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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第61話『EXTRA STAGE』
263/267

Dパート


マジカニートゥとレゼンは、無理矢理体を引っ張られて空を飛んでいる状態だった。自分達ではなく、周囲の空間が持ってこられる感覚は乗り物の類ではない不思議な状態。


「……遅いな」


意図的にこの速度が遅い。

それがこの戦いを引き起こしたモノではなく、別なモノであるとレゼンには気付いていた。一方で、マジカニートゥの気持ちは違えど、その準備はしていた。向こうで待っている存在に対して、本気の準備をしていた。結構な覚悟が足りていないけれども、だ。




ドフウウゥゥッ



”妖精の国”の全土がクールスノーの大雪に包まれているが、この場所はまだその雪が弱い。クールスノー達がいる場所の反対方向に飛んだにして、その距離は極めて遠く。邪魔にはならない事を示していた。

ポテンシャルとして、剣の1つ、剣術の1つ。

これより対峙する、野花桜 & セーシ。

向かい合うようにマジカニートゥとレゼンが着地し、自分の本気のフィールドを設置完了の段階まで持っていく。そこで止めたことで



「止めませんか?野花さん」



マジカニートゥが一番に言った事は、理由は聞かず。剣を降ろせと言っているのに、十分な脅しだった。


「ここに来るまでに、俺達はあなたを倒す本気を練った。時間をくれたんだろ。セーシさん」


レゼンもまた、マジカニートゥの欠点の1つである、発動までのタイムラグを十分に解消していることだ。

マジカニートゥとレゼンは、その姿を初めて見た事。妖人化、ヴァージンロストは……おそらく、身体能力の全てが向上し、さらにはセーシが本気を出したか、意識を乗っ取ったかで。

唯一の弱点となり、制限時間を克服したとも言える状態。


単純に、向かい合う、この両者はすでに本気になっている。そして、殺し合いでもないというとても変わった雰囲気。

1秒でもおしいはずのヴァージンロストが、大剣を地面に突き刺しながら色々と語ってくれた。

まずは



「悪いが、そいつはできねぇ」

「野花さんの声色でその口調は、間違いなくセーシさんですね」

「安心しろ。俺と野花の気持ちは同じだ。クールスノーのために、お前達と戦うことは変わりない」


安心できねぇよって、表情になるマジカニートゥだ。ヴァージンロストの表情はとても真面目であるが、今は耐え難い恥ずかしさある表情でいる方が良かったなーって思ってしまう。

この時に、マジカニートゥも確信してしまう。たぶん、絶頂からの自滅はないと。

両足が震えて逃げ出しそうになる。それも正解だと思うから、レゼンも止めていない。本気は何も、戦うことだけじゃない。いかに自分の全力を発揮できるかどうかだ。

この強さを知っている相手ならなおのこと……。


顔には出ずに、


「野花さんはどうしてあたし達と戦うの?」


具体的なことを言えと、マジカニートゥは


本気マジになりませんよ?」


良い言葉を選んだ。それはセーシがこちらと戦う理由の一つであり、


「…………」


セーシのわずかな沈黙は、意識を奪った野花からの声を聴くためのものだった。話していいのかという確認をする。返って来た答えはなるべく、クールスノーを傷つけないようにすること。セーシとしても、本気にさせてやりたいがため。難しいことではあるが


「粉雪がなぜ強かったか、分かるか?」


素質の話を出してから


「表原麻縫、涙キッス、白岩印……だけじゃない。録路空悟、蒼山ラナ、寝手喰太郎……。レイワーズの宿主達、田熊英雄や赤羽和希といった者達、傑物に君達は出会っただろう?」

「そうですが。自分を含めて、粉雪さんとどう違うんです?」


例外はいるが、概ね。


「網本粉雪に”誇って言える両親”はいなくてな。南空が養父でもあったが、生立ちは俺も知らないくらい、酷いと聞いている」

「……………」

「粉雪さんはそーいう生まれだったのか」

「あくまでそれは過程からの結果だった。本気で粉雪が、全てを背負って生きて来たのは事実。だが、それだけで……言っちゃあなんだが、それだけで妖人としての資質が飛び抜けるわけもない。不幸な家族を持つ連中はいくらでもいる」


そこに反論が出そうになったマジカニートゥであったが、すぐにセーシが言ってくれたから止まった。


「だから、許せねぇんだ」


真実と嘘を混ぜた。

もう1つの真実は、断片的にしか伝えられておらず、……確認していた。

”そのため”のこと。



「妖精というシステムがある限り、不幸な家族がいる理由を正当化しちまう。問題のある者達が真っ当に歩もうとする事もあるが、それ以上の問題を見て来ただろう?」


自分の子を愛せない。そんなことが強さになってしまう。

自分が愛したい人を、不幸にさせたいという気持ちが自分の強さになってしまっている。

子供の表原に、その大人な悩みは言っても伝わり切れないだろう。妖精のセーシが言うのなら、なおさらだ。言ってしまうわけにはいかない。

そんなルールのある生物を粉雪は許せない。


強さのために偽るなんてできないよ。

偽りは強さじゃないだろ。

ここでは偽らせるよ。網本粉雪のために、その強さがある。



「妖精を許すってのは、粉雪にとって”大事なモノ”を失っちまう。それに協力するだけだよ、野花桜はな」



セーシの発言で自分達の全ての行動を理解しろ……というのは、情報が少なすぎるマジカニートゥとレゼンには無理だろう。

自分よりも長くその世界に身を投じていたはずなのに、今更、それに噛みつくのか。そうでもしたいという事なのかもしれない。いくつかの疑問を作れたが、最終的に、対峙している相手の闘志によって納得した。



「それじゃあ、セーシさん。あんたはなんで戦うんだ?」



レゼンからすれば、粉雪達が妖精を殺そうとするなら、それに協力しているセーシも危ないことだろう。それに協力するというのを、予想すれば


「そんなことは最強だから分かるだろう」


理由なんかない。

彼が危険な存在だと分からせるには十分であり、粉雪の真意を伝えないために。自分の本心だけは熱弁してしまう。


「世界を救う奴が必ず、”また”、現れる。俺はその時までこの剣を磨いていただけだ。相手がいない暇を最強の敵と思いたくもなかった」



世界を一度、滅ぼしたという伝説。その時をまた呼び起こす。



「大昔、俺に口出しできる友がいた。あいつとの戦いを望んでいたが、世界を賭けるほどのモノの事にはならなかった。なぜだと思う?レゼンくん」

「…………さぁな」

「俺の友だからというのもあるが。”平和になってから、戦いを挑んだ”からだな。それが俺の答えだ」


やべぇーこと言い出したな。


「つまりだ。俺は粉雪に協力することで、この世界の命運を決められる。そして、君達もそうだ。本気の本気で来ないと、俺は満足できない。……ヒイロもシットリも、ルミルミすらもだ。やはり、強いというだけでは」


ヴァージンロストが地面から剣を抜き、後方に振り抜いた。

その余波が白い光を生み出し、世界全土を覆う雪雲の4分の1ほどを消し去る。


「俺を戦いの中、もう喜ばしてくれる事はねぇ」



宣言の後に。

世界を揺らして見せる。紛れもない、伝説の、史上最大の戦闘狂。

セーシがそこに立っている。



「世界を護る理由を見せろ。君達と出会った時、俺は候補の1人として見ていたよ」



もし、直撃をしていたら……マジカニートゥもレゼンも、何をされたか分からぬまま死んでいっただろう。

天照あまてらす日輝白地ひかがやはくち

脅し故に、それでも手加減をしているのが、マジカニートゥにも伝わる。


「あ~~。あのですね」


マジカニートゥとして、本心を言うが


「あたしの事を殺しに行くのはダメですよ!」

「なんだよ。せっかく気分が良いのに」



ガチられたらというか、……マジカニートゥからすれば。


「そんなことを初手でやってたら、あたしはもうこの世にいませんから!!あなたって、強さを勘違いされているというか。あたしは卑怯も手の内でしてね」

「お前の大半は卑怯だよな」

「うるさいよ、レゼン」


真剣に戦いたいという要望を暗に応える事はできないと、マジカニートゥが言っている。

強いか弱いかじゃなく。そこに本気みてぇなモンをぶち込んで来た、セーシの戦闘論に対し。真逆とも言えるもの


「”本気で生きるの”って大変なんですよ!!本気出しても、叶わないモノをあなたなら分かってるでしょ!!何がなんだろうとする、このあたし達の”本気”!!あなたの望んだ強さとは、絶対に違いますよ!!いいですか!!」


本気を楽しみたい、セーシの戦闘狂ぶりと

本気でやってみたい、表原の考え方が違う。



つまりは


「止めるのなら今ですよ!野花さん!!負けた時のあなたの絶頂したお顔とその身体を脅しに使いますからね!!」

「寝手みたいなことを思いつくな」

「!いいだろう!この世界の命運と、野花の絶頂顔を賭けてやろう!!」

『良くないわよ、セーシ!!絶対にマジカニートゥをボコボコにしなさい!!』


意識を失っていても跳び起きるくらいの事を言われてしまった野花。心の中で、絶対にヤルんだったら、楽しむだけでなく、勝てという思いを込める。勝たなきゃ楽しくないだろ!



マジカニートゥ VS ヴァージンロスト


お互いの欠点を全て消し去った。全力も全力の戦い。


「『”魔法の領理(~現から夢へ~)”』」


マジカニートゥの能力が発動した。その時、自分自身が本気を出すために最適な空間を作り上げる。菱形状の基点がこの時、ヴァージンロストからは視る事ができなかった。

本気と本気のぶつかり合いを望んだ以上は、その状態が整うまで待つ。男らしいものであるが。マジカニートゥの勝つための本気、さらには予告通りの事をする本気は……それでも追いかけていきたいと問われる、夢と現実を見せつけて来る。



ビキイィィンッ



「!!」


ヴァージンロストも彼女の能力の欠点のいくつかを見抜いていた。先手で戦うのはもちろんであるが、本気の空間を作るための8つの菱形の基点。

空間を作り上げる前にこいつを破壊されると、マジカニートゥは能力を失うと見ている。当然ながら、空間に相手を入れつつの制御をしているが。俊敏で破壊力を持つ相手を絡めとるにも、それを無防備に放ってしまうのは危険。

出来得る限りは、それを隠せるといい。



「裏側に配置するか」



空間を作り出す能力だからこその着眼点。

今までのマジカニートゥは、現実世界に本気の空間を作り上げていたが。今回やってきたのは、その本気の空間を現実世界から干渉されないところで作り上げ、自分のタイミングに合わせて、空間を転移させる。タイムラグこそまだあるが、対峙する相手からすればいきなりマジカニートゥの陣地に引き込まれることになる。

この方法には他にも利点があると見る。本気のイメージを長時間使うことで、空間そのものをより強力なモノでできる。相手を知れば知るほど、情報量によって多くの対策が必要となる。



ギイイイィィッッ



マジカニートゥとレゼンの後ろから深紫の小窓がいくつも現れていき、2人の身体を向こうへ引き込んでいく。

本気でヴァージンロストを相手どるなら、逃げ回るに徹するのが最善なのは違いない。瞬間の戦闘能力の高さをよく知っており、マジカニートゥも恐れていたルミルミとシットリをボコボコにしている実績から言っても、本気に戦っても返り討ちにされるのを理解している。



「逃げる!!」



マジカニートゥは転送する本気の空間を幾度も作ったことと、自分のような存在に対して力を発揮する妖人の素質を鑑みて。

このイカレ野郎とこのイカレた世界へのアンサーは



「とにかく逃げる!!」



あらゆる経験を踏まえてからの逃亡であり、卑怯と言われようが生き残るため自分の命を大切にすること。

別空間に身体を入れた瞬間。

ヴァージンロストもニヤけた顔を見せて、



「それでいいさ」



ようやく、マジカニートゥを斬るべく、その大剣を振り回した。

言っていた通りに考えていた力と力のぶつかり合いではなく、マジカニートゥからすれば一撃で即死かつ、誰よりも早く動けて、射程範囲も未知数なのだ。世界から逃げ出すも無理はない。



バギイイイィィィッッ



「来たーーーーっっ!!恐怖の鬼ごっこだよ、こんなのーーー!!」

「色んな空間に逃げまくれ!!セーシさんの剣が届いちまう!!」

「わ、分かってるよ!!」


奇しくもの話ではあるが、逃げるマジカニートゥとレゼンには悪いが。一閃だけでさらにヴァージンロストは滾らせてくれる。


「これほどか」


逃げる相手に全力を出せる状況など、そうありはしない。最も硬いとされる、涙キッスとイスケを斬るとはまた違うための力。自分の派手な攻撃を加味すれば、マジカニートゥが相手で良かった。

逃げた先へと追いかけ、そこにある世界を全力でぶった斬る。



「”天照あまてらす日輝白地ひかがやはくち”」



この力をまた全開で使える喜びに、セーシは嬉々とした。

空間から空間へ逃げ遅れれば、身体の塵すら残らない。


「ぬおおぉぉぉっっ!!早く早く!!」


マジカニートゥは次々に空間を飛び回れるらしき、小窓を大量展開する。その際にはいくつもの選択肢ができるようにか、様々な外枠の”色”を持った小窓が現れていき、マジカニートゥは考えずに小窓へ逃げ込む。そして、追いかけて来るヴァージンロスト。


「いいなぁっ!!」


決して、マジカニートゥが逃げる速度が早いわけではない。ヴァージンロストの楽しみが彼女を殺すという事を遅れさせたのは事実。もっと、もっと本気を出して来いという、戦闘狂ぶり。

飽きさせないのなら遊んでくる。

マジカニートゥとレゼンの、対ヴァージンロストにおいての本気はガチガチに固めていた。



バギイイィィッ



「さぁ、どうする!?レゼンくん!マジカニートゥ!」


空間から空間へ逃げていく。それを破壊しながら追いかけるヴァージンロストに飽きが来てしまえば、この手を使って終わらせにくる。

紫色の光を大剣に集め、空間の”間合い”を斬る!!



「”闘神とうじん性渇望血せいかつぼうのち”」



マジカニートゥの”間合い”を斬り裂き、逃さずに引き寄せる。


「おあぁっ!来たあぁっ!!これ、ヤバイ!助けてよ!!」

「ぐっ、進まねぇ!引き寄せられる!」


風を受けているわけでもないのに、マジカニートゥとレゼンがヴァージンロストの方へ引き寄せられていく。この剣術がある限り、逃亡者を許さない。それの回答をヴァージンロストは愉しげに求める!


「さぁ、どうする!!待ってばかりでもないぞ!!」


さらに自らの剣身を一気に伸ばしていき、剣というよりはミサイルのように放たれる。マジカニートゥの背を貫こうと迫ったが。その前に立ちはだかった存在がいた。



ドフウウゥゥッ



「……お前、また俺を盾にしやがったな」

「じゃあ、ここは任せますよ!」

「俺は死んだはずだが、こんな風に蘇らせるとはな……お前、ホントムカつく奴だ」



男の大きな腹に突き刺さった剣。しかし、体内でガッチリで受け止められる。回復力と防御力の高さで、ヴァージンロストの動きが少し止まった。マジカニートゥ以外にも引き寄せてしまった、こいつはヴァージンロストも知ってる。


「そーいうことか、この本気マジは」


マジカニートゥが作り出している小窓の数々は、色んな空間に繋がっている。それがどのような場所なのか、対峙した相手で分かる



「ナックルカシー!!お前と戦いてぇとは思っていた事はあるぞ!!その再生力!!どこまでのものか見せろ!」

「俺は一度死んでるんだがな」


なんと!

南空との死闘によって、命を落としたはずのナックルカシーがこの場に現れたのだ!生き返って来たという驚きではないし、対峙した瞬間に本人が”死んでいる”と公言している。

本物のようで本物とは違っているんだろう。



「この場を任せますよ!」

「わりぃ!こーいう本気を出しちまって!!」



ナックルカシーが現れたことでマジカニートゥは再び逃走する!

様々な小窓がマジカニートゥの周囲に出現する仕組み。様々な空間が作られていること。自分やマジカニートゥの知っている強い相手が現れたこと。


「”BOSS LASH”ってところか」

「かもな。そこまで知らねぇよ」


ヴァージンロストの戦闘狂ぶりに応えるかのように出来上がった、本気の空間。セーシの戦歴からして、強い奴は沢山おり、その全員と戦ってきたわけではない。この最大の戦闘狂と言わしめた自分に対して、最高過ぎる舞台を作ってくれたマジカニートゥ達に。


「思った通りだよ」


自分が求めた最高の相手だ。



ドバアアァァッッ



「ぐおぉっ!」

「とはいえ、本物の5割ぐらいの力か」


さすがにナックルカシーの全力を引き出せるようなモノではなかった。ただし、ヴァージンロストの本気に応えるように、出現する相手は常に本気でヴァージンロストと戦ってくれる。実力は劣っていても、本気で襲い掛かってくるというのにヴァージンロストの闘志がメラメラとなった。

ナックルカシーを破って、マジカニートゥの姿を追って、次の空間に行けば



「けっ、気にいらねぇ能力だな」

「足止めしてくださいよ!あたしだって、誰が出て来るか分からないんですから!!」

「此処野神月」

「まぁいい。俺も、あいつの最強ぶりを確かめたいとこがあったからよ」


次に対峙したのは、此処野神月だ。

戦闘能力という点ではナックルカシーと五分であるが、回復能力がなく、本体ではないということ。



ズバアアァッッ



「……お前の事、粉雪に報せてやりたかったが」

「っ…………」

「約束したもんがある。偽物でも言えねぇよ」


空間に配置されている相手は一人が限界ってところか。今のところ、死んだ奴等しか出て来ねぇな。順番は強さや厄介さではなく、完全なランダムと見て良いだろう。マジカニートゥと俺が知っている強者を呼び寄せてくれる、本気ってところか。

そして、マジカニートゥはどんどん逃げていく。足止めを考えるなら、ナックルカシーを大量に配置すればいいのに、出来ねぇって事は限りがあるし。マジカニートゥも遠いところまで逃げられてないのと、小窓の外枠が違っているのにもカラクリがありそうだ。

つまりは本気を出しても、理想的な形にはなってなく、まだまだ成長の兆しがある存在。



「面白ぇ」



ヴァージンロストはマジカニートゥに幾度も勝てる機会を不意にしている。

それは自分の求めた本気が、このような強者達との戦いであるからだ。ホントに強者は色々とおり、ナックルカシーと此処野の2名が出て来たことで、仲間とかカンケーなく、純粋に戦い意志を引っ張り出された。この連戦が終わるか否かでの勝敗だけを考えた。



「ロゾー!わ、悪い!こんな形で再会するとは!この兄を恨んでいい!」

「ううん!やっぱり、お兄ちゃんは頑張ってるんだね!あたしも一緒に戦いたかったから!」

「お、お前は!!僕のことを助けなかった奴!」

「え?ごめん。あんた誰だっけ?レゼンの妹、ロゾーちゃんの事は覚えてるんだけど」

「わ、忘れるなーーー!!僕の名は」

「まぁいいや、ロゾーちゃん。ここをお願い!」



戦闘狂のヴァージンロスト。とにかく、逃げまくるマジカニートゥ。

偽物とはいえ、戦わされる者達にとっては、いくらなんでも可哀想なモノである。本気で戦ってくれるというのも、その人の気分にもよるし。実力を考えれば、どっちにしろ、一振り、二振りで、ヴァージンロストが敵を撃破する。



「!えっ!?黛ちゃんがいるよ!」

「よく見ろ!あの姿は、ナチュラルズーンだ!それに”箒”を持ってるって事は」



マジカニートゥが知っているのなら、一度も共闘した事がない相手。というか、強敵すらも出現する。


「あいつはあたしを斬ったからね!このリベンジ機会をくれてありがと」

『……本当の黛は生きているのか?マジカニートゥ』

「黛ちゃんは生きてますよ!」

「あたし、ここにいるんだけど!?偽物ですか、はい、そーいうこと!?(東京駅編ぐらいの記憶しかない)」


SAF協会のダイソンも出現。彼の力を活かすために、黛波尋も偽物ながら登場。


『なら良かった。心置きなく、あの最強と戦える』


出るわ出るわ。戦ってきた強敵達。

とにかく、知っている誰でもいいから、空間に出て来てほしい。



ズバアアァァッッ



「ダイソンまで呼び寄せるとはな」


かつての強敵と戦わせてくれる力。少し残念に感じたのは、本体の能力の半分ほどの力であることと自分も能力や行動を知っているところだろう。

楽しいのは、10数秒。ナックルカシーと此処野神月が早々に出て来てしまったのが、マジカニートゥの誤算といったところか。自分を相手に時間稼ぎができる強者は限られている。破壊を得意としているダイソンも、レゼンの妹であるロゾーであっても、時間稼ぎができるほどの戦闘力や時間稼げるような力はない。



「さぁ、次は誰が出てくれる?」



4連をまったく意に返さない強さ。もっと本気を出させてくれと、ヴァージンロストは迫ってくる。



「わーーーー!!お願いします、お願いします!ここお願いします!!」

「いきなり、蘇ったと思ったら、どーいう状況だ?っていうか、マジカニートゥは先の空間へ行くのか(私達はこの中から出られないみたいだが?)」

『レゼン達!元気みたいだな!』

「飛島さん、ラクロ!」


今の関係を詳しく説明して欲しいと思う連中も、数多く出て来る。飛島もその1人であろう。

復活したかと思ったら、表原と野花が戦闘しており、自分は表原のために戦わなければならない。一度、死んでいる事で命が惜しく感じないが。


「せめて、戦ってる理由を知りたいな」



そんなものがある。

飛島の後に来たのは、



「ええぇっ!?な、なになに!?なんであたしが蘇ってるの!?北野川と戦ってたはずで……」

「ここでアイーガ!?ちょっと、出て来る順番を考えてください!!あなたはあんまり強くないでしょ!!」

「なんだと!マジカニートゥ!!あたしだってSAF協会の一員!!」

「とにかく、あたしはまた先の空間に行っちゃうんで!なんとか野花さんを止めてください!!」



SAF協会のアイーガが少女姿で登場。

マジカニートゥのツッコミ通り、ダイソンよりも先に出て来るべきだろう。とはいえ、彼女は


「あたしの本気の姿を見せてあげる。野花には一度、勝ってるんだからね!」


アイーガがノリのままに、本当の姿をヴァージンロストの前に晒すのであるが



ズバアアアァァッッ



「ぎゃああああ!!この人、強すぎでしょーが!戦わされるだけ可哀想でしょ!」

「お前が野花を倒した時は、俺がいなかっただろうが(結構元気にやられたな)」



誰が出て来るかが、ランダムなのは違いない。しかし、気付いた事がある。

突出した戦闘能力がある存在だけを呼び出しており、出会っていない奴は呼び出せない。



「おっしゃ。稽古つけてもらおうかな!野花さん!!」

「佐鯨。久しぶりだな」


マジカニートゥが強敵達を呼び出しては、ヴァージンロストが斬り倒す。そして、数え始める。ここまで倒した敵。残っているだろう、敵。


録路、此処野、ロゾー、ダイソン、飛島、アイーガ、佐鯨。この7名を無傷かつ、そのほとんどを瞬殺。本当の実力を発揮出来たら、大分違うだろうが。元々の実力が高い奴を出現させられると、手強くなるだろう。

この能力は死者限定だろうか?記憶がない状態であったが、黛が現れたところに決めつけるのはいけない。ともあれ、この能力で出される残りの強敵がいるとすれば、



シットリ と 南空茜風 、 レイワーズの面々。

(涙ナギとカホの事は、表原が良く知らないだろうから除外)



ってところだろうか。

純粋に戦闘能力が高いって事を望んでいれば、北野川や古野のような存在は出て来ないだろう。それとあくまで死者に限ってだ。もしかするとだ、



「!!」


ヴァージンロストは次の相手と対峙した時、自分の読みが弱気だったことを思い知らされた。


「あなたから教わった剣、強さ。こうしてぶつけ合える機会があるとは、思ってもみませんでした」


さすがに確認をとる。


「おい、ヒイロ。お前は死んでないんだよな?」

「……ええ。私は表原ちゃんとセーシ先輩が知る限りの、ヒイロです」

「キターーーーー!!ヒイロさん!!ここ!お願いします!!ホントに、マジで!!」


結構、強い人が出て来たと思っていたのに……。ヴァージンロストをまともに足止めできていない状況。その中でも、ヒイロが現れてくれたのは、マジカニートゥの精神に大きな影響を与えるだろう。

もし、ヒイロがあっさりと敗れることがあればだ。


「悪いけれど、今のセーシ先輩を相手に、私の勝ちの目はないよ」

「えええーーー!?そんなこと言わずに!倒しちゃってくださいよ!!」


ヒイロが現れたというのは、ヴァージンロストにとって、精神的にどう思うだろうか?この能力。死んだ奴等だけを蘇らせて戦うだけじゃない。

生きている仲間達も含めて、戦わせる事ができる。



「!!」

「死んでねぇなら、ありがたいな。遠慮がいらない」



愉しませろよと、闘志が上がる。気持ちだけでどうにもならないぞって、レゼンとマジカニートゥも思ってる。


「たぶん、来ますよ」

「こっちも空間の謎が解けたらよ。凄く嫌な相手を出し続ける」


ランダムと思われているが、何かの法則があって、とても強い相手を出現させることができる。

生きている死んでいるは関係ない。

この情報だけでも残っている強敵は、



涙キッス、網本粉雪、白岩印、ルミルミ、……生きている強敵達がまだまだ現れる。

強さが半減ほどといっても



「これだけの強者と出会えさせてくれるかっ!!」


その数は多すぎる。しかし、だからこそ。ヴァージンロストは狂喜していた。

ヒイロとの対決もまた、楽しみの1つに過ぎない。こいつとも真剣に斬り合いたかった。そして、先の空間に進んだマジカニートゥとレゼン。ここで待っていたのは



「うひょ~!野花さんのパンツを堂々と盗んで、身体をはぁはぁして良いんですね!蘇らせてくれてありがとう!」


ドゴオオォッッ


「テメェは蘇ってくるんじゃない!!」

「蒼山。あんたは斬られるために蘇っただけだ」


ヴァージンロストではなく、マジカニートゥからの鉄拳を顔面に喰らって倒れる、蒼山ラナだった……。


「さっさと死んでくださいね。あなたのせいで、あたしに余計なモノがくっついているんですから」

「えっ!?ええ!?なになに!?なんで僕、そんなに嫌われてんの!?」



さらに進んで



「僕はマジカニートゥの身体を弄る方がいいな」

「今度は寝手くん!?君は本物だったら良かったよ!」

「というか、変態2連続かよ!」

「へ、変態!?それは寝手の事だけですよね!?な、なんとか足止めしますから!先へ行ってください!」


次に現れたのは、寝手食太郎とアセアセ!

蒼山とは扱いが違う感じとなって、次の空間へ。


「まほまほちゃ~ん!憎いねぇ~!母と子のドロドロでエロエロな戦いをチョイスするなんて!」

「3連続で変態が出て来るんじゃない!!ちょっとは自分の娘と戦わされる気持ち考えたらどうですか!?」

「でも、私って偽物だからね。あの子は遠慮しないわよ」


野花壌まで出て来た。

強い人が出て来て欲しいのに、なんでこうも、変態を3連続で引いてしまうのだろうか。


「でも、こんなことさせるんだから、まほまほちゃんにキスしないと許せなーい!」

「ぎゃあああ~!あなたはあたしのために戦えばいいんですよ!もーっ」


壌に抱き着かれて、次の空間に行くのに遅れてしまった。そして、次に待っていたのは


「ルル!私がお前を必ず護ってやるからな!」


涙キッスとイスケであった。


「いや、キッス様はあたしを護る役です」

「なに!?私はルルのために早めに出て来たんだぞ!!」

「あー、そーいう意味ですか」


なんか3連続で変なのが来たから、キッスが来るのも納得してしまうマジカニートゥとレゼン。

とはいえ


「私に任せろ!ルルを殺させなんてしない!むふ~」

「なんだろう。さっきから出て来る人達、ちょっとおかしい気が……」

「本人に似ている偽物だからな。たぶん、俺達が思ってることをそのままにした者が出て来るんだよ」


やる気満々の涙キッスが現れて、ヴァージンロストと交戦してくれる。



バギイイィィィッ



「いいな、いいな!!最硬の相手!ぶった斬った快感はまさにこんな感じだろうよ!!」


ヒイロ以上に粘りを見せた涙キッスであるが、ヴァージンロストにダメージを与えたとは言い難い。ここまで猛者が続けて出て来れる。


「飽きねぇ!」


ヒイロはさすがだったな。あいつからの攻撃が一番効いた。涙キッスもまた、見事。こんなにも俺の剣が通らなかったのは初めてだ!本物と戦いたかったぜ!絶対にもっと硬かっただろ!

やっぱり、耐久力が軒並み落ちてるせいで、長時間の戦闘はどいつもできてはくれないが。


「おっ!?」


ここでヴァージンロストからすれば、さらに計算外の相手達が出現して来た。絶望を見せていくのは、どっちだよって言いたげなぐらいだ。連戦の連戦で



「あんたを倒すのにいくら必要なのかしらね。まったく」



レイワーズのイチマンコ。



「まさか、ジャネモンまでも呼び寄せるか。気に入らねぇ本気だよ」



同じくレイワーズの怪護まで現れる!

それほど能力を知っているわけでもない相手。対峙しただけで強さの程が分かる。

その2人を連続で相手にし



ズバアアァァァッ



「本当にお前等と戦いたかったよ!レイワーズ!!いい強さだ!!いい出会いをくれて嬉しい限りだ!」


無傷で突破し続ける。まったく、ヴァージンロストが止まらない!ジャネモン達も強力であるはずなのに


「表原~~」

「ルルちゃん!もうキッス様がやられちゃったから、ルルちゃんも死んじゃうよ!」

「そーいうことを言わないで!!っていうか、こっちに怒ってるよ!!」


怪護の次に出現したのは、涙ルルだった。すでに姉のキッスが倒されていることも伝えるし、まったく相手を止められない事も告げてしまうマジカニートゥであったが

ぷんぷん怒っているのは理由がある。



「なんであたしはジャネモン状態で登場なんです!?」

「ご、ごめん!分かりません!!」

「たぶん、入った空間事に法則があるんだろうな。黛ちゃんは、SAF協会仕様だったしな」

「も~!先に行きなさい!!」



たぶん、マジカニートゥが戦った相手として、記録されちゃっているんだろう。

つまりは



グギギギギギ


「ヒイロを殺した?ヒイロを殺した?表原、なにしてるの?」

「ギブギブギブ!!白岩さん!あなたまで、ジャネモン状態で出て来るんですか!?」

「許さない!ヒイロを見殺し、許さない!!」

「いや、だから!その……あたしを護るために」

「ああぁ!?ヒイロが、ヒイロが!!あなたを護った!?」

「ち、違います!そ、そう!白岩さんを戦わせないよう、先陣を切って頂き」

「!……やっぱりヒイロってカッコいい!!素敵!」

「はぁ、はぁ、はぁ」



白岩印もジャネモン状態で登場。現れるや否や、ヒイロを見殺しにした事を詰められ、逆に殺されるところだった。あれ、レイワーズのお二人ってかなりの良識派だったのかな?

ともかく、ヒイロの仇をとるため、ヴァージンロストと戦ってくれる。しかし



「ジャオウジャン様からのご褒美を頂くのです!このレンジレヴィル、命を懸けて戦います!」

「やべっ。この能力、思ったよりやべぇ」



最後に言い放った白岩の台詞から、次に出現する残りの奴等がなんとなく予想がついてしまった。



「ああああああああぁぁっ、悪魔ああぁぁっっ!!頭の中に命令が入り込むぅぅっ!!」

「こいつも出て来るんかー!!」

「お前は悪魔だ!!お前は悪魔だ!!罪のない人達を苦しめている!!」


蒼山とは対照的な理由で、こんな奴まで利用したくはなかった。

レイワーズ、ハーブの宿主である赤羽和希も出現する。


色んなジャネモン共が現れてから、最後に出現するのは、当然。



【我がジャオウジャンを生き返らせたのは、貴様か!褒美として、我の下僕にしよう!】


あの最強のジャネモン。

ジャオウジャンまでも出現するという事態。傲慢な言葉を吐いたジャオウジャンであるが、


「お前はあたしの言いなりでしょうが!!とにかく、セーシさんと戦って、少しでも体力を削って!」

【なっ!?この我に命令するか!!愚かな小娘め!我が素晴らしさを身を持って、分からせてやろう!】

「ぎゃああああ!洗脳する気!?」


最初は強気に言ってみたが、ジャオウジャンは怯まずに、逆にマジカニートゥを乗っ取ろうとする。だが



ズバアアァァァッ


「大丈夫か?マジカニートゥ!」

「ありがとうございます!!助かりました!!……って、ちがーーーう!!今度の相手はこいつですからね!!あんた、強すぎるでしょ!!」

【ぐおおぉぉっ!!我を斬るとは!なんと不届きな奴!このジャネモンの中の王たる所以を見せてくれよう!】

「来い。お前も斬ってみたかった」


本当の戦う相手であるヴァージンロストに助けられる形で、次の空間へと逃げるマジカニートゥ。相手の能力はもちろん、自我も強かったりすると、制御が外れて暴走してしまう危険もあるようだ。しかし、そんな暴走よりも恐ろしいのがヴァージンロストの戦闘能力。


マジカニートゥが知る中での強敵達が連続で出現しているにも関わらず、まったく止められていない。

強敵達の数も残り少ないことを、マジカニートゥ達も感じ始めた。とはいえ、ここは強者が連続で出てくれるはず。


「ふ~ん、さすがにセーシ先輩だね。あたしが認めた方なだけあるよ」

「うぎゃああああぁぁ!?出たーー!」

「おおぉっ」


レゼンも驚いてしまうし、マジカニートゥからしたら前のジャオウジャンだった事も含めて、前の空間に戻りそうになる。


「ちょっと。あたしは今回、不本意だけど!あんたのために戦ってあげるんだから、感謝しなさい!」

「ルミルミ!……さん」


ついに来た、最強の妖精が1人。しかも、全力でヴァージンロストと戦ってくれそうな戦闘狂。


「次の空間にいるのはシットリだからね」

「教えてくれるんですか!?っていうか、この並び凶悪ですね!!普通に連戦無理でしょ!」


ジャオウジャン → ルミルミ → シットリ


マジカニートゥ達が次の空間に進み、ルミルミの言う通り。待っていたのはシットリであった。


「気に入らない力だな」

「みんな、それ思ってますね!でも、戦ってくださいよ!」

「最強というものに興味はない。だが、ルミルミ様やヒイロにこんな事はさせる気はない」


すまし顔でシットリは言うのであるが、


「いや、もうルミルミもヒイロも前の空間で出てきているんだが?たぶん、シットリが最後らへんだ」

「!!?はぁっ!?俺がこの位置だと!?おかしいだろ!!」

「そうですか?」


強さという面では、ヒイロやルミルミ以上の評価をもらっているが、自己評価が低いというよりシットリがヒイロとルミルミを高い評価にし過ぎているが正しいだろう。



「ルミルミ様と肩を並べられるとは嬉しい限りだが!!ヒイロが早くに出て来たとは!貴様、どーいう評価をしているんだ!!殺すぞ!!ヒイロがあんな弱い位置なわけないだろ!!」

「うわー!怒らないでくださいよ!!ランダムなんですから!」

「例外っちゃ例外だが!ヒイロさんと白岩さんが別々だったから!」

「ランダムとか!別々とか関係ねぇーんだよ!!あいつは!俺より強ぇんだ!!ふざけた評価してると殺すぞ!!俺よりも後ろにしろ!」


思ったよりも面倒な方だった。ヒイロさんへの拗らせ度、白岩さん以上かもしれない。


「くそ!!ヒイロが負けるわけねぇ、ヒイロが負けるわけねぇ。さらにルミルミ様が倒されるのをただ待つなんて、不甲斐ない!許さん!許さんぞ!!俺は許さない!!自分を許さん!」

「こ、この不屈の精神がシットリさんの強さですね。明確に敵としてなら、一番だったのかな」

「となると、おそらく最後は。ここまで唯一、出て来てない」


網本粉雪


「あえて言うなら、セーシさんが今は戦いたくねぇ順ってところか。割と気まぐれなところあったけど。お互いの気持ちに沿った形で、選出が決まっていたんだな。まだ知らねぇ奴が現れるかもしれないが」

「なんでもいいですよ!とにかく、みんなで戦うしかないんです!!戦って倒すしかっ!」

「けど、俺達は逃げてるだけだよな」


総力戦って言葉を使うに相応しい本気の空間なのは違いねぇけど。

……全員が倒された時。

どうなっちまうかな。



ドバアアアァァァッ



「ははははぁっ!これがジャオウジャンか!!強いなっ!!」

【ぐふぅっ、つ、強いだと……我が小娘に再現された、だけとはいえ……貴様は……強すぎる】


ヴァージンロストが愉しみながら、ジャオウジャンを斬り倒して、次の空間へと向かった。

次に対峙したのはルミルミだった。


「セーシ先輩」

「おおっ、ルミルミ。お前が先だったか。手加減しねぇのは分かってるぜ」


これが世界と戦うってことか。

こんなにも出会って来たか、俺の知ってる強い奴等。ホントに強ぇっ。


ガギイイィッ


また世界を相手に戦える日が来てくれたとはな!こんな景色だったか。これほどの相手だったか!

嬉しいぞ!マジカニートゥ、レゼンくん!

君達がここまでやってきてくれたから!俺は



ズバアアァァッ


「さぁ、次!!」



次は、シットリか!お前とルミルミには1敗してるからな!存分にその時の借りを返すぜ!

お前のタフさ、戦闘力、楽しかった!だが、それでも俺には届かねぇぞ!!



「”天照あまてらす日輝白地ひかがやはくち”」



感情抜きで言えば、テメェが一番強くて戦いやすいぜ!

まだ、いるだろ!まだ、出て来るだろ!!



「南空!!」



人間を超えた、”仙人”の力。見せてみろ!



「!おぉ、俺まで出て来るのか!?野花!」



今度は自分自身との戦いか!だけどよ!自分だからこそ、お前には俺には届かねぇ!!



「さぁ、来いよ!!次!!……クールスノーか!まだ、死んでないよな!?」



……ったく。

世界と戦うとなると、斬りたくねぇ相手も斬らなきゃいけねぇか。辛ぇけれど、それでも。俺はまだ世界を斬りたいんだ!



ドスウウゥッッ



「はははは、クールスノーも超えた」


俺の知っている猛者達、全てと戦わせてくれた。感謝しねぇとな、レゼンくん。

いや、まだいたよな。マジカニートゥが残っている。次の空間にいるんだよな……。

さすがに体が重くなってきたぜ。



ザッ



「き、来ちゃったよ」

「ホントに全員を倒してここまで来たか」



クールスノーを倒してからの次の空間にいたのは、マジカニートゥとレゼンだけだった。そして、次の空間に繋がる小窓はない。


「ふぅ……ふぅ……世界と戦って来れた。お前達のおかげだ」

「あ、あんなに強い人達と戦い続けて、まだ戦うんですか!?」


序盤は無双していたヴァージンロストであったが、さすがの超がつくほどの連戦と猛者達によって、ダメージはかなりのモノとなっていた。そして、自分の力の性質上。制限時間の弱点を超えようとも、限界はある。


「南空の辺りから、一人を倒すのに時間が掛かっていた。セーシさん。もう限界だよ」

「かもな。それが良かったんだ」

「……正直言うが、俺とマジカニートゥがここで戦っても」


勝てるビジョンが浮かばない。


「だけどよ、この空間まで来て。あんたの気持ちっつーか、あんたの顛末が見えたよ。そーいう景色を一度は見たんだな」

「!」


マジカニートゥとレゼンが見ていたのは、ヴァージンロストの後ろの方。そこの壁部分はガラス張りでできており、その奥には……ヴァージンロストが全て倒してきた、強者達の姿だった。

いや、正確には、ヴァージンロストが見たことある光景。


「かつて、強すぎたあんたには誰もいなかった」

「…………」

「今なお強くても、控えていたあんたには大勢の仲間ができていたのにな。この空間の本当の力は」


世界と戦って弱り切った、あんたをここに封じ込める事にある。


「もう引き返せない。出入口は閉じた。空間を裂く力もない」

「……くくく」

「ごめんなさい。たぶん、これがあなたの報いになる言葉」

「ここにいる俺とマジカニートゥも」


”偽物だ”



ズバアアァァッ



ヴァージンロストはマジカニートゥとレゼンの偽物を斬り裂いた。そして、次の空間に繋がる小窓も、前の空間に繋がる小窓も閉じられた。完全に世界からヴァージンロストは孤立してしまった。

この空間でいくら身体を休めようと、疲れが抜けてこないで重力が増し続けている。最大の戦闘狂の最期として、暇という敵ではなく、戦えないという状態にさせられたことに



「レゼンくん」


全ての敵を倒したという喜びを爆発し、活気を取り戻そうという事は無かった。満足という死。死の形にこだわりはない。また世界と戦えた……。そして、その相手が自分にとって、相応しいものだった。

地面に倒れ込みながら、ヴァージンロストはここまでの相手をしてくれた、多くの者達に



「ありがとう」


そうか。あの時、あいつが剣を避けなかったのは、この相手と世界が戦ってくれることを分かっていたからか。

大したもんだよ。

ホントに強かったよ、マジカニートゥは……。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



「……!」


意識が遠のきそうになったが、空間が突如として揺れ、崩壊していくことで顔を上げる。天からやってきた光と大きな掌がヴァージンロストを掴み上げた。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



「!!」

「はぁ……はぁ……勝手に封印決め込んで、死なないでくださいよ!!」


ヴァージンロストが意識を取り戻した時、マジカニートゥとレゼンが横にいた。

自分もそうだが、マジカニートゥ達もとてつもない消耗をしていた。


「ギリギリの戦いでしたけど、これであたし達の勝ちですよ」

「……どうして助けた?」

「だって、野花さんを死なせる気がないですもん!!セーシさん1人で死んでください!!」


野花の気持ちはともかく、マジカニートゥからすれば、野花を巻き込んで死のうとするんじゃないとするのは正しいだろう。確かに強さという面でヴァージンロストには、どう足掻いても誰も勝てない。ただ、勝つという面ではやりようがいくらでもある。

これが難しいものだ。



「消耗してても、お前達の首くらい獲れるぞ。俺達はクールスノーに協力している身だ」

「負け惜しみ」

「!……だな」


ヴァージンロストの言う事にも一理あるが、マジカニートゥの言葉の方が突き刺さっただろう。終わった勝敗をひっくり返そうとするのは、違っているはずだ。


「セーシさん、あんたは誰よりも強かったよ」


世界を相手にホントに一人で勝ったのだから、


「ただ、最後に見た景色になるだけじゃないか?そうなって欲しくないって、過去に言う奴はいなかったか?」

「…………そいつは不器用な奴で、そーいうのを嫌う奴で」



……それはたぶん、


「また分からされるのか」


セーシご本人の事だろう。



「勝ちが全てとは言わないが」



そして、本当に願っている言葉だったのを知った。

”この時のため”じゃない。

”今、常に自分と戦って欲しい”

また、言われてしまったと、呆れた笑いを溢した。


「お前等がすげぇって感じるのは、やっぱ悪くねぇな」

「……なら、今後は自分を抑えてくれよな」



マジカニートゥ VS ヴァージンロスト



勝者、マジカニートゥ!!



挿絵(By みてみん)


表原:な、な、なんですかこの画面!?イラストっぽくない!

レゼン:これだけ見てもサッパリ分からんと思うが。以前、この作品を書き終えてから、好きなことをやっていると言っていただろう。その1つがこれ。お前に画像を差し替えたそうだ。

表原:”これ”って言われても分からない!

レゼン:ゲーム

表原:は?

レゼン:だから、ゲームでも作ろうって思って、今、実行中だと

表原:なんですとーー!?




えーっと。やっぱり、”MAGICA NEAT”の作品のキャラクターで、このお話をするのはできないという判断をしたまで。

申し訳ないが、ある事を、ちょっとだけ熱弁したいなぁって思います。


ペンネームの通りにございますが。

自分自身。誰かと仲良くなったり、誰かと協力したり、誰かのために事を成したりという、人としての活動は苦手なのです。

そして、当たり前ですが。もしも、芸術的な分野で”生活”をしたいと思えば、1人ということはあまりにも不利ですし。不可能とは言えないけれど、そこには自分が苦手ということを乗り越える必要がございます。それと、色々と制限が付くのも分かっております。一人でもやるのも制限ではありますが、自分はこちらが性に合っていると判断しました。



この作品が好きだから最後まで歩いたわけですし。

そして、これからもこーいうスタンスでやるのが良いなっと。やっぱり、上手く行けました。自分にとってはこれが最善です。これでいいって落ち着きました。言い聞かせているかもしれませんが。

話を書けて、絵も描ける。上手くもないし、ミスも多いけれど。それはそれとして、最後まで行けたってのが一番ですし。やっている最中に自分も頭の隅にしか思っていなかった事を、やろうって決められました。

昔はゲームを作りたいなーって思ってたんですが。そこで上手く行かない事と、自分を楽しませる事はできても、人を楽しませる事はできないと理解したわけです。

その2つの両立は個人では無理ですが、それよりも自分のキャラ達をシュンっと葬るのができないんです。それをアッサリとできる事やお金として考えられる人達が凄いと思います。



で、今もその手段などを考えている最中であります。お金を稼ぐ必要もあったりで、仕事もとっとと覚えようとか……色々やっているわけで。


そこでこんな事をやってる意味ってあんのかな?って考える時、昔はあったんですが。今は、自分にはこれ以外に特になく。話を書いたり、プログラミングしたり、絵を描いたりして、新しい発見や挑戦したい事ができました。

自分が絵を描けば楽しいし、ゲーム内容や話を自分で作れば楽しいし、プログラミングまでやれたら楽しいんです。

クソ忙しいんですけれどね(笑)

静かな空間で何かに没頭するのが居心地が良いです。



え~~っと、何を伝えたいんだ。相変わらず……ってところですが。

案外分からないことです。ですけど、案外。やりたい事をやれたって時に、一回り成長して、次は何をやろうかって、捜すのも、それを目指すのもまた楽しいのです。上手くいかない事もありますし、一発勝負や資格試験とは違って。進めばちゃんと進むようなことも、世の中にはあるんで。


表原やレゼンみたいに。本気になれば、何かが変わるし。

本気をどうやって出し続けるか、自在に制御するかってだけでも、だ~~いぶ、生活が違ってくるかなと思います。

もし、こんなところまで見てくださった方がいるのでしたら、次はその本気を自分の好きなことにぶつけて欲しいなって思います。もちろん、自分もそーいう風にこれからもやっていこうと思います。この作品を通して、その思いがより強くなれました。


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