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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第54話『因心界 VS レイワーズ!そんなの気にして生きてられるか』
211/267

Cパート


赤羽はハーブの”宿主”となって、数日が経った。

その間、彼の能力は恐るべき速さで成長していく。



「…………許せねぇ」



何もできなかった人も、憎悪1つで大きな行動力を出す(良い方向とは言わない)。赤羽はこの間違っている社会に復讐心を燃やしながら、淡々と日を経過させていく。

とてつもなく長い一日に感じた。

今、自分は。”誰もが思い通りになる力”と”それを覚えていられない力”、その両方を持っている。

自分が時間を長く感じて、覚えられるという事は”自分が思い通りになっていない”という証明なのかも……。



「許せない許せない!!パクリパクリパクリ!!」



ボオォォッ



炎がつく。

瞬間的に自分の確固たる決めつけに、反応する輩を捜してしまう。そんな奴から目を逸らさず、自分の非など決して認めず、ただひたすらに思い通りになるように。



田熊達が感知した黒いオーラは、妖人の類にしか見えていないが……。それは”実際に存在する現象”であった。

ハーブの力を利用し、空へと昇っていく。彼は、”黒煙”を担当する。

巨大な力の後に生まれる、害ある黒煙。

空に昇り、自分と同調するような存在を確認すれば、黒煙が対象を即座に包み込んでいく。

それが赤羽の能力の発動条件である。



「うぎぃいいぃぃぃぃっ!!!俺の脳内を覗き見したなぁぁっ!!この作者ぁぁぁっ!!」



凶悪・暴力・想像力。

そこに理性がなく、タガが常に壊れている。

能力の制御・技術。これらには平常な精神が必要であり、それによって高度な技術を披露する。生命が持つべき特徴である。人間に関わらず、動物、昆虫、魚に至るまで、体質にも影響が出るほどだ。

だが、赤羽にはそれがない。制御はできない。暴走する能力の成長は、本人達の表面では望む形へとなるだろう。制御ができずに止まらないとは、人類の発明における失敗の1つ。



「俺の”権利”を勝手に奪いとるなああぁぁっ!!」



◇            ◇



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



「なんだあの、黒い煙は……」


田熊は黒煙から出ている不吉さに、かつての自分以上のものを感じ取った。生物ではないにも関わらず、これを発する人間に理性はない。

距離にして、1キロ内地点。


「すぐに着くにゃ」


表原が赤羽を確認さえすれば、いつでも”本気”で追跡は可能。出来る事なら赤羽の能力の確認まですること。

車を運転するカミィが急がずにいられるのは、精神的な強さがある。

最大の理想は、赤羽が表原達の存在に気付かないという事である。こちらが一方的に対策できる状況ならば、一番被害少なく終わらせられる。

田熊の感覚と、表原達の感覚は違っているからか。



「やべぇな。猛烈にヤバイ気配が迫ってる」

「レゼンも気付いたかにゃ?」

「えっ!?なになに!?もしかして、狙われてる!?」




探知に特化すれば、相手にもそれを気付かれる可能性も高まる。

ここのところがマジカニートゥの能力の弱いところであり、無防備であるところ。

しかし、隠れているハーブが出ざるおえない状況とも言える。



ガタガタガタ



アスファルトの道路がビリビリと震え、車体を揺らし始めている。地震と錯覚するかのような揺らぎと共に



ビギュゥッ



「えっ!」

「道路が変形した!」


道路が急に大きく昇り、反り返っていく。それに乗ってした表原達の車は、簡単にハーブの戦闘領域に入ってしまった。


「!」


水道管やガス管から這入るように生き物が車を通り過ぎ、進む先に立ち塞がろうと噴き出し始める。

アスファルトの色のままであるが、人の形となり、車を止める。



バギイィィッ



「どいつだ?妙な動きをしてるのは?」

「それはお前ーーー!!」


マジカニートゥが絶叫して、ハーブを指差すほどだ。

しかし、他の面々は道路を変形させ、さらには車を抜き去り、力で止めてしまうハーブの実力に緊張を高めた。運転するカミィはさらにアクセルを踏み込んで、ハーブを蹴散らそうとするも……この急な坂に加えて、ハーブ自身の能力の噛み合いから車が動かない。

車を握ったハーブの手は、力だけでなく浸食を行う。車ごと自分と一体化させるつもりなのだ。



「脱出しろ!!このまま全員、殺される!」



レゼンの言葉と共に、車内のみんなが一斉に出ようと動いた。だが、扉はすでにハーブが力ずくで抑えつけ、内部への侵入を始める。



「出さねぇよ。皆殺しだ」

「うわーーー!!フロントガラスが人の顔になってくる!?」


外にいるハーブと、車内に入ってくるハーブ。

ここのピンチでどうするかと中で考えようにも、無理なものだ。

しかし、ハーブの意識が完全に中へ集中している事で、不意に来る衝撃には弱い。



ドゴオオォォッッ



「!!?」



完全にこの車を、自分と一体化させている時。車の後方に激しくぶつかってきた大型バイク。

その衝撃はハーブの意識とその一体化を解除させた。



「って~~!?」


車に与えた衝撃は、そのままハーブに返ってくる。生物の致命傷と車の損傷が、どれくらい一致するかは分からないが



「うわあああぁぁっ!!」

「脱出するにゃ!!」

「ちゅ~~~~!!」


車内に残された表原達はその隙に急いで脱出!

一方で、バイクを乗ってぶつかって来た者に、ハーブは意識を向ける。


「新手かっ!?」


バイクと車がぶつかり、それでも無傷で済ませる辺りはちゃんとした妖人。

シークレットトークがこの場に駆け付け、車から脱出したカミィと共に並び立つ。


「こーいう予想もしてるわ」

「ありがとにゃ!」

「おうおう、なんだよ。強そうには見えねぇな」


ハーブも体勢を整え、シークレットトーク2名の外見を見つつ


「俺の好みじゃねぇな!大人の色気がねぇーなら、邪魔をするな!!どっちみちっ……皆殺しだぜぇっ!!」


車内にいた連中を含め、皆殺ししようとハーブが精神を高ぶらせる。戦闘能力だけでなく、純粋な”邪念”の放出の仕方もエグイ。シークレットトークへの注意が向いたところで


「「じゃ!!」」


2人は2手に別れ、走って逃走をするのであった!!


「あっ!?お前等!いきなり、別方向に走り出すんじゃねぇ!!つーか、車内にいた連中もどこかに逃げてやがるな!!」


戦ってやると意気込んだ瞬間に、二手に分かれて逃走される。ハーブの中では、クールスノーとキッスという人物と接触してただけに、このトリッキーな行動に冷静さを欠いた。

ハーブが捜したいのは、赤羽を探ろうとする連中だ。これさえ始末しておけば、少しの時間は稼げるし、力を削られない。車内でどのような顔があったかは覚えているが、誰がどんな能力を使っているかは不明。

今逃げた二人が、その能力持ちであるという事もある。



「お、お、お、お、お」



完全に見失う!どっちかを追いかけるか?あのバイクに乗ってた貧乳ギャルを始末すればいいか?


「おしゃあああぁぁっっ!!」


戦意を再び蘇らせるのに3秒ほど。高ぶる狂気。

狙いはシークレットトークに定めて、走ろうとする。しかし、ハーブが先ほど一体化していた車から銃口が現れる。高ぶるハーブの背後から放つ、非情な奇襲。



パァンパァンッ



「!!」


ハーブの背中へ届いた弾丸は、貫通こそしなかったが。完全に動きを封じ、こちらへ振り向かせた。


「だ、誰だテメェ!」

「さぁ?誰でしょうね?」

「さ、さっきの車の中にいなかっただろうが!!どこに隠れてやがった!」


ハーブを狙撃したのは、飴子。瞬間移動で素早く駆け付け、ハーブの隙を伺って見事攻撃に成功させた。ハーブからすれば、撃たれたダメージよりもこちらが仕掛けたはずなのに、すぐにひっくり返された状況。まともになると、手が震え、胸がズキズキとくる。慌てるな、横着するなと、言われたくないし、してもいない。そんな気分で


「うぎゃあああぁぁぁっ」


めんどくせぇっ。

それを伝えている狂気の咆哮。

どいつからやるなんて、一々考えたくはない。敵は全員、皆殺しと決めたことを貫けばいいのだと、心に喝を入れる。飴子の攻撃が明らかな挑発であり、ハーブからすればどうして車内にいるのかも分かっちゃいない。


「お前も俺の好みじゃねぇーんだよ!!相手をして欲しければ、力ずくで来やがれぇぇっ!!」


飴子にはそれだけを伝え、ハーブはシークレットトークが逃げた方向へ向かう。飴子の任務は出来る限り、ハーブを足止めすること。遠距離攻撃と瞬間移動は、決して強くはないが足止めに向いている。


「飴子ー!しっかり足止めしなさいよーー!!」


シークレットトークは得意ではない、走りでの逃走しかできない!ハーブの注意はこちらに惹きつけた!

ハーブに考えが少ないというのもあるが、シークレットトークをすぐに追いかけたのには彼なりの考えもある。まず、彼が冷静になって周りを見た時、よく見えていたのがシークレットトークとカミィだったのだ。

彼女達に意識がいった。そして、車内に乗っていた人間2名と2つの小動物。この4名が自分の周りから消えており、彼等は素早く逃げたのだと判断したのだ。



「……ちゅ~~~~」

「あ、あ、ありがとね。ネズミくん」

「ホントに体が小さくなるとビックリするな」

「ちゅ~、ちゅ~!」


しかし、そんなに早い行動をとれるわけがない。レゼンは物陰に隠れ、マジカニートゥと田熊はネズミくんの能力によって、小さくなって身を隠していたのだ。ハーブに冷静さと自信があれば、自分が気付かぬ前に敵が逃げるなどありはしなかった。



ギュウウウゥゥッ



「うわぁっ!?元に戻った!」

「ありがとう!どうやら敵は、北野川ちゃん達に狙いを決めたみたいだな。……大丈夫だろうか」

「今の内に田熊さんが感じる存在に、俺達だけで近づこう!」


目標まで、500mは切っている。



◇         ◇



タタタタタ


「はぁっ、はぁっ」


シークレットトークが逃走中。その後ろを


「待てやーーー!!」


ハーブが叫びながら追いかける。ハーブの速さは粉雪達も一目置くほどであり、マークされたとあっては数分と掛からないだろう。しかし、ハーブを足止めしてくるのは、飴子の銃撃である。喰らっても止まる事はないが、シークレットトークへの追撃がやや遅れる原因にもなる。


「ちっ」


あの拳銃っ子は、瞬間移動するタイプの能力か!だから、車内にいきなり現れたのか。何かをトリガーにして、瞬間移動するタイプだとすれば決して遠くはいけないが、近場ならいつでも可能ってか。あれは絶対に無視だ!キリがねぇ!


「……マジでなんなのあいつ」


拳銃で何発も当ててるのに怯まないし、こっちになかなか意識を向けない。これじゃあ、シークレットトークが追いつかれる!


「はぁっ、はぁっ」


シークレットトークは逃げるしかない。ハーブとぶつかれば、勝ち目がないのは分かっている。

その逃げ足にようやく、ハーブが届こうとする時。


「よーーーしっ!!姐さん、そのまま走ってていいよ!!」

「!!」


エレメントアーチがこの逃走劇の場に現れ、シークレットトークの背を守り、ハーブへの攻撃を開始した。

互いの距離と言える、接近戦。


「また新手か!!」

「任せるわ!!」



バシイィッ



ハーブの走りが止まり、エレメントアーチの拳が彼に届いた。

一発でハーブが彼女の存在を戦闘要員と認め、なおかつ、一番に処理しなければならない状況なのも把握。危機的状況は変わりないし、彼が彼女達の狙いに気付いていない事もあるというのに……


「面白ぇ」

「あたしもだよっ!!」


こーいう直情的な相手には好意的になる。シンプル一番。あるいは、馬鹿が好き。

シークレットトーク達の事などを忘れて、戦う。その時。



ブゥンッ


「!!」


エレメントアーチの能力。攻撃した箇所にはんこが現れる。その文字は”水”。何かの能力だとハーブが、わずかに身構えた。その受け身の意識を、エレメントアーチが見逃さずに追撃を仕掛けた。


「ホラホラホラホラ!!」


彼女の連打をモロに喰らうほどではないが、受けに回ったのは事実。その回転速度にはハーブも、多少なりとも驚いた。我流の戦い方で身体能力だけに頼った動き。ますます好みになった。表情も笑顔になっていき、いよいよと



バヂイィッ


「殴り合いは楽しいなぁっ!!」


エレメントアーチの連打の隙を止めた後、即座に打ち込んだハーブの拳に。エレメントアーチも踏ん張って、返す。

熱血的な表情のエレメントアーチに対し、戦闘狂が出す禍々しい表情のハーブ。

滅茶苦茶な運動能力で戦うエレメントアーチの拳は、妖人とはいえ、人間がこなせる範囲のこと。


バヂュッ


「!」


手応えがしょぼい!?


ハーブは攻撃を受けつつ、自身の体を改造し、柔らかい性質となって彼女の攻撃を掴んだ。ハーブの人外が成せる戦略は、エレメントアーチの経験不足と合わさって抜群に効いた。力任せに吹っ飛ばそうとするあまり、


「捕まえた~」

「!!抜けな」


ハーブの体の中にエレメントアーチの拳が入った。その捕縛に気付いた時も、彼女は力に任せた。そして、防御も緩くなり。ハーブが彼女の腹部を打ち抜いたのは当然のこと。



バギイイィィッ



「ぶふぅっ!?」


一発で血を吐き、腹が吹っ飛んだような錯覚をする。しかし、それでも原型を留めている事でハーブは賞賛。


「やるじゃねぇか。一撃で殺すつもりだったが」

「っ!」


こいつ!どんな拳で殴ってきたの!?今、体がタマゴを床に落としたら割れるみたいな、常識的でお陀仏になるモノだった。


「だが、次はねぇぞ」


エレメントアーチの違和感は……。ハーブによって、体を瞬時に改造されている事にある。彼に捕まれているとは、体を弄られると同じことだ。頑丈な肉体も緩い物質に変えられ始め、そこを突かれたからだ。

相手の命がヤバイ中でハーブは相手を賞賛する。彼にとっては名も知らぬ、


「そこをどけよ、”少年”」


それ故に性別を伝えたのであったが


「……………あ?」


エレメントアーチの単純すぎるのだが、とてもシンプルな怒りが増した。

その表情は相手の失言に対してのものであったが、戦意とは違う熱意。負けず嫌いのソレではない。


「ん?」


ハーブが見た感じ、戦い方を含めたところを含め。エレメントアーチを少年と呼んだわけだが、


「あたしは女だーーーーー!!」


ドゴオオォォッ


「ブホォッ!?」


それは間違いである。どこを見て


「胸で判断しやがったか、この野郎!!殴り殺すぞ!!」

「ぐへぇっ!?お、お、」


バギイィッ


「おべぇぇっ!?おまおま、お前!?女!?嘘っだろ!!」


人体改造を可能とするハーブ。わずかな時間で彼女の肉体を改造したが、女性だとは気付けなかった。(改造中に性別判断はできない)。エレメントアーチの激高にハーブはたじろぎ、掴んでいた状態も離して、距離をとろうとした。……というより、ちゃんとエレメントアーチを見るべきだったと


「それはすまん!!」


そーいう感情が出て、間合いを離す。だが、今更謝罪しようが、元々敵だという事も含めれば、エレメントアーチが止まるわけもない。そして、改めてエレメントアーチの体付きを見てみたのだが。ホントに女?って疑いたくなるような、魅力の少ない体ではある。顔は悪くない。好みじゃないが、可愛い系と言えば納得はするが



バギイイィィッ



「謝って許すと思うか、コラアアァッ!!」

「ぐへぇっ!?」


そ、そりゃあ怒るよな!でも、しょうがねぇじゃん!女より男の子って言われた方がしっくり来る体だぞ!性自認とかを疑っちゃったぜ!こんな胸でよく生きて来れたな!歳は知らねぇけど!

つーか、攻撃を喰らい過ぎた。楽しむべき相手じゃなかったぜ!


ブゥンッ


エレメントアーチの怒りの連打。それは本来の実力差を覆しかけるほど、凄まじい猛攻であった。そして、その攻撃が能力と非常に噛み合っていた。一撃目につけた、”水”の刻印が与えた数によって、変化し始める。

”水”から一気に、”渦”へと変化!そして、ハーブの足元から吹き上げる渦となった水流。



「”渦龍灸”」



ゴポポポポポポ



水流の中心にいたハーブが飲み込まれ、渦の力も加わって、体をあちこち引っ張られる。打撃から溺死に持ち込む技。数多く打ち込むほど、属性の威力が上昇するエレメントアーチの攻撃手段ではあるが。本人も未だに知れなかった事で、大技にまで発展したこの力は、その最中に打撃をこなすのが非常に困難であった。

大技を出したが、最後。それで仕留めきるが、理想になっていた。



「おごごごっ。溺れるぅぅっ」


体から離れない水流に飲まれ、その最中に”上空が見えた”ハーブはさぞ焦った。

だが、ハーブ以外からすれば死に持ち込めた攻撃だろう。



ビギイイィィッ



「!!」


激しい水流の渦の中。パイプのようなものが、ウニを彷彿させるような数と形で出現する。その色合いと先端形状は、口と鼻。


「キモッ!!」


正直過ぎる、エレメントアーチの感想ではあったが。水流から逃れた、そのパイプのように伸びた口と鼻は、ハーブの呼吸困難を助けたり、飲んでしまった水を吐くのに役立った。


「ぶへえぇっ……気分悪ぃっ」


ここに来て、エレメントアーチも気付く。自分の必殺が、ハーブに凌がれたことを。水流の勢いが止むと同時にハーブは解放され、少しふらつきながらも体を元に戻しながら立っていて、


「……まだまだ行けるよな。女の子」

「!当然」

「だが」


エレメントアーチがこの状況を理解しない、馬鹿な賢さが役に立っている。ハーブはすでにエレメントアーチの能力がどーいうものか分かり、連打にさえ気を付ければ良い事と、こちらにも見える属性攻撃にも冷静に対処すれば、致命的なダメージにはならないと。

もちろん、エレメントアーチの戦い方までも体で理解した。


次の大技はない!!


それは熟練の戦闘狂なら理解する。

この場でそれに達するは、1人だけだった。


「気付いているぞ!!」

「!!」


いきなり、ハーブが空を見上げた!エレメントアーチと対峙していながらも、周囲への意識を怠らなかった。


「今度は隠れてねぇ!」


彼が水流に巻き込まれながら、空を見た時。彼を紅い大剣で襲った攻撃。その時は、クールスノーの雪雲のおかげで隠されていたが、今は残念ながらの快晴。彼の魔法陣が露わになっていた。

超高速で放たれる剣も、その距離が離れている都合上。分かっていれば、回避や防御は可能。ハーブはそれができた。

だからこそ、



ドスウウゥッ



「ああ、隠れちゃいないよ」


ヒイロはあえて、エレメントアーチの横を通っての乱入。ハーブが完全に意識を上に向けた瞬間を狙い、空からの攻撃を囮にしての正面からの奇襲。ハーブの体を剣で貫いた。

奇襲を読まれた上での奇襲を決める、ヒイロ。それに対して



「……このっ、やっぱりお前かよっ!」

「安心しろ。この場は俺だけだ」

「お前の事は嫌いだぜ!!好みじゃない!!」


ハーブは倒れず、仕方なくヒイロとの戦いに臨む。

これだけのダメージを受けて倒れない事で、以前戦った時よりも明らかに強くなり、”宿主”を手にした事は明らか。ヒイロがハーブの体からハーブの血と共に剣を抜き、エレメントアーチとの共闘などもせずに向かっていったのは、余裕が少ない事もある。



バギイイィィッ



剣の硬度に対抗するかのように、ハーブの体も超硬度になっていく。


「あのキッスと出会えたのは、幸運だ!!完全再現とはいかないが!」


不意を突かれなきゃ、剣で傷はつけられないと言いたいような自信満々な表情。それを示すように、ヒイロの剣を弾いてしまうハーブの体。キッスの肉体を手にしたとあっては、相性が最悪過ぎるが


「謙虚だな」


キッスの実力をより知っているヒイロからすれば、ハーブの言葉を事実と受け取った。そんな簡単になれるわけもない。一撃が通じないのなら、それを積み重ねるだけだと動いていた。



「ちょっ……あたしの相手は!?」


ヒイロとハーブが戦い始め、乱入してやろうかと意気込むエレメントアーチではあったが。それを止めたのが2つ。

1つはヒイロもハーブも、自分より強いと意識してしまったこと。もう1つに



「北野川から撤収だって、エレメントアーチ」

「飴子!」

「彼に任せてこの場を去りましょ」


飴子がエレメントアーチに声を掛けた。そこに自分が割り込むという指示もなかったため、素直に退いたのであった。



◇          ◇



ヒイロ達がハーブと交戦している間に、マジカニートゥ達は赤羽の姿をしっかりと確認するのが任務。そして、その任務は遂行される。


「あの家の中か」

「家の中に侵入するの!?」


小さな賃貸住宅の一室が、赤羽の家である。その古い家の外観よりもだ、マジカニートゥ達にも感じ取れる狂気な気配。自分自身が異常者であると肯定しているような雰囲気は、本人を見ずとも分かる。田熊の見える黒い煙ってのを理解できる。


「家の場所は分かったが……どうすればいい、レゼンくん」


田熊はこの場で頼りにするべきはレゼンだと判断し、尋ねる。マジカニートゥの能力を考えれば確認であり、侵入をするだけならネズミくんがいる。彼に頼んで小さくしてもらい、侵入をするというのは容易だ。


「あんまり時間はねぇんだよな」


マジカニートゥ達はヒイロが駆け付けた事を知らない。ハーブが迫っているのなら、侵入のみはリスクが高い。ハーブは道路の中を蠢いて動いてくる事から、本来なら遭遇しない場所での通過にも対応される危険性がある。チビ化すれば侵入は容易でも、そこからの脱出は早期にできない。


ポンポンッ


「なによ、頭を叩いて」

「だーから、やるんだろ。マジカニートゥ。田熊さん達はもう離れていい。ここからは俺達で行く」


巻き込みたくないという気持ちではなく、足手纏いに成りかねない。レゼンの雰囲気に……それを飲み込んだ上で田熊は


「……そうだな。上手くいく確率を少しでもあげるなら、私とネズミくんはこの場を離れる」


ポンポンッ


「田熊さんまであたしの頭を叩いてなんですか!?」

「私なりのまじないだ。上手く行くといいな……気を付けてくれ」

「ちゅ~!」


レゼンの言葉の後、田熊とネズミくんは一足先にここから去る。

人の家の鍵付きの扉を前にどうやって侵入するんだという疑問に、レゼンは短答直入に


「強行突破だ」

「……えええっ!?」


マジカニートゥの驚きも無理はないが


「小細工する時間がない。奴を一目見て、俺達も逃げれば良い」


今のマジカニートゥはまだ、田熊の感覚を強力にする結界を張る本気を使ったままだ。これを解除するまでには、10分以上も待機が必要。それを待つというのは愚策。早めに逃げる時に本気で使いたい。

能力を抜きにしても扉や窓ガラスの破壊など、その身体能力で余裕。中にいる得体の知れない化け物に怯えつつも、意を決すれば



「どりゃあああ」



ガシャアアァァンッ



外のベランダからジャンプで侵入し、中が見えないようにカーテンがつけられていようが窓ガラスを蹴り破って、ついにマジカニートゥが赤羽和希の家に入り込む。



「!!うわあああぁぁぁっっ」


外の様子など、気にしない赤羽であっても。いきなり外から女の子が窓ガラスをぶち破って、自分の目の前に現れたとあってはビックリするなというのは無理もない。あまりに衝撃的な出来事にその場でひっくり返るのは無理もない。

そして、マジカニートゥ達に至っても、……強行突破したすぐに本人がいるとは思っていなかった。覚悟だけはしていて。


「お前だな!」


レゼンは、驚き倒れる赤羽の姿を見て確信。それはまぁ、……言い方が悪いが妖人に向いているダメ人間。あらゆる恨みを溜めこんでできたような体。風貌。邪念の濃さも一致する。

一方で、



「ぎゃああああぁっっ!!」



マジカニートゥもまた叫んだ。それは人としての感想を含んだ叫びであった。意を決した強行突破であったが、この灯りもつけない暗がりの部屋の中にいたのは自分の父親くらいのおっさんであり(赤羽の方が歳は若い)、そんなおっさんがパンツ一枚で徘徊、床は色んなゴミで散らばり、周辺もよく分からんゴミが散乱、男の悪臭も漂う部屋。

こんな人物ともこんな部屋にも行きたくなかった。負け組の男性がいるような場所。それを瞬時に察知し


「もう帰る!!」


赤羽を一目確認した。もう大丈夫だって事で、マジカニートゥは窓ガラスを破壊したことを謝罪する気もなく、体を反転させて侵入したところから脱出を試みる。



「ふはぁっ!!」



驚きビックリした赤羽であったが、マジカニートゥの行動が良くも悪くも……。すぐにその力を発揮させた。


「謝ることもしねぇのかああぁぁぁっっ!!!かっぎゃぎゃぎゃぁぁっ!!」


相棒パートナーのハーブよろしく、赤羽もまた、その異常性ある叫びと共にマジカニートゥを追おうとした。



ザクゥッ



「いでえぇっ!!?窓ガラスの破片を踏んだぁぁっ!!血があぁっ」


本人、裸足であるため。マジカニートゥがぶち破った窓ガラスの破片を踏みつけ、少々悶絶する。その様子を逃げるマジカニートゥは見ずとも、頭に乗るレゼンは確認した。赤羽は思ったよりもまだ、人間に近いという事か?

窓ガラスを踏んだ痛みを堪えながら、ようやっとベランダに飛び出した赤羽は逃げるマジカニートゥを見た。


「ゆ、許さない。あれは俺の敵、俺の敵、俺様の敵に違いないいいぃぃっ!!」



標的を理解した事は赤羽も同じこと。

そのイカレた精神が魅せる戦闘が、ついにマジカニートゥ達に向けられる。



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