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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第55話『因心界 VS レイワーズ!俺と大差ねぇじゃねぇか!!』
218/267

Eパート


人の本心は分からないモノである。そうやって、命を終わらせる時が来る。

だから、一日を軽く扱うというのは罪になる。しかし、軽く扱える日は贅沢で幸せなモノだ。

そー言った意味で、赤羽の存在は特別であるのは事実であるし。周囲から見れば、何一つ変わらない存在。



「殺意って、こー、湧くんだ」

「っ!おいおい。マジカニートゥ」


マジカニートゥ VS 赤羽和希。


レゼンがまず警告したのは、マジカニートゥの初めて剥き出しとなった殺意。敵を倒すという考えで使う本気と、殺すという本気は大きく違う。理性があったり、人としての心の制御まで外れたとあっては、何を起こすか分からない。

言葉だけじゃなく、行動だけじゃない。しかし、終わった後の失意をすれば……。


「へーき」


殺意はコントロールしている。マジカニートゥは……いや、多くの人達はそれを制御できる。殺したいという言葉は使うし、時には乱暴にもなる。その一線を超えようというのは、思考が無くなったような、もっと言えば、人間じゃねぇんだよっていう冷たすぎる言い方。存在。

それを平然として行う仲間達もいるが、……そこに無差別や目的のない事はやらない、そーいう勘定はされている。




ズズズズズズズズッ




「お前に俺がなんなのか、分かってんのか!?ああぁっ!?」



赤羽の周囲から出現し始めた黒煙。すでにマジカニートゥの空間は張られているも、こいつが周囲に濃くある限りは……。平然と行っていた行動を阻害され、死を意味する。赤羽の強大過ぎる力に制御不能を合わせれば、災害と言っていい。

この黒煙を防ぐには、赤羽と同じように巨大な力でぶつかり、相殺し続けること。それが単純でも難しいことだ。

……と、来ればだ。

マジカニートゥの空間が選んだ本気は、赤羽を残酷に葬り、その能力を封じる・弱体化させる。に特化するべきだ。

彼と似た能力を持つ仲間がいる。それは、雪雲で自分のフィールドを形成する、クールスノーだ。彼女を中心とした対策をとるには




パァンッ




「!き、消えた!?マジカニートゥ!レゼンくん!!」


この場から赤羽の黒煙を残しつつ、マジカニートゥと共に場所を変えることだ。置いてかれた寝手も巻き込まれずにこれで助かった。(いちお、ついでです。ついでですから!!)

本体と能力を分断し、その力を削ぐ。

クールスノーの雪雲とは違い、赤羽の黒煙は本体がいなくなり、制御できずに消滅し始める。



「張った空間で移動してるのか。……すぐには戻って来ないだろうけど」


目の前で好きな人が消えてしまったら、かなり動揺する。寝手も助かったという安堵はあれど、マジカニートゥを心配するのは自然なこと。すぐに自分の能力で周辺を探索するが、どこにも赤羽の黒煙が見えないし、マジカニートゥとレゼンもいない。クールスノーが錦糸の空間に引きずり込まれたと同じく、マジカニートゥは赤羽を異空間に連れ去ったと考えてよさそうだ。

これでは寝手達も、赤羽の援護に回れない。



◇            ◇



「なんだここは?」


マジカニートゥとレゼン、赤羽が飛ばされた先は……随分と古そうな景色をする街の中だった。そこはマジカニートゥもレゼンも、赤羽だって知らない。この戦場の中、



【わーーーっ】

【いらっしゃい!】

【ブロロロロロ】



少しは景気が良さそうな声や音。子供や大人、自動車が走る光景、お店が賑わいお客様が喜び、信号機が変わるところ、風が吹いて、明るい日の光が差す。彼等にはマジカニートゥ達が見えていないし、気付いてもいない。

異空間に引きずり込むのは、赤羽に対しては有効である。が、マジカニートゥ側に有利と思える状況ではない。異空間を操る以上は、自分に有利な立場を……



「いけんのか?」

「たぶん」



マジカニートゥもレゼンも、それは感じている。空間の雰囲気からではとても感じられないが……マジカニートゥの”本気マジ”はさらに上へ……。”到達している”んだろ?



「だから、あいつを殺す」

「強がってよ」



地上にいる赤羽に対して、マジカニートゥとレゼンは……宙に浮いていた。その仕掛けは、自分が空間の基点となる菱形の1つが大きくなり、空飛ぶ絨毯のような機能を得ているようだ。

この空間内で赤羽の能力の全てを封印できるのなら勝負ありだが、そーいう理不尽はできなかった。そこに赤羽の素質は高いとも言える。



「上から見てんじゃねぇっ!!」



赤羽の周りで消えてしまった黒煙。それらを再び、発現させる。

この異空間の存在。少しの疑問を持った後、すぐさまマジカニートゥへの殺意を向けて、能力を使用したのは、彼の性格が現れたところ。黒煙がここにいる人達を覆い、マジカニートゥへと向かっていく。触れて飲まれれば、行動不能&死。

にも関わらず、マジカニートゥとレゼンは空の上で様子を見ているだけだった。もちろん、黒煙に触れまいと逃げてはいるが、黒煙の制御が乏しい故にマジカニートゥを捉えるのは難しい。

だからか、マジカニートゥとレゼンが見ているのは、赤羽ではなく……この世界にいる住人達・街の様子だった。


ここは現実世界にいる人間ではない。が、”実在した人間”だったのは確かである。

それは今の……



【〇が〇〇】

【〇〇〇〇じ〇〇】

【ブ〇〇〇〇〇】



この世界で鳴っている音が聞こえなくなるというより、”潰された”という感覚。黒煙に飲まれた人体や機械は、絶対に動きながらも崩壊を始める。

単純な攻撃力を持つものではなく、その仕掛けがあってできるもの。それは田熊や寝手からの情報でも多くを知れ、さらなる解析をすれば



「その黒煙は権利を奪えるのか」

「権利?」

「もっと言えば、人間社会における手段・文化・本能だろうな」



寝手のやられ方と異常な反応を考察した上で、……マジカニートゥには


「黒煙に触れれば、呼吸ができなくなると思え」

「それって火災の煙と同じだよね?それだけじゃないんだろうけど」


余計な事は考えさせない。とにかく、黒煙に触れることだけは避けろの指示。しかし、黒煙の中を自由に行動できる赤羽に、接近戦は不可能と言える。

レゼンの考察は、赤羽の能力から彼の心理にまで及ぶ。異常性を持つ彼の性格に、この能力。自分でも制御できていないが、出力・底の見えない邪念の容量。マジカニートゥ以上の才能を持つ寝手を相手に、力”だけ”は上回っていること。


気付かないからこそ、何気ない事を奪い取られたら……



「そーいう考えはレゼンに任せるよ!あたしはその時間を稼ぐだけ」

「おう!」

「何が時間を稼ぐだ!せこせこせこせこせこ!!」



赤羽は冷静さを欠くと同時に、黒煙が爆発するように増える。策もあったもんじゃなく、自ら広げられる黒煙を増やすのみ。

決して考えた事ではない。だが、この場では合理的と言える。

マジカニートゥの空間には”範囲”が決められている。その範囲を全て黒煙で覆い尽くせば、赤羽の勝利は揺るがない。黒煙を風で吹っ飛ばそうが、水で飲み込もうが避けられない。激突すれば、前の戦いの寝手と同様に力比べとなる……が



ギュ~~~~ンッ



「!?」

「あぁ!?」


背景が……。いや、空間内の全てが速くなる!この世界そのものが速くなっている!

高速で世界が動いていき、その影響からか



「なんだぁ!?俺の煙が消えていく!?」



赤羽が発する黒煙が消滅し始めていく。吹っ飛ばす、飲み込むといった発想ではなく、自然的に消し去るような行い。

まだこの空間がどーいうものかをマジカニートゥは把握できていないが、理解はできてる。


「……ここはあたしとあなたの中。あたしの世界は”ここに半分”!」


なんでもアリってわけじゃない。

これは……


「あたしには出会った人達、仲間、思い出が、力になっている!!あなたはどう?」


速くなった世界が再び遅くなる。

空間の世界は進歩を遂げたようだが、まだまだ現代には届いていないようだ。街の景色は大分変わった……ようで、全然違う場所のようだ。


「……っ?……」


赤羽の反応は……なんだろうか。何かを知っているようで、覚えちゃいないというか。

次にやってきた世界は前と変わらず、街並みを現していた。そこでは色んな家族がいるような場所で、小学校も近いようだ。

一方でレゼンは空間の変化よりも黒煙を消した方法を理解した。それは、赤羽に聞かれようが構わないこと。



「時間が進んだのか!?」



才能と思考、努力。それらを自覚した瞬間の成長は爆発的なモノであり、マジカニートゥの力は赤羽には持たないモノも含まれていた。妖精やジャネモンへの資質とは”皆無なモノ”であっても、こと困難においては大切なこと。

赤羽と同じく、レゼンもマジカニートゥも知っている。そして、この空間そのものを、赤羽とは違う理由で気付けた。

マジカニートゥとレゼンの互いの覚醒が噛み合った時。



”相手にとっては理不尽極まりなく、本気のなんでもアリ”



救いな事は赤羽のようなパワータイプに、真正面から来られることではあるが……敵の心配など要らんだろう。



「”なんとなく”ね……」


マジカニートゥの言葉を聞いた事がある。自分自身にも言い聞かせてる。


「まったくもぅ」


ちょーーーっと、不満になる。

そして、この世界の空間はとても平和な日常の中で、……何とも言えぬ不幸を映し出す。



【ゴスッゴスッ】

【うえぇ~~んっ】

【喚くな!喚くな!このクソガキ!!】


日常にあっては許せぬような、虐待。小さい子供が片親にされるもの


「!なんだよぉっ!!」


マジカニートゥを殺そうとしている赤羽でも、見ず知らないであろう子供が受ける虐待に身震いをした。



「止めろ止めろ止めろ止めろ!!止めろおおぉぉっっ!!おおおおぉぅっ!!」



知るか知るかと内心は感じ、こんな世界などどうでも良いはず。マジカニートゥを殺せばいいが、なんで、思い出したくもない光景が今、現れて来る?


「俺は違うんだああぁぁっ!!」


真っ先に赤羽は黒煙を、その子供と片親にぶつけて見せた。そして、2人は苦しみ出して、赤羽の理想通りにグロく死んでいく。その時得た赤羽には、


「あははぁ、あはあぁぁっ!!あ~~~」


”かつて、出来る事がなかった事だった”

あまりの興奮・快感・幸せ。……しかし、周りが見れば、醜い者がする表情そのもの。

そんな快感のところ悪いが、マジカニートゥは再び、時間を早める。

景色も変わって、黒煙も消えていく。赤羽の反応からして、この空間は



「赤羽の過去を映してるのか……いや、もっと言えば、本人の過去すら自分で変えさせてるのか?」

「そうなのかも」

「おいおい、こーいう力はよぉ……」



レゼンもドン引きしちまう。自分の同期の力を参考にしたモノにしては、あまりに凶悪度が増している。

これがマジカニートゥの本気であり、”本気だったからこそ、当たり前のモノが宿っている”。赤羽にはそれがない!!ハーブという存在も、彼の中ではただ力を貸してくれただけの存在。

だけど、それはあまりに酷いモノだろうって。他所は思う。


【この子は私が引き取ることにする。……仕方ない】

【なんでだよぉっ!】


次に現れた世界は、先ほどの子供が少し大きくなって、叔父さん達に引き取られる光景だった。

彼の親達はどこかに行ってしまったのだろうか。


【なんでウチで引き取るの!私達には子供達がっ】

【仕方ないだろう!面倒見るのは中学まで!高校はそこらへんのところに行かせればいい!】

【そんな簡単に言わないで!妹の子供だかなんだか知らないけど!!】


叔父さん達はいつも喧嘩をしている。



【お前は僕のモノを使うな!遊ぶな!!】

【他所の子なのに!!】



俺が悪いのかよ。俺はなんで産まれたんだよ!!産まれたいって思った事は、一度もない!!



「止めろーーー!!ふざけるなああぁぁっっ!!俺が悪いのか!?俺が悪いのかよぉぉっ!!?」


今、力が自分にある!!


「お前が引き取るからぁっ!!お前等が俺をぉぉっ!!俺は何もぉっ!!」



死ね!!死ね!!俺はお前等全ての世界に復讐してやる!!そのための炎なんだ!!一生恨んでやる!!人殺しを育てた事をお前等に、俺を産んだ両親達に刻んでやる!!まだ生きていて、のうのうと暮らしてぇっ!!



「俺を捨ててっ!!他の奴等と暮らしてるのにぃぃっ!!俺はああぁっ!!」



【父親がようやく見つかった?】


引き取ってくれ。


【あいつは俺の子じゃない。もう俺には別の家族がいるんだ。二度と関わるな】


……………


「俺の”権利”は、この世界のどこにあるんだよーーーー!!!」



この世界が映し出していくもの。赤羽を大きく壊したトラウマだ。

自らの叫びと共に、自分の能力でそれらを破壊し、快感を覚える……”あの時、こーだったら”。そーいう事って誰にでもあるだろ?もし、あの時に力があれば。あの時、違っていれば。でも、現実は一本道。

選択肢はいつもいつも。昔に戻って、選択を変える事はできない。


そこからはトラウマの連鎖。もっと正確に言えば、赤羽にとって最近の事であるから覚えているんだろう。

もう、この人生を諦めたからだ。



【赤羽くんさぁー、前もここを注意したよね】

「お前はしてねぇよっ!」

【君ねぇ。お客様に対しては、】

「あの客が悪いだろうがぁぁっ!!」

【給与が低いし、待遇が悪い】

「そうだろう!!そうだよ!!こんな会社!こんな社会!!俺をっ……」


振り返れば、不満ばっかりなのだ。その不満をもう我慢できず、過去に戻ったと同時に黒煙でそれらを潰す。


【大変、申し訳ございませんが、一次審査落ちという事で】

「俺の努力があぁぁっ!俺の作品を見たのかあぁぁっ!!」


不幸を映し出しているとしたら、それまでだが……。子供時代と大人時代とでは、何やら様子がオカシイ。

その事をマジカニートゥもレゼンも気付いた。

確かに



「理不尽」



彼の人生は、そーいう言葉で表される。そして、



「で、理不尽」


彼の生き方もまた、”理不尽”。そのものでしかない。

幼き日……いや、力無き頃を理不尽と考えている。そして、いざ手にした力を持てば、その事を無暗に翳す。理不尽な事に遭うと、自分もまたその理不尽を返す。嫌なことをされたら、嫌なことをする。とても短絡的な事を、ず~~~~っと、繰り返した。それにマジカニートゥは



「ジャンケンで100回以上負け続けた人」



赤羽の正体を現すに、的確な例え。

それは理不尽なものだが、確率を考えれば0じゃあない。……いや、確率とかの話じゃない。

相手に理不尽な事を申すも、自分を見ずに出している手や口を確認すらしない。それですぐに、自分の近くにある劣等感を弾き返そうと動くこと。


「あーーーぁっ、ああーーーぁっ!!」


過去の自分を見たら、殴りたくなる時もある。しかし、そんなことはまずできない。

むしろ、殴ったら痛い。


「ふざけたモノを見せるなーーーっ!!」


この空間に変化が無くなって来た。最後に現れたのは、自分の家の中にいる自分だった。それも黒煙で消し去り、……もうここには無としかない空間。何も障害物はなく、立方体の空間だけ。


「殺す!!お前は殺すぅっ!」


赤羽は黒煙を発現させようとするが、



「っ!?な、なんだぁっ!!どうしたぁっ!おおぉぉぃ!!説明しろぉ!!」



イメージを出したり、殺意を振る舞っても、……黒煙が現れない。その状態でも興奮しまくっているせいで、赤羽は立っていられるが、彼の異変はとてもシンプルなもの。レゼンが状況を教えるような口調で


「お前は邪念のガス欠だ。俺達に寝手、……それに制御下手が災いして、もうスッカラカンなんだよ(むしろ、ここまで持ってるだけ異常だよ。容量だけなら寝手と蒼山を軽く越えてる)」


能力の動力である、”邪念”が尽きた。いかに強力な能力でも、動力が尽きれば何もできない。


「!!?くぉぉっ」


邪念の使い果たしは肉体に負荷が掛かる。筋肉痛、強張り、吐き気、めまい。地に崩れる膝。

ようやく、赤羽の体は自覚する。だが、脳はそれに反して活性化。怒りで頭に血が昇るといったところか。


「き、気分が悪いぃぃっ。くああぁっ!ふざけるなああぁぁっっ!!」


こんなコンディションとなっても態度は荒れたまま。同じ言葉を吐く


「ふざけるなああぁぁっっ!!」


……確かに、赤羽の敗因。人のトラウマを流したり、発現させる黒煙を消滅させるといったやり方、マジカニートゥの能力がどんな相手を完璧にメタれる性能。

それは自分が戦士としたら、許されるようなやり方ではないが、


「それが現実」


マジカニートゥはこの戦い方を含め、この年下のクソガキがダメ大人を説教するに、十分過ぎてシンプルな言葉で伝えた。

言う通りだ。

さらに追い打ちの言葉も、レゼンが言い放つ。


「テメェの自滅だよ」


まともに……赤羽と戦うとなれば、あの広範囲・殺意マシマシの黒煙をどう対処するかの必要がある。逆に言えば、赤羽の思い通りに動いてしまったら、負けは確定だろう。赤羽の文句は、自分自身を見ておらず、結果だけにその文句を垂れている。マジカニートゥが赤羽を対策するのは、能力に限った話ではなく



「普通にね」



言葉の通りだ。そして、


「まだあたし達は”何も”してないし」

「ああぁっ!?」


赤羽のガス欠はこの勝負を決めた。彼からすれば、マジカニートゥ達は戦いもせず(偏見)、勝ったようなもの。それを理解した時、マジカニートゥが始める攻撃に恐怖をするべきなのだ。



ボオオォォンッ



「?ああぁっ!?」


赤羽の左腕が突如として、吹き飛んだ。そこから流れ出る血と恐怖は……驚きを刹那にして、苦痛な悲鳴へ。



「あああーーーぁぁっ!?」


な、なんだ!?なんで俺の体がっ!?さっきと違っ


「はぁぅ~……ごご〇〇」


肉体の変化から体への異常。喋れぬ、息ができぬの苦痛、皮膚が焼け落ちていく様。

なにが起きたのか、なにをされたのか、助けてくれ、やめてくれと言ったところで、マジカニートゥもレゼンも助けないし、何をやってるのかも理解できないほどだ。

狂った彼に相応しく、狂った攻撃に


「えげつねぇな」


このマジカニートゥの攻撃に率直な感想をする、レゼン。その攻撃もそうだが、


「あいつにはねぇもんがお前にはある。”仲間”と”経験”。色んなモノを知って、参考して、空間にするなんてよぉ」

「別にそうなっただけだもん。相性って大事じゃん」


クールスノーの戦いを見て、寝手の戦いを見て、北野川の戦いを見て、ルルやダイソン、ルミルミの飛行能力を見て、……。それらを合算して作り出した本気。

マジカニートゥとレゼンにしか関われないが、このマジカニートゥの最終形態。

”個人の本気”から”皆の本気”へと昇華させる、正真正銘のぶっ壊れ能力。


マジカニートゥのここまで出会った仲間・敵・出来事・体験・成功も失敗も……全て”本気”に置き換える。


本気マジ革命レボリューション


発動条件は第2段階のように空間を作る必要性はあるが、その精度・出力は桁外れ。

レゼンもここまでの成長ぶりに讃えるを通り越し、……。


「……………」


天才と称された自分をして、とんでもねぇ怪物に育てた。だけど、心だけは失うなよ。

表原の本気はもう、神の領域に入るかもしれない。

赤羽のような連中がこの能力を手にすりゃあよ。……でも、無理だろ?使いこなせないだろ?今の表原は


「まだもっと、凄い事ができると思う。みんなのおかげでね」


純粋な子供が魅せる笑顔。それだけでいい。

お前はきっと気付いてる。……赤羽達は気付いていない。本気ってなんだろうなって。

自分がどうしたら


「なにを見降ろして見てるの、レゼン。まだ赤羽を倒してないよ」

「悪い。ちょっと緩んでた」



レゼンの心境は分からなくもない。

今、赤羽の苦しみは、文字通り、言葉にできない。それすらも自分でしてしまっている。


「自分で、自分の”過去”を攻撃したんだからな。そりゃあ、自分に跳ね返る。過去から今への整合性をとろうとすれば、なんだって知れるだろうよ」


この空間内で起こっていた事は、赤羽が体験してきた過去。その一部の抜粋に過ぎないものだが、見たくもない事や消したい事を力ずくで行い、それが身に返ってくる。

死ぬことはないが、過去の罪を振り返るにはとてもいい事だろう。まぁ、自分の能力をモロに浴び続ける事だけが可哀想なものだ。

過去を攻撃し、今と整合性をとるため、体や心へのダメージは大きく、邪念も尽きた状況では戦闘どころではない。


何度も死んでは生き返るを繰り返され、その度に…………



「……ん!?」

「ええっ!?」


マジカニートゥもレゼンも驚愕する。赤羽がとんでもない奴だとは分かっていたが、……そのタイプが、”アレ”を彷彿とさせる異常な執念深さ。少し思っていたレベルとは、マジカニートゥと違っていた。見誤った。

酷い事をされたら、覚えているだろう?でも、それを知っているのは君だけだったかもしれない。詳しく知るのは……



「ああぁっ、あ~~~」


赤羽の体は四肢を捥がれ、黒ずんだ気色悪い姿になっていた。それは本人らしいが、人と認識はしたくない。失礼だが。


「じ、自分でジャネモン化までしやがった!普通、何かのアイテムやサポートがなきゃ、できねぇぞ!!」

「すでにこいつ、怪物だったじゃん!」


尽きた邪念が再び沸き上がる。これはきっと、マジカニートゥの能力の副産物も影響があろう、過去への攻撃から今への整合性をとるため、赤羽は人間を捨てて、ジャネモンになるという選択に至ったのだ。

しかし、死にかけだ。それが逆に恐ろしいが、退くわけにはいかない。赤羽は現在に戻って、マジカニートゥとレゼンに問うた。


「なんだよ。お前等はぁっ!!」


過去を攻撃し、今と繋がった彼は……このまともなどと揶揄やゆされる社会に文句を言う。


「不公平だ!!俺の人生は、産まれてから不幸だ!!お前等は!!俺の人生を歩んで、知って、同情だけかっ!?」

「……………」

「お前はこんな人生を幸せにできるのか!?できねぇーよ!」

「……………」

「生まれた時から家族に虐待され!!住処を転々とされ!!引き取った先でイジメられ!!理解者なんていない!!裏切られるばかり!!自殺だってしようと思ってた!!」

「…………?」

「これこそ無茶苦茶な人生のレールの上!!降りられないんだ!!」

「……???」

「障害者として生まれてきた罪を背負った事はあるかぁ!?病気を持って生まれて幸せな奴はいるのか!?好きな人が死んじゃったみたいな事を、すぐに感じたことはあるか!?お前に理解はできるのか!?」

「?????」

「お前等は、俺のように成ってないんだよ!!」


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