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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第61話『EXTRA STAGE』
261/267

Bパート


昔の”妖精の国”の出来事。

まだアダメが頂点に君臨し、セーシが地球で大暴れをして、日も経っていない。


「妖精は人間達を幸せにするために!」

「妖精は人々を手助けするために!」


第2期の妖精達が誕生し、教育を受けている頃である。人間的に言えば、サザンもルミルミ達が子供という状態だ。子供だからこそ、飲み込みと意欲が高い。それに応えるように有望なのがいる



「る、る、ルミルミ!俺と一緒に修行しないか!修行が終わったら、その……」

「嫌だよ!サザン!あたしはあたしのままにやりたいの!」

「お、俺はお前と一緒にだな!その、強くなりたいから!」

「しつこい!」



この時からサザンはルミルミに恋心を抱いていたりしたが、……2人揃って、第2期の妖精としては有望株だ。そして、そんな2人を微笑ましく見て、指導をしていたのは言うまでもなく、生みの親にして全ての元凶であるアダメ。


「あらあら、サザンとルミルミは仲良しね~」


サザンとルミルミ。この2体はとても有望ねぇ。あんた等の遺伝子は使えそうだから、次世代の妖精のサンプルとして使うのは確定よ(後のヒイロとイスケ、ターメ)。

2人には私がコンタクトをとってる涙一族の連中に与えてやって、人間達をさらなる混乱に落としてやる。セーシはその点で言えば、失敗作だった。破壊をし過ぎるだけでは、人間達にも理性が働いて封印しちゃう。



有望な存在に目を付けているのは確かであり、その他にあまり目を向けなかった事には、人も変わりないだろう。



「良いなぁ、ルミルミ……」


女の妖精として、優れていた者を見る目。


「俺達は俺達で人間を幸せにする妖精になればいいんだよ」

「テンマ」

「幸せの形はいくらでもある。幸せにできる事だけを考えて、一緒に人間界に降りよう」

「うん。ありがとう」



フブキは憧れた。それを知っていて、テンマも慰めていた。自分達ではルミルミとサザンに力では及ばない。だから、人間達の幸せについて、考えるのは普通。人間はどんなことを考えているのだろうか?そーいう疑問をフブキが持ったのは、当たり前で


「アダメ様。人間というのはどのような事を幸せに感じるのですか?」

「そうねぇ」


指導者としてだが、アダメにとってはこの子達は、生物兵器と思っている。


「自分の思った通りにしたい事で幸せになるの」

「へーーっ」

「だから、良い事も悪い事も。判断がつかなくても、それをした時に幸福になれるの。フブキ、普段から大人しいあなたも、少し羽目を外したら」

「……やってみます!私、力はないけど。人間の幸せのために、この命を使いたいです」

「ふふふ、良いわね」


っか~~~。泣けるわね、この子は~~。可愛い。自分が人間達を滅ぼすための生物兵器だと知らないで、人の幸せを思ってやんの(笑)。セーシが地球をボロクソにしてる歴史とか、ちゃんと学んでたのかしら(笑)。あー、妖精達、超面白ぇ。私が設計した妖精、サイコーに面白ぇ!!



優しい笑みの内側で、大爆笑しているアダメ。彼女の内心はともかくとして……その答えには、善として包まれていたフブキには、あまりにも毒だった。

アダメの評価からして、賢い妖精と言えないし、親友としてテンマが傍にいてあげる事が多かった。そんな彼女の大冒険が一つ。



「妖精のこと、人間のこと。アダメさんの昔の事から知りたいな」


と言いつつ。本人にその手の話をすれば、答えてくれることはなかった。(アダメ本人からすれば、そりゃそうだ)。

だから、この自分を少しでも変えるため。自分がするとは思われないだろう、忍び込みをやったのだ。



「アダメさんのお部屋、なんか汚い。小説書きもするんだ」


アダメのやりたい事よりも、人間達のことを知りたい。とある噂を知っている。アダメが妖精達について、記録を纏めている古い書物がいくつかあるというものだ。それにはきっと自分を変えられる方法があるかもしれないし、役に立てる情報もあると思っていた。



「えへへへへ、あとで返せばいいよね」



ホントは1冊目から読もうと思っていたが、1冊目が抜けるとすればさすがに異変に気付く。フブキがこっそり盗んだのは、最後の日誌である6冊目。結末というか、結果だけを知りたいのなら、最後だけ知ればいいのは確かなことだ。

フブキは軽い気持ちだった。だが、その日誌の中は軽い気持ちで知ってはいけない事実だ。




”妖精は人間達を滅ぼす生物兵器である”


「……え?」


”妖精の元となるのは、人間達の可能性となる者達である”


「…………」


”可能ならば、その中でも”仙人”という極稀に現れる人間達を兵器に変える方法が良い”


「は………」


”第一期の妖精達は、妖精の原材料を増やすため、人間達の命が必要だ。仙人となれる命が必要だ”


「…………」


”第二期の妖精は、人間達の可能性を奪うこと。希望を断つこと”


「………あ、アダメ様?」


”人間を私のような、神に近づけてはいけない。可能性を消さなければ、私は今度こそ神から追放される。成長する人間を根絶以外の形で収めることで、元に戻るのだ。この宇宙を捨てた神ができなかったことをするんだ”



どんなホラーよりも、自分達の存在理由が恐ろしいと感じた。

そして、その事をアダメに伝えることは……フブキが考えなくても分かる事だ。みんな、この嘘か真実か分からない話を知らない。自分もこれを知るまで、人々のために、妖精があると思っている。

だけど、違う。

ホントは、妖精達は、人間を滅ぼすためにある。

妖精の元となっているのは、かつては人間だった人達という話。


「ど、どうしよう」


真相を知ってしまい、不安がったフブキ。その異変に一早く気付いたのは、親友のテンマだった。


「どうしたんだ、フブキ?最近、顔色悪くないか」

「て、テンマ。いやその……」

「?何かあったのか」


まだ、フブキはその日誌を手にしていたままだ。戻した時に見つかるのが怖かった。真実を知ってしまったかと、アダメに制裁される事を恐れた。こんな話をみんなにしたら、消されてしまう。


「フブキ!!」


そんな彼女にいても経ってもいられなくなり、テンマが問いただした。自分達以外誰もいないところでだ。


「あ、あ、あのね。テンマ、あたし……消されちゃう……アダメ様に」

「アダメ様が?何を言っているんだ」

「だから」


あたしに構わないでって言いたかった。だけれど、テンマはフブキに言った。


「俺がお前を護ってやる!!」

「!」

「お前の秘密も俺が護ってやる!俺が!!」


困った存在を見捨てられなかった。そして、フブキはようやく、テンマに妖精達の秘密はもちろん、自分が盗んでしまったアダメの日誌を見せた。

結果だけを多く書かれた日誌ではあったが、アダメの目的を含め、地球という存在が……元々は”可能性”が多くあった事が分かり、自分達が元人間である可能性も含めてだ。



「……信じがたい事だ」

「嘘だよね、テンマ」

「………いや、アダメが得たいもしれない存在なのは確かだし。人間じゃないのは分かってる。神様という立ち位置なのも合点がいく」


”様”付けなんか、できないくらいの内容だ。

それでも


「人間の幸せのために妖精達はいる。俺は、こんな生物兵器だなんて、絶対に自称しない!」

「…………」

「”妖精の国”を変えてやる!そして、フブキも護ってやる!!この事は、今。俺達だけの秘密にするんだ!アダメは少し抜けているから、このまま気付かないと思う!日誌は俺達だけが分かるところに隠そう!!」


フブキとテンマの始まりも……アダメほどではないにしろ、ちょっとした好奇心のミスから始まったのだ。


「ルミルミやサザンのように目立たずに、人間界に降りれるようにここでは過ごすんだ!アダメとも他の妖精達とも極力接触を避けないと危ない!俺達は人間界に降りて、アダメを倒せる仲間を募るぞ、フブキ!」

「う、うん!テンマ!……テンマ!」

「フブキ」

「あたしも、テンマを護りたい!!あたしの馬鹿なことで、危険な目に合わせたんだから、あなたに死んで欲しくない!」

「死なないさ!”妖精の国”、そのものを変えるまでな!それが人間達を幸せにする!フブキ、一緒にやろう!」



…………粉雪にも、ちゃんとして言えねぇよな。

この計画の根幹は、フブキを護るためにある。

でも、もう分かってくれる気がするよ。言わせないってことはそーいう……。



◇             ◇



表原麻縫、寝手食太郎の2名を緊急で日本に呼び戻すよう指示を出した、キッス。

もちろんであるが、日本の防衛のために散り散りになっていたメンバーも、本部に召集。(キッス達もだが)

全員が次の任務に参加するとは、思えぬ胸中であることは集めているキッスにも分かっている。



「……待たせたみたいだな」



キッス、ルル、野花桜が因心界の本部に到着。

一緒にいた壌は、革新党の混乱を収めるべく、南空に代わって奮闘するようだ。彼女は南空がいなくなったという時点で、革新党が彼の意志を引き継ぐ理由も、その資格もないことが分かった。

とはいえ、粉雪が帰ってくることも踏まえて……という、キッスには条件付きでは言っていた。


「早い!!」


本部の幹部の会議室。

一番に言ってきた、北野川の言葉は……


助かって良かったみたいなもんじゃない。

キッスの気持ちが分かっている上で、ストップをかけて来た。


「椅子にくらい座らせてくれ」

「そ、そうです!」

「……………」


野花からしたら、正直、この場には居たくはなかったが。北野川の本気の一声は有難かった。

凄い絶頂を味わった後で虚無に行ってしまったような、しまりのない表情のままではあるが、自分の席には着いた。一方でルルは、姉であるキッスの後ろに立った。自分の席よりも、姉の意見を護るためと言ったところ。


キッスが座ってから、一呼吸つく。

ここにいる。


北野川話法、野花桜、古野明継、涙ルル、黛波尋。

因心界の幹部級に揃ってもらった上で



「私は、網本粉雪を……殺しに行く。向こうもその気だからな」



少しだけ、躊躇ったようなモノではあるが。


「今まで手を組んだが、禁を破って、今。白岩印とヒイロの2名が重体と言える。2人については、……脱退という形だが。彼等失くして、任務の遂行はできなかった。……いや、もう遅い。粉雪がついに動いたわけだ」


色んな理由を並べようとしたが、自分自身もそれは望まなかった殺し合い。


「まぁ、そーいう事だ」



キッスの視線が一回も野花を向けなかったのは、優しさだろうか。

キッスと粉雪が戦うんじゃねぇかとは、入ったばかりの黛を除けば、薄々感じてはいた。仲が良いのは個人同士ではあるが、組織としての対立がある。


「あたしが反対!!」


野花よりも、誰よりも早く、キッスを止めたのは北野川であった。


「あたしからすれば、粉雪は好きじゃないわ。前々から企んでるなーってのは、分かってて、やってくれたわね。で、……こんな状況で戦えばね!理由を立てられない戦いは望まない!!」


世界を護る、国を護る。そーいう自分の命の危機も分かる。妖精がここに多くいる中で、人間が決めるこの場で!


「他所の世界のために戦える状態じゃない!!」


カミィも故郷を見捨てたくはないが、到達する手段がない。現状、あえて言うなら、……粉雪がなんらかで帰還した際に、殺し合うプランになる。

そんなのどっちの命も勿体ないものだ。”妖精の国”がどーいう状況かは分からないし、



「あんた達2人は、ただの個人じゃないの!!」



勝敗を気にするようなお遊びじゃない。


「私も北野川さんの意見に同意です。キッス様、ここは退くべきです」


北野川の熱い言葉の後で、古野が落ち着いて、キッスの決意を止めに掛かった。


「粉雪さんが非常に上手い。まぁ、いつものやり過ぎではありますが……。仮に我々が、”妖精の国”で迎え撃つとして、私はどちらの治療も拒みますよ?それは単なる私情の戦いになります。私達にとっては、無益であります」


もちろん、ぶつかれば……どっちが勝つかは予想できない。

ただ、そんなギャンブル。


「私達にも知らない事ばかりです。あなたと粉雪さんの勝敗は、ホントに言えます。私情です」


北野川と古野の反対に対し、好戦的な奴は


「あの女については良く知らないけど。力ずくで来たんだったら、こっちも力ずくしかないでしょ」


黛は、キッスの意見には肯定派だった。それは彼女が歴が薄いというのもある。


「合理的って奴だけど。みんなが弱ったところで、黒幕ムーヴをかますのは気に喰わない。キッスだって戦いたいと伝わるから、個人として賛成」


その賛成票の後で



「……お姉ちゃんが決めた以上は曲げない。あたしもそれに従う」


涙ルルも賛成票。


「3対2。野花」


自分が絶対のリーダーだと知りながら、票数は同価値にしているキッス。この中では革新党の繋がりがあり、もちろん、キッスも粉雪も仲間である野花にとっては……


「……ここにいてよ、キッス」


懐に……。おそらく、妖精であるセーシを握っている。粉雪と戦うことは拒むが、死んでしまうのは……南空とは違う。そんな心情を少しも感じ取らずに


「3票、3票」


票を数えたのは、キッスなりの温情だろう。


「あと1票だな。どうするか?次の1人で打ち切りたいものだな」


膠着するような場。

そんな時だ。会議室の扉が開き、現れたのは”妖人化”した一人の少女だ。



「”妖精の国”をどうしたいのか、分からないけれど」

「!…………」

「網本粉雪の行動は、とても危険なもの」

「表原!!」


主役の登場!


「あたしは!”妖精の国”で、網本粉雪を討つ!!みんな、妖精がいるでしょ!!ここが故郷のように、妖精にも故郷があるんだから!!その友達を護るため!!戦いましょうよ!!そして、粉雪も助ける方法を考えれば良い!」



表原はそう言いながら、席につき。


「キッス、その最後1票はあたしのでいいのよね?」

「ああ」

「なら、決まり!!」

「「「……そうだな」」」

「妖精の国を護るためにあたしは本気を出す!!」



宣言した瞬間。キッスが飛び掛かった。もちろん、この表原麻縫……?にだ。



ドガシャアアァァッッ



「ぎゃああああぁぁっ!?なになになに!?痛い痛い……」

「ほぉ~、変身能力があるようだが。いかんせん、演技が下手過ぎるよ。私じゃなくても、分かってしまうぞ」

「え、え、え?あたしは表原麻縫だよ!ほら、このマジカニートゥの姿!嘘なわけ……」


いや、こいつは偽物だ。

絶対に違う奴だと断言できるのが、この場にいる。まぁ、すでにみんなが察したのだが。


「あんた、表原麻縫じゃないでしょ。心の中があたしには聞こえる」


北野川の能力故の感知。


「表原は、お姉ちゃんを呼び捨てなんかしない!!」


ルルもその辺で気付くし


「あんたが戻って来たなら寝手もいると思うし、なによりレゼンくんが頭の上にいないじゃん」


見ただけで違和感がありまくると、黛が指摘し


「そこは表原ちゃんの席じゃありませんよ」


幹部になったら、ちゃんとした席が用意されているのに、そこを無視してテキトーに座ったところを古野は指摘。


「……表原ちゃんがそーいう殊勝な事を決める子じゃないわ。多分、戦いたくないわ」


代弁するわけではないが、野花の願いと同じ気持ちのはずなのに……そんなのと逆の事を言うなんてあり得ない。この場にいる一同が今、この表原麻縫の偽物に目を光らせた。


「や、や、やだな~。た、た、確かにその……あのですね!キッスを煽ったのは事実ですけど!あたしはそんなに悪い存在じゃないから!!殺すような目で見ないで!!」


こいつは偽物。しかし、その正体に至るまでは


「なんとなくだが、お前の正体が分かるぞ」

「いっ!?」

「しかし、完璧な変身能力か(容姿だけか)。皮膚を抉って、肉を出してやろうと思ったが。随分としっかり変化していて、”真の姿”は見れそうもない」

「”真の姿”なんていやだなぁ」


捕らえられたこの偽物の表原。

すぐに縛り上げられつつ、キッスに肩を捕まられ、隣で野花も警戒する。

ご指名された席は、現在空白と言える、粉雪の席にだ。完全に殺せる状態と言えるが、得体の知れなさを周りは感じ取っている。

キッスもその事について


「私達とあなたが戦う理由はありそうだが。……こっちは粉雪をなんとかしたい」

「突き出すのが良いと思うんだけれど」

「わーーー、ちょっとーーー。サザーーン!!話が違うじゃーーん!!」


この偽物の表原麻縫、……その正体はアダメである。

キッス達と接触するため、表原の姿に化けて、キッス達を”妖精の国”へ連れて行く。自分は関係ないという姿勢を貫きたいという方法であるが、かなりの悪手だ。

だが、サザンが言う通りだ。


「言ったろ。粉雪をなんとかするには、あなたの力が必要だ。野花、抑えろ」

「…………そうね。たぶん、粉雪は止まらない」


戦闘能力が飛び抜けている2人ならともかく、他の4人はアダメの得体の知れなさに、やや退いていた。戦闘好きな黛も、異常な心を宿していると聞こえる北野川も、人体とは思えぬ身体をしていると察する古野も。姉のキッスが珍しく警戒しているのを感じるルルも。

ここでやれば


「私と野花も無事じゃ済まない」


アダメと一戦交える危険性を考慮した。


「抵抗はするなよ。粉雪の独り勝ちになる。私達に協力するよな?」

「ひ、ひひひ……」


に、人間って奴は!この涙一族の女め!私を誰だと思っているの!?そっちから協力してくださいでしょーが!!サザン!!サザン!!どーしてこんな奴等を頼るのよ!!


「さーて、続きと行こうかな」


とりあえず、のこのことやってきたアダメを確保したならば、現状で難関となっている


「”妖精の国”への切符はこれで手に入ったと言える。……まさか、できないとは言わないよな?あんた」

「粉雪を取り戻せるでしょ?」

「ちょちょちょ!あんた達、まだ結果決めて」

「「賛成票だよな……?」」


キッスと野花が凄む。戦うことを望んではいない野花ではあるが、”妖精の国”に向かった粉雪が心配なのは確かであり、両方とも行き来がしやすい、このアダメを利用するのは吉。最も、殺すのが一番の吉ではあるが……野花はそこまでの理解に到達していない。キッスはアダメも護りつつではあるが、粉雪を止める手段にも使えると判断している。

無論、アダメからすれば、……死なずとも、この二人を同時に相手するなんて、地獄も良いところだ。”妖精の国”に戻る方が助かる可能性が高いともとれる。それがキッス達にも都合が良い話であり。



「うぐ」



この女!考えてやがる!!サザンの奴、本当はこれを目的に言っていたのね!騙された!!キッスとこの野花を連れて行くのは良いとして、私を人質として使おうってのは、酷すぎるんじゃない!?


アダメが焦りと苛立ち。この状況下でも、抵抗が可能である実力を秘めている事も含めて。


「…………」


キッスの思惑は、一緒に行動している野花の方に移った。


「ルル、北野川、黛ちゃん。”こいつ”を任せてもいいかな?」

「お姉ちゃん」

「は?」

「え」


今、アダメを取り押さえている状態。その役を3人に任せようとする。アダメがその3人なら抜け出せる可能性は高いが、キッスからすれば、見張りに近い状態にするもの。アダメの方がやはり危険と見ているが、その怯えと不安定な精神状態を天秤にかけ、


「私達は”妖精の国”に向かう。ヒイロが粉雪だけを送った方法なら、こいつもその方法ができるはずだ」

「でも!その方法だと!!お姉ちゃん達はどうするの!?」


ルルの心配もそうであるが、北野川からすれば……口にはしなかったが。野花への一睨みでキッスに伝えていた。


「大丈夫」


どっちにも言える言葉で、キッスはアイコンタクトで野花にも伝えた。


「ええ、それで良いわ」


この場で重要な事は、共に抑えた。

野花はキッスが粉雪と戦うことを求めていない。抑える役目として。そして、絶対にさせたくなかったのは、”妖精の国”に行ける手段をキッスが持ってしまうこと。もし、勝てないと分かっていても、ここで野花とキッスが戦う事もこの場で在り得た。

お互いの妥協案のおかげで、それは無くなった。北野川もそこまで分かった上で、キッスと野花にこの場を任せた。心を読めるってのを分かられてのこと。


「…………分かったわよ!あんた達は無事に帰って来なさいよ。こっちは任せなさい!ルルちゃん、あんたも帰りを待ってあげなさい」

「北野川さん!でも、そしたら、お姉ちゃんと野花さんが」



ビキィンッ



ルルの心配を一瞬で解決してくれる奴の、本当の奴のご帰還である。見慣れた菱形の基点が突如として、この会議室に現れ始めた。


「本物の表原ちゃんも連れて行く。彼女の力で私達は戻ってくる予定だ」

「乗る気じゃないと思うけれど、無理にでも連れてく」



ビキィンッ



「「「「どひゃ~~~~~」」」」



この場に空間移動してきたのは4名。

マジカニートゥ、レゼン、寝手、アセアセ。そいつは空間から押し出されるように……


ドタドタドタッ


「いだだだ!?無事、到着ですかぁ!?」


マジカニートゥが自分を含めて、みんなの確認をとった時。


「!?」

「うわ」



……なにやらみんなが誰かに尋問している状態だった。まぁ、そんなことよりもビックリするのは、その相手が自分と瓜二つというもの。


「わーーーーー!!?あ、あ、あ、あ、あたしが目の前にいる!!??なになに!?この状況!!」

「お、落ち着け!?ちゃんと俺達は空間移動ができたから!」

「マジカニートゥが2人もいるなんて!」

「な、な、な、何をしたんです!?寝手ですか!?」


状況をすぐに整理するなんてできないだろう。空間移動で飛んできたが、別のところに飛んでしまったかと思ったくらいだが。


「マジカニートゥ。待っていた。ここいる君の偽物は、ちょっとした悪い奴でね」

「……ちゃんと説明したら、キッス。私にも含めて」

「厳しい事を言うな」

「あ、あ、あたしは悪い奴じゃありません!違うから!!」


キッスがマジカニートゥ達にちゃんとした事情を話す……。



◇         ◇



捨て身の覚悟でやる。

サザンはそうしてクールスノーと向き合い、戦場もコントロールし、自分もできる限りの万全に仕上げた状態でなお。クールスノーへの勝算、40%あれば良いと思っている。

そして、それは自分でも多く見積もっているくらいだ。



バギイィィッ


【…………】

「ふふ。奇しくも”3VS3”なのよねぇ」


人間2名、妖精1名。

人間1名、妖精2名。


粉雪がどのタイミングで戦うかは……、今になった”だけ”と考えれば、ナギ達と戦うことはあり得た。彼が身を退いた事に、自分の事が含まれているという淡い気持ちがある上で。

余裕を見せる。

死んでいる人を動かすことに、奇跡と思う気持ちとふざけんなの気持ち。本音に



バシイィッ


【!!】

「けど、ナギさんとカホがこの程度じゃねぇ」


姿形を真似ているに過ぎない存在。

戦えば、相手はもっと強かったし、自分の強さにも気持ちを高ぶらせてくれただろう。殺し合いにある、相手への敬意、情熱。クールスノーという冷たさが一気に融けるくらいには、”これが”本物だったら、……と



「そーいう目をするな」



捨て身の覚悟を持っていたサザンが、ナギとカホを後ろに半歩下がらせたのはクールスノーの純粋に楽しむ戦闘狂の一面が顔に出たからだろう。

引退したという事を残念に思っていただろうが、こうして憧れた強者達と戦うに人として滾ったというのは、本望であり、狂喜する。


クールスノーがナギに対して飛び掛かるように動き、かかと落としを彼の眼前で仕掛けた。

彼等の能力を分かっている上での勝負。ナギがそれを両手で受け止めようとするのは当然であり、掴みさえすれば決して離さないモノとなる。

死人を使っていることが対峙してすぐに分かる。何より遅すぎるのは、”反応速度”。



バギイイィィッ



ナギとカホ、サザンの妖人化、ブラック・カラー・ホワイト。

万物を掴みとる能力であり、本当の時を知るクールスノーにとっては、自分の攻撃を受け止める時にカウンターを仕掛けられると思っていた。それすらできないほどに遅くなっている。反応が遅ければ、掴むことができず、ただの格闘能力が高いだけ。そのせいは



「っ」



やっぱり、ナギとカホを私の意志で動かす都合、反応が遅れる。こちらの指令がナギ達に到達し、動くというのは、戦闘においては致命的過ぎる。本体からの行動でなければ、クールスノーの格闘に対応できない。身体能力で上回ろうと、身体を操縦する者の差がある。

長期戦になれば、その差はデカくなる!この場で倒す手段は全て使わなければいけない!



ギュウウゥゥッ



「!」


カホが横からクールスノーと交え、すぐにナギが後ろに退いた。バトンタッチのようだ。

そして、ナギの右手が強く、握られていく。周囲の空間が引っ張られるようになり、黒い亀裂を作り出す。

万物を掴みとる握力から放たれる拳の一撃は、クールスノーすらも何度も受けるべきではないモノだと分かっている。全盛期の彼はこの技を連打して、相手を殴り倒してきた。


「”黒龍強打”」


シンプルな剛の拳。防御や回復を上回る攻撃を連打する。


「へぇ」


発動も決して難しいモノではない。若干の溜めも、相方であるカホがサポートすることで、その機を容易に作り出す。クールスノーもこの戦闘で許したのは阻止できなかったという理由に他ならない。

準備が整いさえすれば、カホが下がり、ナギがクールスノーと対峙する。

受けという選択はできないと、クールスノーは回避に徹するが自然。それでも、これがナギと思うにはあまりに



バシイィッ



「な!?」

「”黒龍強打”は、両手をすんごく握って、馬鹿みたいな破壊力を生みだす。ナギさんの十八番」


ナギを傷つけるよりも、死体を操縦するサザンにダメージを与えるように


「両手に触れる以外は怖くない。軌道を先に読めば、手首から先を打って逸らすくらいはできるわ」


あえて接近戦で、クールスノーがナギとの打ち合いを……むしろ、ナギに攻撃を許さない封殺を見せていく。そして、その維持が決して長くはないことも把握済み。

空間ごと握り締めることで起きてしまう黒い亀裂が、元に戻ろうとし始めると、”黒龍強打”の状態が解ける。

さらには、この必殺を使用することに、ナギにそれ以外の技は来ない事も、サザンの心理から読み切っていた。捨て身の覚悟を示すには確かなモノだが、それで敗れてくれるような相手ではない。



ガシイィッ


「っ!?かぁ」


クールスノーが、ナギの”黒龍強打”の状態が切れる瞬間。そこに合わせるように、彼等の十八番を見せつけるよう、ナギの首を握り締めて、地面に突き倒した。クールスノーのその瞳や表情を彼に見て欲しかった。彼の左手を手に取って


「ふふふ」


何かを思い出したが、それを阻止する邪魔者もいた。

クールスノーの背後から身体を透過させて、左手が入りこんだ。



ズボォォッ



「”白龍血掌”か」


ナギに必殺があるというのなら、カホにもその必殺となる技を持っていてもおかしくはない。そして、その事を命のやり取りに発展するくらいに分かっているのはクールスノーだ。

カホの能力もナギと同一なモノで変わりないが、唯一の違う個性として、ナギを掴むという事ができないものがある。それはナギに触れているモノともリンクしており、


「ナギさんが掴んだ相手の身体をすり抜け、相手の心臓を握りつぶす。それが本来の型の1つよね」

「分かってるじゃないか」

「これほど見事に決められたのは、不覚ね」

「ワザとだな」


サザンに躊躇いがあるわけもない。ここで今、当たり前のように。クールスノーの心臓を、カホの能力で握り潰す。造作もなくやっている。



ググググッ


「っ……っ!?」

「あ~あ、本当のカホさんだったら、私の大きい胸に嫉妬しながらやってくれるでしょうね」



カホの技が決まっている。サザンにはその実感はあるのだが。クールスノーの心臓を握り潰そうとしているのに、潰せない。クールスノーがこの切り札にも対応している証拠。


「自分のちっぱい胸に歯ぎしりしながら握るはずだわ。だけど、死んだカホさんだと面白くないものね」

「そうかもな」


今度は何をした!?自分の心臓が握られているのに、なんで倒れない!?


「!」


サザンの動揺を前に、クールスノーは背後を突かれている状況でカホの方へと振り向いたのだ。


「やっぱり私には、あなたの胸でナギさんを誘惑できたのかが、謎なのよね~。幼馴染とか嫌いだわ、ホント」

「…………そーいうことか」


”そのまま振り向いたって事は、カホの掌はクールスノーを通過しているままだ”

ただ1つ、握られるモノがあるとすれば


「この感触はナギの左手か!?」


”白龍血掌”は、相手の身体をすり抜けて、内臓を破壊するカホの技。相手のすり抜けにはナギが必要である。その発動中にもまだ、サザン達をも知り得ない事がある。相手がナギの拳まで身体の中へ引き込むなんて、やられた事もなかったからだ。それだけ、それ以上に、クールスノーは”2人のこと”をよく知っていた。


「もう、ここまでよ」


自分の心臓付近に、ナギとカホが手を握られている状態。それを自分のシール能力で接着する。矛盾する者同士の接触は、お互いの力量差で効果が裏表する。

ナギとカホが繋がることで、カホは常に相手を掴むことができない。ナギもまたカホと繋がったために、戦闘力の半減を意味する。危険な返し技を臆する事なく実行すること、可能にする戦闘能力は、サザンの捨て身に無意味さを見出しただろう。


「……ふふふ」


その時のクールスノーの悲哀な笑いに、サザンは異様さを感じ取った。

今、クールスノーは、何かの全能感を得ていても、満たされない悲しさ。枯れる前の綺麗な花のように



ガゴオオォォッ



ナギを吹っ飛ばすことでカホも同時に弾き、体内を通過してしまう状態から逃れるクールスノー。そして、集中的に狙ってやったのは、カホの方であった。私怨のようなモノもこめて、自分の予告通りに、カホの上半身ばかりを集中的に襲い掛かった。

必死にカホを動かそうとも、クールスノーがその気になった以上はズタボロにされるだけ。



「見えたよ」



気が済めば、クールスノーは少し。自分の額に血に染まった手を当てながら、考えつつも。ナギに対して、この好意と誠意を見せようと、手が繋がったカホのように身体を嬲る。



「”お前の根源”」



サザンの抵抗はもう何もなくなった。

ナギとカホが倒れ、2人の中に隠れるようにしていた彼も現れて、クールスノーの戦う理由を察した。その事にカホは気付いただろうか、ナギは気付いていたのだろうかと、考えていた。



「何を見たって?」



答えを言ってやろうかと、サザンが言おうとしたが。クールスノーの方から伝えた。



ことによっては私が止まらないわ」



捨て身であるサザンは、この命を遣ってもいい。しかし、その答えに、自分が知っている事も含めて、諸々に


「止めておこう。お前を仲間と思っておく」


なんてこった。

粉雪があまりに完璧だったと思っていたが、1つだけ。こっちから許せないモノを見たよ。君はナギの事が好きなのは知っていた。しかし、それ以上に君の心の中には


「テンマ、フブキ。覚えておけよ」

『何が』

『何よ』



ナギ。君は気付いていたのか?それとも気付いていなかったかな?いずれにしても、この女は君の事なんか


「親は選べないんだよ」


もしかすると、君達が一番、嫌いに思うことだよ。お前達が選んだ最高のそのパートナーは




◇               ◇




「ぎょええええぇぇぇ♡♡」


囚われたアダメ……今はマジカニートゥの姿に変身中の状態。椅子に禍々しい縄で体を縛り付けられ、色々な事情をキッス達に教える。もちろん、教えたくねぇことは教えなくて良いとするのだが。

そのやり方にはとても賛成できるものじゃないのが、それなりにいた。その中心人物は


「こ、コラーーー!!寝手くん!!何やってんの!?」

「せっかく、マジカニートゥが2人いるから。僕お手製の快楽洗脳術を、この偽物マジカニートゥに試してるんだけだよ」

素面しらふであぶねぇーこと言ってんじゃないよ!!なにしてんの!?あたしに試す気だった!?」

「偽物だからこそやりたいじゃないか。この状況で拘束プレイは理に適っている」

「ここにはあたし以外の人達もいるんですけど!!あたしがこーんな、だらしない表情をしてるって事でしょ!!」

「あはははは。君との本番が楽しみだね」

「楽しみじゃないよ!」


ここではアダメの味方になりそうなくらいの、怒りの表情の表原。それを飄々として歪める快感に悦する、真っ当な笑顔を見せる寝手だった。

女性陣が多い中でかなり可哀想であり、


「ま、いいんじゃない?」


気分的にも自分のソレを含めて。野花は、寝手のやり方に口を出せなかった。


「ちゃんとしているのが本物。だらしない顔を晒しているのが、偽物。実に分かりやすい。うん」

「あの~……そ、そ、そーいう表情とか身体の変化を起こしちゃうんです?」

「っていうか、表原って胸がデカイよね。ムカつくな。そのままでいいぞ、寝手」

「そうね、このままで良いわね。やっちまえ」


それは他も自分じゃねぇーからっていうものと、とある嫉妬からか


「キッス様達は自分じゃないからって、そーいう返しをしないでください!!……ちょっと、レゼン!!なんか良い案プリーズ!!この偽物をそのまま寝手くんが遊んだら、あ、あ、あたしは立ち直れない!!」

「そ、そうだな(表原には悪いが、拘束かつ尋問するなら、今の状況は最高なんだが)」


痛みと同じぐらい、過剰な快楽は拷問の1つと言われる。


「あー、そうだな。こいつを粉雪さんに変身してもらうとかどーだ?」

「おーーー!!なるほど、確かにこの場にいない上に、問題となってる方ならいいですね!!」


即座に表原は自分の偽物であるアダメの首を締め上げながら、恥ずかしさで染まった真っ赤な表情で


「テメェ!なに晒してくれとんですかい!!これ以上、あたしの醜態を晒さないでよ!」

「♡ふおぉぅ♡おおぉっっ♡ち、ちが、ちが」

「変身するなら粉雪さんにしろ!!あの人の身体とかの方がエッチでしょうが!!年齢は色々とアウトな気がするけれど!!それにあたしは15歳になったばっかりだ!!こんなR-18な表情を出すな!!この中であたしは一番年下なんですよ!!」

「あぅあぅ♡♡ご、ご、ごめん、無理でしゅ……そ、それやると、あ、ぁぁ、あたし、顔が出ますので♡♡」

「蕩けたあたしの顔で無理とか言ってるなーーー!!!本気出せ、コラァーー!!あたしの偽物め!」



……アダメにとっては不可能ではないが、この場ではできないという意味だ。

この変身をするためには、自分自身の姿に一度はならなければいけない。それはキッス達の疑念を大きく強め、自分の命が余計に危なくなるだけ。


「落ち着け、表原ちゃん」

「落ち着けるかーーー!?キッス様!!あたしだけなんでこんな羞恥を受けるんですか!?」

「今はその人が大事なんだ。逃げられても困るし、殺すわけにもいかないとサザンは言っている。寝手くんのやり方を賛同しないでやるが、今は彼のやり方が正しいが事実」

「ふひへへへ♡♡こ、この、くそぉぉ、おほぉぉぉ♡♡」


キッスと野花がいなくなると、アダメを護りつつ逃がさないようにする戦力が足りていなかった。寝手が彼女の拘束担当に回ってくれるのはキッスとしては頼もしいものだった。戦闘力以外の分野に秀でているのは、蒼山のライバルだけある証拠。


「このままこいつを抑えておけばいいなら、僕がやるよ。隅々まで表原ちゃんの体の事を調べてあげる」

「止めんか!!このど変態!!」

「もう止めてぇぇ♡これ以上はぁ、、女としてぇ♡♡生きていけない♡♡」

「テメェは喋んな!!あたしの姿で卑猥な声を出すな!!」


すでに会議の場が、表原と寝手、アダメの3名で独占しているような状況。

表原から喋るなと注意するのなら、色々とこっちの聞きたいことも聞けない。それは良いんだか、悪いんだか。アダメにとってはこの快楽苦と比べて、どっちもどっちだろうか。



「頷くか、心の中で思っていなさい。北野川が把握する」

「分かってる。こいつの本心はOKを出してる」


人間ではなく、妖精でもない。それでもこいつの心は、キッスが思っている条件については概ねOKしている。


まず、アダメの出している条件として。


自分自身の存在は秘匿にして欲しいということ。

自分の命を護って欲しいということ。


これらについては、アダメが大人しくしてくれるのならキッス達も合意している。

そして、キッスの出している条件として。


妖精の国を助けること。

網本粉雪を討つこと。


この2点。

お互いの条件を叶えるためには、協力が必須であり、往復の諸々を考えれば、残りの説得は。



「表原ちゃん。どうかな?」

「どーーかなってさぁ!!」

「”妖精の国”に俺達も行くのは分かったけれども」


アダメの方法なら行きの分はOK、通る。その帰り道に表原とレゼンが必要というもの。だが、



「キッス様が個人的に行くという理由でしょ!!ふーーーんっ」

「まぁ、そうだな」


自分の偽物がこーいう羞恥に遭わされている事で、個人としては面白くねぇこと。それともう1つに


「皆さんの意見はどうなんです!粉雪さんと戦うって事です!!行くのは、キッス様だけですか!?”妖精の国”を護るって、ここは地球で、人間がやる事なんですか!!」


……妖精達も多くいる中であり、事情の元凶が今の自分の偽物。その始末をキッスにやらせるというのは、心情として納得しにくく。粉雪がどこまで知っているのかは、


「色々と未知数よね」

「野花」


そりゃあ、あんたもだろって。ここにいる人達が思っている。

野花からすればだ。キッスは”妖精の国”に向かえる手段”だけ”は確保した。つまり、粉雪とキッスが戦うこと。どっちも大事な命が危ないというものだ。大人しくしているというのは、彼女に心残りがあってもおかしくはない。表原が来てほしいというのは、その実力云々だけではなかった。



「粉雪には色んな隠し事がある。私も知らない事が多い……北野川をよく思ってないのはそーいうところ」


キッスと野花で一致しているのは、表原を連れて行く。

そして、だから。


「こーいうことまでするとは思っていたけれど。結局、こーして最後まで告げなかったのは、そこの”彼女と同じ”じゃない?だから、私も行くよ。キッス」

「そうだな。大きな目標を掲げて、私達は向かうわけではないんだよ、表原ちゃん。粉雪がどーするかを確認した上で、戦うつもりだ」



自分とは関係のない世界の、どーのこうのをするつもりはなさそうだ。それを次いでとする辺り、呆れることだ。キッスが表原に問いかけるように話を切ったのは、自分自身でも



「粉雪さんのためですか?そこの世界のためですか?」

「世界はさっき救ったばっかりだぞ。今度は仲間を救ってくるだけの簡単なやり取りに過ぎない」

「……分かってる。表原ちゃんが命の危険は嫌いってこと。でも、今のあたしがこの場で……粉雪のためだけに動いても良いの」

「結局、それは脅しじゃないですか!もーっ!」


そんな言い方じゃないでしょ。

脅しで動きますっていう自分じゃない。


「キッス様!野花さん!!今のあたしの気持ちを答えてくださいよ!」


北野川がいるこの場で表原は、キッスと野花に質問してきた。

それは粉雪を仲間と思っての事であるものであり、ここまで自分もやってきたからの問いかけだった。

キッスと野花は顔を合わせてから、せーので



「「”あたしだけかいっ!マジカニートゥ!!”」」



マジカニートゥの変身口上を言うのであった。



「ホントにそうですよ!!あたしを何だと思ってるんです!!脅すとか、命令するとか、恥ずかしいモノを見せるとか、そーいう回りくどいのは要らないんです!」



それは自分もみんなと仲間であるための確認と文句であった。レゼンもホッとした表情かつ、この面倒くせぇ奴だという顔をして



「普通に行く気満々だったのかよ」

「仲間だから普通に行くでしょ!!なに、その意外そうな顔!」

「別に」


構ってちゃんだな~って



挿絵(By みてみん)


金習:レイワーズの宿主達一同揃った事は本編では一度もない。そんな私達が勢揃い……

赤羽:うあああぁぁっ!!このこのこのこの!!俺をこんな目に!!クズ共の集まりに閉じ込めやがって!

椰子葉:ダマレやっ!!敗北者!!被害妄想のカス!!一番の低知能はテメェだ!!消えろ!!

錦糸:騒がしい男達ねっ!あんた達はどっか行ってな!!あたしのステージよ!!端役は隅よ!

金習:…………(こいつ等、殺しちゃおっかな)

田熊:……金習さん。この3人とは離れた方が良い。絶望的に話し合いにならない。


◇      ◇


場所を代えるみんな。


金習:レイワーズの宿主が集まったのは、初だね。濡利、椰子葉、錦糸ちゃん、伊塚夫人は違うけれど

田熊:特別出演ということだ。しかし、私達集合の挿絵、雑過ぎない?

月継:本編で一度も集まった事はないしな。というか、おっさん2名は挿絵すらねぇし(濡利と椰子葉はここが初)

伊塚院長:時間とは有限。これも再利用なだけじゃそうだ。モノクロをちょっと試したいってのもあったらしい。色設定が面倒だからってのは、セールストークと似た理由だ。

伊塚夫人:構図だけはずっと前から用意してたらしく、そこに錦糸ちゃんと濡利、椰子葉を加えて、完成にしたそうよ。

??:あの~……私はそろそろ名乗って良いのでしょうか?(目元が見えない方)

田熊:ムキョの宿主であったな。実は名前を決めていない

??:が~~~ん。本編だと、名乗ろうとするチャンスを全部潰されているのは、やはり”虚無”の意識ですか……。それでいいですけれど。JK呼ばわりで続けるのは、さすがにちょっと……

田熊:それは色々と不便なので、また裏話のところで名前を公表するそうだ。

月継:本編は本編。おまけはおまけだ。……ところで、俺達は集められて何するんだ?

ロバート裁判長:前回が奴等の名前の話だ。全員分紹介できていないが。……レイワーズに関しても、法則がある。それについての話だ

金習:レイワーズ達はそもそも、元号である”令和”の時代からとったところで、その中で起こった大事件からモデルがある。キャラクター名だったり物語だったり……公表はしない形式にするので、各自、令和元年~3年くらいまでで起きた大事件を調べてくれ。

田熊:……こ~いうと、あれだが。現在は進んでいくせいで、過去の事件は本当に過去の事件に過ぎないのだな。もう随分と古い話にもなる。覚えている者も少ない。

椰子葉:なによりも予想を超える大事件が世界で多いからな。ホントにビックリも多い。

伊塚院長:令和の時代は始まりから縁起が悪いのぉ。ホントに、日本は大丈夫か?


一同:お前が真っ先にそれ思うんか……?


金習:……オチの1つにもなってしまうんだが。我々は生きていく都合上、このような大事件に直面しなければならない。

椰子葉:もちろん、災害なども含めてですな。

田熊:人間社会を良くする上でも、自分を良くするためだけにも、人が起こした罪は知らないといけないからな。レイワーズの話を書きたかったのは、そーいう意図が込められているそうだ。

ロバート裁判長:俺達を通して、自分の生き方というのを考えて欲しいと願っている。こんなような連中を現実で生み出したくはないな。



一同:…………


金習:ロバート裁判長がこの面子の中で一番ロクでもないんじゃないか?司法のトップが揺るげば、社会の秩序は乱れて当然だよ

ロバート裁判長:お前に言われたくねぇよ、独裁者。耄碌してんじゃないか?お前と伊塚院長のツートップ!!老害こそ悪だ!

伊塚院長:私は無実だ。あれはただの車の故障に過ぎない。

赤羽:被害妄想だ!!この爺は被害妄想だ!!間違いない!

錦糸:テメェが一番性質悪くて、馬鹿でしょうが!!わけわかんねぇことして、命乞いすんじゃねぇよ。

??:あの……目立ちたいがタメに、軽率な行動と発言の数々は恥ずかしいと思いますが……。人として一緒にしないで欲しいなぁ。

月継:俺なんか全世界に巻き込む事やってるけど、その前例が茂原になってるんだよな。お前等よりよっぽどの大悪党だからな。ま、俺がその枠には入らねぇけど、お前等はただのカスなのは確かだ。

田熊:月継はそれで自慢をするな。それより、私の息子のような存在を日本や世界はどうするべきか……真剣に考えるべきでな



ギャーギャー……


伊塚夫人:……ああ、なるほど。私達が呼ばれたのは、そーいう事でしたのね。話を治めよってね

椰子葉:かっ!!どいつもこいつも、社会のクズ共のくせによ!!

濡利:そのクズ共を纏めるのが政治家の務めだぞ、椰子葉

伊塚夫人:いや、あんた等もクズ枠じゃない。クズが生まれる原因は、政治にもあるんじゃない?

濡利:否定はせぬが、伊塚夫人の本心は違うであろう?

椰子葉:顔が嘘ついてるぞ。その面を画面に出せや。っていうか、俺達とあんたなら気が合うだろ?

伊塚夫人:……そうね。じゃあ、最後だから言うわ。クズに生まれて、クズのままに育ったあんたが悪いでしょ?


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