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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第54話『因心界 VS レイワーズ!そんなの気にして生きてられるか』
210/267

Bパート


ブロロロロロ



「準備はいいかにゃ~?」



北野川の……もとい、シークレットトークの強みは、高精度な分身の方にあるんじゃないかと疑い始める一同。練度が高すぎる。



「あたしの車、傷つけないでよ。カミィ」

「もちろんにゃ!」

「こちらも準備ができました」


今日よりハーブの”宿主”の捜索に入るわけだが。

車を2台(A号車とB号車)、バイクを1台用意してきた北野川。

シークレットトークに変身し、カミィも呼び出して、2台の車の運転を任せる。バイクは本体である北野川が運転する。



「う~~~ん」

「十分過ぎるだろ。やりたいこと」

「そりゃあそうだけど」


バイクには北野川が乗り。



A号車には

表原、レゼン、カミィ、田熊、ネズミくん。



B号車には、他の人達が乗り込んだ。



「これってあたしの方が狙われない?」

「す、すまない。しかし、分かれた方が被害も少なく、捜索範囲も広がるというものだ」

「ちゅ~~!」


この調査で危険なのは、間違いなくマジカニートゥだ。田熊達が探知するとはいえ、明らかに怪しい空間を広げるとすれば、その根源を突くのは自然。とはいえ、



「飴子は瞬間移動できるんだし、黛を活かすなら路上で戦う方が向いてる」


細かい動きをするよりも単純にする方が良い。特に戦闘に成りかねない緊急事態の場合。相手に分かっていることは


「3つのチームが同時に狙われる事はない。誰かが生き延びれば、キッスさん達に引き継ぎができる。あくまで最悪な」


これは視察である。見つけた相手をどうやって倒すか、考えるための探り。


「田熊さん達はどれくらい把握できてるんだ」

「距離で言うのは少し難しいが、3つか4つの街の中くらいなら、違和感は気付けると思う。君達もそうだが、息子と同じような雰囲気というのは暗くて何を考えてるか読めないが、」


息子を殺してるからボロクソに言ってるなぁ……。


「強い意志が心の中にある。それはきっと、自分の中に秘めているんだろうな。……私が感じ取れるのは、その熱というか、色だな」

「…………自分達も同類って、人間扱いなんですか」


田熊達が参加したい理由も汲み取って、自分の練り出す本気のイメージもできていた。


『あたしだけかいっ!マジカニートゥ!!』


妖人化すると同時に、マジカニートゥのひし形上の空間の基点が物凄い速度でバラケ散る。

8つともバラバラに広がり、本体から数キロにも及ぶ。

そして、止まると同時に曲線上の線をそれぞれの基点を結ぶ。空間を移動できるだけでなく、自在にその対象範囲も、アメーバのように動かせる形。



「!!」

「!!」


田熊達がどう感じ取るかは、マジカニートゥにも分かっていないが。

田熊の感覚で言えば、本心ではなく、自分の弱さを隠す防衛本能のような人。あるいは、本当に深い闇を抱えて堪えているような人。灰色が、白か黒か、どっちに寄っているかが判断しやすくなったもの。

普通の人ならまず、空に立ち上らない色のついた煙。それが目に見えるようになり、色での判断もできる。



「分かる……。見える……」


自分とその息子はもっと禍々しく、黒い煙であった。



「このまま周囲を運転するだけって簡単な仕事にゃ。第一段階は……」

「見つけた後でが大変な気がするけれどな」



ブロロロロロ



こうして調査を始めるわけだが、唯一。バイクでの単独行動をしている北野川は2つの車を様子見。

どちらかが発見次第、まずそこへ駆けつけるのは北野川だ。

明らかに探っている気配が漂っている。マジカニートゥの空間内は、通常の人間の中にも奇妙な違和感を覚えるだろう。そして、車から気配を探るのが2人。



「明らかに車の方が危ないからね」



探ってる時に危ないのは、無鉄砲に来られること。単独でいれば柔軟に動けて、安全という事もあり、北野川はこの役目にいる。



◇            ◇




ハーブは赤羽を探っている因心界の事を意識せず、完全に攻め重視。

赤羽を気にする事といえば、自分が目的を達するまで死ぬんじゃないという事くらい。

だからこそ、急ぐ。



「悪いな、イチマンコ」



”宿主”を得て、自らの強化を実感しつつも、あの3人を相手にするというのはまだまだ戦力不足。普段、戦いに対して、真面目な意識を向けていないのはハーブの本心である。しかし、真面目な彼が戦いを純粋に考え出せば、手段を問わない。聞かない。

少しの抵抗があったのは、彼として無関係な人までも巻き込むこと。



「……………」



気色悪いかもしれないが。お前が俺を尋ねた時、いちお採取させてもらったぞ。

お前の数本の髪の毛と、お前の札束の紙切れ。

戦えって言ったのは、お前だろ?お前にも戦ってもらうぜ!!



「……………」



お前の”望み”は違うんだろうけど。俺もお前も”結果”を望んでねぇ。

俺はただ、お前と一緒で……



バヂイイィィッ


イチマンコの髪の毛と能力の要である札束の欠片を材料にし、生命体を作る。そこからハーブの改造能力で因心界に捕まっているイチマンコとリンクさせる。


「おぎゃーおぎゃー」


髪の毛から生まれた虫ほどの小さな生命体。これに無理矢理、”宿主”と契約させる。

つまりはイチマンコが求めていない、彼女の”宿主”を無理矢理作らせること。彼女がどうして嫌がっていたのかは、自分と同じで制御できない人間と言えるからだ。

そして、その人間については非常に有名なモノで、居場所の特定もハーブはしていた。

イチマンコとしては制御し辛くても、ハーブからすれば制御がしやすい人間。異常なまでの執着心があるため。”条件次第”でなんでもやってしまうタイプ。

イチマンコの”宿主”も戦力に加えて、いちお3人。



「少ねぇ」



真面目だからこそ、ハーブの対策は入念である。

あの3人と戦った後、ハーブが一番戦いたいと感じたのは、クールスノー。単純なハーブの好み。誰を選んでも戦闘力に差がないと見た。

そうなれば、残り2人をどうやって止めるかどうか。

赤羽を前線で戦わせるわけにはいかない以上、巨大な戦力が余裕を持って、2人か3人欲しい。


計算できるという意味では、イチマンコしかいないのだが……。彼女が捕まっている以上は、このやり方しかない。

となればだ……。



「……………」



数にモノを言わせるしかねぇーだろ?

一人の天才がやれる事より、千人の人間がやれる事の方が大きい力になる。それは1人1人に微量でも力がある事を示す。良くも悪くも。

”こいつ”に任せたい相手は、涙キッスである。

生まれ持った素質でイキる奴を屠るのは、やはり大勢という数だ。




トボトボ……



「はぁ~、こんな人生。なんの意味があるんだろ」



コンビニで働いていたハーブは、お客様達の様相を色々と見ていた。

人生、30代で決着してしまうなんて事も分かる気がする。

”命とは、心臓が終わってから決するものだ”などという生物の理屈・原理ではなく。社会から見れば、必要とされなくなった時点で終了するものだ。あとはどうやって、心臓が止まるかどうかのお話。

そんな人間が善良な仮面をつけてまで、この世の中に対する不満を抑えているのは当たり前のこと。ハーブは夜な夜な、そんな誰にも助けてもらえない、気にもかけられない人に近づいていく。


「おい」

「ん?」

「こんな人生はもっと、みんなで分かち合うべきじゃないか?お前のような人は大勢いる」


希望のない人間達を救うような言葉と共に、彼はそんな人達を改造していく。

この世から一人消えても気にしない人間はいくらでもいるだろう。毎日、誰かとやり取りする仲がいるのか?



バギイィッッ



「おごごぉっ」



改造された人は、人にならなくなっていた。

もう、単なる”部品”だ。今はこの部品が大量にいる。



「キッスには相当警戒しとかなきゃな。単純に対処も浮かびやすい。だが、それをしての強さは恐れ入る」



対涙キッス用のジャネモンを作成し始めるハーブ。厄介な相手に対して、少しでも有利にするのは正しい。しかし、レイワーズの多くが自分の力を過信している中で、見た目以上に賢い判断をするハーブ。

自分が見つかるまでの間に戦力を整えるのに必死だ。


イチマンコの”宿主”を利用すること、大量の諦めた人間達を部品にすること。

どっちも急ピッチだ。



『は~~い!!ニシシシチャンネルの始まりよぉ~~!!』


SNSとは便利なもので、出会えない人達にも巡り合える素敵なモノだ。あくまで利用の仕方を間違えなければ、素晴らしいのだ。しかし、それに食いつき、欲望が暴走している事もある。

始めた当初は、可愛い女性が色んな企画にチャレンジするモノで話題を集めたものだが、チャンネル登録や高評価などは最近停滞気味。寄って来ていたスポンサー達も今じゃ、少し敬遠気味。なんだかんだで2年もやっている、当チャンネル。


『今日はねー!』


”ヤラセですか?”、”焦ってるんですか?”、”似たことばっかですね”


登録数に伸び悩む時期はどのチャンネルにもある。それが自分の収入源となるのなら必死だ。今じゃ誰しもやっているような事だから、他よりも違いを出さなくてはいけない。楽しいモノを提供するよりも、みんなが見てもらう事を必死になる。

そもそも最初は、儲かるからって言われて始めたこと。それで実際に、”成功”はしたのだ。1度、2度のこと。この配信者として生活ができると思った。自分は元モデルとして、名前と容姿もあった。協力してくれた人達もいた。



「絶対に、絶対に……」



自分よりも後から出て来た奴が、自分の先を行くなんて許せないっ……。

注目を浴びてるなんて許せないっ……。

自分の言う事は絶対なんだっ……。



「みんな、私の事を見なさい!!」



承認欲求の怪物モンスター

自分が誰からも見てもらえる事を望む。誰からも理解される事を望む。


その女の名前は、錦糸千登勢きんしちとせ

元、モデル。一時期はメディアとも深い関わりを持ち、その関係から動画配信者の道を歩む。始めた当初は順風満帆と言える道のりではあるが、近年の多すぎるライバル達によって、立場を脅かされている状況。

望みはただ一つ。自分が目立つことである。

そのやり方は徐々に、一般的には受け入れがたいような、炎上的なやり方にまで発展していった者。



ケーキ屋で大量のケーキを買い込んで、店内を困らせた後に破棄する。

疑惑・事件のある有名人に突撃凹取材をしに行き、お騒がせする。

危険過ぎる違法ドラッグの使用方法の動画公開。



とにかく、自分が目立つというのなら、周りがどうなろうが考えてはいない。

彼女が気にするのは登録数・高評価・動画収入の3点だけである。この3つさえあれば、永遠の幸福を感じる。

この錦糸千登勢という女性。こーいう人間が、イチマンコの”宿主”としての適性が極めて高い。



「私以外が認められるなんてっ!」



うんっ、分かるっ。



「私が許さない!!」



イチマンコが合わない以前に、大勢いるであろう人間とウマが合わない人間だ。……これは無理だ。そりゃあ、イチマンコが自分の”宿主”を作ろうとするのを躊躇するし、諦める。同族ですら敵対心を、平然と抱き。尊重はない。

あえて同じような人がいるなら気分が悪くなるかもしれないが、こいつは秒読みでヒステリックなことをしても良い人間。

赤羽とは違うタイプではあるが、彼女もまた自分の考えのみで動く怪物モンスター



ピンポーンッ



「?なによ。もしかして、悪戯?動画編集中なのよ!」




承認欲求を強い女だ。個人情報が洩れている事もあり、それすら気にしてないだろう。



「?誰もいない……悪戯ね」



ガシッ



ドアの覗き穴を見た錦糸。その直後に、ドアノブから謎の手が生えていき捕らわれる。


「へ?」


手は2つ現れ、一つは錦糸を捕まえ。もう1つは鍵を開ける。妖怪染みた動きと共にドアを開けて現れたのは



「……ニシシシチャンネルは、俺も癒しだった。仕事終わりに見るのは良い」

「し、視聴者さん?な、なによ、あんた!?」



ハーブが彼女の家に侵入し、有無を言わさぬ暴力で協力をとりつけたのは当然の事であった。


「笑ってないな。もし、俺がここで」

「…………」

「女性に対する酷い仕打ちですら、錦糸千登勢は喜べるのか?」


情報発信が広まった世界でも、見つけられない怪物モンスターがいる。

ハーブの中で、そーいうものを見つけるのがジャネモンとしての意義なのかもしれない。



◇         ◇




お互いに戦力を整え始め、出方を伺う。やり方を決める。


「似たようなのは見えるが、どれも息子のような者はいないのは嬉しい限りだ」

「でも、早く見つけないと大変だと思います……特にあたし」


表原達の赤羽捜索は、2日目の午後に突入。

田熊も徐々に慣れて来たのか、近い存在を見つけやすくなり、マジカニートゥの能力も改良されていった。その分、彼女の疲労も大きくはなったが……。



ズズズズズズズ



「!!」



田熊が察すると同時に身震いをした。雪原に放り出されたかのような、気配。


「……いる。それに近いのが」

「え?」

「ホントかにゃ!?」


遠くて存在を確認できないが、息子のようにどす黒いオーラを空に伸ばし、


「なんだあれは……本当に人間なのか?」


空を黒く染めようとするほどの濃すぎるモノ。自分の息子よりも明らかな邪悪と認識した。

それと同じく。別方向からであったが、



「奇妙な空間を作ってるな。俺達を探っているのか?」



巨大なマジカニートゥの空間を察知したハーブ。彼もまた、そう遠くないところにいたのであった。

それが自分を捜しているモノだとするなら、放っておいたが。それならもう少しやり方に思うところがある。自分の行動を相手が考えるとするなら



「まさか、赤羽を捜してるのか?」



”宿主”を失えば、これまでの計画が終わりだ。

ハーブがどんな相手がいるのか分からずとも、マジカニートゥを追いかけたのは当然の事であった。



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