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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第14話『パフェっと天国に忍び寄るSAF協会!!戦うのは……録路VSダイソン!?』
34/267

Dパート

ナックルカシー VS ダイソン。


「食後の運動だと?……俺にふざけた事を抜かすな」

「冗談じゃねぇよ。お前を倒すくれぇ、朝飯前の次ぐらいの事だ」


それはキャスティーノ団 VS SAF協会である。因心界が迫る中でこの戦いに双方のメリットはない。そう思える。


「表原!!」


レゼンはそんな考えをしながらも、重傷を負った表原に応急処置を施す。ダイソンによって消された右腕。これをカバーする何かが必要だ。

一方で録路ことナックルカシーはようやっと、真面目な答えを出す。だが、それでもふざけているとしか思えない。


「理由はそうだな。お前等が気に食わねぇからだ」

「なに?」

「好き勝手に人間を利用し、遊びにするのが、俺達で。お前等は好き勝手だか使命だが知らないが、人間を殺しまくる。そこに差と違いがある」


ふざけんな……って言いたい事はナックルカシーも同じ。


「直情的な理由はもっとあってよ。テメェの出したジャネモンのせいで、行き着けの店と洋菓子店が潰れてんじゃねぇかよ!落とし前付けてもらうぜ!」

「……くだらない理由だ」



カラコロカラコロ



ナックルカシーはダイソンが使っていた台車に手をかける。それを言葉のトーンとは逆に優しく、ダイソンに向かって押して返してやるのだった。



「!!」


その中に大切なものがあるとか、それはナックルカシーに吐きつけた言葉と同じくらいのこと。ダイソンがわずかながら躊躇を出した一瞬で、横から間合いを詰めてきたナックルカシー。

強力な能力を持っていようと、身体能力の差があった。

その大柄な体格とは思えぬ動きをし、超低姿勢から土に埋まった野菜をとるかのように、ダイソンが使役する清掃員の足を掴み


ガシィィッ


「心配すんな、表原っつーのは死ぬ」

「!」

「だが、先に死ぬのはテメェだよ!ダイソン!」



上空へと投げ飛ばした!


「あいつ……!」


レゼンがその行動をどう思ったか。同時に、勘の良いダイソンも気付いた事であろう。

ナックルカシーはダイソンとレゼンに伝えるように


「お前の出したジャネモンは!恐怖や不安を糧にするんだろ!!良い餌になれるんじゃねぇか!!」


それは真実だった。

意識を失った表原は今、森のように巨大なジャネモンの攻撃を浴びている。死ぬという恐怖につけこんで、体から根や茎、葉が成長しようとしていた。

ナックルカシーは見ずともに分かっていた。



ズザザザザ



「!」


ダイソンが乗ったところは巨大になったジャネモンの一部。



ゴゴゴゴゴゴゴ



レンジラヴゥは近くにいないが、彼女の攻撃で逐一揺れている。ジャネモンの叫びと苦しみも伝わる。そこにナックルカシーも追撃しに、昇ってきた。そして、レゼン達がいない事を確信して伝える。


「お前の能力とその本体。分かったから、この時を逃したくねぇんだよ」

「合理的な裏切りか」

「?テメェ等と組んだ覚えはねぇ。言ったろ、人間はいつも何かを利用してるだけだ」

「面白い、腹立たしく、何様かと。お前、俺に勝てるというのか?どこまでその余裕が持つ!」


ダイソンにとって、自分が言った事の方が自分に向けられている。

いかに強力な能力であろうと、バレているものがあれば不利は必死。今は自分1人しかいないのも、マイナスでしかない。

自らを振るわせて衝撃波のように、そこにあるものを一直線に消していく力もナックルカシーには見抜かれている。なんの疑問も無く、避けられる。一撃必殺系の弱点とも言えるものが出た。相手に過剰な警戒をされる。

また、攻撃から次への攻撃が遅いことも、知られてしまっている。マジカニートゥの戦いを観ているからだ。



バギイイィィッ



「うごおぉっ!?」

「使役する人間にダメージが入れば、お前にもそれが伝わるようだな」



身体能力の差が絶望的。殴られるまで、防御の態勢と覚悟すらできない。

自ら振り回して、当てる事を願うか。

否、ダイソンは受けの構えをとったのだ!それはマジカニートゥの腕を消したようにカウンター狙い。バレバレでもこれにかけた。ナックルカシーに中距離、遠距離の攻撃はない。ダイソンはこの窮地でも冷静さがある。

そんな冷静な姿を見て、



「こんだけ強いジャネモン、俺達にくれた物でできるのか?」

「!」

「そんなよ。人間を見下すところも気に食わなかったんだよ」



揺さぶりにもならないが、何かを正当化させるようにナックルカシーはダイソンに伝えていた。

ダイソンは相打ち覚悟でナックルカシーの攻撃を待つ。それを望んでもいるのか、ナックルカシーは正面から突っ込んだ!

大鎌のように思わせる、その太い右腕から繰り出させるラリアットに自らの体で受けるダイソン。



バギイイィッ



「ぐうぅっ」


箒である自分が真っ二つにされながらも、ナックルカシーの右腕を消し去る!このピンチから一矢報いた以上だ!

腹いせをされたのなら、腹いせで返すかのようであったが。



「だからよぉ~」


左手にうまい棒があり、ナックルカシーはそれを食った。



「テメェは表原より先に死ぬって、言ったろ?」



その一瞬で消えてしまった右腕は再生した!

本体の箒を真っ二つにし、使役している人間の顔面を捉える前での超回復。これにはダイソンの覚悟を嘲笑っている、実力の差であった。



バギイイイィィィッ



特大のラリアットをぶちかまし、頭蓋骨を完全に粉砕。ぶっ殺してみせた。


「ぐはあぁぁっ、があぁっ、ば、ば、馬鹿な!こ、この俺が……」

「使役する人間も殺した。テメェ本体も半分圧し折った。逃げもできないな。まだ生きてるようだが、どーする?踏み潰されて死ぬのと、火葬で灰にしてやるか。それくらいは選ばせてやるよ」



ナックルカシー VS ダイソン。

圧倒的な優位からそのパワーと回復力をみせつけ、ナックルカシーの完封勝利。


「…………」


ダイソンからの脅威はもうない。異様な不吉を感じさせるのは自分がここに立っている場所。

人間で言えば血液。それがこのジャネモンにある。

その流れが速く、大きく、今にも噴出してきそうなナニかを録路は感じ取れた。



ドバアアァァッ


体から黒の霧を放出し、周囲にいる者達を拒もうとする邪気が感じられた。

放出された物は不必要とされるかに思われたが、ジャネモンは許さず、自らの体と結合していく。それによって姿形を変えていく。



ドゴオオオォォォッ


ただでさえ、街のほとんどを覆うジャネモンの全体がそれらの変貌を遂げるとなれば、街の変貌とも同じ。

地形を変えてより良い姿へ移行していく。

ナックルカシーがジャネモンとダイソンから離れたのも、この場の危機を感じとってのこと。


「おいおい。俺、聞いた事ねぇーぞ。"進化"って奴か?これ」


生物の本能。古からの遺伝子は、危機を前にして変化を携わったとされる。ナックルカシーはジャネモンをただの怪物や、邪念の塊で動く物と考えていたが違っていたようだ。こいつにも生物としての役割があったらしい。

トドメをさせるダイソンを見逃したのにも、興味のせ。あるいは興味の変更。

おそらくはこれから来るであろう、飛島とキッスの足止めに活かそうと彼を放置したとも言える。

相手に向かって


「さっさとトドメをささないから変な事になってんだろうが」


カチンと来させる挑発も


「だって、このジャネモンめっちゃ大きいんだもん!どこに核あるか分かんない!」


意に介さず、理由を答える。

ナックルカシー同様。レンジラヴゥもこいつの変貌を前に様子見をとったところ。

レンジラヴゥは少々を申し訳なさそうな顔をしながら、ナックルカシーを見ていたところ。



「協力しねぇよ」

「十分してくれたじゃん。表原ちゃんを護ってくれたんでしょ。テキトーな理由をつけて」

「あ?」

「ごめんごめん。さっき、そのー、ついうっかり。行き着けの洋菓子店、壊しちゃった」

「相変わらずお前、戦うのが下手だな。以前、此処野を一回ぶっ飛ばした時も、街を破壊してたよな?粉雪といい、お前等はもう少し正義っぽい戦いを上手にやれ」

「ごめぇ~ん」


戦い方が大雑把故にジャネモンの一部を蹴り飛ばしたら、起こってしまったこと。


「お前等よく、正義面して戦えるな」

「だってさ。おかしくない?私達には浄化するパワーを持っていても、壊れてしまったものは中々元に戻らないんだよ!これで街護れって大変じゃない?設定そのものが不利な気がするんだけど」

「一理あるが、それでもお前等が正義だろ?なんとかすんのが、正義だろ?」


悪役が有利な仕様過ぎて、ズルイんじゃないかとレンジラヴゥは今更で天然な疑問を投げかけるが。正義とか悪とかもそんな感じの疑問がある。ここまで街を破壊されて、正義面できるわけもない。


「正義だの人助けだのってのは、疑問ばっか」


パァンッ


ナックルカシーは溜め息をついて、観戦ムードを出すように懐からスナック菓子を取り出し、座って食べ始めた。

こっちのやりたい事はやった。あとはレンジラヴゥのやる事だと思っている。


「あ!もしかして、あたしがジャネモンと戦ってる隙に逃げようとしてる!?そのお菓子は逃走用でしょ!?」

「いいだろうが。なんでお前の言う事を聞かなきゃいけねぇーんだ。SAF協会のダイソンが来ていた。俺がぶっ飛ばしたが、因心界の本部が来るだろ。お前は見逃してくれても、キッスは見逃してくんねぇよ。何べんも言わすなや。お前があれ倒すのだけは待ってやるから、早く片付けろ」



狡賢いと、ムムムッな顔を作ったレンジラヴゥは仕方なしにジャネモンに意識を向けた。

禍々しく変貌、進化。ジャネモンはさらなるステージに上った。

森と一体化したジャネモンであったが、それはきっと一部分に過ぎない事だろう。奴はこの中で自らの生命達を作り始めた。この地に残る、かつての面影おもかげ。遠い、遠い、そんな昔のところから引きずり出された怨霊達。



バギイィィッ



「ゾンビになって甦らせる方が気味悪いし、礼儀のねぇ事だな」


人間を除いた命ある者達を怨念という意識を高めて甦らせる、ジャネモンの能力。ナックルカシーの判断は当たっている。

最終進化系とも言える位置にいるジャネモンだろう。

おそらく、核という物がもう無くなって。この場全体が複数の命でいられる環境となってしまった。予想以上に発現させられた場所が良かったのだろう。



『かつての地を取り戻せ……』

『人間共から奪い取れ……』



怨霊の執念ある声が場を暗くさせていく。自ら放った"花粉"によって、弱りきった人間達に攻撃を開始しようとした時。


ピロピロリン


レンジラヴゥはあの通信アイテムを取り出し、物理重視の攻撃では限界と見た判断とは違い、困ったからこそ自分が最も信頼する者に連絡する。


『どうしたんだ?しるし

「声聞きたいのと、強くなりたくて」

『相手は進化を遂げたようだね。手強いのを召喚してきたか』

「うん……って、見てたの!?」

『いや、キッス様から現状の報告をもらっている。もうすぐ、飛島と共に着くそうだよ』


その事にやや頬を膨らませながら、


「決着はあたし"達"がつける。だから、強く願って」

『もちろん』



本来、レンジラヴゥの能力はこの妖精との距離を力に変えるため、この手段では出力が落ちる。

でも、ここに深く染み付いた怨念があるように、僕達の声で繫がる愛ある距離がある。

白岩印とこの先にいる妖精との愛情もまた深く、強い。



『敵の核を叩くのが難しいというのなら、仕方のないこと』



そう踏まえてから、レンジラヴゥがこれからやる事は最低限にしちゃあ、衰残な手段であろう。

公言する。


「街ごと攻撃する!」

「破壊するの間違いだろ、馬鹿」

「それは言わない、ナックルカシー!」


カーーーーッ


通信アイテムが光り輝いて、現れたのはバラとハートのデザインのステッキ。可愛らしさある魔法少女に相応しい代物が現れた。レンジラヴゥはそれを握り、ステッキの先端にあるハートが緋色に光輝く。

それを見て、ナックルカシーは駆け足で逃げる。ある程度、選別される攻撃ではあるが、その基準はレンジラヴゥ達には分からない代償リスクがある。


「愛ある者達を護り、悪ある者を裁け!」



この光が街全体を覆った時、レンジラヴゥの攻撃条件が整う。

タイムラグもあるが、ジャネモンへの浄化に対しては優秀な攻撃の1つである。


「"ラブリー・スラッシュ"」


感情判断によって、レンジラヴゥの攻撃はやってくる。攻撃手段は、基準に満たさない生命達の頭上に無数の聖剣を具現化させ、突き刺し。その傷口から浄化を行なうというものである。

よーするに



グササササササ



理不尽で容赦のない、聖剣の雨である。

ジャネモン達にとっては最も天敵となる妖人。


『じゃ、じゃね~~~~!!?』


ドゴオオオォォッッ


剣の雨はジャネモンのみを襲うものではない。具現化されるという事はそこにあった物質や生命にも危害が及ぶ。浄化させることはメインであっても、破壊や傷は免れない。それ故にレンジラヴゥはこの選択を躊躇ってはいた。核を潰せば被害は少なかったであろうが、これ以上の確率にかけるのは難しいもの。

時と場合によって、正義は変わる。

一気にジャネモンが召喚し始めたゾンビ達は浄化されていく。


「誰だって思う気持ちがあるよ!」


レンジラヴゥはまだまだ精神的に幼い。だがそれは、成長性を秘めている事でもある。


「だけれど、あなた達のような愛のない。憎しみだけの気持ちは何も得られないわ!」

『!!』

「場所を取り戻しても時間は戻せない!誰かが戻ってくる事もそうはない!」


ついつい相手に感情的なものがある。

だからこそ、あの北野川を因心界に引き込めた事もあるんだろう。

純粋な人。


「なら、生きたあたし達はもっと!あなた達の分まで生き抜くし、あなたの仲間がもっと幸せになるよう、動くべきだと思う!!」

『………………』

「"良い世界"だって、あなた達の子孫が思える現在いまにするから!因心界は、そーいうところだから!」


深い怨念で蘇り、温かい言葉で成仏されていく。


『……ありがとう』


ジャネモンの最後は、レンジラヴゥの温かい言葉で消えていった。



ドガラシャアアァァッ



レンジラヴゥの攻撃は街のほとんどに降り注いだ。

ジャネモンを退治したからといって、まだ全てが解決したわけではない。


「あっぶねぇ事しやがって。範囲攻撃なんてすんじゃねぇよ」

「ナックルカシー!」


避けきったナックルカシーはなぜか戻ってきた。

強さの再認識ができたからこそ、収穫があるんだろう。


「一般人ならともかく、味方までやっちまったら世話ねぇぞ。まぁ、ありえなかったが」

「……ありがと。此処野と違って、録路くんって良い人だよ。キャスティーノ団を辞めたら?」

「ちっ。見逃す借りをキチンと返すだけだ。キッスには上手く誤魔化せよ。恥にもなるんだからな」


考えて動く自分と、感情的に動く自分にムカつく。

単純な思考が多い白岩には理解されにくいところだ。


「表原に言っておけ」

「なに?」

「掃除機はダイソンじゃねぇ、ダイソーだってな」

「録路くん、ダイソーは100均じゃないかな?」

「……っるせー!アホのくせに、マジに言い返してくんな!こっちは"萬"の連中が動く、正義面だけじゃやってけねぇからな!!」



ナックルカシー。

録路空梧はそう言って、この場から去った。


挿絵(By みてみん)

次回予告



白岩:わーーーい!

表原:な、なにか喜ぶことでもありました!?私、今回の話で右腕消し飛ばされたんですけど

白岩:そーだっけ?そうなの?

表原:忘れないでください!!

白岩:んー……っと、あたしは次回予告がしたかったの!

表原:そ、そうですか。ところで、私の右腕って次回には治ってるんですよね?

白岩:次回!!『”聖剣伝説”の再び、激闘の因心界VS萬!』

表原:その次回よりも、私の身体は戻っているんですよね!?ね!?


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