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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第59話『LAST STAGE ”3/9 VS AI”』
247/267

Dパート

それは”ある2人”がほぼ同時に負った、致命傷であった。



「「…………あぁっ?」」



グルりんと、……両目の焦点が合わず、首も座らず、身体があらぬ方向へ動く。


「「これしきで、私が倒れるとでも」」


”ある2人”には、決定的な違いがある。

”本物”か、”偽物”か。


たったそれだけ。



◇            ◇



ズザザザザ



「仲間を見捨てられるのか」

「いや、南空の命であんたの命を狩れるなら、あいつも本望でしょ。あれくらいじゃ死なない人よ」



ヒイロ達の一撃によって、軍事施設の中央部分は吹き飛び、雪のドームも、そのさらに上の雪雲までも多くがぶっ飛ばされた。その事で、自分のフィールドを再構成するにはかなりの時間が必要になる。一度作った時よりも、また……。

地上戦、空中戦。いずれにも、対応できるクールスノーであるが、……その中間で戦闘をすれば、自分のフィールドを作るまでに時間が掛かり、空中に投げ出される事もあり得る。

ともかく、自分のフィールドがないと言える。

唯一のアドバンテージは、ルミルミが負っているダメージの深さ。



「で、どうやって先回りしたのかしら?」



先ほど、自分と南空を追いつめ、咄嗟に南空を犠牲にしなきゃいけなかったこと。

その種明かしは必要である。

教えるわけもない。

両者はインターバルに入っている。思考を少し巡らせれば、



「……あぁ、そっか。そういやムカつくんだけど、シットリがあんたの弟子だもんね。そいつの対策を私にしたってことか。あるいは、シットリが助言をしてたか。いずれにせよ、こっちも考えないと」

『クールスノー。私の雪は確実に、ルミルミと繋がっていた』

『……俺も同じく。ルミルミの体にシールとしてくっついていた』


フブキとテンマは、自分達の能力は完璧だったという報告をした。

ここで長年のパートナーの信頼が揺らぐわけもない。クールスノーが自分の能力から逃れる術は限られており、自分のフィールドでそれをやってきたというヒント。能力でもないなら


「………そっか。注意しないとね」

『分かったの?』

「なんとなくね。フブキ」


ルミルミも物を作るのとかが、得意なタイプだったのを忘れてたわ。

外側に自分の姿形が似た鎧をまとわせ、いざって時に緊急脱出。鎧着ている相手だろうが、普段なら関係ないけれど。マトリョーシカの要領で着脱可能となると、時間が掛かるわね。ハーブと違って、脱皮のような感じで離脱はできないとしたら……。着脱可能なところを接着してやれば、変わりない。そこを見つけるとなると、ルミルミともっと距離を詰める必要があるわね。


「ルミルミ。それが私に通じるのは、あと1回ってところよ?」


クールスノーの察しは100%。

鎧という表現をしたが、雪を弾く、触れない程度でいいのなら、ちょいと厚めのビニールを自分の周囲に張るくらいでも対策はできる。着脱を瞬時にできるかどうか。最悪、粘着で外せないし、雪の性質も相まって中に浸透することもある。

やるのなら、近くに似たような使い手で検証していないと、上手くはいかないだろう。

着脱可能部分を接着できれば、終わってしまう話である。



ネタは分かった。



「じゃあ、再開しようかしらぁ。ルミルミ。自動回復しちゃうからねぇ」



クールスノーがスノーボードを取り外したのは、弱体化のようで、そうとも言えない。

地下から地上に至るまで、大きすぎる穴ができた都合上。自分のフィールドが作れない。そこを見越して、体術を怠けていたわけではない。

助けた南空を瞬時に見捨てられたのには、精神面以外にも秀でている証拠。

もちろん、ルミルミも引けをとらない。自分の体を着脱するという手段を思いつくだけでなく、……。この機会をひたすら待ち、範囲攻撃で牽制をし続け、勝負所で一気に仕掛ける立ち回り。驚異的なスピードのみならず、クールスノーと南空が逃げる方向を予測して先回りし、クールスノーを追い詰めた。



「いいよ。ヒイロくん達が終わるころに、あんたを倒しておく」



南空の退場。クールスノーの大雪を封じた状況と戦場。



「それはこっちも同じ。……南空は仕留められなかったようね?強めにあんたに投げて良かった」



ルミルミに与えているダメージ。長期戦に持ち込み続けての消耗。

これが南空の命を奪えなかった理由。クールスノーの機転が全てというわけじゃない。

どっちが優勢であるか。

しかし、勝者と敗者は1時間も経たずに決まる。



「おおおぉぉぉぉっっ!!」

「「!!」」



自分達より下の階で上がった咆哮が、2人の第2ラウンドの開始となった。




◇           ◇



噂じゃあ、”仙人”と聞く。

人間の中に時折現れる、人間を超えた生物。


それは自然に生まれて来るものなのだろうか。しかし、人の欲望は強く、狂気を纏って行動をする。

まだ人類には早かった……が、いずれ、人類が到達してくれるだろう。

欲望は仙人を求めて、加速した。


2人は、そーいう意味で一緒だ。

”本物”と”偽物”であってもだ。




ガラアァァッ



「これしきで、私が倒れるとでも」


その中でも特別に”学習”に秀でており、人間という種族においては……今の世界ではナンバー1とも言える生命体。体のほとんどを焼き尽くされた状態になり、再生ということは生物としては不可能のはずだった。

それほどに死は絶対であり、恐怖であり、希望ともなる。

様々入り混じったが、……一言で言うなら、2人には”狂喜”が起こった。




ベゴォベゴォ




焼き尽くされた体から気泡が発生した。その泡はまるで、土の中から這い出ようとする生物がみせるようなこと。1つの細胞が恐怖のあまり増殖し、自分の複製の喜び、生きる喜びのあまりに絶頂。それを反復していく。質、速度、徐々に加速していく。


「ああああああ」


かつての自分に戻ろうから、かつての自分を超えようとする。

”学習”とは過去を振り返って、現在に活かす事と言えるだろう。



プハァァッ



「ふあぁっ!!?」


呼吸ができなかったという生涯にそうはない苦しさ。水の有難さ。”生命体の原点”を思い出させた時、意識を取り戻したのは金習であった。

完全に1つの細胞が、金習という生物に戻った。



「!!」



瞬間。脳内が今までの出来事、今やるべき出来事、自分がどーいう存在なのか。脳が爆発したという表現が、その通りになって、頭が膨れ上がっては破裂を繰り返しながら、肉体はそれ以上の速度で成長していく。

死の間際に立たされてからの反動は大きい。生きる喜びが、生きる意味が、……万人違えど、この金習には1つできていた。


その前に



「うおおおおおぉぉぉぉっっ!!」



生命体の咆哮をした。

自分の状況を知った上でなお、今生きているという喜びを身体の中から外へと吐かねば、意味がなかろう。やはり、生き物が意味を知ったらやらなきゃいかん。



「うわああぁっっ!?なに!?なに!?」

「なんて声量!!」

「生きてやがんのか……」



此処野が勝ったと確信して見ていた、マジカニートゥとレゼン、ナックルカシーの3名も耳を塞ぐほどの、大きい声であり。そして、対峙していた此処野にもそれは届き


「るせぇな……」


アタナを握りつつ、左耳を抑えていた。

金習を倒したと思い気を抜いていたかと思えるが、此処野は


「だろうな」


白岩をぶっ倒した相手が、白岩の攻撃で倒れてくれるとは思っていなかった。金習とは違う意味で体は熱く、心は冷静になっていた。

金習を吹っ飛ばしたところまでは良かったが、タイミングが少し遅く、完全な状態で金習を放り込めれば、塵となって死んでいたかもしれない。辛うじて生き延び、そこから”死にたくない”という生命体の意志が、金習を急成長と再生を成した。



「おおおぉぉぉぉっっ!!」



膨大なエネルギーを受けて、死にかけたのだ。意識を失っていたのだ。

目的まであと少しと分かった時に、戻ろうとする足があったら斬り落とす。


金習は生命体としての喜びを咆哮として、数秒を使った。

だが、その後の声は周囲の状況を探っていた。

蝙蝠やイルカのエコーロケーションのように、声の反響と、その声に反応する生物、吐く息の温度から気温……。自分の位置や戦場の把握に至るまで。

声量1つで認識する。



地上で戦いを始めた2名。

なにやら、観客となっている2名。そして、槍を持つ者1名。

自分が吹っ飛ばされ地下4階に叩き落されており、みんなより下にいる状況。音の反響と声に反応した者達の

動きが分かる。



グググググッッ



中央部分は完全に吹き飛ばされており、雪がチラホラと降ってくる。

金習が咆哮を止めた後、身体を捻って、振りかぶるような動作をするのであった。


「!!」


対峙した。ということだけで、何かを仕掛けるから、何かを飛ばしてくると察知。

ナックルカシーは有無を言わさず、マジカニートゥを抱えてクールスノーのいる上の階へと避難。さっきの咆哮で自分達の位置まで、割られたとナックルカシーは読み切っていた。一方で、此処野はアタナを持ちつつ、すぐに反応できる体勢をとっていた。

当然、金習の狙いは此処野である。しかし、間合いは100mほど。投げつけるようなモノなど持っていない。




「あの間合い」


ナックルカシーはマジカニートゥを抱えたまま、離れつつも戦況を見ていた。金習の体が通常とは異なっている事を知っていても、自分達との間合いには届かないはず。

腕を異常者と言えるくらいに早く伸ばしたところで、無理に決まっている。

そして、金習がついに動いてきた。



ゾクウゥゥッッ



此処野とナックルカシーが見えたのは、死神しにがみ

金習という存在が生死の境で手に入れた真骨頂は、基礎の発展とも言える者。学習を積み重ねてできたもの。此処野との戦闘経験、戦場の状況から、最適解を選び続け……。敗北と死に追い込む。

『琴葉』をさらに突き詰めたと、言えばいいか。



ギュウウゥゥッ



「!!!?」


振りかぶってから放たれた、金習の左腕は……弾丸のように伸びていき、正確に此処野に向かって行った。いかに早くて、伸びてこようが、距離が有り過ぎる。腕が伸びても余裕で対処ができる。

油断。慢心。安心。


「お!?」


此処野がそれを持ち合わせていなかったほど、戦闘に集中していた。


「おわあぁっ」


瞬間。

此処野がいた周辺が一瞬で破壊されたのだった。



ガゴオオォォォォッッ



軍事施設を再び揺らし、辛うじて、避けた此処野はそのさらに下の階へと逃げ込んだ。



「っ!」



逃げ込みながら、金習が突進して来たところを見た。

遠くから腕を伸ばしただけと安心させておいてから、巨大化+自ら飛び込んでくるという急加速。距離感を狂わせてくるような戦い方であり、逃げ遅れていたら1発であの世行きだった。



「ははは、やるねぇ」



部分的に巨大化した金習の左手が急速に縮む。

体を変化させながら、自由に動けるというだけでも脅威であり、その速度とパワーは防御するなんてやれば、すぐに壊されてしまうだろう。


「だが、思ったとおりだ。お前は避けると思った」


身体能力の強化よりも恐ろしいのは、相手の行動を先読みしまくること。もちろん、先読みをしたところで金習が攻撃を当てられないと読んでしまえば、当てられない。


「クソが」


もし、上下に移動ができるステージじゃなかったら、逃げ切れなかった。

こいつの一撃一撃は必殺になってやがるんだ。真正面からやり合ったら、何度も死んじまってる。



回復手段のない此処野にとっては、今の金習の一撃をもらうことは絶対に避けなければいけない。平面のステージであれば、1分も経たずに殺されている事だろう。またしても、逃げながら機を待つという作戦になるが。



ギュウウゥゥッ




金習が身体を風船のように膨らませ、飛び上がった。それは此処野に対して、攻撃を誘っている=近づいてこいというアピール。だが、此処野の本能は自分の戦闘経験からすぐに逃亡するように叫び、体が動いた。

金習の体が圧倒的な武力を象徴していたからである。



ドゴオオオオオォォォォッッッ




「うわあああぁぁ!!?地震んっ!?足場が崩れるうぅぅっ!!」

「あいつは人間なのかよ!?」

「しっかり俺に捕まってろ!!」


シットリの地震と同等か!?

身体の体積を見せかけで増やしただけじゃなく、重量までも操作し始めやがった!!体内のコントロールまでできるってことか!




ナックルカシーがマジカニートゥを守りながら、此処野と金習の戦いを見守る。

巨大化し軍事施設を揺るがす攻撃。

軍事施設の実験場となっている地下4階の床の多くを砕ききり、空中のステージを作り出す。直撃であれば、戦闘不能。防御なんてもっての外。しかし、此処野。金習の攻撃を回避し、



「うおおぉぉっ!」



身体をデカくしたのは、テメェのミスだぜ!隙だらけ!



ドスウウゥゥッ



宙に浮いたまま、巨大化した金習の左肩をアタナで刺したが。その手応えが普段とまるで違かった。分厚い筋肉なんかではなく、分厚過ぎる皮膚と言える状態であり、筋肉や欠陥、神経にも刃が到達していない。そして、反射するように刺した部位の両隣から現れ始める、人間の腕。

嫌な予感を察知した瞬間に、アタナを消して地面に足をつける。そして、巨大化した金習を見上げる。だが、本当の金習は彼の下から現れる。正確には、巨大化した金習の足のところからだ。まるで幽霊のように出現してくるのだ。



ガシイィィッ



「!!?」


首を掴まれた、ヤベェっ!!


金習がダッシュをしながら此処野の首を基点に持ち上げ、後頭部を地面に叩きつける攻撃。一瞬一瞬、即死の攻撃を前に此処野も条件反射で避けていく。あえて力まず、身体の力を抜いてその場で縦に一回転。金習が突っ込んでくる勢いを利用し、彼への投げ技に変えつつ。両足から着地して、頭へのダメージを防ぐ。


ズザザザザ


押されながら、攻撃を抑えるが


「ぐううぅっ」


続け様に金習の握力にモノを言わせる首絞め。体を投げられようが、掴んだ首を決して離さずついてきた。返し技も限られ、アタナも手放している状況。

そこでの抵抗は金習の顔面の急所攻撃。苦しい状況の中で、的確に金習の両目を狙った2本指の貫手であったが、



ゴツウゥッン



「!?ぐああぁっ!?」

「危ないじゃないか」


なんと金習は此処野を引き寄せながら、自分の頭突きで攻撃で妨害。不意に怯まされた此処野はパニックに陥る。その時、此処野はすぐにアタナに戻ってくるよう腕を動かした。

それは相手となる金習を見ていないという致命的な動き。先ほど見た、死神が見えただろう。


”宣告”


「君は私の右腕をその槍で刺そうとするだろう?」



こんな間合いで槍を振るえば、余計な隙ができる。



「その前に私は、君の首から手を離す」



此処野は怯んでいる事も相まって、無様に空ぶる。これで槍の位置も曝け出し、防御と呼べることもできない。



「そして、私は両手が空いて、君は防御ができず、回避もできない」

「っっ!!」

「つまり、死ね」



ドゴオオォォォッッ


身体に風穴でも空いたかのようなボディブローから。



ガゴオオォォッッ



さらに続けてのボディブロー。此処野が首から上を護ろうと、本能的に動くだろうと読んでの逆だった。

呼吸と動きを封じた後に顎を突き上げる掌底。


「ぐおっ」


強制的に上に顔を持ち上げられたところで、膝から一気に崩れ落とすように両足の破壊を実行する金習!

赤色の魔法陣が描かれた空を見上げながら、地に崩れていくという無様な倒れ方を晒す此処野……。



「……………」


崩れ落ちながら、あと少しのところまで追いつめたかのようで、逆に急成長をさせてしまった金習の姿を見るのであった。



ドタアァッ



「私と君達とでは、いるべき世界が違うのだよ」



挿絵(By みてみん)


表原:黛ちゃん!良かったね!

黛:……その言葉。な~んか、複雑~。

レゼン:ホントだったら、第2部で死んでたからな。味方側に良いカンジの強者がいなかったから……。生き残った扱いにした。とはいえ、”虹翔蹴”で、キッス様達を運ぶ展開は、黛がここまで生き残ったから思いついたらしい。

表原:展開としても、話しとしても、個人的にやって良かったって思っているそうです。扱いはともかく、利用できる感じにしたかったからね。長く向き合えたからこーいう事が浮かんで楽しかったそうです。



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