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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第53話『因心界 VS レイワーズ!俺はただ真面目に……』
208/267

Eパート


悪への躊躇ためらい。人の思う、”これくらい”ならいいだろうという、ほんの小さな邪念は小さな成功と共に育まれ、やがて、手に負えず、法にも裁かれる狂暴さになる。

とても小さな邪念であり、誰しもいつかは使っては忘れてしまう、悪の心。

ゆっくりと確実に成長していき、自分を狂わせ、滅ぼす。



「そーねっ……」



どうして成長をするか?答えは単純であり、悪にも正義にも、同一の結果がある。

”成功という体験”である。

誰しも嘘をついて、得をすることもある。真実を話さず、助かった事もある。学んだからこそ、正解を出せた事もある。なにより、性質が悪いのは”失敗した”という事でも、悪い意味での体験である。次への反省として、その悪の心は育つ。



「今日は何にしようかしら……」


一人の主婦はスーパーで今、今日の夕飯を何にしたいかという口ぶりをしながら、商品棚に目を通す……。その目は明らかに狙っている目だ。考えている事もきっと違う。なぜなら、この主婦は……


”今日はどの商品を万引きしようかしら”


ちょっとした出来心だった。自分と夫の少ない収入では、子供にも満足な食事を出せないし。自分の推しも応援できない。

そうだ。これは自分の家計のため。物価が高くなる社会が悪いんだ。万引きは、万引きされるような店が悪いんだ。

そのような心にもう、体は支配されている。毎日とやってきて、コッソリと盗む……1品2品。……やがて、高いモノへと変わっていく。こうして成功してきたからだ。例え、見つかった時も金を払って謝って許されたことっ……。いいんだ。これくらいの悪さはみんなしている。

自分だけじゃない!!周りだってみーーーんなしているっ!



「……………」



万引き(欲しい)商品に手を伸ばしたその時。主婦脳内から全身に行き渡った、”ある”こと。

それからは全てが白い世界に包まれ、まるで天国と錯覚するかのような……



「あれ?」



ハッキリと意識を取り戻した時。スーパーから出ていた主婦のカバンには、それはもう自分が驚くべきことであり、はち切れんばかりの量の商品が詰め込まれていた。当然ながら、こんな数の量を買った覚えはない。そんな金もない。これは間違いなく、自分が、万引きをしてスーパーを出たという事だった。

そして、それを証明するかのように……。

先ほどまで主婦が立っていた商品棚には、到底できないであろう空っぽの商品棚が出来上がっていた……。



◇               ◇



ブロロロロロロ



ブゥンブゥンッ



「おせーぞ!このクソ車っ!」


後ろから煽り運転をする車。前の車が遅いからと苛立った車の運転である。蛇行運転、クラクション。そこには相手を見下すという人間の無意識もあり、そのエスカレートの果ては……自分の力の誇示。

人間不思議と、車に乗ると気が強くなるという。

強くなるという事は、良い事である。しかし、”強くなるという気”だけでは勘違い。その勘違いが生み出す、もう1つはきっと、本人には幸せの1つには入る快楽であろう。しばらくに、欲するモノだ。



「あー、鬱陶しいっ!!」


一気に車のアクセルを踏んで、自分の運転を見せようとしたその時。



「あれ?」



運転手の1人はいつの間にか、病院の中のベットの上。それも左足を骨折した状態らしく、ギプスをされて吊るされていた。

さらに思わぬ事に、ベットで寝ている自分の傍には警察官や弁護士、被害者の皆様もおり


「あなたは煽り運転によって、こちらの方のお子さんとぶつかり、大怪我を負わせました」

「は?」

「あなたには刑事責任はもちろん、慰謝料などを含めたお金が……」

「は?」

「ウチの子は来年、中学受験なのよ!!なんて事をしてくれるの!?」

「は?は?は?」


な、何が起こってる!?なんで俺が病院にいて、ガキを轢いちまったっていう話になってるんだー!?金なんかねぇよ!もう仕事もできねぇじゃねぇかよ!!



◇           ◇



「まったく、酷い会社ねぇ!!」


女性のお客様が一人。

頼んでいた通販の衣類が届いたわけだが……


「全然っ、カタログと違うじゃない!!私のウエストでパァンパァンじゃない!!これじゃあ、着れないわ!!文句言ってやる!!」


よくアリがちな企業へのクレーム。お店に対する不満を吐きたいのは、自分への不満の裏返しだとも言うが……。そーいう事なんて人生にいくつあるか分かったもんではない。

コールセンターが使える時間になったと同時に、クレームだと意気込んだ。

文句を言うための衣類もテーブルに乗せ、10:00丁度となって、女性は電話をする。



プルルルルル



「もしもし!!」


こんな人を騙すような事をするんだから、怒られて当然である。


【お電話、ありがとうございます】


機械音の指示に従い、番号を押していき、担当が出て来るまで待つ……。

相手方が電話に出た瞬間


「あれ?」


いつの間にか、自分はスマホの通話を止めていた。


「あれあれ?」


時計を見るとコールセンターが開く、10:00から……いつ間にか、コールセンターが閉じる、18:00まで進んでいた。そして、それはスマホの時計じゃなく、テレビの時間、置時計の時間。

果てには、空までもだ。もう太陽が沈んで、月が昇るほどの出来事。


「嘘!?もう、18:00!?昼飯も食べてないわっ!夕飯の支度もしてない!!……あれ!?なんか、ウエストが細くなったような……」



◇           ◇



「あーもう、会社潰れねぇかな!!ぜってー、辞めてやる!来月、辞めてやる!通勤もしたくねぇ!」


誰しも思う出来事。自分の会社が潰れて欲しい。学校が潰れて欲しい。

そんな冗談だけど、本気で思う。嫌な事がある、あったとすりゃあ、一日でも早く終わって欲しいモノだ。

男性会社員は常々言うのだ。


「あーっ、早く仕事が終わらねぇかな!?」


自分のロッカーの前でグチグチとぼやきながら、今日の仕事をする。

ホントに労働とは面倒である。ムカつく事だらけ。もし、もし、もし、……3段階くらいの保険を掛けて願うことは。

この社内をグチャグチャにしたい。目一杯暴れたい。

俺はこんなところにいてはいけない人間なんだと、高慢にもなって暴れたい。


「えーっ、先月の売り上げについてだが……」


上司達の無意味な会議。やる意味が分からない仕事。

生まれ落ちて培った理性を突破し、行動さえできるのなら、自分からこの会社を潰してやりたい。ムカつくしかない事をして、お金を稼ぐなんてしたくはない。


グググッ


男性会社員は拳を強く握った時。それを、……



「あれ?」


男性会社員はいつの間にか、会社に出ていた。そして、退勤時間をとうに過ぎていたこと。



「まぁ、いいか。さー、家帰って、ゲームするぞー!」


意気揚々と帰っていく会社員であったが、彼がいたはずの社内は……倒れている上司や同僚。強盗が入ったとしか思えないような、荒された仕事スペース。後日、彼が警察に捕まって、解雇を言い渡されたのは当然の事である。

しかし、男性会社員はそんなことを”覚えて”いない。



◇            ◇




時間の感覚は個人で異なるものだ。だが、多くの者が抱く時間の感覚で正しいこと。

それは紛れもなく、幸福である時間はとてつもなく早いのだ。



「これがお前に宿った力だ。赤羽」



人間が持つ幸福とは”思い通りになっている”瞬間である。

行動の善悪に関わらず、自分の思いが行動にできるとはそれほど幸福。老いた時にはもう遅いくらいだ。何気ない事が幸せであると。


「……実感ねぇな。これ、凄いのか?幸せにする力みたいな感じか?」


人を幸せにする能力と言えば、聞こえはいいが。ちょいと違う。

みんながみんな。不思議な事に、幸せだったり不幸だったり、波が激しいものだ。赤羽の解釈では、この力を理解するには足りない。


「世の中は、”自分の思い通りに動く”。俺もお前も、そーいう権利があっていいはずだ」


1つ1つを説明したいが、赤羽をして


「長い!!」

「いや、短ぇよっ!」


簡単なんだが、赤羽がそれを理解する気がないというのが問題である。彼には授かった能力と、どこからか分からない強い自信と身体能力の強化を感じる。汚い体を捨てる事ができ、新たな肉体を手に入れた感覚。


「まぁいい!いいもんもらった!じゃーな!」

「あーーっ、ちょちょっ!!」


生まれ変わったという実感が、すでに赤羽の幸福を支配していた。謎の無敵感。謎の自信。酷く言えば、ただの勘違い。だが、凶悪な”邪念”を発するのは、そーいう強くて禍々しい、”思い込み”というものだ。

人が思う力とは強大であり、その方向が間違ってしまうと、誰にも止められない。


「言い忘れたが!!これだけは言う!俺もお前も、命を狙われる立場になった!」

「はぁっ!?じゃあ、要らねぇよ!!」

「もう遅ぇよ!!契約しただろうが!」

「契約違反だ!!なんで命を狙われなきゃいけない!?」


だって、お前が聞かなかったじゃん。という真っ当な悪の意見を言うところではあったが、ハーブとしては意外にも叱咤から入った。


「どっちも変わらないだろ!!今のお前と俺は!!」


あれこれ言いたいが、これでハーブの準備は整った。傍におくことで安心して行動ができるものだが、これは自分と同様に制御不能の化け物。ハーブはその力を与えたことに後悔はない。後悔をしてしまうのなら


「全力でこのしょうもない世界に訴えろ!!それさえしてればいい!!俺はお前の全てを肯定する!!」

「……………」


おそらく、同種。おそらく、相容れない。

分かっている事は、この世界でただ一人しか存在しないことだ。



ザッザッザッ



「赤羽。お前とはもう2度と会わない。だが、思っていることは意外にも同じ」


社会や世界への憎しみだろ?

俺達で壊そう。



◇            ◇



赤羽は自身の能力の恐ろしさを把握してない。

まだ彼の能力は使用段階。実験中。実用化には至っていないレベルである。害こそあれど、その恐ろしさにはまだ人間の悪い感情がある。それが事実。良い事よりも悪い事の方が、幸せになれる時は多い。


「酒とタバコをやってねぇと、生きてられねぇぜ!」


幸せになれる瞬間はホントにふとある。仕事の合間の一服。あるいは、仕事終わりの嗜み。

一人の中毒者は、すでに赤羽とハーブの”炎”の熱を帯び、残すはその瞬間だけを狙っていた。

タバコの自販機を前にその者は



「タバコ、タバコ」



ジュポッ



一本の煙草に火を灯すと、いつの間にか



「!!?ぶふぉっ」



10箱以上のタバコを丸々口の中に入れて、吸っているという異常な光景。



「げほぉっ、おえぇっ!?なんだあぁっ!?」



当人が混乱するのも無理もなく、そして、咽る。たまらなく咽る。突然のことですぐには気付けなかったが、


「おぉっ!?おぇっ……」


いつの間に、俺はこんな大量のタバコを吸っていたんだ!?まったく、覚えてな……。


「ごほぉっ!!ごほおおぉっ!ぐ、ぐるじぃぃっ!息が……」


中毒者には見えない体内。今、彼の体は数十年の時間、タバコを嗜んでいた事になっていた。それは一瞬のことである。


「おおぉぉっ!?死ぬぅっっ」


髪が抜け落ち、色素を失くして、白髪になる。唾液も汚れていき、歯が抜け落ち、肺に至っては死にかけの高齢者と違わぬほど、酷い有様。

ものの5分で苦しみのたうち回って死んだ。



◇           ◇



ゴクゴクゴク



「………うぷっ……」

「あ、あの……店のビールを全て飲んで、大丈夫ですか?」

「……………」


頼んだ本人としては、1杯のはずだった。しかし、気付けば店の中にあった24本のビール瓶。アルコールの類の全てを飲み込んでいた。それは体のSOSを発するまでもなく、



バタァンッ



「た、倒れたーー!!救急車!!救急車!!」



アルコール依存症。それがさらに短時間で凶悪化し、体全身がアルコールとなったと言える状態。そして、それを止めることは誰にもできないのである。ホントに一瞬の内で行われてしまう。

なにより性質が悪いのは、この現象に見舞われた当人は……まったく、このことを記憶・把握をしていない。

タバコの異常過ぎる本数に気付かず、体が酔っ払ってもまるで分からず、万引きをする行為にも気付かず、暴走した運転も覚えていない。

この力は、”自分を思い通りに動かす力”でもないし、”人を幸せにする力”でもない。

本質は違う。



こいつの恐ろしさ。



◇            ◇



「今日は新台の4パチといこうか」


朝から並ぶパチンカス達。少ないお小遣いから、頭を痺れさせてくれるパチンコを求めてやってきた。

開店と同時に、目当ての台に座り、タバコとお酒、おつまみ……。

1万円分の玉をケースで購入し、


「いざ!」


パチンコを始めたと同時に


「あれ?」


いつの間にか、パチンコが終わり。

自分の横には10箱分のケース。財布の中身はスッカラカンで、いつの間にか貯金にしていた口座からも金を降ろして、パチンコにのめり込んでいたようだ。すでに時間も閉店間際。


「おいおいおい!!」


勝ったか、負けたか。よくは覚えていない。

パチンコをやっていた事を忘れている。


「財布の中、スッカラカンでもう夜じゃねぇか!!今月、どうするんだよーー!?」



◇             ◇



「やっぱり『美少女剣士、アゲハ』はたまらんですなぁ~」


ゲーム好き、アニメ好き、漫画好き。色々、いることだろう。

彼等・彼女達も例外ではなく。


「シーズン3まで、楽しむぞ~~」


長編アニメのシリーズ物。連休になったらやりたいものだ。映画やドラマの一気見は至福。

自分達が楽しむ、それを視聴する。


ピッ


「あれ?」


OPが始まったかと思えば、すぐにEDが流れてしまう。そして、周囲と同じように時間が流れてしまう。

始まりと終わりを自分が決められる立場であると……。


「アゲハちゃんが見れないよーーー!?なんでええぇっ!?」


必死に最初から再生を連打するも、再生されるのはOPの数秒と、EDの数秒だけ。

漫画も同じく、1巻の1話を読むと、いつの間にか最終巻・最新刊の最後のページにスキップされる。

ゲームに至っては、起動とEDだけの悲しいリピート。

体験できない娯楽。


「ふあぁっ!?あれぇっ!?」


一人空しく。何十回も最初からアニメを見る事をしてしまった男性は、



「俺の腕が白い……。それになんだか、眠くなってきたし、……体が変に重いし」



永遠の幸せを望めば、終わる最後でようやく気付ける。自分の体の圧倒的な変化。



「俺、白骨化してるじゃん、やっだ~~、死んじゃうよ~~……」



ガシャァンッ



自分が白骨化するまでアニメを見続けてしまうという異常。それでいて、アニメの事を何も覚えられないという不幸な死。

副産物の現象ではあるが、確実にみんなが奪われているのがある。



この力の恐ろしさは、

”幸福・快感な時間を得られない”

というものである。

次回予告:


キッス:気味が悪いねぇ~

粉雪:今更、何言ってんの。

ヒイロ:とんでもない事をするんじゃない。


…………


表原:いや、あんた等ノリノリなんかい!!ヒイロさんまで!

ヒイロ:俺は断ったつもりなんだが……

キッス:この構図で描きたかったんだって。全然上手くいかなかったけど

表原:それならキャラを合わせなさい!雪使いの粉雪さんが真ん中で、光使いのヒイロさんが右で、トップのキッスさんが左って!……でも、性格的にはしっくり来る!

白岩:あ~あっ、ホントならヒイロの代わりにあたしなのに~。

ヒイロ:さすがに話の展開を考えて、俺がやることになった。不本意だがな。

表原:次回

キッス:『因心界 VS レイワーズ!そんなの気にして生きてられるか』



挿絵(By みてみん)

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