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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第19話『ポイズンパニック&追撃の殺人鬼!表原、空から落ちる!』
48/267

Aパート

ドスゥッ



【キャーーーー】

【と、通り魔だーーー!】



人はある日突然、歪む。

何事もないという日常。朝に気だるく起きて、登校しに行く変わりもしない通学路。きっとこの先はつまんねぇって、思いながら。何か事件でも起きないものかって、狂気とは無縁の中に現れた自分の中にいる一人の救世主。


その顔は自分達にはない。どのような教育を受けてきたのか、知りたくもなるほど。自分を含めた一般人にできる顔ではなく、特別なものを感じさせた。

振るっている包丁は何もかも殺してやろうとする、漆黒の狂気。向けている目は自分よりも遥かに弱い人間を邪魔ではなく、愉悦しながら刺しまくる。あんな風に自分を、あんな風に子供を、あんな風に老人を、あんな風に女性を、あんな風に男性を。

あーやって、人を殺していく事ができるなんて……


【カッコイイ】


死の世界を彷徨い、流れ出る血。不思議と、後悔や無念などなかった。

多くの人間は、その事件によってトラウマを植え付けられるものであるが、彼がそれを受けなかったの。自覚していないのであろう。心臓がどのように9年間動いている程度にしか、生きるというのを自覚していなかったからこそ、彼は自分に降りかかった不幸を気付けなかった。


あの時の傷はなくなれど。心に与えられた衝撃は思春期と合わせて、邪悪な人間を作り出そうとしていた。



【僕達を刺した、此処野神月になりたい。妖人となって、やってやるんだ。なんでもいい、妖精をくれっ!】



"萬"、最後の1人。

茂原伸しげはらのぶ。新参ではあるが、此処野の凶悪性に憧れ、狂気の実力を身につけた者。不正な契約を望んで結び、手にした能力。妖人化。それよりも危険とされる性格は、内外からも危険視されており。"萬"のみんなが倒された時、彼が動く事を約束された。



【僕は世界を滅ぼす、神と成るんだ】



なんたって、彼が所有している能力。この中二臭い粋がった言葉に相応しい、危険を秘めている。




◇      ◇


働く者、学ぶ者。いや、全ての人間達に言える事であるが、


「飯にするか」


飲食をするものである。もうすぐ、お昼だ。お腹も頭も栄養を求めている。学生さん達、社会人さん達が駆け込むように、飲食店やフードコートを訪れるのは普通。

お弁当なんてものにありつくのも、普通な光景。

会社内や学校内。あるいは公園とか、車の中。駅の待合室なんか。


なんてことのない日常の平和。


友達や先輩、後輩。時に憧れの人と食事をする。

そりゃ1人で食う時もあれど、腹減っている時の飯は、大抵美味しいものだ。


「ビールもいければいいんだがな」

「それはダメでしょ」

「仕事が終わってからにしなさい」

「タバコで我慢すっか、喫煙者に厳しいんだよな」



憩いの時だ。

辛い事や大変な事、色々あれど。楽しいもんを楽しいを、飯食いたいから飯食うぐらいで表現すればいい。そうすれば、ちょっとは乗り越えられるものがある。

そんな憩いはもちろん、警察などを始めとする防衛の皆様にもあり。因心界の多くも、今のお昼時を楽しんでいた。

江藤の死亡から数日が経過し、因心界はまだ茂原伸の居所とその黒幕の正体の手掛かりすら掴めていない。


「おばさん、カキフライ定食で」

「はいよー。北野川ちゃん」



因心界には構成員、広報、情報収集、商品開発、育成と教育などなど。様々な人間達が働いている。妖人だから因心界にいるわけでもない。普通な人間だってここに勤めている。

そんな食堂はそこそこに人気があり、安い日替わり定食はかなり好評。

いや、それくらいしか好評部分がないと言える。


色んな人間を集めるため、食堂は広くて色んな人と出会う事になる。



「北野川じゃん!一緒に食べようぜ」



名前を呼ばれてもスルーする相手



「ちょっちょっ!無視ってどーなんだい!?」

「あんたが虫に見えたからさ。お前は話しかけんな、キモイ」

「酷いっ!酷いっ!!」


蒼山と偶然に居合わせた北野川。席が空いている理由も分かるが、隣を優しさで座っているこいつに気を遣って向かいの席に座ってあげる。同じ幹部同士だ。


「飛島、あんたは勤勉ね。お弁当まで作るんだ」

「家がここにあるからね」

「そうじゃなくてもさ。料理なんて人に作らせればいいじゃない。どっちも金と時間がかかるんだし」

「確かにそうだな。だが、自分好みと気分に合わせるなら手作りするのが良いんじゃないか?」


男のくせに、栄養バランスを考えたヘルシーなお弁当を見せられると、このカキフライ定食のカロリーが気になる。カロリーが高いからこそ、頑張れって意図でもあるんだが……。


「それとラクロのご飯の事もあるしね」


モゾモゾと飛島の背中から顔を出す、アライグマの妖精、ラクロ。基本的になんでも食えるのだが


『旨そうだな、カキフライ定食!!あれだよな、あれが飯だよな!?』

「ダメよ。あなたはこの白身魚のサラダと食パンって言ったでしょ?」

『えーーっ。ガッツリとした肉を食べたいぜ』

「それは水曜日と金曜日、日曜日だけって言ったじゃない。その他はお野菜とお魚を摂りましょう」


さっき自分好みとか言っていた気がするが、ラクロには選択権がないので可哀想に思う。このカキフライにヨダレを出しつつも、飛島の言葉でしょんぼりした表情になった事で、ラクロの言っていた事が手にとるように分かる北野川。


「あんた、マメな奴ね」


タルタルソースをかけた野菜とカキフライを、これ見よがしに。美味しそうに食べてあげる北野川。それを見て、落ち込んでしまうラクロ。


『カキフライはお肉じゃないだろ……。旨そうに食べられると、堪えるぜ』

「なら、ラクロもこの食事を美味しく食べてあげるのが、良いんじゃない」


飛島のこーいうところが好きになれん。いや、素晴らしい心がけなのは北野川だって認める。


「ホントにここ。息苦しいわ」


生真面目バカ共の集まり。やっぱり、話しの合う奴、合わない奴がいるものか。


「食事制限なんて酷いなぁ。飛島、ラクロが可哀想だよ。自由こそ大切じゃないか」

「蒼山はパンツを制限したらどうだ?」

「僕に死ねって言っているのかな?」

「大分前から言っている」


飛島はお弁当、北野川はカキフライ定食、蒼山は蕎麦と天ぷら。

食事中もあってか。飛島はこの問題児達に話をふっかけるのもあってか、


「北野川。また香水のオススメってないか?」

「あんたの女装趣味を加速させるのは、ちょっと気が引けるんだけど」

「香りとなると、一個人の判断よりも多くの意見が大事だと思うんだ」

「そりゃあ、確かにだけど。私が持ってるのいくつかあるから、試させてもいいけどー」

「金の方か?」



こいつに対して、こんな事を言うのもなんだが


「いえ。直に店に行きましょ。白岩とかも連れてさ」

「それはいい。多い方が楽しい」


見た目、どっちも女性であるが……。

男と女がこんな約束。


「なら僕も!」

「荷物を送る役目ならいいぞ」

「あんたの能力は便利だからね。能力だけは」

「……マジですか!?今の言葉、脳内に焼きつかれたよ!!」


蒼山への冗談はともかく、飛島はなんとなくだが。北野川の微妙な心境の変化を感じ取った。

言葉にはしないが何か思うものが最近になって、できたんだろうって思う。

北野川本人は気付いていない素振りのようだが、因心界の中の古参であり、敵としても戦った事のある飛島には北野川の心境の変化を良い方に思った。

入った当初は、様々な問題もあり、誰とも関わらないようにしていた。勧誘を行なった白岩ぐらいとしか、話さなかった。


「なによ」

「何か良い事でもあったか?」

「ないわよ。特に」


表情に出ているのかって、頬を触るあたり。なんかはあったのかって本人も気付く。


「ないわね」


二重の確認だった。

そんな時。



ドタァッ


「ううぅっ、気分悪ぅ」

「なんか、お腹が痛い……」



食堂での出来事。食べている人たちがこんな声を挙げて、テーブルに突っ伏したり、そのまま床に転がったとなると。なんの冗談かと疑ってしまうものだ。介抱しようとする人達も何をしたんだと、冗談ぎみではあった。

だが、



ドタァッドタァッ



「!?」

「ちょっ」

「な、何事~~!?」


バッタバッタと、体調の悪化から崩れていく者達が急増すれば、パニックになるのは当然。

彼等は熱や吐き気、腹痛を訴えている。


「みんな!!動くな!手を止めろ!!」


即座の判断。飛島の一喝が、まだ動ける者達を留めた。どこで誰がやっているのか分からないが、この因心界の本部に攻撃を仕掛けてきている。いや、


「テレビやラジオをつけろ!世界中の情報をすぐに出せ!!」


それを込みでの攻撃だとしたら、計り知れない被害になる。


「しっかりしなさい!」

「ど、ど、どーなってるんだよ!何があってこんな事になってるんだ!?」


食中毒のような攻撃。

倒れた一人を介抱する北野川は


「『TalkDancing、"シークレットトーク"、オ・シ・エ・テ・ネ』」


妖人化し、この1人の状態を把握することにした。

食中毒の類いではなく、なんらかの条件で攻撃されたと判断している。

医療知識なんてないし、得られる秘密もたかが知れているが。


「お腹痛いとか熱が出てるなんて聞いてないわよ!」

「何をしてこーなってるんです!それを教えてください!」

「分からないなんてゴミよ!」

「他の人達に聞くわ!」


能力が能力だからか。弱っている相手が傷付くような事ばかり言って、秘密を聞きだしている。


「食べたから!?」

「分かってるよ!何を食べたの!」


食べ物で判断している攻撃。

シークレットトークの汗の量も多くなってきている。そして、飛島は自分を含めて、この食中毒のような攻撃から免れている者達が、何人かいるのを確認できた。


ゴロゴロピー


「ぅっ……ちょ、うぐっ」

「蒼山!」

「ぼ、僕も腹が」


蒼山が床に膝をつき、倒れそうなほどの腹痛をおっているところに


「ひとまず!」



ドゴオオォォッ



「蒼山、吐け!!」

「げぼらぁっ!?」


飛島、渾身の腹への蹴り。先ほど食べたモノを出させるためだけに、容赦のない蹴り。さらに自分専用のマスクをすでに装着している。

表原以外でやった主要キャラは彼。食べていた蕎麦を吐き出した。



「ごほぉっごほぉっ」


蒼山の状態。体の中から蝕まれるような、痛みだった。

内臓関係を攻撃してくる細菌のようなもの。そいつが形になっているかどうか。飛島がそれを覗いたとき、強烈な嫌悪感が生まれた。蠢く


『ギィギィギィィィィッッ』

サソリ!?」


とはいえ、その形をしているだけであって、かなり小さい生物。そして、体外から出されたためか、蒸発するかのように消えていく。


「おええぇっ」


飛島に蹴られた事もあるが、体の不調が止まらない蒼山。すでにこの蠍の形をした菌が体内で増殖しているんだろう。


「ぐうぅっ」

「いっ……」

「シークレットトーク!お前もか!」


妖人化していた事が多少の軽減になったとはいえ、彼女もこの攻撃の対象となっていた。蕁麻疹のようなものが肌に現れていき、熱が上がっていく。だが、その前にこいつの秘密を得られた。


「ひ、飛島。敵を捜して……」

「分かっている!」

「食べ物や飲み物に、菌を仕込まれてる」

「場所までは判らないけれど」

「水の中で菌が生息してる」

「水作ってるとこ……捜して……」


次々と情報が放送やメールなどで送られてくる。シークレットトークが懸命に抜き取った秘密。そして、倒れている者達の事を



「蒼山!ここの者達を任せたぞ!!」

「っ……」

「お前"は"死ぬな」


全て、倒れている蒼山に託して。攻撃を喰わなかった飛島とラクロは、食堂を飛び出して情報収集に入った。そして、飛島と同じように敵の攻撃に喰らわなかった者達はあまり多くなく、倒れる人達を介抱していた。

蒼山だってかなりボロボロになってしまったが、


「飛島の蹴り、痛かったんだよ……勝手だな」


大きな役目を背負って、飛島達と同格。変態だとしても、人格が終わっていると言われても。こいつの能力があまりに稀有であり、強力。


「フォト!ドレスアップ!!」

『了解』


カメラの妖精、フォトを取り出し、自撮りし。蒼山の体は光り輝きながら、変身していく。



「『はかまなびかす空を護る使者!スカートライン!!』」


今日の気分は戦士というより、救急隊員のような人を救うためにあるコスチュームに変身。

妖人化をし、スカートラインになる。

すると、それを感知し。なにやら大急ぎで戻ってくる足音。


「やはりお前の妖人化が気に喰わん!!蹴らせろ!!」

「いや!敵を追ってよ!飛島!!こんな時まで、ツッコミ役させないでよ!ただの虐待ですよ!!これ!」


倒れているスカートラインに、ゲシゲシと踏み入って今度こそ、出て行く。わけじゃなく。


「私ごとやれ、スカートライン。表原ちゃんの力が必要だった」

「!そーいう事か」


かつて、蒼山を捜した時に、表原の能力の精度を知ったからこその飛島の機転である。

なにより自分がやるべき事は敵の特定。

そして、スカートラインのやるべき事は。



シュピイィィィッ




現実世界に、突如現れ始めたのは写真のフレームと思わせる白いライン。食堂全体をすぐにおさまるラインの中が範囲。

スカートラインの力を出し切って、自分を除いたこの中にいる人間達を。


「"病院来訪イノチガケ"」



パァァァンッ


古野のいる病院に、問答無用で転送する。それは瞬間であり、傷付いた者達や動けぬ者達の全てを運ぶ。

人を護り、助けるという点では、このスカートラインの能力は強さとはかけ離れていて、貴重な要員なのが確か。ただし、


「これ使うと、僕。無防備だし……しばらく、能力使えないし」


スカートライン自身は転送することができない。

住民を護り、保護することに長けているが、自分自身を護ることができないのが最大の欠点。大量の人間を強制転送するため、力の消耗もハンパではない。

本人が冠する様に、"イノチガケ"な技である。



◇      ◇



食中毒と思わせる今回の事件。

それは飛島達が予想していた通り、明らかな無差別攻撃であった。


「うげぇぇっ」

「お腹痛いよぉー」

「熱が……出てくる……」


お昼時というのもあって、万単位を軽く超える被害が起こった。

ほとんどの飲食店でパニックが起こっており、コンビニやスーパーで買って食べた物。果ては自販機で買った飲料水でも、飲んだだけでの食中毒状態に。

恐ろしく広い発症範囲。

そして、そんな攻撃だからこそ。誰を攻撃しているかも茂原は分かっていない。




「げほぉっ、えほっ」



買って来た午後の紅茶を飲んだ途端に感染したのは、SAF協会のアイーガだった。高熱を出し、咳き込んでしまう状態で公園のベンチに倒れかけていた。



「ふーっ」


そんな危険な状態であるアイーガの横では、俺は攻撃を喰らってねぇからカンケーねぇとでも、言っている面でタバコを吸っている此処野神月。

誰がやったか此処野には分からないが、周囲から立ち上ってくる沸々とした邪念を眺めながら、



「こいつ、つまんねぇ野郎だな」


ルミルミとシットリからの指令。まだ誕生させていないジャネモンを生み出す事。この邪念はあまり現れない邪念であるが、そいつはきっとキャスティーノ団の奴が出しそうな雑魚。

こっちはアイーガも倒れている事もある。



ジュワァッ



「あっつぅぅっ!タバコを顔に押し付けないで!!げほっ」

「ふん。"こんな攻撃"で弱ってるんじゃねぇ」


仲間意識なんてない。いや、そもそも此処野。

生きている者を殺すために生きている。


「アイーガ、邪魔だ」


アイーガの命をとろうとするような言葉とは裏腹に、此処野はアイーガを見捨てるようにどこかへ歩いて行く。

とはいえ、素直じゃない奴。


「このクソだせぇ敵はぶっ殺す。お前を助けるための救急車も呼ぶ。ジャネモンも作る」


やらなきゃいけない事が多々あって、こんな事を此処野はアイーガに伝えた。


「一度に解決するには、この俺が全員、ぶっ殺せば解決だ。この辺りの人間を殺しまくって、救急を呼んでやるから上手く紛れろ」


いや、普通に呼べよ。って、妖精であるアイーガですら思っている常識的な事が、此処野にはない。プライド染みたもんじゃないし、助ける事も助けられる事もおそらく好きじゃないから、こんな事を言っているんだろう。

とはいえ、アイーガを除いた人々にとっては、迷惑どころじゃないキチガイの行動。

理性や良心のクソもない、残虐非道な殺人鬼。"人間卒業"などと言われる男の今日こんにち



「アタナ、今日の俺は殺しがしてぇ。特に弱っている雑魚共の首を刎ね飛ばす」



殺戮のち、殺戮。


血の雨を降らせる予定。


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