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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第57話『LAST STAGE ”KISS & CHERRY BLOSSOMS”』
232/267

Eパート


【すぐにやんねぇのな】



戦争の基本。

殲滅戦の基本は、先手必勝。

後手に回れば被害のみ。

とはいえ、その先手は攻撃しただけではなく、完全に完膚無きまで滅ぼすことにある。そうなれば国際という結束が制裁に動くだろう。



「どっちでもいいさ」



平和とは戦争前の休憩に過ぎない。


「だけれど、それは君からすれば良くはないんじゃないか?」

【…………】

「心って生きていないとダメだろ?虐殺が大事ではないとは分かっているんじゃないか?」

【おぉ~、我に見せ場をくれるのかい】



金習が時間差を開けたことは、用意が間に合わなかったというより、キッス達の準備を待っていた。

”どっちでもいい”ってのは


「滅べばそれでいい。滅ばないのなら、その価値は私や君の想像以上。より世界が動く理由になれる」

【怖い怖い。じゃあ、前者の場合だとして。お前は国際を敵に回しかねないぞ?空白になる数時間を過ぎたら、どうするんだ?】

「それはない。が、そうだな。……”中途半端”に滅ぼしてしまう可能性はある」


迎撃を0か1で決められるよりかは、%で決まる方が高い。

根絶やしができない場合に起こるは……


「憤怒や失意、絶望か……君が私を殺すかい?万が一にもね」

【おうおう。何も言ってないぞ。我はよ~】


金習め、分かってやがる。そうさ。

戦争が起こった事実!終わらない事実が、世界を絶望に包み、我を強くする。世界全体が生み出す邪念を統べるからこそのジャオウジャンよ。

心配は要らない。


【それが起きたら我に任せろ。少なくとも、お前の望みは我が叶える。国際なんぞ、ただの口約束と暴のない法で、邪念の嵐は止まらぬわ】

「君ができなくとも私がなんとかできるけどね。結果を求めねばね」


ジャオウジャン。君の予想や願いは残念ながら叶わないよ。君の希望は、30~70%ぐらいの損害でのみ。そんなことを私も向こうも思ってはいない。君は周りを過小してるよ。とてもらしいがね。



「宣誓をなしにやるつもりもない。そうした方が良いだろう?君にとって」

【お?……なんだ、不意打ちでもすると思ったが】

「大義名分は何事においても、必要なもんだよ。君もそれを待っているだろう?」

【!!あぁ、まったくだよ】



なんで戦争をしたいか。そんな気持ち。心の闇は疼く。



忖度そんたく



ひでぇ話だ。

ジャオウジャンは金習の開戦合図に礼をする。金習が考えていそうなこと。



「!!私の身体から離れた……か?いいのかい?それと、それが君の本当の姿?」

【……さぁな】


ジャオウジャンの最終形態を見た金習の言葉は。


「”王様”というより”神仏”に近いねぇ」

【生物達の原点を模してるだけだよ。そんな神話モノじゃない】


神や仏と語ってみたが、……確かにそう崇められる生物の一種。しかし、太古や空想の世界じゃなくて、現実にいる地球上の生物。もちろん、まったく生態が同じではないが……。

その姿を晒してまで、金習の身体から離れたのは


【開戦合図は世界に向けての発信だろう?その時、我の姿で怖気づかない事を確かめただけだ】

「なにを言う。……好きにしろ」



私がそれをしている最中は動けんからな。

……まぁいい。ジャオウジャンが私の体から離れてくれたのは、終わった後の始末がしやすい。



【お言葉に甘えて、好きにさせてもらう】



金習には感謝をこめて配下にしてやろうと思ったが、素がこれとはヤベェ奴。人間の頭をしちゃいねぇ。なら自然と付き合ってた方がいいだろう。戦争を起こした後も、その惨劇を続けてもらうには金習がいないと我も困る。

こいつが仮に我に敵意を向けてもどうとでもなる。我にとって、今最重要なのは、ルミルミから我の心臓を奪取すること。これを奪わねばルミルミに従うこともある。

あのルミルミを相手にするとなれば、金習には少なくとも戦争を宣言してもらわなければな。地球全体がその邪念を発してくれねばな。




【その繋ぎとして……】



ルミルミを解放したのは、金習のファインプレイだぜ。

奴が自由になったおかげで離れていったんだ。


「!?なにっ」

【白岩印~~~~】


金習の身体から出た後、ジャオウジャンが向かった場所は白岩の元。


【我がしもべにしてくれる】

「!」


ルミルミと決して強固な仲間関係ではないが。確実に重要な人質としている、白岩印を弄ぶこと。

金習の身体がジャオウジャンにとって都合が良いように、


容量キャパのある器が欲しい】

「ま、まさか。あなたっ」


素質ある存在を求めたのは自然のこと。

ジャオウジャンの狂気が白岩に向けられた。




◇             ◇




「予想通り、白岩のところにジャオウジャンがいったか」


私だったらそーいう事はしないよ。

彼女の身体が私より優れているというのなら、多少違うかもしれないが。ルミルミを牽制する目的で、それをやるってのは効果が薄いような。……彼女が味方という立場でもないと、気付けなかったか?



「で、ルミルミは…………外で待機しているのか。寝ている?」



この子の動きだけは読みづらいなぁ。

ジャオウジャンを復活させたい理由と、彼女の行動が合致していない。私にも知らない何かを知っているか。よもや、数時間先を見ているとか?

彼女の処分はどうするかな。ジャオウジャンを先に始末するなら、ルミルミの協力があった方が早いのだろうか?


私とルミルミは、戦争を短期間で済ませたい。

だが、ジャオウジャンはただひたすらに長引かせたいのが魂胆だろう?使えそうな奴だが、ダラダラとしている奴は必要ない。元々、戦争を長引かせることは資源や士気の維持が続かない。私のこれは”手段”の一つであって、あいつは”目的”だ。妖精を大量に獲得したいのであれば、ルミルミと白岩を人質として残しつつか。ジャオウジャンに白岩を任せるのが、無難なところか。




ギチチチ




「……見られてるね」



この軍事施設はつい先ほど、金習の蹂躙によって生きている人間は数少ない。しかし、金習は自らの身体を変化することで施設全体を自分の身体の中にしているような、警戒網を作っていた。

不気味な形で伸びる身体に、目と耳と鼻。

その警戒網があるため、ジャオウジャンやルミルミの自由を許しつつ、監視ができる。そうして張った警戒には彼等だけではなく、




ブチィッ



サソリか。危ないねぇ」


自分達を狙う者達の動きを伺うためだ。協力体制ではなく、個々が無駄に強い。偵察程度をなんとも思わずにできる。粉雪達が状況を把握することはできても、その状況に対応はできないし


「いいんじゃないか」


金習が捕らえるべき数も把握したい。それも大きな数で……。

今、この施設に入って来た無数のサソリの一匹を倒しただけ。それに脅威は感じずに、より注意深く探れば……



「……へぇ……」



白岩ちゃんとは違った女の子も潜入しているようだね。彼女がこの蠍を使役する司令塔かな?どうやって入って来たのか気になるところ。


ジャオウジャンもルミルミも彼女達を察しているようだ。


それくらいで動くわけもないか。


彼女達は私の開戦合図を待っているよりか、ここの情報を少しでも持ち帰ろうという魂胆かな?

なら優先度はかなり低いかな。これも彼女も、命を賭けるほどにも感じない。

一々相手にするわけにもいかないしね。

ルミルミと白岩を迅速に回収するという狙いが一番いいのかな?侵入してきた彼女にはそれを感じないから、別の実行部隊を突撃させるための前準備?



「……………」



探り探られの状態。

この軍事施設に潜入しているのは、権田飴子と茂原伸の蠍の軍勢であった。

金習の読み通り、施設内の調査に過ぎない。ヤバいと感じればすぐに退く。施設内に張り巡らされた金習の身体の結界を目にしただけでも、深く入り込むなんてできやしない。


「茂原の奴、ズル」


飴子は瞬間移動があるとはいえ、ほぼ生身で来ている。邪悪な存在が少なくとも3体分かっている状況。施設の中を探索し、その状況を報告するという事前の任務。

しっかりと目で見られる飴子の情報は大きいが



「白岩達を探せるか」



超怖っ、なにこの、結界みたいなの!目玉や鼻がついてて気持ち悪い……。これ、向こうも分かってるって事だよね。いきなり、私を襲わないよね?

こっちはまだ”第一段階”だってのに、この危険度!悪いけど、奥まで踏み込まないからね!表原、頑張れ!



茂原の蠍は施設の奥深くまで入っているのは、蠍を撃破しても茂原自身にダメージがフィードバックされないからだ。とはいえ、仕入れられる情報にはムラがあり、確信もとれない。

表原達は飴子の情報を重要視している。

彼女の言っている”第一段階”とは、この軍事施設に表原を潜入させるための情報収集であること。現場を詳しく知る必要はないが、潜入+待機+脱出不可。この危険な任務をいかにして、リスクを下げるかは事前の情報は大事。敵が近くにいるという情報を金習達に与えるのはデメリットではあるが、



「……突発事故が恐いもんね」



標的がどのように動いてくれるか、白岩の奪還をする上で彼女の位置と状況。

それが分かれば成功する確率は上昇する。しかし、確率に過ぎないのも事実。飴子は基本、逃亡する前提でいなければいけない。捕まりでもすれば、金習達には情報をかなり抜き取られる。特にマジカニートゥによる突入の情報が伝われば、完全に嵌められてしまうだろう。


その危険度も承知している。

そのため、粉雪は別ルートで南空と共にこの軍事施設に侵入する手筈。この手段はヒイロ達には伝えていない。対策に対策を練っており、十分過ぎる警戒の元、これは行われている。


”第二段階”は表原の潜入。

これは金習が日本に攻撃を仕掛ける前に行う必要があり、その直前までここに残ってくれること。

開戦すれば、1秒だって無駄にはできない。



◇           ◇



「………………やり方の想像はつく」


妖精のヒイロも人間界に来て、随分と長い。その手法は見て来てもいる。


「しかし、その”大義名分”はどうする?いや、どう作る気なんだ?日本側にそれはない」


兵器を持つのは自衛に過ぎない、沈黙の常識。これを凶器と叫ぶ”狂気な奴”はいるもの。


「そりゃあそうね」


それに答えたのは、網本粉雪だ。ヘリコプターに乗り込むちょっと前のこと


「南空さんのお言葉だけど。”子分を使う”って事でしょ?」

「……………」

「ヒイロは余計なこと考えないで、白岩を助けることに尽力しなさい。私、協力する気はないんだからね」



その凶器を本来の使い方から、まるで遊ぶかのようになったらだ。

手を切られるちょっと前かもしれない。

狂気、挑発、お遊び、はいはい……。いつものいつもの……。



「将軍様!!テロドン87号の打ち上げに成功しました!!」

「日本海に着水!」

「わははははは、これで日本も我々を脅威に思うだろう!!」


海の隣にある国には、脅威を与える国家がある。そこに金習が一噛みをしている状況であった。日本への挑発行為は、世界への威嚇。

その中身がどーできているか。武器・兵器を持ち、危険な傀儡とされている頂点。従う兵士諸君。国力が乏しくとも、……否、乏しいからこそ現れる”暴”は、一定の危険がある。



「んん?なんか、こっちにミサイル来てね?」

「そっすね~……え?」

「あれ、やばくねっすか?」



未確認の兵器や武力があるというのは危険である。その危険度を測る上で、このような無法国家の一大事とは便利なモノだ。”仕業しわざ”はなんでもいい。あとからでも付け足せばいい。そーやって、歴史に残る戦争は始まっている。

”冷静な対応”と”迅速な対応”が一致しないように、正しい情報はあとでで構わない。そして、多くはそれを知る術がなく、確認する動機も薄れる。



ドゴオオオォォォッッ



恐怖を脅かす者が、唐突に消え失せた時。

周辺諸国は動き出す。動機を探す。……が、ほとんどはそれをもう作っている。

特に1番早くて、事情を知っている金習が場に立つ。


【世界に伝えるべきことがある】


映像もある。だが、真実を映しているとは限らない。


【かの国は幾度も挑発行為を行っていた。……だが、その国がこうも滅んだ】


金習が言うべきことではない。

そーいう、”お前が言うな”。いや、”お前がなんかやったろ”。という勘繰りはあるもので、表舞台に立つような輩ではない事もある。ただただ、支配をしたいだけ。自分の思うが儘に動いてくれと願うのみ。


【それほどの軍事力を持つことではない。それを向けること!これが平和の冒涜、秩序の乱れ!……しかし、それは人間がやるべき事だろうか?私はそれを突き止め、世界に伝える!】



世界に流れた放送を見た。

事情を知る者達にとっては、


”そーやって来たか”



国と国がぶつかり合う戦争を予想していたが、金習の狙いは



【その犠牲は止む無し!しかし、必ず!我が国!ひいては、この地球の全てが発展する事であろう!!しばし、その時を待っていて欲しい!!】


存在の名を伏せた。未来の人間社会を決め兼ねないこと。

全て”が”知る必要はない。……というより、全て”を”知る必要がない。

美味しい豚肉がどのようにして出来上がっているのかを、知らぬようにね。


「これはそうか。……やはり」

「人間 VS 妖精。その構図よ」



金習の放送を見ていたのは、何も因心界や革新党……その他、事情を知る人間達だけではない。

開戦から数時間というあまりに短い時間の決戦。

歴史を分け、2つの世界を揺るがす大戦争。その主犯の1人がいるならば、対峙する最高責任者もいるというもの



「アダメ様。日本のその後を任せます」

「……えーーーーーっ!!どーでも良くない!?結末がどっちでも私は関係ないもん!!」

「っ……あなたねぇ!!この期に及んで逃げようってんじゃないでしょうね!!?ケアを頼みます!!」



妖精の国の王、サザン。

そして、妖精を作り上げ、全ての事件の元凶でもある、アダメ。


「あのね!これから数十分で大量の兵器が日本各地にぶち込まれるのよ!!私でも防ぎようないわよ!!もーーーぅ!なにあいつ、馬鹿じゃねぇの!?」


その元凶もお手上げレベルで、とんでもねぇ攻撃を仕掛けてくることを予期している。兵器でも上、物量においても、さらに上である。



「私はあんな人間を作ってませーーん!!私の方がぜーったい絶対、被害……ぐほぉっ」



そんな駄々を捏ねるアダメに対して、何十回目もキレているサザン……。アダメの口をグイグイっと握りながら


「あんたが我々を作ったのは、あんたの早とちりでしょ~が。少なくとも、金習という人間は自ら考えて動くところは、あんたより数百倍マシな行動なんだよ。無能な有能って、すげー迷惑なんですよ」

「ふががが……」

「そもそも人間からすれば、本当の事情は、大迷惑なんですよ!そして、今!!妖精からしても!!金習のやり方は、どっちに転んでも構わないこと!ジャオウジャンにルミルミ、……これが向こうにいる以上、日本くらい滅んだって良い!!それが分かるでしょうが!!あんた、製作者なら!」

「しゅ、しゅみませ~ん……」



妖精の力の範囲がどれだけ危険なモノか。戦争というステージで試されること。

かの日常製品のほとんども、古い戦争から誕生し、時間をかけて今にまで伝わったのだ。


「妖精の王として、人間を護る者として……全ての結末を背負わねばなりません。あなたはそのさらに上なんです!」

「ぶはぁっ…………」


サザンの顔面ニギニギプレイから解放されたアダメであるが、彼女として、今の自分がやってやれることは


「も~~。あくまで、私がやるのは!この戦争における修繕や命の保障だけ!!」

「国際情勢は人間がやればいい事で合意しました!!」


その被害やその後の抑制につきる。

つまり……そう。2人がこの戦争の表舞台に上がることはない。あってはならない事だと自覚している。

妖精が、使い様によっては、この世界の価値観全てを狂わせること。

それを世界中が知るんだろう。

人間も荒れるし、妖精達も荒れる。



「まず、日本の命運は私の息子と私の師匠に託すだけです!」



日本に向けて放たれる、数多くの殺戮兵器。

それは人間達が作り上げた”狂気”の結晶と言えるであろう。

対峙するのは、



『やるぜ、野花』

「……はぁ~。正直言うけどね、セーシ」


”妖精の国”の最強×2


『キッス!俺の全てを解放しろ!』

「イスケ。私だって全てを出し切る。簡単にヘタるな」


”妖人”としての最強×2


「色んな兵器が日本を攻撃するとしてもね」


こんなに早く、この覚悟ができてしまうのは……。自分でも何やってんだがと、野花はこの場でもため息ばっかり。ノーマルなキッスが羨ましいと思う。


「あなたが先に世界を滅ぼすんだって、分かってるんだからね。誇張もなく」

『……ああっ!見せてやる!!世界を滅ぼした、この俺の”真”の実力!!』




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