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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第11話『蒼山ぶっ殺す!蒼山ぶっ殺す!!不正妖精の襲撃?そんな事より蒼山ぶっ殺す!!』
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Dパート

タタタタタタ



マジカニートゥは階段を2つ降りて、野花が倒れているところへと向かった。


「野花さん!」

「ホントに倒れてる!野花さーーん!」

『大丈夫か!?』



こちらの声かけに反応していない。マジカニートゥは野花に駆け寄って、体を触って確かめる。


「大丈夫ですか!?怪我してないですか!?」


しかし、反応はまったく返ってこない。起こしてあげようと、野花を掴んだその瞬間。


バヂイイィィッ


「え!?」

「これは……!」

『野花が引きずり込まれた、魔法陣!まさか!』


野花を引きずり込んだ魔法陣。マジカニートゥの足元に現れる。


「レ、レゼン!」

「うおおおぉっ!?き、切り離される……」


とんでもない強い力。マジカニートゥが2つに割れるように、表原麻縫とレゼンの力が分かれていく。


「た、助け」

「表原ーー!!」


パッ


そして、表原が抱きかかえた野花と共に消えてしまった。


『これがコココンの能力か』

「…………心配するな、ちゃんとお前のやった事はムダにしてねぇ」


レゼンは一緒に床に落ちたセーシを拾い上げ、手にする事ができた相手の能力の情報を知れたのだ。



◇      ◇



「いえ、育さんの情報のおかげで敵の能力が明確に分かりましたよ。これで私達の勝ちはほぼ確定しました」

【しかし、表原ちゃんが……消えてしまった……。私のとんだ勘違いが原因で】

「娘さんを救うついでに、表原ちゃんを救うだけですから」



ピッ



偽物の娘を使った罠で表原を……正確にはレゼンを嵌めたと言ったところか。マジカニートゥの能力を封じれば、レゼンをも完封したとも言える。しかし、その犠牲によって得られた相手の情報は大きい。

ピュアシルバーは3108号室の前で待機していた。

おそらく、こちらの情報が分かっているんだろうから、ピュアシルバーはコココンに揺さぶりをかける。


「聞こえますよね?いいですか?あなたの能力は自由に動かない物を、このホテル全体のどこにでも創造することができ、それを掴んだ人間のみを異空間に引きずりこむ能力。相当な能力ですが、限定的なところも見えます」


人を静かに狩るという意味では優れた能力である事に違いない。妖人化した者でも条件さえ整えば、異空間に運べる能力。


「この部屋の中。おそらく、私にその物を掴ませようとする罠がある。ドアノブでしょうかね?毛布に包まって、とってもらうとか。私でも容易にしてしまいそうです」


だが、そこまで把握していても、ピュアシルバーがコココンの罠に嵌るという危険性。これの方が高いという予感。コココンは喋る事ができないため、黙秘である。切り札を予測しているか、していないか。

これ以上のないラインはない。逃げ切るための罠か。


「人質は大事にしてくださいよ?私達が奪い返すのでね」


ピュアシルバーは一旦退いた。もう残り時間は少ない。

しかし、疑問が残っているのはコココンの方であった。


『ココココココ』


どーいうことだ?部屋は確かに罠だらけ、お前の考察のほとんどが正解している。俺の能力はバレてないからこその優位性があるもんだ。ならここは入ってくるはずだ。それだけの用心深さなら、"お前"は罠に引っ掛からなかったろう。

奴には人質の無事を確認する術はないはずだ。ならここで葬る。この部屋の窓から、引きずりこんだ人質が詰め込まれた貝殻を落として、全員死亡だ。



コココンは熟孝する。

ピュアシルバーの揺さぶりの目的。

今のコココンはこの部屋の通気口の中に隠れている。自分のソックリの贋作が毛布の中に隠れていたり、入ってくれば罠付きの毛布がかぶさるというピタゴラスイッチ的な罠まである。自ら隠れているからこそ、それらが機能する。だが、ピュアシルバーが入ってこないは想定できなかった。



奴が得意気に俺の能力の全容を知ったみたいな口ぶりをしていた。それが本当かどうか。

確かに居場所を知られた。奴はもしかすると、下の階に行って。この部屋の窓から現れ、俺が人質の入った貝殻を捨てる瞬間ときに外から貝殻をキャッチし、そのまま俺を葬る気か。貝殻は簡単に割れるが、割れる衝撃が弱ければ人質全員を殺せない。基本は高いところから落とさなきゃ、殺せないが……。

奴は、俺が人質の殺し方まで熟知しているということか。レゼンのパートナーを囮に使ったのは、俺がこの貝殻を能力で偽造し。そいつを誤って掴んだら、終わっちまうという事を確認したかったから?

だから奴は正面からの入室を避けた?罠だけでなく、人質を殺すカラクリを見抜いて……!?

俺が人質を殺す瞬間、その一瞬の隙で俺を殺し、人質を助けられる理由がある……!?それとも、ハッタリか?俺が隠れている時間を利用し、因心界に連絡を入れる。殺す方法が分かっていれば、対処はされる。



『ココココココ』


いずれにしろ。

あと5分もすれば、他の因心界の何も知らない連中がこのホテルに入るだろう。その前に決着をつける。

テメェの希望だらけしか考えてない奇策を、簡単に崩せる手はすでにあるんだよ!

ギャンブルの賽は俺が握っている。負けるわけがない。



◇      ◇



エレベーターで降りていると時間が無い。階段で降りるのも遅い。それに罠があるかもしれない。

だからここは走った方が速い。

外壁を。


ガシャアァッ



「まったく、あの馬鹿には困るわね」

『ピュアシルバー。垂直の壁を駆け降りさせるのは止めてくれ。これだけの凹凸があればできるがよ。この高さで踏み外したら、死ぬぜ?』


育からの情報は、なにもコココンだけじゃない。やはり、こいつの力がないとダメだ。コココンの能力を知るほど、相性が抜群に良い。



「ラクロを頼りにしているからよ。もちろん、あの下着馬鹿もね」


少しは敵を追いかけているのかと思えば、2階に上がってすぐに……駆け込んだところがある。

呆れながらピュアシルバーはそこに入っていく。本来戸惑いが起こるであろうそこへ、何も躊躇なしに入った。

男性用トイレに……!それも


バギイィッッ


「うわああぁぁっ!!」

「なーに個室に隠れてんのよ!スカートライン!!」


個室の壁をぶち壊してご対面!珍しくちゃんとしたご利用である。


「なんで入ってくるの!?ピュアシルバー!!」

「なんで変身ヒーローが今、大をしてるのよ!!馬鹿!!非常事態なの分かってる!?私だって、こーんなところに入るとしたら、清潔にしたい時だけなのに!状況だからやってんのよ!」

「ぼ、僕にもモラルとかあると思うんだ!!時間をください!」

「ダメ!!変身ヒーローのモラルの全てをぶっ潰してるお前が、そんなこと言えないでしょ!!」

「緊張とハラハラでもぅ、もー。……やばいんだ。命なんかかける妖人辞めて、下着を命にかける下着盗撮職人になりたい……」

「だったら、なおのことお前を利用しなきゃいけないでしょうがーーー!!ったく」


ダメ過ぎる。これでもなく、ダメ過ぎる。


「さっさと済ませなさい。お尻はちゃんと拭くこと」

「直に言われると恥ずかしさが増すんだけど。せめて、外で待っててくれません」

「ダメ。こーいう汚いものはちゃんと綺麗にしないと、いけないから。見ておかないとね」

「は、はい!!すみませんでした!!」


なんとも凄みのある人物である。蒼山はあまり飛島のことが好きではない。こーいうお母さん的な、頑固さみたいなのがあるからだ。恥ずかしさを抱きながら、人がいるまえで大をして、ペーパーでちゃんと拭き、流す。手もちゃんと洗う。隅々まで……じゃないと、飛島は五月蝿い。


「じゃあ、上に行くわよ。ラクロに乗って」

「え?僕も戦うの、やっぱり~?」

「勝負は一瞬よ。あんたの能力がないと、敵も倒せないし、野花さん達も救えない。あんたはヒーローをやんなきゃいけない、因心界の"十妖"なんだから。緊張なんかでお腹を壊さないで」

「……デレの仕方が社蓄っぽ~い」

「言動が変質犯罪者のあなたに言われたくないんだけど」




◇      ◇



コココンの能力は自身が隠れている事を、能力の規則にいれずとも、そうならなければいけない能力である。

この能力を扱う際に情報がどれだけ隠すかがポイントとなる。

計測できない時間の制限、コココン以外は判断不能な罠となっている物体。その数。いちお、"掴む"という動作がきっかけでの異空間への転送。

妖人から人間を封じ込める能力。これで双方の無力化を行なうわけだが……。



『コココココココ』


ピュアシルバーはまず罠に引っ掛からない。だが、相方のラクロはどうかな?俺の能力は一度罠を生成すると、人間を標的とするか、妖精を標的とするかの判断を変更できない面がある。これまで全部人間を標的としていたからこそ、レゼンとラクロは安心しきっていた。だが、この部屋は人間と妖精、どちらかを引きずり込めるように罠を配置した。奴等の安心を逆手にとることで、全滅に追い込めた。

必ず、入ってくる安心、助けなければという焦りを抱えているはずなのに、なぜ来ないのか?

やはり俺が人質を殺す瞬間を狙うためか。

俺の能力を把握、予測していると……!ならば、人質を殺すなら今!それが正しい!!

生成した罠には盗聴機能があるが、視覚情報はとれない。奴が本当にどこかへ行ったとされる情報も入ってこない。階段に仕掛けた罠からも足音は拾えていない。このフロアにはいる可能性が高い!

仕掛けたドアノブから拾える音はせいぜい会話と足音程度だ。黙秘して待機している。何者かがこの部屋の情報を奴に教えているとしたら、隠れるのを止めたとき。ピュアシルバーが部屋に突入してくる……!?



ギイイイイイィィィッ


『コココココココ』


なんだ!?今の音は……エレベーターの方からだ!何をした!

何をしているんだ!?奴は……!!下に降りた!?どこかへ行ったのは間違いない!なら!!



トッ



もう隠れるのは止めだ!!貝殻を窓の外に捨て、野花達を始末!!そして、脱出をする!!

これで俺の勝ちだ!!



コココンはわずかな情報で行動をしている。その心許ない情報を精査するほど、時間はかかり迷いも深まる。互いに情報が異なっているからこそ、ピュアシルバーは移動できたのだった。



【飛島さん!ラッコが部屋に出てきた!】

「育さん。大丈夫。もう、その下の階には着いているわ!」

『またエレベーターを駆け上がったからバレたようだな』


ここまで想定通り!あとは奴が外に投げ捨てるまでの時間。

真下の部屋から跳んで、無事にキャッチして取り返す!人質さえ取り返せば、あいつの負けは確定する!



一瞬一瞬の攻防。それもフロアの違う場所での戦闘だ。

コココンの方が早いか、ピュアシルバーの方が早いか。両方を確認できる育は


【奴が窓を開けている!投げる気だ!!今、外になにかを投げたぞ!!】


"閉めていた窓を開けて、よじ登り、顔が半分くらい出るくらいの高さに来た"。そして、貝殻を投げたコココンの方が早かった。だが、ピュアシルバーも早い。コココンのいる部屋の2つ下の部屋に入り、"開いていた窓から彼女は一気に跳んだのだ"。なんの躊躇も無く、30階ほどの高さのあるところからだ。



「間に合った!!」


宙へ跳んだピュアシルバー。手の届く範囲に人質が押し込まれた貝殻が……

いくつも投げ落とされていた!


「!!?」

『ココココココ』



やはり来たな!カメラの映像ではどれが本物かは分かるまい!!必ず、お前が外でキャッチする事は読んでいた!で?どーする!本物じゃなきゃ、お前もこの空間に引きずり込めるわけだ!傍観すりゃあ、ラクロと繋がったそのリードが命綱になって自分は助かるわけか!?でもそれは、見逃すことになるな!?

お前の勇気に敬意を評して、卑劣卑怯をしようではないか!!


「……」


ピュアシルバーは投げられた8つの貝殻の内、2つを掴んだ。

それを確認したコココンは勝利を確信した。


『コココココココ』


ば~~か、本物はまだ俺の手の内にあるんだよ!お前を掴ませる手段なんざ、いくらでもあるんだ!

勝った!!これでテメェ等を皆殺しだ!!



「全部、偽物だろう?」

『!?』

「お前の勝ちはこの場で本物も投げる事だった。ギャンブルになれば、野花さん達を倒せたかもしれなかった」



ピュアシルバーは。コココンの能力によって、飛島華とラクロが分離されていく。繋がっていたリードも千切れ、異空間に引きずりこまれようとする。だが、飛島と繋がっているある物は分離できていなかった。地上に向かってなお落下し、伸びて、それごと含めて引き込もうとする物。


シャアアアーーー


「罠に嵌めた者をなんでも引きずり込む。それは服だったり、装飾品でもだ」

『コココココココ』


と、トイレットペーパー!?

なんでそんなもんが、ピュアシルバーの手にある!?それより何をしている!?


「お前の敗因は、人を貶める事しか考えていない、下種だからだ」


コココンは飛島を嵌めたかった。それが逆に飛島にとってはチャンスであった。今、体の半分が異空間に引き摺られてしまい、身動きがとれなくなっている。だが、それは今現実世界とコココンの異空間が繋がっているという事。トイレを見立てれば確かに分かりやすい。



「今だーーー!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



下の階にいるスカートラインが、飛島の方へ衣類を始めとした物体の数々を転送する。その量は膨大であり、ホテル全部屋にあるほとんどを対象としていた。


「穴に物資を大量転送し、異空間をパンクさせるんだ!!無限の空間なんてあり得ない!僕はやってやる!!」


その多さにはコココンにも衝撃が走った。


『ココココココ!?』


なんだぁ、あいつは!!?

ほとんど下着や衣類だが、ベットに椅子に、テーブル、テレビ、電話、……なんでもかんでも操るあいつはなんなんだ!?異常過ぎるぞ。あの速さにあの質量と数を転送するなんて、異常そのものだ!!

まさか奴等は、異空間と現実世界に繋がる穴を単純な物量で広げて、破壊する気か!?


飛島は異空間に完全に飲み込まれたが、その穴はまだ塞がらない。次々に物資が運ばれてもう、飽和状態になろうとしていた。


『ココココココ』


や、止めろ!!空間がパンクする!罠に制約を多めにしているから、空間の広さと強度はそこまでないんだ!これ以上、入れられたらマズイ!!パンクで人質が全員解放されちまう!物資のほとんどは手動で取り除かないと!危うく人質を解放するかもしれねぇし、くそ~~~あの野郎!!面倒なことを~~。


大慌てで部屋に戻ったコココンは、自分の貝殻と異空間からスカートラインが入れてくる物資を手で抜いていく。その光景をしーっかりと、窓から入ってきた3名の妖精は見ていた。表原達を安全に助けられる手段があるということが確認できた。



「よくもやってくれたなぁ。ラッコさんよぉっ。少し遅れたが始末しに来たぜ」

『お前らしいよ、コココン。この卑怯ぶりはな』

『僕ちん達のパートナー!返してもらうよ!』



ラクロの背に乗るレゼン、レゼンの手に握られたセーシ。この混乱に乗じて、窓から昇ってきたのだった。

3名に見つかり、気付いたコココンは大慌てで謝罪の声を出すが……当然、無意味だ。


『ココココココ』


わ、悪気はないんだ!SAF協会に行くために!その!!お前達に協力して欲しかっただけなんだ!!所属はもう、因心界でもいいさ!!俺は楽しく生きられる場所が欲しいだけなんだーー!!


「なに言ってんのか、分かんねぇよ!!」

『どーせ嘘しか言えないだろう!』

『卑怯な事して許されると思うかーー!』


能力のために自らの言葉を犠牲にしているのも大きい。そんな相手の気持ちなど読み取るわけなく、行動から性格を判断すれば全てが嘘吐きで詭弁だ。

ラクロがコココンに突進し、その上でレゼンが構え、セーシは剣のように変化し、


ズパアァァッ


「『『成敗!!』』」

「ぐはあぁっ!?」


レゼンがコココンを一刀両断するのであった。



挿絵(By みてみん)

次回予告



ラクロ:レゼン。表原ちゃんの事はどー思ってるんだ?

レゼン:……アホウだなって、生き物。そーいうラクロは?

ラクロ:仲間だな!親友だよ!首輪されても、僕ちん達は対等さ!

レゼン:俺ももう少し、人を選べば良かった。

セーシ:じゃあ俺にも聞いてくれ!俺と野花の関係は……

レゼン+ラクロ:かわいそ~な関係

セーシ:おーーーい!まだ何も言ってないけど!!次回!!

レゼン:『キッスのフリータイム!各勢力、動き出す!!』



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