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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第59話『LAST STAGE ”JAOUJAN”』
248/267

Eパート


「次は君が戦うのかい?ナックルカシーだっけ?やるなら向かってくるといい」



戦わないのなら、金習はやりたいことをやろうと思っていた。

倒れた此処野にはもう用無しと判断し、ギャラリーとしているナックルカシーとマジカニートゥの2名に尋ねた。


「ろ、録路さん」


相手が人間だとしても……。マジカニートゥが能力を使えたとしても、正直


「あ、あたし達じゃ、あの生物には勝てません。挑んだら殺されますよ」

「正直な」


レゼンですら、お手上げするレベル。

身体能力はもちろん、戦闘能力、学習能力。そのどれもが自分達を上回っている。此処野が倒れたら、自分が戦うと言っているナックルカシーであったが



「お前等なぁ、ビビッてるんじゃねぇよ」



言葉は理解した。しかし、ナックルカシーはマジカニートゥを護るために傍にいた。それはマジカニートゥの言葉の意味が正しいと思える。此処野だったら見捨てていい。そんな人間でもある。

そうはさせまいと金習が動いてくるのは確かであるが、


「此処野はまだ戦う気だぜ」

「「!!?」」



地面に崩れ落ちた此処野であったが、手に戻したアタナは……あの猛撃を喰らってもなお、離していなかった!空を見上げた時、こんなところで倒れるわけにもいかなかった。

それは金習が命の危機から助かった時と同じであり、”理不尽な”という言葉は出なかった。


「『瞳よ閉じれ、マフタブ』」

「!!」


さらに、変身だと!?まさか、そんなこともできるのか!!


「!」



2回の変身を残しているなんて、考えられそうな事である。だが、今を必死に戦っていれば、その”切り札”をこの場面で使ってくることは相手としては想定できない。

どのような力なのかは不明であるが、自分が絶対の強者としている威圧感を持つ金習。受けて立とうという王者の風格を悪く言わぬが、マフタブの能力においては完全なる裏目であった。



ゾクウゥゥッ



なんだぁ!?この威圧感!殺意!!悪寒!!今の自分がそんな低俗なことを感じるとは……。自分よりも遥か格下の、人間以下の生物が……。

死神に見えるだなんて!!



「うおおぉぉぉっっ!!」


此処野は、猛った!

自分の妖人化は閃光に等しい時間しかなく、さらに自分が大きなダメージを背負っていること。瞬間でいい。瞬間だけ、全力を、今の金習を仕留められる力を寄越せとたぎる。ここはもう、気合、滾る、殺すの……気持ちだけで奮う他なかった。


「!」


そして、金習はこの刹那で……自分が”偽物”であることが頭によぎった。



◇             ◇



【人類の成長にはいつも】


人が持つ”狂気”が、動かした。


【故に学ぶのだ。歴史は良い。人々は過ちを協議し、その判例、対処を講じてきた歩みだ】


……金習わたしの記憶……?


【時間が無限にあるのならどれほど良かったか。その時、その時の判断が正しかったか。未来の成功者も分からない事だ。しかし、そのような人類達の継続が今に至っている。狂気に縋るも、また昔からの判断】


ボコボコ……。


1つの命は認識した。

試験管の中で、泡が噴き出ている音を覚えている。

この時の光を思い出している。

1つだけだった瞳は、……目の前の男を捉えている。

奴は


【まぁ、もし。お前を超える者が現れた時。人類はまた進歩する】


……自分だった。

そして、自分が生まれた事と同じように


【その時、……お前を……名を付けるのなら、……金習きんしゅう。今の人間達が作った人造人間】


学習生物。人間を超え行く、人間。


【お前が死ぬ時こそ、人間の成長なのだ】



バリリイイィィッ



初めての空気に藻掻き苦しむ。入ってくる情報量に混乱する生物に過ぎなかった。しかし、学習していく。その苦しみからの開放は、幸せという言葉を自分に授けただろう。

そんな状態の中で、学びようがない分からぬ死について、言われた。



【つまりは、人間の狂気がいつかお前を上回る】



◇           ◇



金習と此処野を中心に小さな暗闇のドームが現れる。


「マフタブ」


技の性質を知るナックルカシーからすれば、此処野の”切り札”にして、正真正銘最後の戦闘であると察する。



「っ」


対象者を此処野(自分)と共に暗闇に包み込んだ後、閃光を放って、光と闇の自分を前後から挟み撃つ。どちらかが、本当の攻撃を放つ、その出力は対象を即死に追い込むほど。この攻撃から逃れるために、本当の攻撃を避け、嘘の攻撃を受けるのみ。

閃光に等しい時間で決まる。


「!」


金習は自分を暗闇で覆われた後、前方が光り輝いたところで、この技の性質に気が付いた。

自分の前後を此処野が挟み込んでいるという状況。思考こそできるも、動かせる体の余裕はそうはなく、マフタブの攻撃をどちらかは受ける。

そして、その力は自分の死を感じ取らせるモノであると……。判断に迷いあれば、選ぶ暇すらなく射貫かれよう。この死地にて、金習の頭は綿密に情報を仕入れるのであった。何事もなかったかのように冷静だ。



この大技。彼の切り札か!

前後の挟み撃ち。どちらかが本物で、どちらかが偽物。2者択一の必殺を使ってくるとは、……。前方にいる彼か、後方にいる彼か。さて、どちらか。彼との戦闘を鑑みれば、正面。勝ちや殺しに拘るなら、後方。どちらもあり得る人格パーソナリティ。もう一推しの決め手は……


「!!」


こうも瞬時に自分の分身を作ることなどできない!!



キュインッ



握るアタナから光が放たれる!

そして、それを読み切って、躱した……



「残念だね」



ドゴオオォォォッッ



金習は、避けていた。そして、間髪入れずに此処野の胴体を拳で貫いた!

確実に


「私の攻撃で”傷ついたところ”まで、君は分身に完全な再現ができなかった。つまり、より傷ついた方の君を掴めばいい。このように」

「!!」


前後の挟み撃ち。どちらかは本物の此処野ではあり、その分身の再現力は決して高いモノではない!金習の観察力と冷静な判断を持ってすれば、マフタブの2者択一を容易く処理できる。

そこからの手痛い反撃は


「此処野!!」


マジカニートゥやレゼンに至っては完全な敗北を感じさせた。

ナックルカシーが名を叫ばせ、

金習の唯一の隙を突き、このマフタブを絶対に避けられない攻撃にした!!


「!?」

「なっ、長々とうぜぇ、煽りぃ、ごふぅ」


此処野はまだ生きていた。2者択一なのは、自分自身がよく分かっている。そこから編み出した、3つ目の選択。


「あいつ”等”で知ってんだよ」


死ぬ攻撃を避けた時に安堵する、緩み!テメェが俺を瞬殺してこねぇのは、もう分かってたんだよ!!俺の心配は首を切断されるか、心臓をぶち抜かれるかだけだったよ!……ま、地獄まで連れて行く気だったがな


「!君は!」

「俺を殺すのを忘れんな」


絶対に避けられねぇ、3番目の選択を、選ぶしかねぇだろ。

白岩。お前を否定するために、この完成形は出来上がったんだ。

”本当の攻撃”を遅らせるっていう手段をな!



キュインッ



先に放たれた光は陽動フェイント!今度こそ、放たれるのがマフタブの力。

つまり、此処野がそれを狙っていた。それを今受ける金習が気付いた時、なにもかも、ゾッとした。自分が強く放っていた、狂気という奴にだ。


「バカなっ!!?」


死を覚悟するような無謀な攻撃ではない!

こいつ、戦闘する前から、私をこの形に持って来る気だったのか!!攻撃を必要以上に受けず、追い込まれたように戦い続け、……わずかな隙で使い、私がこの選択を選び、手を止めると読み切っていただと!?自爆で行くのか!

私がお前をすぐに殺せないと、どこで読み切った!あまりにも無謀な賭け!!イカレている!!



「マフタブ」

「!!っ…………」


アタナの先端から放たれた光は、金習の体の至近距離で発生させる。

それは零距離で使われた爆弾と言ってよく、出力は殺戮兵器に匹敵する。しかし、金習はその恐怖に一歩も後退などしていなかった。それよりも早くに一歩後退して、止まっていた。

人の考えた狂気が、自分を上回ったときに後退していたのだ。


「私は」


……金習という存在の役目を失ったからだ……。

もう何も、……自分が学ぶことは……



ドオオオオオォォォォォォッッ



大地震と言えるほどの揺れ。

そして、此処野が負っているダメージもあり、出力が向けられるところは乱れ、



「どひゃあああーー!?」

「うおおぉっ!?」

「あぶねぇな!!」


ナックルカシーとマジカニートゥ達にも被害が及ぼしかねないほどの威力となり、




ガシャアアァァァァッ



地上を覆っていた薄氷が割れる音。

沈みゆく。

ここで戦っている者達がさらに下へ。もうここは、ある意味で堀のような状態となった。

その様子を地上という高みで見つめる者がいる。


「……ついに、金習が逝ったか」


此処野 VS 金習


勝者、此処野


絶望的な戦闘力の差がありながらも、彼の狂気があの金習を殺すことを成した。

そして、金習の死により、ジャオウジャン達は一気に追い詰められていく。



◇              ◇



金習の命の喜びの咆哮が、クールスノーとルミルミの戦闘を再び動かした。


「”雪地蜘蛛”」



瞬間にクールスノーはしゃがみ、両手から溶けやすい雪を流した。



ジュバアアァァッッ



宙に雪が横一線へと広がらせる。蜘蛛の巣を思わせるように広がり、白い雪のエリアを作る。

フブキの”雪”とテンマの”シール”を合わせ使うことで、足をつける場を増やせる。ヒイロ達がぶっ壊しやがった足場を、自分用に作り上げる。”雪雲”の発生に時間が掛かろうと、自分のフィールドを展開していくのは、彼女のやり方。

だが、



「!!」


ルミルミは自分の場所を作ってくるクールスノーへ、距離を詰める。

本来、”雪地蜘蛛”の雪に触れれば、接着されるが。ルミルミは低空飛行をし続けたまま、剣技を持って、クールスノーと戦闘を始める。


「狙うわよね!!」


足場の少ないところでの近接戦。”雪地蜘蛛”は完全な足場とは言えず、時間制限付きの雪の地面。クールスノー本人以外には扱えない。

空中に投げ出されてしまえば、空中を自由に移動できるルミルミに有利過ぎる。

かせを外したことで、クールスノーの体は軽く、宙を舞って、降る雪の結晶に掴む。地面からだけでなく、宙に発生させられる”雪地蜘蛛”



「っ!!?」



しゃがんだのは足場を確保するために思えたが、跳躍ちょうやくをするためでもあった。空中では確かにルミルミの有利は変わりないが、クールスノーは空中で留まった。雪の上に乗るという、あり得ぬがそうとしか言いようがない。

大きな雪の結晶に体を接着させ、空中の足場。


「”凍結世界”」


雪の結晶のあめ。シートと言えるほどの雪が大量に降り注ぎ、いずれにも接着の成分。相手の動きを制限し、自分は空中を含めての自由。

空中の水分を自分の雪にするほどの低温空間。


「フブキ、テンマ」


ルミルミがフィールドで優位をとれるであろう、空中戦に……五分。やや、こちらに不利という状況。クールスノーの場を使った戦闘手段に翻弄されかける……が。ルミルミはクールスノー達についていかなかった。並の相手なら、一気に来た大雪とその一粒一粒の大きさに、意識を持っていかれ、宙までも足場にできるクールスノーを見失うであろう。

クールスノー個人を狙うよりも、このフィールド全体を狙う動き。

即決したのには、クールスノーと同じ戦うための信条であろう。自分の得意なことで迎え撃つ。


「そんな力で止められると思う?」

「!!」


ルミルミが”格”を語った。

粉雪が自分の気持ちを優先に維持したわけだが、実際のところは、横並びの実力者達。

わずかにでも相性があり、欠点があり、……強さとは変動することだと分かる。ルミルミがとった選択は本当にゴリ押し。自らの剣で、降ってくる雪ごと、斬りまくってはクールスノーに迫ること。



ドスウウゥゥッ



「ば、馬鹿正直ねぇ」


そんな言葉をクールスノーは出すが、内心では焦燥。

いくら”凍結世界”による大雪の発生かつ、強い粘着力を持とうが……。時間をかける必要性がある。このルミルミのような、力押しができる連中にとっては



「ちっ」



キッスや白岩みたいな戦闘タイプを相手に、間合いが近すぎると、私の方が不利。ルミルミの奴、ホントに2番がお似合いよ。



「あんたの首を斬り落とす。それで終わりよ」



時間をかけてしまえば、不利。



バチュゥバチュバチュ



お互い、”一瞬の隙”を求めた。

時間を稼ぎたい、クールスノー。

この攻撃でトドメを狙う、ルミルミ。


”雪地蜘蛛”の雨は、ジグゾーパズルを乱雑にこぼしたように広がる。そして、互いにあるシールの性質がくっつきあって、空かれた場所を補い始める。ルミルミがクールスノーを空中にて追い詰め始めるが、自分自身に雪が当たれば、機動力DOWN。クールスノーにとっては立体的な逃げを行えるフィールド。



「ふぅぅ」



一か八か。

そーいうのは、クールスノーの戦いには向いていない。

特に、駆け引きのない馬鹿を相手には……。1%の勝機を与えずに守り抜くことが大事だと、初心に帰っている。自分自身にだ。


「「!」」


常に宙で戦う2人が数分という長きに渡る戦闘で、どちらにも転ばなかったのは、”これでもなお”、互角である証拠だ。時間をかければ自分の勝ちは揺るぎないクールスノーをして、単純に稼いでいるだけでは何も変わらないとしていると察している。

そんな両者が一瞬の隙を露わにしたのは、



ドオオオオオォォォォォォッッ



此処野の”マフタブ”が、金習の命を刈り取っただけでなく、周囲に暴走を向けるかのような、軌道を生み出していた。不意に来た致命傷のリスク


「あいつっ」



クールスノーがその場を読み取る力が強すぎた。それが敗因とは言えぬであろう。ただ、真っ直ぐに、ルミルミが剣を突き刺すに……そんな些細なことがきっかけ。



ズパアアァァッッ



「っっっ!!?」



ルミルミがクールスノーの左足を斬り落とした!



挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


頭鴉:俺達まで出て来るのか。この挿絵作ったの4年前じゃねぇか

沼川:第一部のキャスティーノ団編の面々が、こうして揃うとはね。飴子ちゃんと茂原くん、録路くんの3名は別出演の予定かな?

小宮山:この頃の作者の挿絵は、とりあえず描くから始めましたからね。最近のとは大分違う。

イムスティニア:この時は一番可愛いかったのは、実はあたしだというね。今の力量で、あたしと小宮山をもう1回描いて欲しいね。(寝手に操られてる飴子は一度描いてる)

岱勿:この頃のタイトルロゴも大分違ってるな。第二部に入った時に刷新したんだな。


ゴンゴンゴン


茂原:僕、こっちなんですけどーー!?あのー部屋に入れてくれませんかーー!?仲間外れですかーー!?岱勿が殴って僕だけ別の挿絵なのは、生存者扱いなんだよね!?飴子だけ瞬間移動で部屋に入らないでよ!


ポチャンッ


飴子:あのさ。あたし自身は記憶ないんだけど、この時はあたしも生死不明扱いっていうか、死亡扱いにする予定だったわけ?

頭鴉:らしいな。けど、表原って奴が飴子を助ける気がしたから、元に戻したらしいぞ。良かったな。

飴子:寝手の操り人形だったら、ゾッとしてたから。あとで表原ちゃんにお礼しておこうかな。

岱勿:今のところ話がインフレしてるけど、俺達、”萬”や頭鴉が生存してたらどれくらいやれたかな。敵としても、味方としても。

沼川:えー……頭鴉くんの素質だけは、録路以上と設定はされてます。

頭鴉:お。マジか。まー、あのデブよりは強いと思ってるぜ

沼川:ですが、成長性はそんなに見込めないと。これは妖精を選んでいたという性格が、減点ポイントになっているそうだ。戦った相手が白岩というのが、運の悪さもあるかな。

頭鴉:なんだとー!?……ま、成長した録路や此処野には一歩劣るくらいってとこか。

小宮山:あたしは序盤の序盤で北野川に倒されたけど、……シークレットトークを相手に善戦してるからね。この能力そのものは潜入や回避に優れてるし、イムスティニアだって潜入と奇襲特化。

イムスティニア:茂原よりも活躍間違いなし!

岱勿:”萬”の面々は、潜入タイプの能力が多いからな。案外、最終ステージだとかなりの活躍があったかも。……茂原の能力もガチれば、強すぎるからな。なんだかんだで、こいつの被害は大きかったし、レイワーズ編で決定打を作ったもんな。

イムスティニア:でも、あいつ、いつもぶつぶつ言ってるからキモイんだよね

小宮山:素質だけなら、あいつが”萬”で一番なのは認めてあげる。








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