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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第10話『ヘンタイを探してください!?表原、飛島と一緒に下着フェチを追う』
22/267

Bパート

病室にて、自己紹介。


「お初お目にかかります、因心界の"十妖"の1人、飛島華です」

「は、はい!」


表原と飛島が直接会った。表原からして飛島の印象は非常に綺麗な人であり、ツヤのある肌と髪。清らかな女性の香り。粉雪とは違った、大人の雰囲気を感じさせる美人さんであった。


「歳はあなたとそう変わりませんかね」

「え?そうなんですか?」

「19です」


胸がドキッと来る。こんな気持ち、初めてな気持ちである。

表原からしたら、あと5年で届く年齢だ。人はそこまで行くと、こんな人になれるのだろうか。


「お前、色気ねぇんだから。意識するなよ」

「な、なによ~!レゼン!私だって、体の成長はするんですよ!きっと、……たぶん……生きてたら」

「ふふふ、分かりませんよ。表原ちゃん。清らかな乙女は一日足らずで成長するのですから」


そんなお話はここらで終わり。


「粉雪様に代わって、あなたの護衛を務めるのですが。表原ちゃんとレゼンくんに協力して欲しい事があっての、交代でありまして。私の人探しにご協力していただけないでしょうか?」

「人探しの協力?」


現在の表原は松葉杖があればそれなりの距離を歩けるまで回復。

ヒイロは本部に戻ってしまい、学校の勉強も、地獄のリハビリもレゼンが行なっている状況。正直、イヤ。厳しいし。問題は今、頭の上に乗っているレゼンがこんなこと


「いいんじゃねぇの?表原アホウをリハビリさせるのにも飽きるからな」

「言い方、言い方……」


意外。

戦闘の観戦ならともかく、こんな事務的というか、ちょっと変わったお仕事に携われという雰囲気。

レゼンだったら、断りそうな気がしていた。


「表原はどうだ?外出して歩くのも気分転換になるだろう」

「えらく積極的だね。裏がある?」

「目的ある外出は甘えのない環境ができるもんだ。こんな病室じゃすぐにスマホだ、漫画だ、お菓子だ、寝たいって、ふざけた事抜かすだろう」

「それの何が悪いの!……というか、そーいう意図なんですか。はいはい。こっちもレゼンの鬼指導がイヤなところですよ、まったくもぅ」


お互いの了承を得た。そして、当然のように尋ねることだ。


「それでどーいう方を探すんだ?」

「あたし達でお力になれるかな?」

「探す人物の特徴ですが、……女性の盗撮と下着が大好きな気色悪いオタク犯罪者です」


……………二人の呼吸、病室の空気が硬直した。


「ごめん、パスしたいです。被害者になれって事ですか?私に色気はないですよ!」

「悪いが俺も遠慮したい。警察を利用してくれ、檻にぶち込めよ」



当然の返し。というか、そんな犯罪者を探してこいとか。飛島は可哀想である。

まぁそーいう気持ちになるのは分かっていた。事実、これを引き受けてくれる人と言えば、……白岩とヒイロ、……ギリギリで古野と自分くらいだろうか。北野川とは別ベクトルで嫌われ者である。涙キッスに腕を買われているから、幹部の座にいるだけの男。正義という檻の中で飼った方がいいという判断もあるかもしれない。


「ゲス野郎の特徴でしたので、つい……」

「可哀想だな、あんた」

「探したい人の名前は、蒼山ラナ。私と同じ、"十妖"ですが。ここ最近連絡もとれず、居所も不明でありまして。涙キッス様より捜索指令を私が受けた次第でございます」

「そんな犯罪者を捜す必要性ってあるんですか?」

「犯罪の抑止だろう。頭悪いな」

「監視下においておくのは大切ですが。私や北野川、粉雪様なども含めれば、女性の敵であるため、そのまま死んでいただきたいところでしょう」


捜す指令を出されながら、本心は捜したくない。

とはいえ、無視するわけにもいかないので


「居所が分かれば帰ります」

「仕事テキトー!!檻に入れるまでを仕事にしましょうよ!」


気持ちは分かる表原。一方で、レゼンは先ほど言われた人物に心当たりを思い出す。


「……待て。蒼山ラナ……どっかで聞いたな。いや、一度会っているような」


とはいえ、そんな声も


「なんだかんだで"十妖"の一員ですから、名前くらいは知っておられるのでは?」

「かもな」


あっさりと心当たりが消えてしまう。

それにレゼンとしては、丁度いい機会だからこの捜索に顔を出したかったか。飛島からしても、因心界が囲い、SAF協会が狙ってくるほどの妖人、そして、妖精である事に興味があるのも事実。乗ってあげる。


「まぁいいさ。表原、マジカニートゥに変身して良いよな?」

「え?なんでぇっ!?」


あんな変身を、犯罪者捜索のためにしたくはない表原であったが、


「いつも戦いばかりでもしょうがないだろう。色んな事が起こるんだ。前もって準備したり、知っておく事で得もあるんだ。俺の能力は戦うだけじゃなく、どんな状況にも対応できるところを知る機会だ。飛島さんがいる今の内がいい」

「えええっ!ちょっ……待って待って!変身は待って!!落ち着いて!あたしとレゼン。飛島さん待って!お話をさせて欲しいんですけど」

「良いですよ。なんなら席を外しましょう」



飛島の気遣いによって病室から出てくる。それからコソコソ話をする表原とレゼン。

マジカニートゥは能力的に対策困難で柔軟、隙のなさがあるものであるが。


「ちょっと、本気で犯罪者を捜すなんてトリガーが、あたしにできるわけないでしょ」

「んなこと知ってるよ」

「それに因心界は同じ組織だけど、マジカニートゥの能力だけじゃなくて、条件まで知られたらマズくない?」

「頭が回るじゃないか。ただただ嫌がると思っていたけど」


おそらく、このような事を思ったのはSAF協会からの強襲で身に染みたんだろう。

自分を知られるというのは、襲われる事、狙われる事にも直結する。まだ自意識過剰と言えるが。


「妖人化する分には困らないし、俺の条件はお前自身の気持ちが左右する。なんらハンデはない」

「いや、本気にならない時が隙だらけじゃん」

「だーから。今回の事件で、些細な事でも本気になれるテクニックを身につけようって、訓練だ」

「えーっ、結局さ。訓練になるわけ?それもメンタル面じゃない。嫌だなぁ」


ここまでマジカニートゥの能力を使用した際のほとんどに、緊急事態や命のやり取り、アクシデントが含まれている。表原にその自覚はまだ薄いものの、"自発的に本気になる"という精神を養う必要があるのをレゼンは考えていた。今のところ、自分が声を出してやらせているだけ。そりゃ好き嫌いも出る。伸び代に限りがある


あえて言うなら、自分の好きとか。やりたいとか。そーいう願望をちゃんと行動に移せる心の鍛え方を、この捜索でつけようというのがレゼンの狙いであった。

とはいえ、予想より難易度が高い。

自分自身もそうであるが、犯罪者を捜すのはちょっと……。本気にはなれない


「別に捜さなくていいんじゃない?やっぱり断ろうよ」


そりゃあそうだろう。

死や痛み、危機が迫ってこそ、本気という気持ちが高まる。

表原という人間だけがそうではないし、結局のところ。危機ピンチに向かっていくのには報酬リターンを要求するべき事だ。飛島の要求、表原に得というものがない。安全性のある訓練である事を、前向きに考えられる頭もない。

レゼンは考える。確かに難しいが、本気になろうという意志を芽生えさせるための、話術。状況説明。


「…………」


こいつにサボりを与えるのはよくねぇし。優しくしてやるとかなんて、ぜってー信じるわけねぇし。おだてたところでスカされるか。この年頃の馬鹿は面倒だな、本当。怠け癖が染み付いていかんな……。誰でもいつだって、危険ってのは潜んでいるんだ。技術の発展で誤魔化してきているが、今もなお、誰かを出し抜いて築いている社会だって事をまだ気づいていない、幼子おさなごか。

今の表原はそれなりに頭が回るようになっていやがるからな……面倒だ…………お!そうだ!



「あー、分かった分かった。そりゃあ、嫌だよな。俺だって嫌だよ」

「でしょー!何が悲しくて下着と盗撮大好きな人を、このか弱い女の子が捜しに行くのですか?馬鹿なんですか?」

「けどな、そーいうのが仕事って奴なんだ。危険人物を探す。俺は大人だから、飛島さんに協力するぜ。飛島さんは嫌がっているだろうけど、それでも平和のために動くわけだ。みんなの平和のためにな。みんな助け合うんだ」

「うんうん!みんなの平和、私も含めての平和を!しっかり護って来てね!」

「おう。行ってくれるからな、俺。ここでゆっくりしてていいぞ。土産でもくれたらやるよ」

「うん!いってらっしゃい!お土産期待してまーす」



そーいうやり取りでレゼンはなーんにも思わず、そーいう演技を見せ。飛島の元へ向かっていく。

表原もレゼンが行ってくれたことで鬼がいなくなり、


「これでスマホができるー。漫画読めるー。誰も私を邪魔しない」


自分の大好きな時間ばかりが増えて良かったと思う。

鬼のいない日なんて……。妖人になってから初めてかもしれない。

いやぁ、例えるなら自分が元気なのに学校がインフルエンザ蔓延で休校したぐらいの、他人達の不幸でメシウマしているといったところか。



「……………」



ちょっと待って、表原麻縫。

なんかおかしくない?



「……………」



ブロロロロロロ



今、病院から車出たけど。もしかしてもしかして。飛島さんとレゼンの2人、外に行っちゃった?またこの病院を襲撃されたらどーするの!?誰が私を護ってくれるの!?誰が私を助けてくれるの!?古野さんはいるけど、やられているし……。っていうか、レゼンとのパートナーが私だっていう事が向こうの組織にバレてるみたいだから、今の状況で来られることもあるかも。それだとしたら私、めっちゃ無防備じゃない!レゼンがいないとマジカニートゥになれないわけだし。

でも、レゼンなんかといたくないし……いやでも、あたしを護ってくれる妖精……っていうか、あいつのせいであたしの危機じゃない!!寿命の云々もそうだし!!鬼のくせに!妖精とかホザクの腹立つ!!


でも、護ってくれる人が誰もいないから!

全然、スマホができないんですけど!!


「置いてかないでーーー!!レゼーーン!!人探しに協力するだけでしょ!ねぇーー!厳しくしないよねーー!!移動中とか、漫画読んで!スマホでゲームして!!いいんですよねーーー!!」

「ちょっと!病院内で騒がないでください!」

「表原麻縫は!そーいうちょっと厳しいところだったら、我慢できます~~!待ってくださ~い!」


看護師に怒られながらも、急いで外出の準備をして病室を飛び出す表原。足が痛いけど松葉杖で踏ん張って二人を追いかける。


「みんなと一緒に遊びたいから!あたしを仲間にしてくださーい」


まるで、小さい子供が仲間の群れに飛び込む言葉だった。

レゼンの作戦だったかどうかはともかく。

1人がこんなに心細くて不安だとは思わなかった表原。これまで経験してきた危機から、レゼンと、その因心界の者達と共に今は生きていく。本当に強くなるその日まで……。



「気付かないくらいの馬鹿にならなくて良かった」

「粉雪様達から聞いてましたが、レゼンくん。あなた、本当に鬼ですね」

『妖精の国の大天才は自分にも他人にも厳しいんだなぁ~』



当然であるが、2人はもう車に乗って病院を出ようとしていた。


「ちょっとーー!カムバーック!!レゼーーン!!あたしを護りに来てください!」


お互いにそーいう信頼はもうできていたようだ。

認めちゃいないが。



◇      ◇



ブロロロロロ



「はぁっ……はぁっ……。それで、どこを捜すのですか?」


全力疾走ってこんなに疲れるのか。

表原だけが息切れしている。


「分かりません。ひとまず、レストランで食事しながら作戦を決めましょうか」

「いや、なんであたし!200m以上もこの負傷した身体で走ったのに、……いきなり休憩って……ちょっと」

「まぁ闇雲に捜してもしょーがない。腹は減ってないが、詳しい状況も落ち着いて聞きたいもんだ」

「うー……そりゃあ、そうだけど!」


自分が優柔不断な事をしているからだろう。くそぅ。


近くのレストランに入って、早すぎる昼食という名の作戦会議を開く。


「代金は気にしないで」

「あ、ありがとうございます」

「あの馬鹿に払わせるから」

「あ、はい」


同じ組織にいるからこその、こんな軽いやり取りもあるんだろうか。犯罪者なんだろうけど、飛島の口ぶりから想像すると、本当に仲間っぽいイメージが沸く表原であった。

飛島は店員呼び出しのチャイムを押す、


ピンポーン


「注文いいですか」


レストランに入って頼んだものは、みんなで食べられるようにピザ。それとミルクカフェオレ。炭酸飲料。


「飛島さん、コーラを飲むんですか?」

「本当はビールがいいんだけど。飲酒運転で五月蝿いから。同じ泡が出てるので我慢するの」

「俺の記憶が正しければ、さっき19歳って言ってたよね?」

「今時は若いのにビールが大好きって珍しいって言われるのよね」

「そっちじゃねぇーよ!!未成年の飲酒について、俺は尋ねただけ!!」


まともそうに見えたが、ちょっとズレている人だったのは因心界ではよくある話。

意識していない罪人ってところだろうか。まだご自覚が強い分には良いのだろうか。

そんな飲酒運転の心配にラクロは安心安全の言葉を届ける。


『レゼンくん。安心して!飛島が酔っ払ったときは、僕ちんが代わって車を運転しているんだ』

「お前、アライグマだろ!!もっとあぶねぇじゃん!!サイズ的に大丈夫なのか!?」

『アクセルとブレーキ、ハンドル、サイドレバーぐらいは届くサイズまで、ギリギリ大きくなれるんだ!立ちでやらなきゃいけないけど』

「それ届いてねぇじゃん!視界の確保が絶対にできてねぇだろ!!」


もう少しで、別の意味で命懸けになりそうだった2人。


コキュコキュ



「ぷはぁー」

「はー」


ちょっと一段落。叫びにツッコミと、喉が渇いていたところだ。


「あぁ、今のは嘘ですから。コーラ飲みたかったのは事実ですが」

『騙されてやんのー』

「しょうもねぇ事で嘘つくな!」

「ツ、ツッコミをさせる方々ですね……」


飛島としても、興味があったというわけだ。

表原麻縫。歳は14歳。飛島からすればその当時はまだ、因心界で多少の名が広まった程度の構成員。今は幹部の地位に座っているが、修行中の妖人の時代はあったものだ。キッスのような名家もあれば、北野川のような敵対組織からのスカウトもある。

幹部候補とまでには挙がっていないが、因心界が力を貸すほど護るべき存在と対面しているわけだ。そこに妖精のみのカウントだとすれば、大きな誤りである。レゼンの目利きは、将来先のこと、正解であるとさせるようにするのだろうか。

ともあれ、因心界としては表原に白岩印と同等の評価と見ているのだろう。あちらはもっと幼い時だったが。成り立ての人材が、これほどの待遇をもらうのは珍しいケースである。責任重大であるところも理解している。


「ひとまず、死なないでくださいね。表原ちゃん」

「なに急に怖い事を言うんですか!?」

「キャスティーノ団、SAF協会。その他にも、色んな悪い人達がいるんです。あなたのように恵まれた妖精が傍にいても、うっかりと命を落としたり、後遺症などで生活が不自由になってしまう人達を私は見てきているので」


歳の差があるとは良い難いが、ベテランの味を出す飛島。その言葉をどー思うか、表原は神妙な顔をしつつ、ストローでミルクカフェオレを頂き。間を置いてから、


「レゼンが良い妖精とはとても思えないんですけど」

「おい、コラ」

『はははは、それはそうだ。僕ちんも飛島と適合としているが、飛島は別の妖精と適合したいって言うし』

「それは失礼でしたわね」


他者から見れば、相当なラッキーカードを手に入れたのだ。

宝くじの1等をひいたかのような出来事。万馬券の大当たり。

普通に喜べと思われるべきことだが、こいつは性格というものが自分と合わない。それに因心界の興味も含めて、自分に危機を呼び込んでいる元凶とも言える。人間も他の動物と同じく、自分に適した環境に生きるのがもっとも良いとも言えること。レゼンという障害は表原にとっては、今はイヤなものなのだ。

生き方を変えること、それに協力するレゼンや周りにも、少々困っているという気持ちは隠せていない。



そして、注文したピザがきて、2人と妖精2頭でいただく。

念のためであるが、表原は飛島に訊いてみた。自分にどーしてそれを言ったのか?


「先ほど、死ぬとか。妖人の皆様が傷付いているとか。お話ししてましたけど」

「……そうね。例えば、力を得たときっていうのは、嬉しいものじゃない?あなたは違うのかもしれないけど。私は、ラクロと出会えた時は嬉しかった。これまでの生活が変わったし、社会の秩序に関われる使命を頂けたのは嬉しいものだった」



人のため、信じる正義のため。

尽力をつくす。

それでもなお、


「私。あなたぐらいの時に、凄く強い妖精に病院送りにされて。その現場にいた妖人、13名の内。私だけが生き残って、消されてしまったの。強くても、みんなと力を合わせても、判断を誤って失ったの」

「…………」

「臆病になれって、釘を刺しているんじゃないの。力や使命だけでは到底、勝てない現実もある。生き残った私やあなたがレゼンくんと出会えたラッキーもある。だけど、その時その時。自分が自分で判断できるようにしなさいってこと。レゼンくんはたぶん、あなたがあなたで考えて欲しいって思っているんじゃないかしら?」


予想以上に重たい話しと、レゼンまで巻き込んでくる話もしてきた飛島だった。

SAF協会が表原が成熟する前に仕掛けてきたやったように、キャスティーノ団が無法に暴れているように。特別な力といっても、妖精と出会い、適合さえしてしまえば、特別でないこと。ジャネモンという力もある。ぶつかり合えば、どちらかが折れるのも実証済みであろう。

力を手に入れた瞬間。人は当然ながら、過信をする。それを持たない人などいないし、なければ成長に向かわない。ただ、成長には判断を見失う事がある。


今の話を校長先生の演説並に眠っちまっても別にいい。あんなもん、100回やって2,3回くらい、面白い話がくれば良いものだ。


表原はひとまず、こうして付き添った理由も含め、無理をせず。自分の身を第一に置くべきだとは心に留めたことだろう。妖人と妖人。あるいは、ジャネモンや悪意のある妖精、人間と対峙すれば。その命、その生活。特別罪もなく普通に生きていても、終わってしまう。


「……飛島さん。私、積極性なんてないです。そーいう気持ちもないですよ、一生」

「怠け癖だもんな」

「ちょっと……否定し辛い!!」

「……ふふふ」

「脅かさないでください。でも確かに実例があること、教えてくれたことは嬉しいです。そうならないようにしますから」


ピザを食べながらやるもんだから、これからダイエットしますみたいな宣言にも思える。

そんな気持ちを紛らわせるためか、本題に入ろうとする。


「蒼山さんでしたっけ……?どーやって捜すんです?作戦を立てないと」

「刑務所から行くか、女子高とか、満員電車とか、アキバとか。あの馬鹿を探す箇所は多いんですけれどね」


ろくな場所がない……。

痕跡さえ分かれば、ラクロの鼻で追跡はできるようなので。


「大まかな位置はやっぱり、俺。マジカニートゥの能力で割り出した方が良さそうだな。協力してくれるんだろ?」

「積極性はまったくないのに、さらにない事例なんですが」


ぶつくさ言いながらも、口煩く言われるだろうと思い。一計。


「あー、やってやりますよ!ひとまず、やってみます!!」

「おう。その意気だ」

「レゼン。お願い!変身させて……あ、やっぱりちょっと待って。食休み30分とってからで。食べた物を吐きたくないのと、人前はさすがに控えたいわ」

「まるで子供が学校の宿題を、親に指摘される直前で取り止める言い訳じゃねぇか」


頭の回った言い訳で、レゼンの甘さを引き出そうとする表原であったが。


「善は急げだろ?30分後のお前が、今のお前の言葉を信じるか?未来は今のお前を信じてねぇもんだ」

「タンマタンマ!ピザ食べてる、食べてる!ここお店だよ!」

「カンケーねぇ」



くそぅっ。通じない。

お菓子を買ってもいいじゃない、そんな甘えすら許してくれない鬼軍曹。


ボオォォンッ


鬼畜なドライバーに変身するレゼン。



『表原麻縫!行くぞ!』

「超イヤです!!」



グイイイィィィィィッッ



「あああああぁぁっ!!」



ドガシャアァッ



間近で、こんな場所で妖人化を披露する表原。そのあまりの回転で椅子やテーブル、食器をぶっ飛ばす始末。

その変身ぶりに向かい席の飛島とラクロは少し表原が可哀想と思いつつ、


「この変身は蒼山が好きそうな感じかしらね、ラクロ?」

『……もうちょっと、モーションと背景が良ければ喜びそうだな』


そして、回転は止まり。床に転げて落ちても、瞬時に口を両手で抑えるマジカニートゥ。

堪えて、堪えて。落ち着いたと同時に



「『あたしだけかい!マジカニートゥ!!』」


決まった!

四つん這いでその情けない姿を露呈するも、吐く事は堪えることに成功した。だが堪えた分、気持ち悪さは継続している状態。そこへ



「お、お客様!テーブルや椅子を傷つけないでください!」

「す、すいません!!」



さすがに店を騒がしたことだったもんで、店員さんが注意しに来る。だが、マジカニートゥは急いで


「と、トイレどこですかーー!?」


謝罪と同時にトイレに駆け込んでいく、マジカニートゥ。

やっぱりしんどい模様。特に食べた直後というのが、効いているのだろう。



「いつもああなの?レゼンくん」

「そうだな。だが、もう少しで堪えられるだろうな」



◇      ◇



そして、マジカニートゥがトイレから出て。飛島は店の修理代を因心界名義かつ蒼山ラナ名義での支払いに済ませた後、蒼山の捜索を始める表原達。特に、



「なんだかんだ知りませんが!!その蒼山って人にこの屈辱をぶつけてやりますよ!!」

「ええ、存分にやっていいわよ」


怒りに満ち、それを蒼山というクズ野郎にぶつけようとする表原だった。

レゼンに怒っても仕方ないって事だろう。

ある意味、上手くいったような気がする。きっかけはなんであれ、やるって時には心が動く必要性がある。爆発力だけを考えれば、怒りとは"本気"に似た都合の良い感情なのである。


「……良い傾向だ」


感情に流されることは愚とも思えるが、本気には感情が必要なのだ。

熱い心で体を動かし、冷たい心で物事を判断する。この両立のように意識的にできれば、マジカニートゥの成長は確実なものとなる。まだその理想像には届いていないが、



「ふんっ……」



物凄く嫌な事ではある。

正直にもう一度。嫌なものは嫌だ!

だが、それをそのまま押し通す事が正常か。あるいは不正解か。先送りにすれば無くなるものじゃなく、いつかは越える壁がやってくる。人生とは練習でもある。本当に来る、避けようのない酷い運命があった時。とにかく、突き進んで生と死のどちらかを選ぶか。それとも、逃げて生き延びるか。最悪、立ち尽して死ぬか死んだようになるか。


具現化するイメージは先ほどのレストランで使われた物。



ズズズズズズ


「お?なんだこりゃ……」


そう、呼び出しボタンである。


「"NOWLEANのーりん"」


マジカニートゥが生成される武器の能力は、本人もレゼンにも分からない。

怒りを含んで生まれたこの調査能力の正体は……本当にあるのかどうか。幸いなのが、これまたシンプル故に


「押すよ!」



ピンポーン



「押すしかねぇよな」

「蒼山と直接、繋がりますかね?」

「!」



呼び出しボタンは作動する。

すると、それと付属していたかのように、マジカニートゥの元にまた現れたのは品目メニューのようなもの。しかも、そのデザインは調査したかった蒼山の顔写真がボケつつ、妙な解像度で印刷されていた。


「これ蒼山ラナの顔です!凄く変に映ってますが!」

「そ、そうなんですか!?」

「じゃあ、このメニューは探したい相手の居場所が書いてあると見るべきだな。開いてみろ」


そして、マジカニートゥはメニューを開く。

その中に書かれていた事は………



『蒼山ラナは現在、野花桜のご自宅にいる』



「へ?」



スウゥ………


その事をマジカニートゥが確認したと同時に、"NOWLEANのーりん"は消滅してしまった。

今のマジカニートゥの気持ちを表したような感じの消え方であった。



挿絵(By みてみん)

次回予告



表原:知り合いの家にお邪魔するのは久しぶりです

飛島:残念ながら、ゴキブリ以下が潜んでいるところに向かいます

レゼン:どんだけ嫌ってるんだ

飛島:はぅ~……気持ち悪い寒気と震えがきます。あの悍ましい男が野花さんのお自宅に隠れているのですか

表原:あ、野花さんに連絡したらどうです?ゴキブリがいますって

飛島:言っちゃったら、野花さんでも逃げますよ

レゼン:そんな次回は

飛島:『蒼山ぶっ殺す!蒼山ぶっ殺す!!不正妖精の襲撃?そんな事より蒼山ぶっ殺す!!』

表原+レゼン:どんだけ殺意あるんだ!?



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