカバーしてしまう白岩。

そして


「白岩さんにいきなり連れ出された時は驚いたー」

「ごめんごめん!当日、連れてくればいいなーって思ってたよ!」



表原もここに来させられた。なんで急だったかというと、


「"十妖"である私達がメインの撮影会だったからな。他の人達にも撮影なりがあるが、大半は新作かつ安売りの購買が目当て」

「その他にも……」



ほとんどの女性陣がここにいるわけだが、1人だけ明らかにおかしい奴がいる。この間のことをスッカリ忘れ、テンションを上げ。自分の妖精と共に



「はい、皆さん。あっちを向いてくださーい!」



床に寝転んで、誰もスカートを履いてないのに、無理にパンツを狙いに行く蒼山とフォトの姿。あっちを向いて欲しいというのは、僕を見る必要はないっていう意味。


ドゴオオォォッ


「あんたは出席しなくていい」

「まぁまぁ、粉雪。撮影ぐらいの時はいいんじゃないか?私は構わないよ」


粉雪は蒼山を蹴り飛ばしてやるが、キッスは構わないと言いながら、倒れた蒼山のほっぺを抓ってやる。


「なんで蒼山さんがここに。秘密の花園みたいな空間なのに、一匹の害虫がいますって感じ」

「だって着替えてる時、この人がどこで倒れてるか分からないと、怖いじゃん」

「一理あるわ。死体になってくれれば、安心よ。蒼山」


容赦ねぇ女性陣。だが、それもまた良い。

そして、最後の1人である野花がここにやってきた。いつもと違って、令嬢らしさのある気品な格好であった


「お待たせ~、みんなー!」

「わーっ!凄くキレーイ!」

「自作?」

「まさかー、そこまで時間はなかったわよ。ああ、蒼山もここで取り押さえられてて良かったわー」


蒼山を呼んだのはこの人だったのか。

とはいえ、カメラの腕には自信ありと言ったところか。


「蒼山」

「は、はい」

「みんなに配る写真ぐらいは許してあげるから」


や、優しい。野花さん、めっちゃ優しい。しかし、なんで後ろに手錠を2つもご用意しているんだろうか。

倒れている蒼山を粉雪が足で抑えながら、野花が丁寧に



ガチャッ



「両手足は縛ったし、私が見張ってる間にみんな着替えちゃってー」

「えええーーーっ!?ちょっ!一番高価なところを撮れないんですかーー!!」

「当たり前じゃない。なんであんたの姿を確認できないで、着替えなきゃならないのよ」

「粉雪、どいてなさい。事前に更衣室のところにカメラ仕込んでるかもしれないから、私が秘密を暴いてあげる」

「い、いやいや!しなくていいです!してませんから!!」

「……ま、していないだろう。北野川、その時はそれを冥土の土産にしてやればいい」

「そーだよ!蒼山くんにそんなこと絶対できない!だって、私達にボコられるから!」


すでにボコられてますけど?


「それじゃあ、野花。そいつの見張り、よろしくー」

「はいはーい!あ、みんなには季節に合わせた衣装にしてるわ。私と表原ちゃんは春物、キッスと白岩が夏物、粉雪と北野川は冬物。秋物はみんなであとで着ようね」


そんなこんなで、入れ替わる形で着替えにいく表原達。というか、なぜ自分もこちら側か……。


「あのぉー、私。自信ないんですけど、撮影なんて初めてだし」

「平気平気!表原ちゃんだって可愛いよー!私だって褒められるものないけど、楽しそうだからやるの!」


いや、白岩さんがそれ言うと、なんか違う気がする。

楽しみでやっている感じの白岩。一方で、


「仕事よ、仕事。ほら言ってたじゃない。私や北野川がモデルとかもしてるって」

「因心界のイメージアップということで、女性モデルを立ててることがあるのだよ」

「他にも、色んなスポンサーから金や情報がとれるからね」


仕事と割り切って、ドライ過ぎる3人。


「キッスは稀じゃない」

「私は粉雪達と違って、表に出る事が少ないからな。それと野花はそーいう副業をしていてな、お安い費用で広告塔を作ることもやっている。こーいう生涯的なサポートをよくしているから、助かっているよ」

「あ、キッスさんは野花さんのご自宅の事とか知ってるんですか。会話的に北野川さんも知ってそうだけど」

「ああ。野花がいなかったら、ちょっとヤバめの組織として住民達に知れ渡っていたかもしれないよ」


いや、ホントに上層部はヤバイのしかいませんよ。

この女性陣だけ見ても、強烈にヤバイのしかいない。

野花さんって可哀想な人だけど、因心界でもっとも良識人過ぎる。


「女の夢に、モデルになりたい人もいるからね。男にもいるけど」

「ファッションコーディネーターって言うんですかね。デザイン関係のお仕事、野花さんが企画してくれてるから、男女問わずこーいうイベント、盛り上がりますよねー」

「"妖人"になると、将来に関わることだしな。こーいうことで多少、分かり合いたいものだ」



そして、更衣室でそれぞれ着替える衣装を見る表原達。いったいどんな衣装を渡されたのか、各々着替えるわけだが、さっそく楽しみを破るような声が上がる。


「わーーっ!可愛い!私のサイズに合う水着って、地味なの多かったから嬉しいな!それにフリル付きー」


あ、カーテン越しでもすぐに分かる。そして、分からない気持ちもある。夏物、白岩はあのボリュームのある胸を活かした水着。完全に釘付けにできるものだろう。

少し怖いのは、野花さんの父親がエロイのを渡してなければいいのだが……


「おいおい……。私も水着なのか、できれば浴衣が良かったんだがな」

「あーら、キッス。自信ないわけ?」

「もしかして傷だらけの体だったり?」

「そーではないが、これでは魅了しちゃって、みんなに申し訳ないと思ってな。しかし、これを渡すか。……まぁ、いいだろう。羽織物はつけさせてもらうがな」



すっげー切り替えしをするキッス。しかし、キッスに渡された水着はなんか曰くつき。



「良かったねー、北野川。冬物で。夏物だったら、公開処刑だったわね」

「あーん?なに?なんか言いたそうね。言っておくけど、あんたは厚化粧してるんだから露出控えた冬物の方がいいわよね。可愛くないけど」

「私は大人の色っぽさだから。あなたみたいな可愛い胸に、お似合いな可愛い衣装を着る、幼稚な美しさじゃないから。せいぜい、変な趣味を持った幼稚な男達に好かれる衣装で満足してなさい」

「そのまま返してあげるわよ。あんたはスケベな色親父に好かれる、ちょっと前のファッションセンスで悦に浸ってなさい」



粉雪と北野川の仲の悪さが出てくる会話を聞いてしまう。とはいえ、この2人はまともそう。


「こーいう服を着るのは初めてだなー」

「なになに!?どんな感じ!?」

「わぁっ!?し、白岩さん!カーテン開けて覗かないでください!楽しみにしてくださいよ!」

「えへへへへ、ごめーん!」


可愛い系だと自分で思っている表原に、初めての挑戦。それなのに今一番、可愛いんじゃないって、思える衣装が用意されていた。これもらっていいのだろうか。

そんなこんなでメインの女性陣は着替えているのであった。



◇      ◇



『なにをやっているんだ、アイーガ!!』

「ご、ごめんなさい!!」


一方で、SAF協会にも動きがあった。通話の向こう側にいるシットリがアイーガに激怒するのも当然だった。


『お前は茂原とかいう奴のせいで倒れていて、此処野は因心界に捕まっただと!?』

「で、でも!新種は確かに出ましたから、ゆ、許してくれませんか?」

『だからって、此処野というゴミが捕まり!!こちらの情報を取られたらどーするんだ!?カミィの能力はお前も知っているだろ!』

「は、はいっ……」


捕まったのは此処野が悪いのに……。

とはいえ、その事をちゃんと報告したアイーガは、偉いとは思う。


「で、ですから!これから此処野の口封じをしに行こうと思うんですけど……」

『口封じだと。まったく、そんなことは必要ない』

「へ?」

『元々、私は此処野を信用していない。情報などあまり与えなかった。ま、アジトは特定されたかもしれないが、越せば良いだけだ』

「は、はい」

『口封じと言ったな、アイーガ。因心界の本部に乗り込むつもりか?カチューシャはバレているだろ』

「ま、まぁ。でも、帽子を被ってたりすればいけます!それに今日は、因心界の本部に入り込めるチャンスでもあるんです。沢山、人が入るので私なら紛れ込めます」


シットリとしてはアイーガの場合、実力よりも人の操作能力というモノを買っている。シットリやダイソンのような戦闘特化では、情報収集が得意ではないため、危険な任務で失うことを恐れていた。


『此処野の生存と位置だけは確認してくれ。すでに裏切っていて、お前を捕まえたり、嵌める算段をしているかもしれない』

「そ、そこまで疑う必要はないのでは?1日くらいしか経っていない」

『口封じなんかをしに行けば、より大切な情報を持っている事が悟られる。いや、口封じに来たお前には此処野よりも酷い仕打ちをされて、奴等は搾取するだろう』

「!…………でも、あたしにやれることがあると思います。危険な情報収集はあたしの役目ですから。やらせてください!」


これまで良いところのなしだった、アイーガ。失敗と手ぶらだけで帰ることができなかった。シットリとしては、失敗した時こそ。帰って来るべきだと思っていたが、覚悟のある声に。自分の身を安全に考えさせる事を伝えた。


『……分かった。だが、此処野はほっといていい。レゼンも今はいい。知りたいのは、因心界が持っているキャスティーノ団の情報だな。特に黒幕の事だ。掴んでいる情報を得ろ』

「はい!」



そして、アイーガとは別の情報収集要因も、向かわせる事を伝える。



『それと今回の特別任務に辺り、私の方からも応援を呼んでやる。同じ目的で本部に行かせるため、協力してくれるかもしれない』

「そ、それって……」

『ただし、アイーガ。それが誰なのか、お前には教えられない。とにかく、そーいう奴だ。とにかく、生きて帰ってくればいい。とにかく、分かったな』

「ええっ!?だ、誰なのか分からないとか、協力できるわけないじゃないですか!」

『奴もお前の事は知らん。ただ、私から事情は言っておく。気をつけてやれ!』



ガチャリッ



「……はぁ~、とにかく。シットリに怒られないように戻ろう。ルミルミ様に知られたら殺されるし……」



シットリとの通信が終わるも、かなり気の重い顔を見せる。下を向いた後、青空を見上げて少しぼやく。


「シットリがSAF協会を率いてよー」


本人がいないので、ちょっと悪口を言っておく。此処野が捕まっている事実は、同伴者である自分にも責任があり、ルミルミが気分で自分を殺しに来てもおかしくない。ルミルミは此処野のことを評価していたのも知っていただけに、自分の非力さを責めてくるかもしれない。

キャスティーノ団の黒幕については、シットリとルミルミの両名が気になっていた。もうすぐ、因心界は彼等との決戦を行なうだろう。SAF協会の立ち回りはこの黒幕の誘拐を考えていた。そいつが抱えているバックは相当デカイと睨んでおり、その後に因心界と組んでしまうのなら、自分達の勢力に加えようと目論んでいた。

多少力ずくに、拷問をかけてでもだ。


とはいえ、どんな事をやってきているかまでは分かるが、肝心の人物像が見えて来ない。

シットリをして、とんでもない奴。と言われる存在だ。


アイーガはメモ帳を出して、情報収集するものをメモする。

自分の顔は因心界にバレているが、華麗な変装で誤魔化せる。ただ、粉雪やキッス、北野川らへんを誤魔化すのは自信がない。彼女達に会うわけにはいかない。


「交戦記録をコピーできれば、正体に近づけるよね。あと、キャスティーノ団の情報。黒幕の事まで分かってたら、先回り……って、そしたら因心界が先に動いてるか!」


逆にしていないって事は、完璧に掴めていないって事だし。

でも、決戦をするんだったら、黒幕が必ずいる瞬間を狙うよね。今日みたいに暢気な祭をやってたりするのは、黒幕が、録路やそこらへんの連中と接触させる機会を作らせるため。


北野川。いや、シークレットトークの能力を考えれば、判断できる協力者が増えてくれた方が正体に近づけるからだ。以前の韮本がそうであるように。

構成員、"十妖"のほとんどが因心界の本部にいる事を、大々的に告知されたのは、そーいう狙いだった。

その事をこの段階でアイーガは気付けていた(シットリもであるが)。



「……ん…………」


あれ、ちょっと待って……。

これってさぁ……。

ひょっとして、一番手に入れるべき情報は……。


「……………」


因心界は様々な組織を測ってきている。

その上でSAF協会が最大の敵である事を認識しており、仕掛けた罠に堂々と来るなんて思えないが。よもや、顔バレしているアイーガが後に、入ってくるのはかなりの計算外であった。


失態を帳消しにするほどの、スーパーファインプレイであった。

1人の潜入では掴めなかった。誰なのか分からないが、その人物と協力して、手に入れるべき情報を手に入れる事。どうあれ、次にやる決戦で黒幕が"誰"なのかを突き止められるのは確定している。

録路の行動と"十妖"達の行動を照らし合わせることだ。その情報を手に入れれば、因心界よりも早く黒幕を捕えられる。



◇      ◇



因心界の本部で祭があるんだよ。女性モデルも沢山来てね。撮影もできるみたいで楽しみなんだよね。


『私は安くて可愛い衣類を買いに行きたいだけなのですが』


いつも網本粉雪と野花桜、白岩印が出てるけど。今回は涙キッスと北野川話法も出て来るし、この前会った表原ちゃんも参加するんじゃないのかな?SAF協会もマークしてるじゃん。


『だったら、一緒に行きましょう。いつも家の中でゴロゴロしては、ふしだらな行為ばかりしていて』


それが忙しいから、家から出られない。灼熱の神なる光が照らされる日でもあるからね。僕は外出できない。


『日光浴びられないとか、人間としてどうなのですか?ちょっと……おしりをかきながら命令を出さないで』


ともかく僕は、家の中だけでとても忙しい


『家事の1つもやらないのに忙しいとは?』


代わりに参加して、エッチエッチな写真を沢山撮ってきて欲しい。できるのなら、彼女達が妖人化しているところを生撮りして欲しいんだ。漫画製作の参考になるからね。


『まったく……』


それとシットリがアセアセの出撃をお願いしてたよ。なんでも、アイーガとかいうのが潜入するから、陽動をしてくれって。それもついでにやってきて。


『そっちの方が超大切ですよ!!やってなかったら、私達の家は没収されているんですよ!!まったく!!』



そんなこんなのやりとりがあった、一匹の猫の妖精がいた。

身軽な動きでバスの上に乗ったり、車の上に乗ったりで、無賃乗車をかまして因心界の本部の近くまで来た。

適合者のやる気のなさと、生活ができないほどの情けなさに疲れていた。そーいう意味で裏切りの心配がないため、SAF協会に属することができたが、補欠のような扱い。仕方ない。真面目に活動もできやしないし、このアセアセにとっては……



『生きるためなんだけど』



理由があって自分が因心界に属せず。かといって、ならず者集団のキャスティーノ団で、浮浪者のような生き方を適合者ができない。援助してもらう代わりに協力する形で、SAF協会に身を置けた。

生きるためだからこそ、出される指令には誠実にこなすが。



『今日、バイトの非番だったのに……』



それでも適合者のあまりの態度とやる気のなさに、家計はいつも火の車。SAF協会だけが収入源ではなく、ファミレスのバイトと、病院で助産婦のバイトの2つを掛け持ちしている。この間、適合者が珍しくやる気を出して、働いたのだが。戻ってくれば、1ヶ月ぐらいは働かなくても良いとか、ダダを捏ね始めた。適合者であるため、母親並に自分は強く言い出せず、結局彼に丸め込まれてしまう。

やればできる子なのには違いないのに、続けられないのが残念だ。むしろ、自分が本当にできる人間である事を自覚しているのが、こー、煩わしい。もうちょっと無能だったらって……思ってしまう。



自分は仕事に買い物、家事、適合者の身の回りの世話で、いつもの一日を終える。



『はぁ。せめて、家事をお手伝いしてもらいたいです』



猫はこっそりと公園にある公衆トイレの個室に身を隠すと同時に、簡易妖術のその先の術を展開した。



ポォンッ



トイレから出てきたアセアセの姿は、マニア向け使用人としか思えない。猫耳メイドの女性となって出てきたのだ。見た目の年齢は30代に迫るかくらいの、ちょっと無理している感じの格好。

鞄から取り出した手鏡を開いて、髪を整えながら、この人間姿で因心界の本部に向かう。

自分は因心界からマークされていない事と、この姿になれば妖精ではなく、人間という生物になっている。潜入するのはそう難しい事ではない。メイド服なのはただの趣味。



「シットリ先輩の任務は報酬がお高いので、必ず達成させましょう。それと、新種のジャネモンを作って報酬アップ」



しかし、それを台無しにするような。適合者のお願いのメモを見る。



「因心界のグッズに、各モデルの写真と……自分行かないくせに欲しい物はいっぱいって」


買いに行かなきゃいいのに、アセアセは適合者を甘やかしているため、シットリの依頼よりもこっちを優先する。限定物も多数有り、粉雪やキッスの生写真なんてレア度が高い。こんなもん、転売屋から買取を行なうとしたら、一気にお小遣いとバイト代を持っていかれる。

確かに報酬は大切だが、支出を抑える事も大事。限定商品は必ずゲットすることと、因心界の面々を写真撮影できる機会は大切……。それに適合者の気持ちも分かることがある。


「あ、あれ。おかしいなぁ!」


そりゃ当然だと思うが、女性モデルの方は結構な人数が出るというのに……


「ヒイロさんの撮影会はないんですかぁ!?」


自分のお目当てがいない事にショックを受ける、アセアセであった。ちなみにヒイロは此処野の見張りで、会場に出てくる予定はない。本部の中にいるのは確かではある。


「ガクッ……ま、仕方ないです。レゼンくんなどの可愛い妖精達で我慢しましょう」


アセアセ。猫の妖精。

彼女が今している人間状態の姿は、"人化じんか術"と呼ばれる。妖精の国にある"禁術"と称される、妖術の一種であった。

ヒイロが人間という生物の妖精であるのに、アセアセの"人化術"は妖精という種族を飛び越えて、人間に代わってしまうものだ。身体能力、身体機能は大幅に変わるだけでなく、種族を意図的に変える外法な術は妖精の国ではタブー。

彼女が因心界に在籍できないのには、サザンがトップを務めており、妖精の国では即決で処罰の対象。問答無用で命を奪われる事なのだ。


"禁術"を使えるというだけで、妖精の中でも相当な実力者なのには違いないが。彼女の場合はこの"人化術"に特化しており、妖人化以外ではその他の能力を持ち合わせていない。わがままでぐうたらな適合者に甘いのは、そーいう理由がある。

だが、"人化術"の精度は素晴らしく、基本的には猫耳メイド姿であるが、バリエーションはある模様。ただし、本体の名残が多少出てくるらしい。



◇      ◇



ジャーーーーッ


カーテンが開かれると、赤中心の花柄フリル水着でもダイナマイト乳を曝け出している白岩と。


「メ、メイクまでありがとうございます。白岩さん、上手いんですね」

「えへへへ。オシャレしないとヒイロが喜ばないからねー。人にやってあげるのも勉強だったよ~」


彼女にメイクも手伝ってもらって、自分でも驚きの美少女となっている表原。

春物意識で作られた衣装は、こんな自分にも合ってしまうものであり、初めての良いメイクも合わせると自分じゃないほど可愛い自分になっていた。


「こ、これ私!?絶対、お父さんとかお母さん見たら、分かんないや。レゼンも信じない気がする」


これほどの良い変貌に自分自身驚く。なんだ、ちゃんとできたら印象ってこんなに変わるのか。人生でこんなこと初めての体験だった。



ジャーーーーッ



「今の時期に冬物は暑いわね」

「今年流行りのコートは夏にできてるもんよ」


そして、同時に粉雪と北野川も出てくる。

2人は冬物。さすがに中だと暑いので、1枚とコートのみの羽織り。粉雪はマフラー、北野川は熊の形をした耳あてのアクセサリー。涼しげな靴を履く表原、可愛いビーチサンダルを履く白岩と対照的な温かさと厚さのある靴。ブーツと呼んでいい。

冬物になると、アクセサリーで魅せるといった感じだ。



「綺麗ですねー、お二人共」

「当然。女が綺麗になれなかったら、正真正銘のブスよ」

「表原ちゃん達も似合ってるじゃない」

「えへへへ」

「…………」


全員水着だったら、白岩がヤバかったな。

そんな事を3人は思っている。こいつ、胸だけはホントに突出している。

特に北野川は羨ましいというよりか、幻滅するような目をしていた。自分と白岩を何度も比べる始末。そんなことも容易に想像できるため


「私も出ていいか?」

「早く出てきなさいよ。どーいう水着を着てるのよ、キッス」

「少し心配なんだが、布面積が小さくてな」



ジャーーーーーッ



シャツを着るかどうかで悩んだキッスだが、ひとまず粉雪達の反応を見ようとそのまま。

言っているように渡された水着の布面積は乳首を覆う程度。ちょっと触れたら崩れちゃう、ハイレグレオタードの水着。

それホントに着るんですかって、言いたくもなる。体のライン出てるので、凄いっちゃ凄いけど。

キッスをして


「エロい水着だった。まったく、魅了してしまうだろう」

「ちょっ……そ、それ。野花さんが……いや、たぶん。そのお父さんですかね?」

「キッスさ。ちょっと常識的にならないの?さすがのあたしも引くわー。それ、子供達とか来る場所で見せる水着じゃない」


用意したのは間違いなく、育の方だろ。それを面白がってOKを出したんじゃないかと、粉雪は推測。やっぱりあんた達は親子だと、粉雪は思う。


「すっごーい!ダイナマイトボディを魅せますねー、キッスさん!みんな、悩殺するんじゃないですか!?」

「白岩、能天気過ぎ。それはあるかもしれないけど、キッス。あなたの評判が落ちるわよ」

「まぁ祭だ。お色気担当もやってやるさ」


ほとんどの日を着物で過ごしているため、その体つきは大人のお姉さん?という疑問であったが、こんな水着となればエロイ姉ちゃんにしか見えねぇ。


「ルルに魅せてあげなきゃな」

「…………」


お、大人になるとこんな姿になれるのかな~……。

そんなちょっとした希望を持ってみた表原だったが、残念な例である北野川もいる。なにか良くなるというのなら、身嗜みにも精進しようと思う。


「とはいえ、その格好で廊下歩いたらヤバイから、シャツ着なさいよ。白岩も」

「そーそー」

「えーっ?」

「えーっ?じゃないですよ!白岩さん!あなたの方が体つき的にヤバイです!」



そんなこんなで着替えを終え、5人で一緒に野花達のところへ戻る。その時、自分もそうであるが


「粉雪さん達、妖精はどうしたんですか?携帯が義務って言われてるのに」

「ああ、祭やモデル業の時は別室で待機してもらってるの。レゼンくんもそうでしょ」

「本部の撮影場とかでやるから、すぐに駆けつけてくれるよ」


といっても、生物タイプの妖精は粉雪と白岩、表原の3名なのだが……。

意外にも積極的な参加には、相方である妖精達へのいたわりでもあった。妖精達も互いに話し合う相手を変えることで、日頃のストレスを抜く機会にもなる。

ふと、表原は呟く。自分が上手くいっているからこそ。


「レゼンは上手くやれてるのかなー」

「表原ちゃんの方が心配されるんじゃ?」

「そーだねぇ」

「えええぇっ!?そ、そ、そんなことないですよ!!」


誰かを心配したのは久しぶりな気がした。



◇      ◇



「……………」


表原のそんな心配など。レゼンはまったく感じさせず、妖精達が集う控え室の部屋に入れられた。

そこは妖人達の妖精のみならず、因心界が捕えていた未だに適合者が現れていない妖精達もいた。少なからず、知り合いはいる。とはいえ、友達が多いタイプでもなく。なんやかんや、秀才とか天才とか呼ばれる物は一般の輪から外れやすいもの。

そんなレゼンに声をかけた妖精は、



『ぼっちは寂しいかにゃ~?』


なんという事を言ってくる奴だ。適合者と同じく、この性格の悪さはさすがである……。

北野川と契約している、手鏡の妖精。


「……カミィ、お前もいたのか」

『当然いるにゃ。天才だともてはやされているのは、ただただみんなと一緒にされなかっただけの奴と一緒にしないで欲しいにゃ』

「別に、俺と対等はいねぇけど。友達ぐらいはいるっつーの」

『あ、私とあんたは友達じゃないにゃ。同期の顔見知りにゃ』


こいつ、なんで話しかけてきた。


「ラクロとはよく話すし(向こうの方が誕生が早いけど)」

『ラクロはここに居ないにゃ、飛島と一緒に病院にゃ』

「サングとは出会った時から」

『あいつは元々治療する妖精にゃ。レゼンのような一人ぼっちにも手を差し出すぐう聖にゃ。誰でもそうしてるから、お前とは別に友達でもないにゃ』


めっちゃムカつくな。

なにこいつ。


「友達の数の多い少ないなんて関係ねぇだろ。どれだけ信頼し合っているかじゃないか?」

『レゼンにしては良い事を言うにゃ。でも、お前に信頼できる妖精っているにゃ?』

「お前ぜってー、みんなから嫌われてるだろ」



とは言ったものの。カミィの口の悪さと口の上手さ。なんのかんので


「お前、友達いねぇけど。それに近いのは多いよな」

『にゃ~~。友達じゃなくて、動く手足と言って欲しいにゃ~』


顔の広さではカミィは凄い。従える強さというのを見せつけて、子分を抱えていたのを憶えている。

こう話している間にカミィの元へ、貢ぎに来る妖精達がいるし……。ネタでもつかまされているのか。そして、俺のそんな事を掴みにきたのか。


『ところでレゼン。お前今、何か考えていたかにゃ?』

「まー、そんなところだな。お前には……」


関係ない事だと、言ってやりたいところであったが。実は今のレゼンもこの祭の雰囲気に流れて、秘密裏に因心界にいる内通者を捜すことなどしてはいなかった。いつまでも真面目にやっているつもりではない。旧友などと話せる機会の方が少ない。

むしろ、こーいう時でないとできない事もある。天才と自負し、称されていても。まだまだ自分にも欠点がある事を知れた人間界。自分にとっては些細な事であるが、なんかしんないけれど相方には大切な事らしい。


「たぶん、関係ないな」

『いやいや、その言い方が気になるにゃ~。なんの弱みかにゃ?あ、間違えた。どんな悩みにゃ。相談に乗ってあげるにゃ~』

「お前なんかに本音を語るわけねぇだろ。悪用される」


最終手段は、こいつにしようと思う。

頭を抱えながら、この悩みにうってつけの妖精を探すのだが……。


『待つにゃ~。面白そうにゃ~』

「ついて来るな」


カミィと離れたい。お互いにいいもんじゃないからだ。

そんなこんなのとき、また話しかけてくる妖精。うっかりしていたら、カミィと同じ感覚で話しそうだった。


『レゼン。そんなに急いでどーしたんだ?』


あまり聞かない声。誰だよって振りかえると、かなり焦らせる妖精。周囲も俺達の存在に気付いて、ざわめく。カミィも敬礼するかのようなポーズで、その妖精の前で止まった。

世代が1つ違うだけであるが、互いに最強と天才と呼ばれた者同士。


『といっても、カミィから離れたかったと見えるかな?』

「イスケさん。あなたもここに来てたんですか」

『そりゃあ、ここの統治者であるからね。因心界で過ごす妖精達も、今日のために屋台とかやってるし』


甲冑の妖精。そして、涙キッスの妖精である、イスケ。さらに、妖精の国の統括であるサザンの息子。

血統至上主義の最強と、一般階級からの奇跡過ぎる天賦な才能の出会い。



『イスケさんとレゼンだーーー!世代の最強同士が出会ったよーー!』

『ど、どっちが凄いんだーー!レゼンはホントにやばいぞーー!妖力は歴代最大!紛れもない超天才!!』

『強いのはイスケさんだろ!力勝負に、最硬度なら、妖精界最強!!』


周りの盛り上がりに両名は少し恥ずかしさもあるし


「喧嘩するほどの仲じゃないんだが……」

『騒ぎになるのは仕方ないか……』


天才や最強と言われた者達の苦労。

そりゃどっちが強いか気になるのも分かるが、世代が違えば気になる程度のことだ。ここではお互い仲間であり、数少ない互いの協力者である事に違いない。


『にゃにゃ~。凄い盛り上がりにゃ~。イスケさんの次はヒイロにゃ!ヒイロの次は、サザンにゃ~!』

「いないところでは呼び捨てか……」

『しないしない。俺でも、サザン様とヒイロさんに勝負はふっかけないさ。ま、ところで。誰か捜しているのか?もしかして、ラクロかサング?』

「いや、サングとラクロじゃないんだけど。俺自身も、2,3回しか会った事なくて。ここで会えたらと思ったんだが……」


そういや世代的に言うと、イスケさんは同期だったっけ?

カミィが鬱陶しいし、こいつには頼みたくない。

俺のプライドを傷つけて、やることではないしな。


「実は……」


レゼンはカミィに聴こえないように、イスケに捜している妖精を伝えた。それはイスケからしても非常に意外過ぎる存在であり、


『え?あいつ……?』

「カミィに聞かれたらどーするんですか」

『にゃにゃ~?誰に会いたくて、何を企んでるのか気になるにゃ~』

「カミィはもう黙ってろ。どっか行け!」

『仕方ないにゃ~~。しばし、様子を見るとするにゃ』


カミィが都合よく行ってくれた。それをして、イスケはまた


『意外だな』

「意外とか言わないでくださいよ。ちょっとは褒美をやらないと、拗ねる奴なんだ」


レゼンの性格からして、誰が聞いてもそう答えるだろう。本人も少し恥ずかしがっているような表情だった。


『でも、あいつはまだここに来てないな。撮影が終わった頃には来ると思うが』

「まぁそれでもいいさ。一朝一夕でやれたら苦労しねぇからさ。相談役として、俺が求めてるだけ」

『時間はまだまだあるし、その間に俺の手伝いをしてくれないか?俺、移動とか得意じゃないからよ。物体型でめっちゃ重いから、運ばせるの悪いし』


あ、そーいうメタ発言すると。妖精達がどーやってこの祭りをやっているのか、分からなくなるだろ。

人間達を入れないからこそ、やっている芸当なんだから……。


「どんな手伝い?」

『ただの興味さ。ちょっと、話を聞きたい妖精達が……あ!あっち方面じゃなくてね、妖精側の管理者って立場での話しさ。他の妖精達が(特にまだ適合者のいない妖精)ちょっと、ビビッてるんだ』


妖精達にもストレスというものがある。だからその発散に、妖精同士の会合もあったりする。

レゼンと表原の仲の悪さは表立っているが、中ではそれなりの信頼感はある。それだけの死線を潜っているからだ。一方で表情は仲が良くても、内側はそうでもなかったりする。そーいうギクシャクが力を乱したりする事になり、これからのジャネモンとの戦闘が激化していけば、妖人と妖精のすれ違いは致命的な隙にもなる。

イスケもただの置物としているわけではなく、因心界にいる妖精としての仕事をしている。


「どんな妖精ですか?」

『本人達、まったく喋らないから対応に困るんだが……それに困った様子も見せないし』

「イスケさん自身の興味ってわけですか」

『そんなとこ。俺の大先輩に当たる』



それを聞いて、セーシの事かと思ったが……。あれに野花との悩みとかあるんだろうかと、レゼンは思う。

イスケからして先輩というのは珍しい。今の因心界の多くは、イスケとレゼンの妖精世代が多く占めている。それより上の世代の妖精で生きているのは数少なく、ほとんどが道半ばで死んでしまった者達だ。

生きている連中の多くはヒイロやシットリのような、物凄く強い連中だけだ。



実は表原もレゼンも会っているんだが、こうして生身で出会ったのは初めてだったりする。


『いたいた、あの2人組だ』

「誰?」


この祭に参加しているにも関わらず、施設の出入り口付近に居座って、祭が終わるのを待つかのような表情だ。

レゼンもその妖精が誰で、誰の妖精か分からなかった。圧倒的な強さは感じない。

ただ、他の妖精と違って異質な点がある。雪達磨の妖精にセロハンテープ、ペガサスの妖精にはホッチキスで。各々の口を抑え付けられているところであった。言論の自由を許さないような扱い。封殺行為はレゼンだけじゃなくとも、妖精からしたらなんとも言えない。


『……………』

『……………』


二人の距離感は寄り添っているわけでもなく、かといって離れているわけでもない。出入り口のボディガードみたいな距離感。

イスケが二人の名を呼んで、ようやくレゼンも分かった。



『フブキさん、テンマさん。相変わらず、その口。閉じたままでいいんですか?』

「!!ってことは、粉雪さんの妖精か」



初登場時はケースに入れたままの状態で使われていたため、全容は分からなかった。

これが網本粉雪の妖精。双方可愛らしい妖精であるが、不気味さも際立つ。


雪達磨の妖精、フブキ。

ペガサスの妖精、テンマ。


世代としては、ヒイロとシットリより上の世代。サザンとルミルミの世代の妖精である。

これより上の世代は本当に、数えるぐらいにしかいないほどである。


『……………』

『……………』

『俺は因心界の妖精組合の理事もやってるんで、分かってくれませんかね?』


無言を貫かれると困る。


『参加するなって言ってるんじゃなく、せめてその口元の、セロハンテープとホッチキス。外してくれませんか?こーいう時しか俺達は話さないんですから。後輩の妖精達がびびっちゃいます』


見た目が完全に悪いシットリを除いたとして、風邪を引いた時に使うマスクよりも邪悪さにしか見えない拘束道具による、言論封殺。ただ喋らないだけと思っているからこそ。そーいうのを外して欲しい。

人間とは恐ろしい存在だと、テンマとフブキの口封じから思わせられてしまう。決してそうではない。


『……………』

『……………』

『喋ってくれませんか。あの、確認ですが。粉雪さんとはしっかりとコミュニケーションをとれているんですよね?頷くだけでいいですから』


ただの無視だったら、悲しいものであるが。イスケの言葉にテンマとフブキは顔を合わせて、数秒考えたあとで。テンマは縦に頷いて、フブキは横に首を振った。


『え、ええっ。フブキさん、なにかあったんですか?答えてくださいよ』

『……………』


表情を読み取れって顔だ。これ会話するより疲れる。分かっているからこそ、レゼンが答える。


「冗談ですよね」


そう言われてフブキは、うなずく。そして、テンマが冗談を言って悪かったみたいに……。うなずいた。

心配をさせるようなやり取りだった。

サザンと同期の妖精。彼はかなり……特にルミルミの事はよく話していたが、他の同期についてはあまり話さなかった。彼と同期がまだ他にいた事には少々驚きである。


『それならいい……いや、良くないですけれど』


ヒイロがいるからこそ、その下の妖精達は安心できるし。イスケもこの姿のため、彼の対応には助けられている。セーシと同様に理事なりのチャチを言うが、


『下の見本になるような、振る舞いをしていただきたいです。粉雪さんは有名でもあるし、あなた方がそんな使われ方をされてると知ったら、驚きはありますよ』

『………………』

『………………』


セーシの場合は、妖人化が少ないものの。コミュニケーションは通常の妖精以上にとっている。対して、この2名はまったくとっている素振りがない。まともな神経だったら、磨り減って潰れかねない悪い見本。人間みんなが網本粉雪のような強靭な人間というわけでもないし。

妖精も妖精で、人間達と歩み寄るための意見交換が必要なのだと考えさせられるもの。

2人組とはいえ、互いのコミュニケーションもかなり限定的。

イスケの言葉に対しても、うなずきなどの対応で済ませること。


「変わってるな」

『昔からあーらしい。ところでレゼンくん。もし、キャスティーノ団の壊滅が無事に終わったら』

「ん?なんでしょう?」

『因心界の妖精組合の管理をしてくれないか?レゼンは時代の代表だ、周りの文句はないだろう。キッスには俺から言うつもりだ(まぁ、"構わない"で終わるだろうけど)』



先ほどから名が挙がっている、"妖精組合"。

妖精達のケアをするため、妖精が主体となって行なっている組合だ。社会っぽい。

戦闘という危険な事も含め、対立、揉め事などもある。妖精側からしたら、死や痛み、契約内容を恐れて妖人に力を使わせることもある。一方で人間側からしたら、危険を冒せなくなり戦う事を拒否する事もある。

あくまで一例であるが、妖精達との契約に不満を持つ妖人がいること。逆に、妖人に妖精が不当な扱いを受けている場合。妖精の皆を集めた意見を因心界に訴える事ができる。

その後に、公平なる意見交換を通じて、因心界からの脱退。あるいは、契約破棄による両者への罰則などが試行される。脱退者こそ多いが、両者の罰則は今までにない。


"十妖"の中に、ただ1名にして、№2を授かっている太田ヒイロが、"妖精組合"からの意見書、抗議文などを受け取って、妖人達に圧力をかけてくれる。このような妖精同士の集まりも、こちらからの意見であり、ヒイロの協力があってできた事。

彼がいてこその強い発言権があり、組合としての機能を維持し、暴走などさせずに秩序を守っているイスケも良き働き者である。さすがにキッスの妖精だけあるスペック。



「セーシさんに頼んだらどうだ?年功序列は有効だし、なんだかんだでセーシさんは強いし、すげぇ妖精だ」

『2,3度頼んだが、断られた。フブキさん達とは喋った事ないからと』

「あの2名は妖精の国の頃からそうなんだろうか……」


関係が良好という言葉も、本人達の頷きだけでしか聞いた事がない。

心配になるのも当然だった。



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