Gパート
シンシン…………
「戦いってのはねぇ」
パチッ
「将棋とかしてりゃあいいのよ」
お互いに少しの暇があれば、強者同士でルールを知っている競技をしていた。
血の出る殴り合いだったら、楽しすぎて、相手を消してしまいそうになるからだ。
戦闘は相手のKOでの終了が多いようで、状況においては、退けること生きて捕まえることだってある。
その結末に持ち込むまでの、準備や手順はいる。
クールスノーがスノーボードに乗って、雪原を高速で駆けて行き、絞らせずに追わせない。この雪のドーム内に閉じ込められたルミルミと、南空をもろとも葬る準備がもうすぐ終わる。
その準備で終わればいいが。
「ちっ!この爺!」
しつこく、そのチェーンソーがルミルミに届く。
ガギイイィィッ
「あんたがいるせいで、クールスノーを仕留められないじゃない!」
「それで構わない」
準備が終わって、ハイ攻撃。……というわけにもいかない。そこからさらに、ルミルミが見せる隙。クールスノーがルミルミに詰みをかけられる攻撃を仕掛けるタイミング。
南空はルミルミの足止めだけでなく、そこまでを作ろうとしている。もちろん、ルミルミだってそれに付き合う気はない。
雪の狼達を南空にぶつけている。ルミルミを止めに入っても、1手が限界。南空も防戦になる。
「この”1手”だけで粉雪様に、お前は手出しができない」
「へへんっ!」
雪原を高速で移動されれば、空を自由に飛べるルミルミも追いつけない。縦横無尽の動くせいで的を絞れない。
クールスノーは総攻撃の機を伺い、ルミルミから逃げる。
ルミルミはクールスノーと追いかけつつ、南空から逃げる。
南空はルミルミを追い、ルミルミが作った狼達とも戦う。
一瞬でも良いと南空は思っており、ルミルミもそれに気付いている。
南空への注意が”3手”、あるいは”2手”という短いながらも、彼の戦いに付き合えば、クールスノーは総攻撃をするだろう。それは”雪崩”という災害を搦め、非常に長く続く攻撃。
ズザザザザ
総攻撃を仕掛けるか、あるいは……。それを封じ続けるか。
いずれにしても、この3者。
”気の抜けない、耐久力、根気の戦い”
そして、明らかに3者の違いがある。体力の消耗と負担の大きさ。一人だけ負担が飛び抜けてる。
ときおり、ルミルミがクールスノーに追いついて来れるのは、南空との間合いも大事だからだ。彼との間合いが離れ過ぎれば、総攻撃の開始から攻撃までに、見過ごせないロスが起こる。
「やれやれ」
参りましたな。歳はとりたくない。粉雪様とルミルミの動きについてくるだけで、大変な労力だ。その上、目障りな狼達まで来てくる。
バキイィィッ
「君達に喰われるほど、じゃあないんですけれどね!」
これは”合図”にさせない。
いいですね。粉雪様。
「ルミルミ。あんたさぁ」
分かっているわ。
”隙”を作っていいわ。
「なに!?」
あの爺が”体力切れ”を起こした時!
クールスノーが仕掛けて来る!その時、こいつもちょっかいは出さなくなる!あたしとクールスノーの一騎打ち。
「私とあんたの”格”。誰が決定したか、分かってるんでしょうね?」
「!!」
その言葉の後。
南空が”捨て身”を覚悟でルミルミに突っ込んでいった。雪の狼達の牙や爪を浴びながら、ルミルミに狙ってくださいとする特攻。それと息を合わせて同時に、雪のドームの外側から順々に雪崩を発生させる。
「”白龍逆鱗”」
ルミルミが南空を刺そうが迎撃しようが、クールスノーの動きは変わらない。2人の姿勢にルミルミが、精神的に恐れ、攻めきれなかった。
ギイィィンッ
チェーンソーと剣がぶつかるも、南空のパワーに押し負けるように数歩下がったルミルミ。
仲間に対して非情になれないというルミルミの脆さはある。クールスノーと南空に対して、その感情が湧いているものではなく。ルミルミをして、正気を疑うような”同族の犠牲”を前提とする攻撃は精神的に遅らせた。
捨て身が結果、命を続かせる。
クールスノーと南空の戦闘の勘。ルミルミという性格面の情報が活きた瞬間。それが生んでくれた、数コンマ。
バギイイィィッ
ルミルミの圧倒的な戦闘力が南空の攻撃を届かせないのは事実。しかし、ルミルミ自身も気付くには遅すぎる。”2手”すらも命取りであるが、
ガアァァッッ
「くぅ」
「見事です。粉雪様」
その言葉はむしろ、南空が言われるべきものだ。
止められても、強引にルミルミと距離をつめ、”3手”分。自分に注意を惹きつけ、ルミルミがここから”白龍逆鱗”から逃れる術はなく、南空もそれは同じ。
ドゴオオォォォッッ
2人が同時に、雪崩に巻き込まれる。
ルミルミの視界と身体は一気に嵐のように揺れては、自分と共に巻き込まれた南空もすぐに見失い、雪の中へと飲まれる。
「ぐっ」
一気に冷たくなる身体に、雪がシールのように接着していく。その速度はルミルミの自動回復を軽く上回り、身体の自由を奪い始めていく。
ルミルミの身体に付着し、冷たく硬直する雪。自分の身体ではなく、自分と繋がっている体積は増えていた。
ガシィッ
この雪崩の中で自由にいられるクールスノーはルミルミと繋がった雪を掴んでは
「おわあぁっ!?」
自身が乗るスノーボードの速度のまま、ルミルミを連れ去ってしまう。それを理解し、抵抗しようにも、すでにフィールドは出来上がっている。
ルミルミが向かうところ、クールスノーが向かうところ。雪の壁や雪の剣山。……これに対し、ルミルミをぶつけて滑走。
「”凍結私道”」
ガゴオオオォォォッッ
固めた雪の壁の類にルミルミをぶつけまくってはなおも加速!上昇したり下降したり、急な曲がりをしながらの衝突の連続で、対象の脳を激しく揺さぶり、平衡感覚を物理的に狂わせる。敵を捕縛し、離さずに、凍えさせ、絶え間ない衝突の繰り返しは……。一度嵌めたら、相手が死ぬまでは解除されない。
完全なるハメ技である。
ドゴオオォォッッ
「ぐうぅっ!!」
脱出をしようにも、テンマのシールの力で外されない。肉体の連打ではなく、滑走を続けての攻撃であるため、息切れのようなモノもない。
ハメ技に近いながら、その脱出手段というより、技の性質上の欠点として……。
「!!」
「左にあんたがいる!」
クールスノーも対象者の近くにいるという事である。連続で攻撃してもなお、反撃できるだけの精神力もなければならず、速度も大事。喰らいながらの反撃が、必須。
ルミルミの身体で風が巻き起こる。
「”風塵裂傷”」
雪のシールをはがすための風であり、クールスノーも巻き込む風。速くて広範囲の技を使い、クールスノーの攻撃を止めようという狙い。それに対して、クールスノーはすぐにルミルミから離れる。止まるルミルミと高速に逃げながら、距離をとれるクールスノー。
「ふふっ」
笑うクールスノーに、ルミルミは攻めの姿勢。
風を起こしても、ルミルミの体に大量についた雪は、ちょっとやそっとじゃとれない。そんなのは分かっていたと、
「”雷槌千煩”」
風の次は雷を発生させ、無差別に狙う攻撃でクールスノーを牽制する。当然、そんな狙いを決めていない雷なんかに、当たるわけもない。威嚇目的で十分。
「ちょっと斬られた」
クールスノーの左肩がわずかに斬れ、血が流れていた。ルミルミの周囲を旋回しつつ、機を伺う。
「はぁ、はぁ」
大きなダメージを負った、ルミルミ。自動回復を軽く上回る攻撃をされては、一時の避難が必要。しかし、クールスノーが雪のドームを完成させている以上、脱出はできないと言える。
つまり、クールスノーを倒すこと。結局は。
「はぁ」
しかし、……しかしだ。
今のダメージと引き換えに、あの鬱陶しかった南空が見えなくなった。
「はぁ」
ルミルミから見て、右側には……、雪の壁に”動力部”が刺さるように固定されたチェーンソー。南空が扱っていた武器だ。起動こそし、刃がこちらに向いていようと、その本人はいない。
クールスノーが仲間を見捨てたという代償は大きい!
死んでいるのなら!
ザバアァッッ
「!!?」
ルミルミのいる雪の下。そこから急に現れた南空は、ルミルミの足を掴んでは持ち上げ、
ブイイイィィィッ
激しく動くチェーンソーの刃にむけて、ルミルミをぶっ刺す南空。
「チェーンソーで申し訳ないな」
「っ!」
身体の刃で刺され、吊るされた画。ルミルミのダメージが大きく、激高した目だけで南空を視るのみ。ルミルミの殺意が、すでに攻撃をする気がない南空を、無意識ながら大きく後退するのは正しい危機感だった。それはクールスノーも同じく、……。
「お~、熱いわねぇ。でも、遅すぎない?」
身体をズタズタにされながらも、ゾンビのように身体をぶちまけるように脱出する、ルミルミ。しかし、彼女に通ったダメージが確実であり。
「ふーぅ」
南空がこの戦闘で介入する事が、もう難しいと言える状況。
焦りを出したいところで、クールスノーの冷静な判断は
「今の大きな隙で、私が飛び込むと思ったかしら?殺意全開のあんたと違うのよ」
滑走を続けながら、クールスノーは南空の隣まで来て、ようやく止まった。
2人の連携はもちろん、クールスノーの大技が1つ。ルミルミを確実に削ったこと。
自動回復でじわじわと回復しようが、クールスノーが何もするわけもないし
シンシン…………
「もういいわ、南空。ちょっと休んでなさい」
「宜しいので?」
「こいつから”格”を語ってるわけだし、元仲間として、分からせてやろうじゃない」
クールスノーの雪が、ルミルミの傷口に付着し、自動回復を阻害させている。そして、ダメージと比例するように凍える寒さは大きくなる。
まだ、詰みまでは手数がかかるが、圧倒的な優勢であり、読み違えという負け筋をいかに潰していくかで勝敗が決まる。ルミルミに短期決戦を仕掛けさせずに、じわじわと……。
「私。別に”興味”がなかったわけじゃないのよ?」
これがクールスノーの強さと言えるやり方。もちろん、ルミルミの個の強さに関しては本人も十分に認めている。
しかし、”序列”は個の強さだけが全てではないだろう。
だから、こーいう戦いを選んだ。そして、可能だった。
「私に似合っているのが、”4番”だっただけ。ヒイロが2番でいいし、白岩が3番でいい。そして、あんたが3番だったのも、全然良かった。だって、”一番信頼する距離感”だったんだから」
……ねぇ、ナギさん。
私、ここまで強くなっているのよ。
◇ ◇
【うぐぐぐぐぐぐ】
ジャオウジャンは動けなかった。
【な、なにをしたああぁぁっ!!?】
目の前にいるヒイロが、何をしたのか。何をしているのか。
今はただ、自分の僕として洗脳している、白岩を完全に浄化させている最中。それをしながら、自分の抑え込めるなど、それほどの”力量の差”があったというのか?
【………………】
【我はジャオウジャンだぁっ!この世の邪念を統べる!!たかが、1体の妖精の力で、動けぬわけがない!!戦争を糧にする怪物が、そんなチンケなモノに止められてっ!たまるものかっ!!クソォォッ!動けぇぇっ!】
確かに”力”や”強さ”という点ならば、ヒイロを超えているだろう。しかし、それが全てだろうか?2VS1だから、クールスノーと南空がルミルミを圧倒していたのは事実としても、……”個の強さ”は確か。……しかし、力が全てではない。
今の状況で、”力”を行使しての解放は難しいだろう。
片紐結びを解くような、簡単なことであるのに。
「……あぁ……ヒイロ」
「!まだそのままにしてくれ」
ジャオウジャンからの洗脳が解け、白岩が完全に自由になろうとしていた。ならばすぐに、ジャオウジャンとの戦闘を始めるべきだとする行動をとっても、おかしくはないが。ヒイロの我儘と、白岩もお願いしたいこと
「君をもう少し抱きしめたい」
「…………うん」
【だからテメェ等!!我を目の前にして!!目の前にして!!イチャつくなぁっ!!なぜ、洗脳から抗うぅぅっ!!貴様等が、我に勝とうなどと夢見てるのかあぁぁっ!いいかぁっ!!夢を敗れた・失った数は、お前等なんかよりも多くて歪み、力になるんだ!お前等、すぐに!!分からせてやるぅ!!このクソの現実に!!愛だの、言ってんじゃねぇ!!クソがあぁっ!!堕ちろおぉぉっ!!】
騒ぎ、喋る、……”この”ジャオウジャンは、それが基本なんだろう。
未だに自分が動けぬ理由が分からず、傲慢。
【うううぅぅっ!!】
傲慢さがあるにも関わらず、滑稽な状況。
これでは一向に気付かないんじゃないか?って思い、そんなのじゃあ
【面白くないなぁ、君はぁ】
【!!?】
【例えるなら、人気漫画や人気アニメ、人気歌手を否定することに、カッケーを思っているような……尊重していない人って言われ……】
【だ、誰だ!?誰が我の中にいる!?】
【まぁ、尊重されるべき、存在じゃないよね。空っぽな王様くん】
【だから、テメェは誰だあああぁぁっっ!!!】
声まで掛けてあげたのに、まだ気づかないのか……。それだけ影の薄い退場を選び、安全圏から観戦させてもらった。そのお代と思えば、安いくらいだ。
ジャオウジャンを止められるとすれば
【我と同格な存在などっ!!いない!!我を止めるもの!ましてや、身体の中で無事にいられるなんて!!】
自分と同じしかあり得ない。だけれど、いるじゃねぇか。……取り込んだじゃねぇか。自分じゃねぇけど……
【私は”元”だけど、ジャオウジャンだよ。残念なんだけど、君なんかと同格だ】
【!!?まさかっ、ムノウヤ!?貴様は、金習に取り込まれ!!我の中に移動したはずっ!!そして、なんで平然としていられる!】
【そんなこと言われてもねぇ?】
まるでクレーマーを淡々かつ面倒に対応するような社会人。
【君が悪いんじゃない?気付かなかったのが……】
【!!っ】
体内にいるムノウヤの姿を覗き見ること。人間で言うなら、調子が悪い時に病原菌の様子を伺うようなこと。きっと、槍でも持って身体をチクチクしてるのかと思いきや
ゴクゴク……
【なっ!?この邪念の大海の中、カフェテラスを作って優雅にコーヒータイム!!シガールとクッキーまで用意し、おかわりをしたとされる小皿まで……読書までして悠々自適だと!?】
【結構、静かだったからね】
大笑いをするような激しい娯楽ではなく、優雅で自堕落な、静かだからこそ、楽しいという価値観。
人の価値のアレコレに興味を示さず、自分で考えた価値を信じているもの。周りの声を”情報”のみとしている、マイペースさ。ムノウヤのくつろぎは、動けないジャオウジャンにとって。
動かないのに、自由を謳歌している。
【!騒がしくなったね】
【ええい、忌々しい!我がお前に気付いたからには、容赦せんっ!!お前は助からない!!分かってるんだろうな!!】
体内を制御できないからこそ、病気は恐ろしく、心を狂わせる。
しかし、そこはジャオウジャン。
白岩をも洗脳して見せた、精神汚染。そして、体内にいるということは、圧倒的な物量の差もあるサイズ。
ベギギギィィッ
【我の体内でカフェテラスなんぞ作りおって!!破壊してやる!そのチンケな今を壊してやる!】
カフェテラスができているのも平穏な状態だったからだ。
周囲が戦争状態となれば、そんな暢気にいられないだろう?ムノウヤに向けて、銃弾、爆撃、……生物兵器の類。人間達の非道さを思い知らせる事もできる。
当然、ムノウヤが用意したものなんか、すぐに壊される。
しかし、抵抗するかと思いきや、ほとんどを失っても、なおものんびりするムノウヤだった。
【ぐっ!】
戦争の悲しみ、戦争の恐怖、戦争の天候、戦争の不信、戦争の痛み。
【なんなんだ、貴様ぁっ!!なんで、死なねぇっ!!なんで、死を選ばない!!なんで、消えない!!】
それがムノウヤにとっては”関係のない”ことだった。
なぜ死なない?なんでこいつは生きている?
ジャオウジャンには、ムノウヤの能力もそうだが、その精神状態も理解不能であった。同じ存在であるにも関わらず、ここまで対照的であるのは、生きて来た年数がそのまま現れた証拠と言える。
あまりに強すぎたことは同じことだ。
【…………やっぱり、君でも無理か。いや、良かった】
【なにがだ!?なにが無理だ!!】
【僕をようやく、死なせてくれるはずだ】
ルミルミ、シットリ。君達からの誘いはとても楽しかったよ。この僕をようやく、死なせてくれるんだ。
だからこそ、感慨深い。
僕はずーーっと自堕落で、眠ってばかりだったけれど。君達との出会いや信じることを、この時に思い出させてくれるのが、”死が近い”というものなんだね。
こいつには分からないよ。まだ”楽しく生きている”のだから。
僕はね。”生きてるのに死んでる”んだ。もうこれ以上、熱いのは要らない。
周囲の思う何もない人生。何も波が立たない平穏を求めた人生。静かなところ……。
生きている鼓動を忌々しく思うくらいにだ。
それがあるから、僕は生きているし、死ぬという本当の平穏に行けないんだから。
どんなところかワクワクしている。ここよりも静かなところがいい。僕の全てが永遠に眠っていられるようなところ。
……唯一、悲しいと思うことは。君達とは、もう出会えない事だろう。そして、忘れてしまうだろう。
僕が僕を忘れることで、全ての死の完成だ。
【世界を救ってくれ】
ヒイロくん、白岩ちゃん。
君達2人なら、僕を殺してくれるだろう。
なかなかにヘイトが溜まった演出だったろう?
全力でジャオウジャンごと、僕を消滅させてくれ。
僕もお喋りになるねぇ。こいつみたいに独り言いっぱいだ。これだから、僕って生きてるんだ。
こんなこともできないのかなぁ。
いや、それでいい。もう、別のモノになれる。喜ぼう。そして、生で観戦させてもらおう。
君達2人の戦いをこの身で受けてあげる。
「…………お前の目的に応えるつもりはない。結果、そうするだけだ」
「ムノウヤ。あなたには、それがどーいうことか、……分かってるんですか!?」
ムノウヤの心の声。独り言が、ヒイロと白岩に届いたか否か。
しかし、彼の行動がこうして2人を助けたのは事実であり、彼等の本気がジャオウジャンもろとも自分に向けられること。躊躇なしで消してくれること。
この中で唯一にも、自分が勝ち組としていられる。なんと腹立たしいこと。この状況で……ある意味で”無敵の人”。本人にはその気はまったくないが、”自由を謳歌”している怪物に違いない。
ヒイロと白岩の言葉は、生きている奴等の言葉であった。
言わずとも、心の中でムノウヤは
【死んで初めて、……僕も”人間”になりたかったんだよ】
あまりの不死身さ。
それ故、誰かと関係を持つ意味はない。ずーっと寝続けたり、暇をつぶしていたり、……あらゆる行動の全ては、機を待っていた事と繋がる。動いても変わらないと悟っている。
ヒイロと白岩が、ジャオウジャンに向けて、戦闘態勢に入った。




