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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第20話『引きこもり不謹慎馬鹿をぶちのめせ!佐鯨VS茂原!』
53/267

Bパート

これは攻撃が始まる前の事である。



ゴクゴクゴク



「ぷはぁ~……、不謹慎動画って知ってる?ダイドー」

『周りの誰もがやらない事をして、注目を浴びるアレか?』


水道局にて、茂原伸はやっていた。

彼の妖精は缶の妖精、ダイドー。江藤の妖精、コクマロと似たようなタイプで、飲料缶の妖精である。

彼女と同じく、ダイドーの中身を飲むことで妖人化する事ができる。

一気飲みした後におでこを左手でやさしく押すような指をつくり


「『邪神たる黒霊獣くろれいじゅうが吼え湧き上げるは、絶望の沼なる青紫あおしは死へと導く毒』」


ここ地下だし……。そこまで毒性はない……。

青空なんてものよりも、夜空を求めるように満月の形を両手で作って上に向ける。


「『月の神による影と闇の支配!太陽の神、逆立て沈め!星1つも輝かん!』」



常に世界はたった一人。それを伝えるかのような、一本指ポーズで締める。


「『世の滅亡を求め、暗黒毒龍の降臨!!"ユニオン・ドラゴンニクス"』」



言葉通り、黒と紫をベースにされた。ダークヒーロー風の妖人となった、ユニオン・ドラゴンニクス。


『長いから、茂原でいいよな。自由名にしてやったけど、長いから……』

「いやいやいや!!"ユニオン・ドラゴンニクス"だろうが!!超カッコ良くない!?ドラゴンだぞ!暗黒龍だけでも確かにカッコイイ。だが、僕は黒紫龍が好きなんだ!!分かる!?」

『いや、分からん……恥ずいんだが』


超長い意味と、超長い戦士名。

これだけでも戦闘が苦手なのが分かる。


「ダイドーさぁー。君に足りないのは、厨二力だよ!」

『なんだそのパラメータは、初耳だ』

「この想像力!この人間という種族を超えた頭脳!誰も僕の考えに追いつけない世界!僕こそが頂点!」


いや、それ被害妄想。


「そう!どうして、僕が今まで暴れなかったと思う?僕は強すぎるからだ!!毒を撒き散らす、暗黒紫龍の血を退いたハーフなのだ!その力はダイドーによって、解放され!世界を混沌に導くのだ!」

『すでにイタ過ぎる……』

「ふははははは、僕は!此処野さんに殺されかけたが、生き残った。そう!暗黒紫龍が僕を背に乗せ、現世に連れ戻し、僕は龍を超えて神になるべきだと!!」


時折、こいつの考えについてこれない。

というか、"萬"の中でもハブラレ者だった。それに気付いていないのは本人だけだろう。可哀想。


『話しを戻して、不謹慎動画がなんだって?』

「僕はあーいうの好きなんだ。誰からでも注目を浴びれる、僕だけの世界が現実に起こせた事実。あの、あれ、なんて言うのかな」

『承認意欲か?』

「そーそー。たぶん、それ!僕って凄いんだって、世界に広められる!」


ただのイタイ人だっつーの……。


「此処野さんはまさにその頂点だよ!僕とそう変わらない年頃で、世界を敵回している猟奇殺人鬼。殺すなんて事を平然としながら、戦っている凄い人だよ。僕の理想像!誰もやらないじゃないか」

『誰もやらないと思うが、誰もやられた事のない罰を受けるような気がするがな……。というより、自分が殺されかけた相手を尊敬するとか、おかしいぞ。お前』

「それが僕が、人間なんかと違う人間である証明じゃないか」


他人とは違う事で満たされる。自分が特別だと思い込む事に関しては、天性的な素質がある。

妄想力というより、被害妄想が非常に強い。

そして、独創的な考えもある。日頃のストレスで周りにある普通を許せないという人間はあれど、撒き散らしてしまう承認欲求は傍迷惑。

洗浄された水が街へと流れる大切な水の流れのところで、茂原はズボンを下ろして



ジョボボボボボ



「いやぁ、誰もやったことないよね?綺麗な水を送っている水道局さんの水に、僕の小便が混ざるなんてこと」

『動画撮影してないだろ。不謹慎動画を作るんじゃないのか』

「いいのいいの。別に……僕は、視聴するのは好きなんだよ。でもね、」


一通りのやりたかった事をした後に、



「世界が僕を知ればいい。真実を知るのは僕だけでいいんだ」



邪悪というよりかはそうあるべき、彼の中の常識。いや、知性と幼く語れるものか。



「水道局に小便と一緒に毒が流されている事を世界が知ったら、すごい事件じゃあないか。仮に世界が気付けなかったとしたら、世界とはこうも浅かったと感じ取れる。不謹慎とは広める事じゃあなくて、皆に知られてこそにあるもんだよ」



厨二感と異常性。



「大事件が起きたニュースを聞くと、悲しみと興奮が湧いて来る感覚あるじゃん。ホラー映画のドキドキとも似ている、ハラハラしてくれる世界」



セッティや江藤の非情性とはまた違った、人間の考え。

歳は"萬"の最年少。それ故の不安定さこそが、彼の普通なのかもしれない。



「僕、生まれて良かったよ。死ななくて良かった。毎日食べる物、毎日通う道、毎日使うお金、そこに不安というものを注いでやるんだ。人や世界が信じているものをメチャクチャにしてやりたい」



◇      ◇



ピュアシルバー突入より、6分。



「さ、サソリだった……」


飛島はようやく生きている従業員に遭遇した。それも複数人。今日、勤務していた人達だろう。

北野川にも協力してもらい、彼等から秘密の情報を得る。


「た、大量の蠍が現れたんだよぉぉっ!こんなところに蠍の群れが来たんだぞ!」

「わ、分かりました!これで少しは前に進めます」


精神が壊れているような目をしていた。精神を不安定にさせる毒か。蒼山に吐かせたタイプと同じ蠍だろうか。


『ピュアシルバー。こいつ等、北野川達とは違う毒に侵されてないか?』

「直接的に毒を仕込むタイプだろう。多少の接近でも対応できるようだ」


ただ、私達が侵入して来てから蠍を見ていない。幻覚作用もあるのか。


「真実は掴めたか?彼等に幻覚症状があるぞ」

『そんなの関係ないわ。ここまで話せれば十分よ』

『しっかり秘密は得られました!完璧ですよ、"ピュアシルバー"』



現実か幻か、本人が判断できなくても。真実だけは常に残る。


『濃い紫色した蠍が突如として、この水道局を襲ってきている』

『でも結構、小さいみたいです。壁の隙間をすり抜けて、従業員達の足を襲ってます』


シークレットトークの本領が発揮される。


『足のところに刺された傷があるはず。かなりの数よ』

『気をつけて、捲ったところに蠍がいるかも!』


ピュアシルバーはゆっくりと従業員のズボンをまくって、足の傷を確認する。十数か所。それも似たような箇所に刺されまくっている。弱い毒性だから同じところに、沢山の攻撃をしなきゃいけない証拠になる。


「佐鯨に連絡する。ジャネモンと蠍に気をつけさせて、突入してもらう。一旦、切るぞ。北野川」



コポポポポポ



『?なんの音だ』


ラクロが感じ取ったのは、水が引き込まれるような音だった。それはとても極小の音で、ピュアシルバーには聞こえていなかった。振り向いた時、そこには何もなかったからだ。


「佐鯨。突入してこい」

『おう!』

「いいか、中はジャネモンがウロウロしている。それとまだ私は見ていないが、この水道局を襲ったのは小さな蠍の群れだ。弱い毒性があり、幻覚症状を見せる。集団で襲われて、従業員がそれでやられている」

『奴の居場所は?』

「さぁな。ともかく、中は広い。手分けして、注意深く捜そう。私は今、地下にいる」



ドスゥッ


「!!」



針に刺された痛みより、注入される毒による効果の眩暈が来た。ピュアシルバーの左足首を襲った蠍が一匹。



「っ……蠍……」

『な、なにーーーー!?どっから来たんだーーー!』



すぐにピュアシルバーは蠍を振り解き、ラクロが噛み殺した。


『ど、どこから来た!?匂いはまったくなかった!物陰や人の中に隠れてたのか!?』

「くっ……」


毒というより体温を上げさせ、発汗機能を麻痺させるような攻撃か。何度も打たれると幻覚まで見える。


「部屋を出るぞ。囲まれてるかもしれない」

『おう!』


こーいう時こそ、冷静にならなければならない。

見えない罠がある。これを佐鯨に伝えなければやられる!


『ピュアシルバー。さっき俺、なんか水が引き込まれるような音が聴こえた!あの蠍、水の中を移動できるんじゃないか!?』

「水か……。いや、あの部屋に水はなかった。……私の汗や体内に蠍が入っているとしたら、外傷的な攻撃を仕掛けるのはおかしい」

『ちょ、直接やられたって!?でもよ、部屋の出入り口は俺が見張ってたし……』

「壁の隙間をすり抜けて来たと、北野川は教えてくれた……」



壁の隙間……?言っていて思うが、よく分からないな。

蠍が現れたのは、壁の隙間ではないんじゃないか。



「ふぅー、ふぅー……」


間違いなく、蠍は壁から現れたのは事実だ。問題はどのような方法で移動し、襲ってくるか。自動かつ遠隔操作が可能と見るべきだ。本人の強い意志が能力を高めている話もある。



「……さっき、音がしたと言ったな。水が引き込まれた音って」

『ああ!間違いないさ!幻覚じゃない!』

「蒼山と似た能力かもしれない」


かなり多彩な妖人だが、リスクの多さはあると見た。


◇      ◇


そして、施設に突っ込んでくる佐鯨こと


「『勇気よあちゅく燃えあがりゃあ、ブレイブマイマイハート!!』」

『もーっ!さっきは上手く言ったのに!!なんで失敗するの!ハイ、解除!!』


ブレイブマイハートが水道局に突っ込んできて……。


「じゃね~~~」

「あたしの怒りが込められた渾身の拳ぃぃっ」


格好の標的になっているジャネモンに向かって放たれる拳。

頭脳戦を完全に無視する、超脳筋系の襲来。


「オラアアァァッ!!」


ドゴオオオォォォッ


「どいつもこいつもややこしいぃっ!あたしは頭が良くないんだーーー!」


やらなくてもいい雑魚をぶちのめしていく、ブレイブマイハートであった。

正直に飛島や北野川などの心配など、自分は気にしていない。強い奴が強い。たったそれだけで突き進む。男たるもの、男らしくいく。今、女だけど。


「具体的にどうするかは聞かないで!」

『考えないじゃん。私とブレイブマイハートはさ!』

「だから、相性バッチリ!!」


敵は全員、ぶっ飛ばす。


「茂原、出て来やがれ!!タコ焼き殴りにしてあげる!!」


そう叫んで、ちゃんと出てくる奴がどこにいる。

茂原はこの水道局のどこかに隠れている。ブレイブマイハートの正面に立つとかじゃなく、じわじわと追い詰めていく気だ。

ブレイブマイハートの戦う姿を、"とある場所"から蠍は確認し、追跡を始めた。


『ギチチチチチ』


茂原の妖人化。

"ユニオン・ドラゴンニクス"


能力はシンプルそのもの。毒を散布し、操る能力。しかし、不正な契約を用いて、多様性に富んだ能力に昇華させている。これは茂原が自ら課した制約で動いている。というより、毒の発生条件組み込んでいるというものか。

超広範囲に撒き散らした毒は、調理されたその瞬間にのみ発現される変わった毒。

蠍という生物を具現化し、幻覚などを見せる毒を打ち込める。

飛島が驚くほどの多様性を持っているのは、彼も彼なりの覚悟を持っているという事だ。



「んー…………」



とある一室の壁の隅っこで、根のような物を生やしている妖人がいた。

その姿は単なる陰の人間。薄すぎる根暗野郎。不気味にしか見えない表情。


「くくくくく」

『妖人化すると動けないリスクはデカイし、ただジッとしているだけじゃないか』

「いいじゃん、それ。そーいう、契約で。歩き飲みもマナーが悪いじゃないか」


いかにも戦えそうな格好をしながらも、じっと体育座りで隅っこで待つ。

自分達が放った毒で人間達が苦しんでいる様を想像しながら、愉悦する。


「1人にとって、想像とは楽しみ」


自分語りが好きであり、それは自分が自分のためにやっている。彼にとって、ダイドーは自分の分身のように大切に思っているのだろう。ただ、その分身がちょっとだけ、まともな人格を持っている。


「毒を発している間、僕は動かない。僕の世界はこの姿勢、この場所から生まれるんだ」


ただの陰キャにしか見えない。それも卑屈に走った人間。


「蠍達は自動操縦だし、ジャネモンもテキトーに動くけど、僕なんかを見つけられっこない。到達するわけがない。だから、絶対に僕は負けない。いや、戦うことすらないからだ」

『しかし、茂原。この場所に佐鯨と飛島が突っ込んで来たら……』

「それも大丈夫。契約は色々したじゃないか。あーいう契約、こーいう契約。僕は全てを熟知してるから、いざという時は戦えるのさ。彼等とは狂気も背負ってきた過去も違うからね」

『……少し心配だ』


制約やら契約をゴチャゴチャと結びつつも、それらをキッチリ把握している茂原だった。単に記憶力が良いというより、妄想力と混ぜ合わさった記憶操作。単純に記憶する事も、あまりないからできるのだろう。


「ふひひひひ」


奴等が消耗するのは必死だ。

蠍は確実にお前達を襲う。



◇      ◇



"お姉ちゃん"……"お兄ちゃん"……"華"……。


「ふーーっ……」


水道局内での戦闘。連戦に加え、これまでの活動と此処野から受けた傷がやはり大きい。精神力のあるピュアシルバーであるが、体のダメージも大きい。弱いながら毒も入れられている。

壁に寄りかからず、床に立ち止まらず。



「ふーっ……」

『そ、そんなところで休めるのかよ!』



階段の細い手すりに乗るような形で、ピュアシルバーは止まった。これなら多少視界も保てるが。

息も荒く、まったく休めるような体勢じゃない。



「ブレイブマイハートが来てる。……少し、役に立てなかったな……」

『何言ってる!ピュアシルバーがいなかったら、ここまで来れてない!!あとは敵を見つけるだけだ!』


ラクロは、ピュアシルバーとリードで繋がれている。ピュアシルバーを乗せて捜しに行きたいが、ところどころの通路の狭さもあって、大きなサイズにはなれない。犬を連れそう形でここに来ている。

主人であるピュアシルバーを守ることが最大限の務め。


「ふーっ。……どーやら、茂原の能力と居所が分かりかけてきた」

『!』



壁がモゾモゾと動き始めた。意識はふらついているが、幻覚じゃないのは確か。

蠍がいる。それも群れでいる。


『ギギギギギギギ』

『こいつ等、別に1匹1匹大した事はねぇ!ピュアシルバー、休んで!妖精の俺にテメェの弱い毒なんか効かない!』


やる気満々のラクロ。一方で、ピュアシルバーは意識が飛びそうになりながら、スマホを取り出した。


「ラクロ、少し頼みがある」

『守ってやる!今度こそな!』

「……そうじゃない。今は違う……」

『!?』

「茂原を、倒すため……だ」


まだ、こんなところでくたばるつもりはない。全ての最善に、全霊を持って臨むこと。

命はどんなに優れていても、どんなに恵まれようとも、嵐1つで転覆する。

そして、嵐なんかで倒れもしない命もあることだ。


「やれっ、ラクロ!!躊躇すんなっ!!」

『!分かったよ!!信じているからな!』


どんな苦境を味わおうとも、……


挿絵(By みてみん)

表原:前々から思っていたんですけど……

レゼン:なんだ?

表原:主人公あたしなのに、役どころがビミョーというか。相手側のメインを倒すーみたいなカッコいいポジじゃないですよね?

レゼン:そりゃそうじゃん。人生振り返っても気付いてなかったのか?

表原:グッサリストレート!

レゼン:これ何回か書くと思うので、改めて載せるが。作者はメインの主人公を決めているけど、物語の大半のキャラにスポットを当てたがるタイプなんで、基本は主人公なんて誰でもいい感じらしい。



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