表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAGICA NEAT  作者: 孤独
第14話『パフェっと天国に忍び寄るSAF協会!!戦うのは……録路VSダイソン!?』
33/267

Cパート

レンジラヴゥの能力はとてもシンプルである。

それは、


"自身の妖精と近くにいるほど、身体能力が強化される"


というものである。

だが、マジカニートゥやクールスノーなど。一般的な妖人とは異なり、レンジラヴゥに妖精がいることはあまりない。能力は発動している。それを持ってしても、あったとしても。



ギュウゥゥッ


「蔓!」



ジャネモンから生えてくる蔓に左腕をとられようと、虫を掃うかのような、なんともない仕草1つのみで。



ブヂィッ


千切れる。

それは決して、ジャネモンが弱いのではなく、圧倒的にレンジラヴゥが強いのだ。

彼女の強さは能力を有しても、基本スペックの高さを兼ね備えての強さがあった。むしろ、それがなければ因心界の三強に数えられるはずもないか。


「直接、叩きこんだ方がいいよね。ひとまず」


相手のジャネモンは成長しながら、自分の体を広げていくタイプだ。

不意に来た攻撃であっても対応がされていっている。その戦い方を予測して動くというより、明確な対応を見たいレンジラヴゥは攻撃を単調なものとする。

絶対に言えることがある。



ドゴオオオォォッ



拳1つでまた大きく、このジャネモンの体を破壊するが。このジャネモンを止められない。単純な怪物であれば対処は簡単であっただろうが、一筋縄ではいかない厄介さ。耐久や防御ではなく、回復や分裂に能力を割いているのは苦手な相手と戦っている証拠か。



「むっ」



レンジラヴゥの思考は効率的な作戦も、知恵もない。

その単純さがこの身体能力を生み出している1つの要員かもしれない。



ドゴオオオォォッ



敵を殴る、敵を蹴る、敵を投げる。

攻撃方法に派手さはないが、突出した力で派手に見せるレンジラヴゥの戦い方であった。




◇      ◇



一方、置いてかれたマジカニートゥとレゼンは、ジャネモンに近づきながら街の様子を探っていた。


「びびったけど」


そう前置きして、レゼンはこの街を襲っているジャネモンの能力を見極めている。


「レンジラヴゥとこのジャネモンの相性は最悪だ」

「そうかな!?凄くレンジラヴゥが押してるんだけど!」


苦手な相手を前に圧倒的な優位で戦っている。

それほど、とんでもねぇ強さなんだよ。

きっと妖精との相性も抜群に良いんだろうな。でなきゃ、あれだけの基礎身体能力はありえない。


「繁殖力と言って良いもんが、あのジャネモンにはある!どこかにあるジャネモンの核を潰すか、体全体を同時に攻撃する手段がないと止めるのに苦労する!相手からすれば、クールスノーの方が嫌だったろうな」

「植物だから寒さには弱そうだもんね」


大雪を降らせ、気温を低下させる攻撃。

あるいは、佐鯨の妖人化。ブレイブマイハートの熱の攻撃がこのジャネモンにはかなり有効であろう。繁殖する手立てを断ち切る事で、攻撃の通りを良くすることができる。とはいえ、長期戦となってもレンジラヴゥに負けはないと思われるが、



バタッ



「ひ、酷いね!街のみんな、なにか分からないけれど倒れていってるよ!」

「"花粉"だ」


レゼンはこの森のようなジャネモンから発生されている花粉を手にとった。


「生物にくっついて、生物の負の感情を糧に成長を遂げる。感情を吸われるから生物の意識が徐々に刈り取られるんだ。気を失う程度で済んでいるだろうが、下手すりゃジャネモンの餌になって、死ぬぜ」

「!………」


住民を護ったり、保護したりしようにも。もうかなり広範囲にこの花粉を撒かれ、何千人と倒れている。おまけにジャネモンは成長し続けている。


「じゃあ、なんとかして!白岩さんにこのジャネモンの核を壊してもらわないといけないね!場所、特定できる!?」

「誰に言ってんだ?俺とお前だぞ。自信持て」

「そうだね!」


今のジャネモンは色んな建物に根や茎、葉などを絡ませて、巨大な成長を遂げている。

街の様相はここを訪れた時と比べたら、180度も違った無法地帯。不安が吹き出るのも分かるぐらいの暗黒街。


「本気で、本気で……」


マジカニートゥはその能力で、ジャネモンの核を特定できるアイテムを本気でイメージし始める。一方でレゼンはまだ街の周囲の様子を探っていた。

こうも景色が変わってはいたが、違和感があった。


「………………」


なにかを見落としている気がする。


「よーしっ!」

「!」


いくつか死線を越えた事により、能力のコツが分かってきたマジカニートゥは上手くいきそうな表情を作り出していた。妖人の一瞬の緩みを



「!伏せろ!!マジカニートゥ!!」



ズアアアァァァッ



相棒である妖精がカバーする。

マジカニートゥの頭を非力ながらも、下に抑え付けるようにしたことで。マジカニートゥはそれが反射的にだが、転ぶ形で伏せることができた。


「った~!?なに、レゼン!?」

「!……っ……」


マジカニートゥの反応よりも、伏せてなかったらどーなっていたか。それを示す光景に緊張が走ったレゼン。



カラコロカラコロ



そして、レゼンは敵の攻撃が飛んできた方向に視線を向けた。そこにいるのは1人のおじさん清掃員。掃除用具の入った台車を転がしながら、こちらに来ていた。



「テメェか!このジャネモンを出した奴は!」

「良い反応だ。良いコンビだ」

「えっ……ええっ!?」


マジカニートゥは一度レゼンが見た方向を見た。

それは先ほどまでちゃんとあり、ジャネモンの根などが突き刺さっていた建物のいくつかが。スッポリと抜かれたかのように、綺麗に消された跡であった。見えない何かが通り過ぎ、消されてしまったのだ。

建物も生物も消される力。



「経験不足の妖人をその才気でカバーする行動力。観察眼。知識量。よく分かったものだ」

「……SAF協会か」

「その通り、俺の名はダイソン。レゼン、それと表原麻縫こと、マジカニートゥか。シットリの指令により2人を消滅させに来た」

「え、えええぇっ!?いきなり、なんですかーーー!!」



レゼンはダイソンの力量を感じ取った。この前、戦闘となったアイーガを凌駕する実力者。

今喋っている人間は違法契約によって、ダイソンが操っているわけであるが……。ダイソンの本体が特定できないほど、巧妙な偽装技術。

なにより、何かは分からないが、建物や生物を一瞬で消し去る能力。

このまま用意ドンで戦闘となれば、その未来は……。


やべぇ。

今のマジカニートゥじゃ、とても勝ち目のない敵と状況だ。



「さーて」


ダイソンは。清掃員の男は台車に乗った箱の中にある、いくつかの掃除用具の中からある物を1つ取り出した。


「ちりとり?葉っぱとかとる用の……」

「!!」


まともな戦いじゃ勝ち目がない。

ダイソン、奴はおそらく物体型の妖精だ。あの台車の上に乗っている物か、台車そのものが本体!奴本体の戦闘能力は低いはず、その本体を攻撃さえすれば勝てる可能性がある。


「距離をとれ!消されるぞ!!」

「わ、分かったよ!」



ベポォンッ



「ち、ちりとりが大きくなったーー!?」


ダイソンは取り出したちりとりを巨大なハンマーのように大きくさせ、軽々と振り被ってマジカニートゥに向けて、振り下ろした。



ドゴオオォォッ



「わーーーっ!」

「もっとダイソンから離れろ!」


相手、戦闘慣れしてやがるな。奇襲で見せた技は次のトドメに持って行く気か。


「ふむ」


ダイソンはちりとりを一度使用すると、元のサイズに戻して箱に戻した。そして、再び箱の中にある物を取り出す。今度はふとん叩きである。それを握って、地面をぶっ叩いた。



ドボオオォォォ


「げほっ!?土煙が俟った!?」

「っ……次から次へと……」


周囲の地面から土煙が突如噴出し、ダイソンの姿を一瞬見失い、動きが止まるマジカニートゥ。そんな土煙の中で2つの鉄の棒がマジカニートゥの左右に広がり、挟むように動いた。



ガシィッ



「!今度はタバコ拾いの……!」

「ふんっ!!」



ドゴオオォォッ


一度上空に持ち上げてから、強烈な勢いでマジカニートゥとレゼンを地面に叩きつける。


「っった~……なんとかなんないの!?レゼン!」

「今考えてる!」


自力が違い過ぎる。

しかも、相手は多彩な戦闘方法がある。箱の中にある物に色んな能力があり、状況に応じて使い分けるタイプ。1つ1つの出力も相当ある。

だが、その戦闘には法則があるようだな。まず、使える能力は1つだけだって事。もう1つに、能力が使えるのは一度に1回だけ。使ったあとは一度、箱に戻さないとダメなんだ。

連続的な攻撃を仕掛けるのは不向き。


「というか、このままじゃ。あたし達も、みんなも」

「今は俺達の事だけ考えろ!」


これまでマジカニートゥは敵を倒したり、何かを見つけたりと、1つの物事に対しての本気を出す機会ばかりであった。だが、今回は住民を護ることだったり、ジャネモンの本体を特定することだったり、様々なことに対応を求められていた。

混乱しているのは当然と言える。

そこに



「全力で走れ!全力で逃げれる事を考えろ!」

「えっ!」


レゼンは脅しのような一喝。混乱する迷いを断ち切るための、活!

勝てない相手とは言わない。勝てる相手とも言わない。

本気を出すってのは、今と戦うことなんだって、テレパシーのように伝わった。



「何ができようか!見せてもらうぞ!」


ダイソンが次に取り出したのは箒。

その間合いを見ておらずにマジカニートゥに向かって、掃くようにふるった。マジカニートゥには何も見えなかったが、レゼンには見えていた。



「!本気出せ!!マジカニートゥ!!」

「うん!」



先ほどのふとん叩きで俟って残った、わずかな土煙が消えていく瞬間。

さっき襲った攻撃はあの箒が持っている能力。直撃したら消される。何よりもここは逃げること、早く、もっと早く。


「"WakeUp,Baton"」


ダイソンの攻撃が当たるよりも早く!マジカニートゥの本気が、その能力が発動した。



フオォンッ



マジカニートゥは消えた。そして、その後ろにあった建物、花壇なども箒の力によって消されていた。

だが、マジカニートゥのは消失させる能力をうけた影響ではない。その手応えがないとダイソンには伝わっていた。一瞬ではあるが、攻撃が当たる直前。

バトンのような物がマジカニートゥの右手に握られていた。

それから見えなくなったのだ。


「ああああっ!?な、なにこれ!?今、今、あたしが凄い動きしたよね!?」

「落ち着け。だが、よくやったぜ。マジカニートゥ!」

「!!」


4秒か、5秒ぐらいか。今までできた事もないほど、とんでもないスピードで動く事ができた。

敵の攻撃が当たる直前に方向転換し、走って確実に避けていた。それも相手のダイソンの目には対応できないほどの速度でだ。機動力を高めるバトンといったところか。



「迅いな。アイーガの報告とは違う能力だぞ」


様々な攻撃手段を持ち合わせるダイソンであったが、攻撃する際には武器の入れ替えが必要である。そのロスを、今のマジカニートゥなら



「相手に攻撃される前にいけーー!マジカニートゥ!」

「分かったよ!」


逃げる事だけを思って、本気になって生み出したアイテムが、まさかの相手をメタれる代物だった。攻勢に転じて、この相手を倒す。

バトンを持った事によるマジカニートゥの高速な動き。ダイソンは捕えきれていない。ガードすら間に合わせず、清掃員の男をマジカニートゥはその拳とその足で連続攻撃をかます!



ドガアアァァッ


「ぐああぁぁっ!?」

「や、やったぁっ!!」

「よーし!」


清掃員の男は箒を握り締めているが、色んな武器が入った箱。それを乗せた台車から突き放した。これでダイソンは攻撃できず、戦略を変える事もできなくなった。

あとはこのまま……。


「やるな。まだ日の浅い妖人がこの俺に、一太刀浴びせる。レゼンだけじゃなく、マジカニートゥ。表原麻縫にも警戒をするべきだな」

「……え」


武人のような言葉であったが、レゼンは聞いていなかった。


「マジカニートゥ!その箒も念のため、吹っ飛ばせ!そうすりゃ」

「レ、レゼン……」


だが、ダイソンの言葉も、レゼンの言葉よりも。マジカニートゥは何も聞ける状態にならなかった。


「腕がさ……」


握っていたバトン。ちゃんと繋がっていた。そーいう感覚が昔からあったんだなって、思わせる感覚。

"言われても分からないけれど、そうなると分かる事だった"



ブシャアァァッ



マジカニートゥの右肘からその先がバトンを含め消滅し、その傷口から大量の出血が起こっていた。

妖人化により肉体のレベルも強化されている事で即死こそは無かったが、精神的な恐怖と不安、衝撃ショックがすぐにきた。


「うあああぁぁぁっ、っっ」


初めて妖人化し、クールスノーに襲われた時以上の恐怖だった。

自分の体の一部が目の前で消える。

痛みで地面に転がり、傷口を庇い、抑え込むマジカニートゥ。レゼンもマジカニートゥを助けようとするため、傷口を見るが。無理だと判断し、ダイソンが近づくのを止めるように、マジカニートゥの前に立った。だが、分からなかった。


「どーいうことだ!?攻撃は、できねぇはずだろ!!お前はその箒で一度、攻撃したし使用した!そうじゃなきゃありえねぇ!」


その言葉にダイソンは冥土の土産として、レゼンの素晴らしい観察眼と想像力を讃えて教えた。

地面に転がった清掃員は箒を持って立ち上がり、


「確かに俺は箱の中にあるアイテムを、1回1度という制約を設けて使い、様々な攻撃を仕掛けられるようになっている。よく気付き、信じたものだ」

「!なら、……!まさか、……」


箒はレゼンと、マジカニートゥの前に向けられる。答えは


「そうだ!この俺が本体。ダイソンだ!俺はアイテムではないから、その制約は適応されないのだ!」

「!!……くそ」


SAF協会。

箒の妖精、ダイソン。


「見事なものだった。早期にレゼンを消せることと、俺が倒したということは嬉しく思う。やがて俺とシットリを超え、ルミルミ様の脅威に成り得ただろう」

「っ……嬉しい言葉が嬉しくねぇ状況だ……」


レゼンとマジカニートゥの物語が終わる。

何もできないそんな中で、痛く苦しく悔しい表情ながらマジカニートゥは


「ダイソンだったら!掃除機でしょーが!!箒なんていう時代遅れが本体なんて!誰も分からないわ!!」


諦めたくないし、諦めるような顔もさせたくなかった。そんな魂があったど直球な本音。

笑っちまうようなこと、敵の敬意を侮辱するかのような抵抗は。


「それほどの絆だったか」

「!……」




ダイソンにはとうに分かっていた。


マジカニートゥは……悔しい。その気持ちだけが強くなったまま、意識が朦朧としてきた。生きているのに遠くなっていく感覚。ダイソンがこちらに向かって、マジカニートゥとレゼンの双方を消そうとする。

まさにその瞬間だった。



バヂイイィィッ



ダイソンが、彼を握ったおじさん清掃員が、あらぬ方向から来た攻撃で吹っ飛ばされた。

その攻撃を仕掛けた奴は沈黙したまま、マジカニートゥとレゼンの方を確認した。


「……………」

「……なっ」

「え……」



レゼンもマジカニートゥも、突然現れたそいつに驚いた。無論、ダイソンもだ。


「ろ、……ろ、……ろ……」


顔と姿を見て、彼である事は分かったが。それっきりでマジカニートゥは意識を失い、妖人化が解除され、表原麻縫に戻ってしまった。その事に危機を感じつつも、この状況を整理するのに大変だったレゼン。

ここで彼が介入するというのはあまりにリスクが高いはずだ。なんの得があるのか?

一方でダイソンも起き上がって、この奇襲に激怒しつつ相手に尋ねる。



「なんのつもりだ!!?ナックルカシー!!俺達との約束を忘れたか!!?」



ガリッガリッ



「なんのつもり……?」


選んだお菓子はうまい棒。一齧り、二齧りしながら。とりあえず、一つ目のとても安直で、今している事と正反対の言葉で返す。



「食後の運動だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ