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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第58話『LAST STAGE ”HERO & SIGN”』
242/267

Gパート


シンシン…………



「戦いってのはねぇ」



パチッ



「将棋とかしてりゃあいいのよ」


お互いに少しの暇があれば、強者同士でルールを知っている競技をしていた。

血の出る殴り合いだったら、楽しすぎて、相手を消してしまいそうになるからだ。

戦闘は相手のKOでの終了が多いようで、状況においては、退けること生きて捕まえることだってある。


その結末に持ち込むまでの、準備や手順はいる。


クールスノーがスノーボードに乗って、雪原を高速で駆けて行き、絞らせずに追わせない。この雪のドーム内に閉じ込められたルミルミと、南空をもろとも葬る準備がもうすぐ終わる。

その準備で終わればいいが。


「ちっ!この爺!」


しつこく、そのチェーンソーがルミルミに届く。



ガギイイィィッ



「あんたがいるせいで、クールスノーを仕留められないじゃない!」

「それで構わない」


準備が終わって、ハイ攻撃。……というわけにもいかない。そこからさらに、ルミルミが見せる隙。クールスノーがルミルミに詰みをかけられる攻撃を仕掛けるタイミング。

南空はルミルミの足止めだけでなく、そこまでを作ろうとしている。もちろん、ルミルミだってそれに付き合う気はない。

雪の狼達を南空にぶつけている。ルミルミを止めに入っても、1手が限界。南空も防戦になる。


「この”1手”だけで粉雪様に、お前は手出しができない」

「へへんっ!」


雪原を高速で移動されれば、空を自由に飛べるルミルミも追いつけない。縦横無尽の動くせいで的を絞れない。



クールスノーは総攻撃の機を伺い、ルミルミから逃げる。

ルミルミはクールスノーと追いかけつつ、南空から逃げる。

南空はルミルミを追い、ルミルミが作った狼達とも戦う。



一瞬でも良いと南空は思っており、ルミルミもそれに気付いている。

南空への注意が”3手”、あるいは”2手”という短いながらも、彼の戦いに付き合えば、クールスノーは総攻撃をするだろう。それは”雪崩”という災害を搦め、非常に長く続く攻撃。



ズザザザザ



総攻撃を仕掛けるか、あるいは……。それを封じ続けるか。

いずれにしても、この3者。


”気の抜けない、耐久力、根気の戦い”


そして、明らかに3者の違いがある。体力の消耗と負担の大きさ。一人だけ負担が飛び抜けてる。

ときおり、ルミルミがクールスノーに追いついて来れるのは、南空との間合いも大事だからだ。彼との間合いが離れ過ぎれば、総攻撃の開始から攻撃までに、見過ごせないロスが起こる。



「やれやれ」


参りましたな。歳はとりたくない。粉雪様とルミルミの動きについてくるだけで、大変な労力だ。その上、目障りな狼達まで来てくる。


バキイィィッ


「君達に喰われるほど、じゃあないんですけれどね!」


これは”合図”にさせない。

いいですね。粉雪様。


「ルミルミ。あんたさぁ」


分かっているわ。

”隙”を作っていいわ。


「なに!?」


あの爺が”体力切れ”を起こした時!

クールスノーが仕掛けて来る!その時、こいつもちょっかいは出さなくなる!あたしとクールスノーの一騎打ち。


「私とあんたの”格”。誰が決定したか、分かってるんでしょうね?」

「!!」


その言葉の後。

南空が”捨て身”を覚悟でルミルミに突っ込んでいった。雪の狼達の牙や爪を浴びながら、ルミルミに狙ってくださいとする特攻。それと息を合わせて同時に、雪のドームの外側から順々に雪崩を発生させる。


「”白龍逆鱗はくりゅうげきりん”」


ルミルミが南空を刺そうが迎撃しようが、クールスノーの動きは変わらない。2人の姿勢にルミルミが、精神的に恐れ、攻めきれなかった。



ギイィィンッ



チェーンソーと剣がぶつかるも、南空のパワーに押し負けるように数歩下がったルミルミ。

仲間に対して非情になれないというルミルミの脆さはある。クールスノーと南空に対して、その感情が湧いているものではなく。ルミルミをして、正気を疑うような”同族の犠牲”を前提とする攻撃は精神的に遅らせた。

捨て身が結果、命を続かせる。

クールスノーと南空の戦闘の勘。ルミルミという性格面の情報が活きた瞬間。それが生んでくれた、数コンマ。



バギイイィィッ



ルミルミの圧倒的な戦闘力が南空の攻撃を届かせないのは事実。しかし、ルミルミ自身も気付くには遅すぎる。”2手”すらも命取りであるが、



ガアァァッッ



「くぅ」

「見事です。粉雪様」


その言葉はむしろ、南空が言われるべきものだ。

止められても、強引にルミルミと距離をつめ、”3手”分。自分に注意を惹きつけ、ルミルミがここから”白龍逆鱗”から逃れる術はなく、南空もそれは同じ。



ドゴオオォォォッッ



2人が同時に、雪崩に巻き込まれる。

ルミルミの視界と身体は一気に嵐のように揺れては、自分と共に巻き込まれた南空もすぐに見失い、雪の中へと飲まれる。


「ぐっ」


一気に冷たくなる身体に、雪がシールのように接着していく。その速度はルミルミの自動回復を軽く上回り、身体の自由を奪い始めていく。

ルミルミの身体に付着し、冷たく硬直する雪。自分の身体ではなく、自分と繋がっている体積は増えていた。



ガシィッ



この雪崩の中で自由にいられるクールスノーはルミルミと繋がった雪を掴んでは



「おわあぁっ!?」


自身が乗るスノーボードの速度のまま、ルミルミを連れ去ってしまう。それを理解し、抵抗しようにも、すでにフィールドは出来上がっている。

ルミルミが向かうところ、クールスノーが向かうところ。雪の壁や雪の剣山。……これに対し、ルミルミをぶつけて滑走。


「”凍結私道とうけつしどう”」



ガゴオオオォォォッッ



固めた雪の壁の類にルミルミをぶつけまくってはなおも加速!上昇したり下降したり、急な曲がりをしながらの衝突の連続で、対象の脳を激しく揺さぶり、平衡感覚を物理的に狂わせる。敵を捕縛し、離さずに、凍えさせ、絶え間ない衝突の繰り返しは……。一度嵌めたら、相手が死ぬまでは解除されない。

完全なるハメ技である。



ドゴオオォォッッ



「ぐうぅっ!!」


脱出をしようにも、テンマのシールの力で外されない。肉体の連打ではなく、滑走を続けての攻撃であるため、息切れのようなモノもない。

ハメ技に近いながら、その脱出手段というより、技の性質上の欠点として……。


「!!」

「左にあんたがいる!」


クールスノーも対象者の近くにいるという事である。連続で攻撃してもなお、反撃できるだけの精神力もなければならず、速度も大事。喰らいながらの反撃が、必須。

ルミルミの身体で風が巻き起こる。



「”風塵裂傷”」



雪のシールをはがすための風であり、クールスノーも巻き込む風。速くて広範囲の技を使い、クールスノーの攻撃を止めようという狙い。それに対して、クールスノーはすぐにルミルミから離れる。止まるルミルミと高速に逃げながら、距離をとれるクールスノー。



「ふふっ」



笑うクールスノーに、ルミルミは攻めの姿勢。

風を起こしても、ルミルミの体に大量についた雪は、ちょっとやそっとじゃとれない。そんなのは分かっていたと、


「”雷槌千煩”」


風の次は雷を発生させ、無差別に狙う攻撃でクールスノーを牽制する。当然、そんな狙いを決めていない雷なんかに、当たるわけもない。威嚇目的で十分。


「ちょっと斬られた」


クールスノーの左肩がわずかに斬れ、血が流れていた。ルミルミの周囲を旋回しつつ、機を伺う。


「はぁ、はぁ」


大きなダメージを負った、ルミルミ。自動回復を軽く上回る攻撃をされては、一時の避難が必要。しかし、クールスノーが雪のドームを完成させている以上、脱出はできないと言える。

つまり、クールスノーを倒すこと。結局は。



「はぁ」


しかし、……しかしだ。

今のダメージと引き換えに、あの鬱陶しかった南空が見えなくなった。



「はぁ」


ルミルミから見て、右側には……、雪の壁に”動力部”が刺さるように固定されたチェーンソー。南空が扱っていた武器だ。起動こそし、刃がこちらに向いていようと、その本人はいない。

クールスノーが仲間を見捨てたという代償は大きい!

死んでいるのなら!



ザバアァッッ



「!!?」


ルミルミのいる雪の下。そこから急に現れた南空は、ルミルミの足を掴んでは持ち上げ、



ブイイイィィィッ



激しく動くチェーンソーの刃にむけて、ルミルミをぶっ刺す南空。


「チェーンソーで申し訳ないな」

「っ!」


身体の刃で刺され、吊るされた画。ルミルミのダメージが大きく、激高した目だけで南空を視るのみ。ルミルミの殺意が、すでに攻撃をする気がない南空を、無意識ながら大きく後退するのは正しい危機感だった。それはクールスノーも同じく、……。


「お~、熱いわねぇ。でも、遅すぎない?」



身体をズタズタにされながらも、ゾンビのように身体をぶちまけるように脱出する、ルミルミ。しかし、彼女に通ったダメージが確実であり。


「ふーぅ」


南空がこの戦闘で介入する事が、もう難しいと言える状況。

焦りを出したいところで、クールスノーの冷静な判断は



「今の大きな隙で、私が飛び込むと思ったかしら?殺意全開のあんたと違うのよ」



滑走を続けながら、クールスノーは南空の隣まで来て、ようやく止まった。

2人の連携はもちろん、クールスノーの大技が1つ。ルミルミを確実に削ったこと。

自動回復でじわじわと回復しようが、クールスノーが何もするわけもないし



シンシン…………



「もういいわ、南空。ちょっと休んでなさい」

「宜しいので?」

「こいつから”格”を語ってるわけだし、元仲間として、分からせてやろうじゃない」



クールスノーの雪が、ルミルミの傷口に付着し、自動回復を阻害させている。そして、ダメージと比例するように凍える寒さは大きくなる。

まだ、詰みまでは手数がかかるが、圧倒的な優勢であり、読み違えという負け筋をいかに潰していくかで勝敗が決まる。ルミルミに短期決戦を仕掛けさせずに、じわじわと……。


「私。別に”興味”がなかったわけじゃないのよ?」



これがクールスノーの強さと言えるやり方。もちろん、ルミルミの個の強さに関しては本人も十分に認めている。

しかし、”序列”は個の強さだけが全てではないだろう。

だから、こーいう戦いを選んだ。そして、可能だった。


「私に似合っているのが、”4番”だっただけ。ヒイロが2番でいいし、白岩が3番でいい。そして、あんたが3番だったのも、全然良かった。だって、”一番信頼する距離感”だったんだから」



……ねぇ、ナギさん。

私、ここまで強くなっているのよ。


◇              ◇


【うぐぐぐぐぐぐ】



ジャオウジャンは動けなかった。



【な、なにをしたああぁぁっ!!?】



目の前にいるヒイロが、何をしたのか。何をしているのか。

今はただ、自分のしもべとして洗脳している、白岩を完全に浄化させている最中。それをしながら、自分の抑え込めるなど、それほどの”力量の差”があったというのか?


【………………】

【我はジャオウジャンだぁっ!この世の邪念を統べる!!たかが、1体の妖精の力で、動けぬわけがない!!戦争を糧にする怪物ジャネモンが、そんなチンケなモノに止められてっ!たまるものかっ!!クソォォッ!動けぇぇっ!】


確かに”力”や”強さ”という点ならば、ヒイロを超えているだろう。しかし、それが全てだろうか?2VS1だから、クールスノーと南空がルミルミを圧倒していたのは事実としても、……”個の強さ”は確か。……しかし、力が全てではない。

今の状況で、”力”を行使しての解放は難しいだろう。

片紐結びを解くような、簡単なことであるのに。



「……あぁ……ヒイロ」

「!まだそのままにしてくれ」



ジャオウジャンからの洗脳が解け、白岩が完全に自由になろうとしていた。ならばすぐに、ジャオウジャンとの戦闘を始めるべきだとする行動をとっても、おかしくはないが。ヒイロの我儘と、白岩もお願いしたいこと


「君をもう少し抱きしめたい」

「…………うん」

【だからテメェ等!!我を目の前にして!!目の前にして!!イチャつくなぁっ!!なぜ、洗脳から抗うぅぅっ!!貴様等が、我に勝とうなどと夢見てるのかあぁぁっ!いいかぁっ!!夢を敗れた・失った数は、お前等なんかよりも多くて歪み、力になるんだ!お前等、すぐに!!分からせてやるぅ!!このクソの現実に!!愛だの、言ってんじゃねぇ!!クソがあぁっ!!堕ちろおぉぉっ!!】



騒ぎ、喋る、……”この”ジャオウジャンは、それが基本ベースなんだろう。

未だに自分が動けぬ理由が分からず、傲慢。


【うううぅぅっ!!】


傲慢さがあるにも関わらず、滑稽な状況。

これでは一向に気付かないんじゃないか?って思い、そんなのじゃあ


【面白くないなぁ、君はぁ】

【!!?】

【例えるなら、人気漫画や人気アニメ、人気歌手を否定することに、カッケーを思っているような……尊重していない人って言われ……】

【だ、誰だ!?誰が我の中にいる!?】

【まぁ、尊重されるべき、存在じゃないよね。空っぽな王様くん】

【だから、テメェは誰だあああぁぁっっ!!!】



声まで掛けてあげたのに、まだ気づかないのか……。それだけ影の薄い退場を選び、安全圏から観戦させてもらった。そのお代と思えば、安いくらいだ。

ジャオウジャンを止められるとすれば


【我と同格な存在などっ!!いない!!我を止めるもの!ましてや、身体の中で無事にいられるなんて!!】


自分と同じしかあり得ない。だけれど、いるじゃねぇか。……取り込んだじゃねぇか。自分じゃねぇけど……


【私は”元”だけど、ジャオウジャンだよ。残念なんだけど、君なんかと同格だ】

【!!?まさかっ、ムノウヤ!?貴様は、金習に取り込まれ!!我の中に移動したはずっ!!そして、なんで平然としていられる!】

【そんなこと言われてもねぇ?】


まるでクレーマーを淡々かつ面倒に対応するような社会人。


【君が悪いんじゃない?気付かなかったのが……】

【!!っ】


体内にいるムノウヤの姿を覗き見ること。人間で言うなら、調子が悪い時に病原菌の様子を伺うようなこと。きっと、槍でも持って身体をチクチクしてるのかと思いきや



ゴクゴク……


【なっ!?この邪念の大海の中、カフェテラスを作って優雅にコーヒータイム!!シガールとクッキーまで用意し、おかわりをしたとされる小皿まで……読書までして悠々自適だと!?】

【結構、静かだったからね】


大笑いをするような激しい娯楽ではなく、優雅で自堕落じだらくな、静かだからこそ、楽しいという価値観。

人の価値のアレコレに興味を示さず、自分で考えた価値を信じているもの。周りの声を”情報”のみとしている、マイペースさ。ムノウヤのくつろぎは、動けないジャオウジャンにとって。

動かないのに、自由を謳歌している。


【!騒がしくなったね】

【ええい、忌々しい!我がお前に気付いたからには、容赦せんっ!!お前は助からない!!分かってるんだろうな!!】


体内を制御できないからこそ、病気は恐ろしく、心を狂わせる。

しかし、そこはジャオウジャン。

白岩をも洗脳して見せた、精神汚染。そして、体内にいるということは、圧倒的な物量の差もあるサイズ。



ベギギギィィッ



【我の体内でカフェテラスなんぞ作りおって!!破壊してやる!そのチンケな今を壊してやる!】


カフェテラスができているのも平穏な状態だったからだ。

周囲が戦争状態となれば、そんな暢気にいられないだろう?ムノウヤに向けて、銃弾、爆撃、……生物兵器の類。人間達の非道さを思い知らせる事もできる。

当然、ムノウヤが用意したものなんか、すぐに壊される。

しかし、抵抗するかと思いきや、ほとんどを失っても、なおものんびりするムノウヤだった。


【ぐっ!】


戦争の悲しみ、戦争の恐怖、戦争の天候、戦争の不信、戦争の痛み。


【なんなんだ、貴様ぁっ!!なんで、死なねぇっ!!なんで、死を選ばない!!なんで、消えない!!】


それがムノウヤにとっては”関係のない”ことだった。

なぜ死なない?なんでこいつは生きている?

ジャオウジャンには、ムノウヤの能力もそうだが、その精神状態も理解不能であった。同じ存在であるにも関わらず、ここまで対照的であるのは、生きて来た年数がそのまま現れた証拠と言える。

あまりに強すぎたことは同じことだ。


【…………やっぱり、君でも無理か。いや、良かった】

【なにがだ!?なにが無理だ!!】

【僕をようやく、死なせてくれるはずだ】



ルミルミ、シットリ。君達からの誘いはとても楽しかったよ。この僕をようやく、死なせてくれるんだ。

だからこそ、感慨深い。

僕はずーーっと自堕落で、眠ってばかりだったけれど。君達との出会いや信じることを、この時に思い出させてくれるのが、”死が近い”というものなんだね。

こいつには分からないよ。まだ”楽しく生きている”のだから。

僕はね。”生きてるのに死んでる”んだ。もうこれ以上、熱いのは要らない。

周囲の思う何もない人生。何も波が立たない平穏を求めた人生。静かなところ……。

生きている鼓動を忌々しく思うくらいにだ。

それがあるから、僕は生きているし、死ぬという本当の平穏に行けないんだから。

どんなところかワクワクしている。ここよりも静かなところがいい。僕の全てが永遠に眠っていられるようなところ。

……唯一、悲しいと思うことは。君達とは、もう出会えない事だろう。そして、忘れてしまうだろう。



僕が僕を忘れることで、全ての死の完成だ。


【世界を救ってくれ】


ヒイロくん、白岩ちゃん。

君達2人なら、僕を殺してくれるだろう。

なかなかにヘイトが溜まった演出だったろう?

全力でジャオウジャンごと、僕を消滅させてくれ。


僕もお喋りになるねぇ。こいつみたいに独り言いっぱいだ。これだから、僕って生きてるんだ。


こんなこともできないのかなぁ。

いや、それでいい。もう、別のモノになれる。喜ぼう。そして、生で観戦させてもらおう。

君達2人の戦いをこの身で受けてあげる。



「…………お前の目的に応えるつもりはない。結果、そうするだけだ」

「ムノウヤ。あなたには、それがどーいうことか、……分かってるんですか!?」



ムノウヤの心の声。独り言が、ヒイロと白岩に届いたか否か。

しかし、彼の行動がこうして2人を助けたのは事実であり、彼等の本気がジャオウジャンもろとも自分に向けられること。躊躇なしで消してくれること。

この中で唯一にも、自分が勝ち組としていられる。なんと腹立たしいこと。この状況で……ある意味で”無敵の人”。本人にはその気はまったくないが、”自由を謳歌”している怪物ジャネモンに違いない。



ヒイロと白岩の言葉は、生きている奴等の言葉であった。

言わずとも、心の中でムノウヤは



【死んで初めて、……僕も”人間”になりたかったんだよ】



あまりの不死身さ。

それ故、誰かと関係を持つ意味はない。ずーっと寝続けたり、暇をつぶしていたり、……あらゆる行動の全ては、機を待っていた事と繋がる。動いても変わらないと悟っている。



ヒイロと白岩が、ジャオウジャンに向けて、戦闘態勢に入った。



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