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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第59話『LAST STAGE ”JAOUJAN”』
250/267

Gパート


な、なんだ今の?


「「なにを言っていたんだ?」」


既視感デジャヴ……我は、こいつ等に何度も……言われているようなっ……。



【我の力を魅せてくれるうぅっ!!絶望する様をっ!】


ジャオウジャンが抱いたことは、自らの傲慢さと力によってすぐにかき消された。なぜなら、国を滅ぼせる力を手にしているのは確かであり、それらが自制の効かぬ化け物であれば、恐ろしさの何者でもない。

自分に酔っている時の、無敵な感じをそのままにしている。



ヒイロとレンジラヴゥという相手がいながら、自分自身の力を誇示する。全ての出来事は自分がやっているという、奉仕に喜びを感じるなど、ジャオウジャンとして疑うべきもの。



【世界の”邪念”が天に昇る!!そして、我の力となる!!この究極生物が力!!貴様等たかが2人のちっぽけな力!かき消されっ】



ズバアアアアアアァァァァァァァッッ



「「なにを言っていたんだ?」」

【…………!?……】


な、なんだ……さっきから。奴等がなんで同じことを繰り返し言っている……?



【このジャオウジャンは無敵である!!全てを見下ろす我と、この天と並び立てることを感謝することだな!!】



ズバアアアアアアァァァァァァァッッ



「「なにを言っていたんだ?」」

【!!?……!?…………】


な、なんだ!?さっきほどから……!?これは、どーいう……こと……だ?



ジャオウジャンの疑念が少しずつ膨れ上がっていくが、そんなことを持つというのは自分の存在を否定するかのようなこと。王が悩み、不満の爆発を常時させているような、今の状態。

悩みが生まれても、それを超えていく怒り、それを超える力が溢れて来る。こんなにも、世界は邪念で満ちている。ジャオウジャンは時間が経つほど強くなっていく。人間達を苦しめて強くなっている。


そして、その強さ故に辿り着ける、ある1つの境地。



【世界の理不尽!!それが我の本当のっ】



ズバアアアアアアァァァァァァァッッ



ジャオウジャンの原型。その鯨の姿は、刹那に両断されている。

これがヒイロとレンジラヴゥの、最強かつ頂点の戦い方。

ルミルミが望んでいた事だった。



◇             ◇




「上空はヒイロ達に任せて良さそうね」


クールスノーが左足の接着を完了させていた。


「……ふむ。相当な力でありますが、」


南空も完全な戦線復帰とは言えないが、身体を動かせるだけの時間。


「もうヒイロさん達だけだよね!?じゃあ、逃げようよ!」

「止せ、ジャオウジャンの能力が広がってる。まだ、ここに残っていた方が安全だよ」

「…………そうだな」


マジカニートゥは早くの脱出を望んでいたが、


「”残りの敵”は、あいつだけだ」

「?……」


録路が言っている通りだ。金習は死亡。ルミルミは戦線離脱。その勝利を待っていればいい。


「ぐっ…………」

「お前はここで寝てろ。此処野」

「るせぇ……はぁ、……」


此処野は動きこそするが、重傷もいいところ。


「……ジャオウジャン……様」


トラストは意識を取り戻したが、上空で行われている出来事に、主にあたるジャオウジャンの心配をするような顔をする。そんな彼を寝手の指示通りに連れて来た飴子。


「決着待ちでいいの?私はマジカニートゥと同じで脱出したいんだけど……」

「はい!はい!」


クールスノーと南空を除いて、5名が合流している。

重傷者2名、マジカニートゥが能力を再発動できるまであと30分。……実際に自由に動けるのは、録路と飴子の2名だけである。

トラストという存在をどう扱うか、録路が決め兼ねているともとれるが。


「クールスノーがここに来るまで待ってろ」

「えええーーーっ!早く出たいんだけど!あっ!此処野くんはここに置いておけば、別にあたし達だけで脱出できるじゃないですか!!」

「サラリととんでもねぇ事言うな、お前……」


情とかを考えなければ……案外、良い考えかも。

レゼンもちょっと思っている。だが、ここから出ない方が安全なのは確かだ。万が一、ジャオウジャンがこっちにやってきたら、満身創痍が多くても全員で相手をした方が良い。

そんな中で録路に電話が入ってきた。相手は



「……寝手か?」

『やぁ、敵は片付いたみたいだね。録路』

「俺は何もやれてねぇよ」

『まぁまぁ。ほぼ任務は終わったんじゃない?』


寝手の電話で、彼がこの戦いの様子を詳しく知ってそうなのはすぐに勘付いた。

だったら、クールスノーの位置を教えろって言いたいところではあったが


「ルミルミはどこに吹っ飛んだ?」

『さぁ?』

「……クールスノーにそーいう技はなかったと、俺は記憶してるんだがな。もしかして、死んだのか?」

『分からないねぇ。そこは僕にも』


ルミルミの所在を尋ねたのは、彼女がこのまま終わるわけではないが。


『言えることは、ルミルミちゃんも役目を終えたと言っていい』


この戦地に戻ってくることはないだろう。

ルミルミの目的と、ジャオウジャンの目的、金習の目的が各々異なっていた理由。

寝手の言葉から概ね。


「とりあえず、ヒイロと白岩が戦えって事がルミルミの近道ってところか?あいつ等、俺達に言ってねぇな」

『正解』

「ちょっと!録路さん!色々教えてくださいよ!」

『麻縫ちゃんは僕の何を訊きたい?』

「お前は喋んな!!」



5人が寛ぐようにして、寝手が得ている情報開示を待った。

ヒイロが、”ここ”を最後に戦わない。そーいう”切り札”を持っており、いずれの戦闘でも彼が躊躇わせていた。”本気で戦う”という少年的な意味ではなく、”本気で戦う”という大人的な意味でなく。


「”人間達を滅ぼすため”に使うタイプか?」

『僕も”彼”から今さっき聞いたよ』

「?」



◇           ◇



ジャオウジャンは不死身と言える。そして、国1つを滅ぼせる力を持ち、精神的にも不安定である。危険としか言いようがない存在であり、消し去るべき存在。


ムノウヤほどの実力者でも、彼には世界をどうこうする力も意志もない。

シットリほどの実力者でも、そうはならなかったのに理由がないからだ。


義姉ルミルミなら、義弟ヒイロが優しくて良い奴なのを知っているからだ。

だから、絶対にやらない。そうしてくれない。

そうしてくれるまで、準備をしてきた。



【相方は”あくま”でヒイロの代償】



妖精を最初に生み出した、アダメが言う。……まだ、人間を滅ぼし、自分が神様へと復帰するための頃。

そして、ヒイロこそが”妖精の国”において、最高傑作と言えるべきこと。



【人を!!人を早く確実に抹殺する!!増え続けるのなら、そこから根絶やしにしていけばいい!!】



倫理観を度外視した。そーいう手段をしたことが、神様達にある良識を飛び越えたのも確かであろう。それほどに人間に恐れを持ったのは確かだが、やりすぎだ馬鹿。

アダメの性格と思想が凶悪さを示していた。それを仲間達が危惧していたかもしれない。



愛の強さが、その分に還元するというのなら……生物的には間違っていないが、そーいう目的で作られていない妖精達からすれば、とても不自然な話である。本来の用途とは違っているとも言える。

ヒイロの、本当の、力の、正体は…………



バタアァァッ



愛の”徴収”をより惨憺さんたんにするのならば、人間1度は思う軽い気持ちをそのままに現したこと。



『……”流産”です』



レンジラヴゥの存在が未来にまで及び、現在のヒイロ達に力を届けている。……愛の極上な部分を集約し、結果起こり得る、未来で起こる結末は




バキイィィンッ


『別れましょう』

『ああ、その方がいい』



急速に進んでいく。生物達の交配禁止・制限に繋がっていく。



『あれ?僕が生まれない……?』

『あたしは生まれてこれないの……?』


人類を失う。その数だけ


『あの輝かしい未来が失われていく』

『神に近しいほど技術が……途絶えてしまう』


そうしてまで、ヒイロとレンジラヴゥが得ている力は、世界という”今の規模”ではなく。時代という”未来の規模”からのものだった。

本来なら生まれるべき未来ある存在。その可能性を無理矢理現在に引き寄せて、現在で発揮させる。


『愛なんていらない』


結論。

生殖をすることや生誕することがなくなり、人類は滅ぶ。


ただの”戦争”では、人類はその数を”抑制”するだけに留めてしまうからだ。

ならば生まれ変わるや継ぐものを消していけば、人類は滅ぶ。

ルミルミ達はそれを本気で願っており、ヒイロがそうならざる負えない相手として、ジャオウジャンの誕生が必要だったに過ぎない。



もう1つの結論。

ジャオウジャンという存在は、ただヒイロ達を本気にさせるだけであり、未来で人類が滅ぶまでの時間稼ぎのサンドバックに過ぎなかったのだ。



◇           ◇



「どっちが邪悪なんですか!!?それえぇっ!!?」



真実を今知った、表原がブチギレるような驚き方をするのも無理はない。



「じゃあじゃあ!!ヒイロさんと白岩さんが現在進行形で未来を滅ぼしてるって事ですか!?今現在!!遠い未来の子供達を殺して、自分の力に変えているんですか!?」



未来を護るために現在と戦うという、王道的なコンセプトを逆転させている力だ。

ヒイロがやっている事こそが人類にとって害悪であり、ジャオウジャンが死なずに戦いを挑み続ける限り、未来はドンドン潰えていく。その事を知っているのはヒイロとルミルミ……。そして、


「レンジラヴゥは”それ”を知らねぇか」


とはいえ、自分の想像を超えた力になんのリスクもない事を



「だが、勘付くだろうな。まぁ、関係ねぇな」



録路は次の自分達の目的が分かった。



「上空の化け物は、いくら”攻撃”しても死なない。核となる”心臓”をルミルミから奪い取る必要があるわけか。ヒイロはそれを知ってる上で、ジャオウジャンと戦ってるんだな?……あれを止める役目はどうであれ必要だ」


逆にジャオウジャンが心臓を自分で持っていたとしたら、すでに決着はついていただろう。

それだけ今のヒイロとレンジラヴゥが得られている力は大きすぎる。

とはいえ



「クールスノー達とまともにやりあって、そんな大事なもんを常に抱えていたとは思えねぇな」

『だよね。……残念だけど、僕もそーいう大事なアイテムがどこにあるかなんて、聞かされちゃいない』

「北野川がいりゃあ、”場所”は特定できるだろうが」

「それなら早くルミルミを捕まえて聞きださないと!」

「飴子。そんなのができる相手じゃねぇよ……そっちの男はどうだ?」

「私か……ルミルミからジャオウジャン様の心臓を取り返す目的はある。”立場”は違うが、ルミルミを捜すのは同じだな」



重傷で無理に動けない此処野を除いた4人が、次の行動には一致した。


「おい」


此処野がその行動にどう示したかは分からないが


「飴子。お前は此処野の手当てと警護をしろ」

「え!?こいつの!?」

「俺と表原、それとお前でルミルミを追いかける。そこまでは仲良くはやろうぜ」

「…………」



録路が待たずに、マジカニートゥとトラストの2名を連れて移動したのは、彼にも分かっていた事があるからだ。

金習達に思惑があるように。ルミルミに思惑があるように。”向こう”にいる彼の思惑が……。

どれが最善なのか。どれが選択されるのか。

分かった時が現在に至る。



◇             ◇



影の刃が迫り来る。


【!!】


一人の女性が、一人の命を宿していた。

そして、遭遇したラスボス級。

そんなものは関係がないと、強がっていたが……。互角以上の強さを持つ相手と出会ってしまえば、かせにもなる。


【くっ】


……守りたいというわずかな心と、鬱陶しいという苛立ち。

どっちが大きかったか。

女性は


【……あんたなんか】


自分に守るべきモノがなければ、負けない。

そんな言い訳を吐こうとしても、出なかったのは……中途半端に思えるかもしれない。しかし、彼女の心がそれを言わせなかったが。

相手は……


【君の名前はなんだったっけ?名乗ったのは僕も覚えているんだが】


ムノウヤは、女性に強く感じたのは気のせいだったかと、落胆気味。

彼女では自分を殺せない。倒せもしない。ガッカリだ。


【そんなに体を庇うような戦い方じゃ、程度も知れる】

【!分かるかっ!!】



それは過去の大きな戦いの1つ。女性にとっては今もなお、戦い続けているもの。

ムノウヤには見えなかった、もう1人の命。

それが現在に引っ張られる形で巡ってきた致命的なミスだった。

あの時



【私はあなたの”行為”を許すべきではなかった。こんなに自分を傷つけて守った命に……】



一人の男性は、ムノウヤとの戦いで傷だらけになりながらも、守り抜いた女性に



【そのように言う時が来るかもしれません】



冷酷に告げていた。



【いずれ、私達にミスがあるとすれば】

【……………】

【……そうならずにできてくれれば、いいですがね】



挿絵(By みてみん)


ナギ:キッスとルルの家族として、呼ばれたか。俺達は前の世代って役割だからか過去編ばっかだけど

カホ:それでもサザンがまだ頑張ってくれるけどね。

メグ:私がこっち側で呼ばれるとはな。

ナギ:メグはメッチャ強いのに、金習が出てきた関係で裏方みたいになったな。そこは心残りだったとそうだ。

メグ:金習とは知り合いだが、あまり協力的な関係ではなかったからな。

カホ:あんたも金習並にヤバイんだけどね。涙一族で人体実験を色々やってるだけじゃなく、登場時点で物語の根幹について、あんたは大体予想つけてたし。退場しなかったら、話が大きく変わってるでしょうね。

ナギ:あと、”あいつ”。もし過去編を詳しく書くになったら、”あいつ”を主役にしたかったんだけど。たぶん、お蔵入りってことになるな。



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