Aパート
「??」
表原巫女には見えていなかった。だが、娘の声がする。
一方で、麻縫が母を呼んだ事で当然。
「母親?」
表原達を握る手に目を近づけるペドリスト。そんな恐怖よりも、なんで母親がここにいるのか分からない。だが、すぐに考えられたのは……あの壌がなんかしやがったなって事。
しかし、
「逃げて!お母さん!鼠に触れちゃダメ!」
「麻縫?」
娘の声はするけれど、その姿が良く見えない。体を小さくされているなんて、一般人には想定していない事だ。
そんな言葉空しく巫女はキョロキョロと辺りを見る。この体でここまで上がって来たんだ。疲れてすらいる。
驚きの表原と、沈黙の飴子、寝手は早く来てーーーって顔のアセアセ。3人共、周囲の事に意識がいっている感じであり、ペドリストもそうであったが。レゼンは冷静だった。
なんでここに巫女がいるのか分からないが、……巫女はロバート裁判長の影響を受けていないようだ。
それに気付いたレゼン。一方でペドリストは頭が良い方ではなく、違和感も抱かず。
「君もコレクションにするぉ!」
鼠達を巫女へと向けさせた。あの鼠に肩まで乗られると、体が縮んでしまう。
「きゃあっ。鼠がいっぱい」
「お母さん!逃げてーーー!!(無理だと思うけどーー!)」
娘の叫び空しく。一気に鼠達は、巫女への体へと駆け上がっていくのだが……。
「びっくりするー」
「!?」
全然、巫女の体に変化が起きない……。
すでに4匹は乗っており、表原達もあれで一気に体を小さくされたというのに
「案外大人しい?鼠ってそーいう生き物だったかしら?」
「むむっ……まさか……座ってるんじゃないのかぉ?」
「お、お母さん。なんともないの……?」
「え?どうして……」
表原もアセアセにも分からないこと。だが、ペドリストにはその違和感に気付いた。
彼女が何故か、床に座っているような感じでこちらに向かってきたこと。ロバート裁判長の法律を無視して、このフロアまで来たこと。ペドリストの紳士ぶりから、巫女を傷つける言葉は一切なく。
「も、もしや!あなたには僕の何もかもが効かない理由があるな!!」
まさか、……自分達の”天敵となる存在”が、ここにいるなんて思いもしなかった。
どのような基準があるか。
そんなペドリストの動揺とは裏腹に、やっぱりと確信してかペドリストに捕まっているレゼンが反撃に出る。スルッとペドリストの手から抜け出す。
「表原、アセアセ、飴子。俺に捕まれ!」
「うん!」
「ああっ!お前達っ!逃げるなー」
小さくなった表原達はレゼンの体にしがみつき、一緒にペドリストの手から床へとダイブ。
「あ!レゼンくんじゃない!」
「お母さん!ちょっと、こっち来てーー!」
「??麻縫……?」
逃げようとするレゼンを止めようと、ネズミ達が立ちはだかるのだが……、レゼンも必死で追い返しながら、安全地帯を持つ巫女の下へとたどり着いた。その間にペドリストが何も手出しできなかったのは……
「むーーー……」
体の小さいレゼンも、ネズミ達の能力は効いていなかった。それはおそらく、元が人よりも小さすぎるという理由がある。
しかし、明らかに巫女の対処に困っているという表情を出すペドリスト。
表原達を小さくしながらも、一切の暴力を見せなかった理由。能力的なものではなく、ペドリストにあるジンクスの影響があるのだろうか。
「お母さん!ありがとう!」
「やっぱり、麻縫じゃない!どうしたの!?こんなに小さくなって!」
「話すと長いから、とりあえず。……俺は巫女さんの頭の上に行くわ」
「良かったーーー!やっぱり、お母さんって頼りになるーー!」
「なんでネズミに襲われて無事なんです!?」
疲れた表原達は、巫女に捕まる形で一休み……。
理屈、原因。それらを100%解析するのは、ペドリスト本人以外は無理だろう。
少なくとも、表原巫女にはいずれの攻撃も無力化されている。
純粋に強いというタイプというより、ギミックを用いた強さ。型にハマると想像以上の強さを発揮する。
とはいえだ。
「麻縫がこうなっちゃったのは、あの人のせいなのね」
「う、うん」
歩くこともできず、這う形でしか移動できない巫女では一般人だろうと太刀打ちできない。ペドリスト自身の肉体は、銃弾すら通じない。能力が効かなかろうと、力で来られたらマズイ。
そう予感させるように
グググッ
「あなたがいると、僕の”夢”が潰されかねない……。ロバート裁判長も言っていたぉ!僕も覚悟を決めねば!」
ペドリストのお腹……青い色の一つ目鼠が描かれたイラストが膨らんでいく。それを心配する巫女とは裏腹に、表原達は今までとは別の何かが来ると身構える。周囲にいるネズミ達は怯えるような顔つきになりながら、ペドリストの……Tシャツの中へと入っていく。
そして、ゆっくりとTシャツの中から現れたのは、ネズミの集合体にも思える。
「ぢゅううぅっ」
ネズミというにはあまりに巨大でワニにも見える図体。いくつもの頭がつけられたキメラ風味も相まって、不気味な巨大生物がTシャツから現れた。
「うわぁっ……」
座る巫女も見上げ……。小さくされている表原達からすれば
「デカ過ぎーーー!」
「な、な、なんですかぁっ!あの鼠キメラぁっ!?」
Tシャツから出てくるのは胴体のみだが、ペドリストよりもはるかに巨体で気色悪さもある。小さいものには何もできない……そーいう状況を悟らせる中、ペドリストの後ろに
ポンポンッ
「ん?」
自分の肩を叩く者。それに気付いて振り返ると
グッ
「へーっ、”意外”に柔らかいねぇ」
「…………」
人差し指を伸ばして、つっかえ棒をペドリストにかました寝手がいた……。なんてイラつく行為ではあったが、ペドリストは怒ることなくそのままの状態で数秒止まった後、……寝手の体に触れようと手を伸ばした。
だが、透けるように寝手の体が消えては
「ぢゅっ!」
「随分と大きい生物だな。キメラなんか、Tシャツの中に飼ってるの?」
「わぁっ!?」
「寝手ーーー!!どうしてすぐに来てくれなかったんですぅ!!」
鼠のキメラを制止させつつ、表原達の前に急に姿を出した。
その事にアセアセは号泣しながら、怒りも含めて
「私達こーなってるんですよぉ!早くあいつ倒して、私達を元に戻してください!!」
「鼠に触れちゃったら、こーなっちゃうんだよ!!気を付けて!」
表原も便乗しつつ、ペドリストの実力と能力の危険性を伝える。そんなアドバイスに対して
「見てたから僕は知ってるよ」
「「見てたんなら、助けろや!!!」」
あたし達は捨て駒かいっ!!
「ほっ。……ま、そーだろうな」
そんな風の態度をする表原とアセアセに対して、レゼンと飴子はホッとした、ため息1つ。急に男の子が現れたことでホントに不思議な事が起こっていると、巫女はボーッと眺めている最中。ぼやき口調で
「これが壌さんの言っていたパーティーなのかしら」
「違う違う。完全にあたし達、殺されそうになってるから、お母さん!……っていうか、やっぱりあの人かぁっ!」
寝手が早々に姿を現さなかったのはペドリストという存在を探っていた事もあるし。
「表原さんのお母さん?もし、あなたがペドリストの能力に影響がないのなら、表原ちゃん達を預かりながらちょっと下がって見ていて欲しいなぁ」
「は、はい。でも君は、大丈夫なの?」
「ちょっとやる気が欲しいくらいかな」
寝手がそう言う割に、真面目な面になっているのはアセアセには分かる。ついにやるのですねって……歓喜の涙も混ざってしまう。なんだかんだで頼りにできる人。そんなアセアセに対して、寝手は
「表原……麻縫ちゃん。なんかない?」
「えっ!?あたし!?」
「そ、そーいうのは私に言ってくださいよ!美味しいお菓子ご用意するとか!!」
「そんなのはいつでもできるじゃん、アセアセ」
やる気の出るなにかを、表原に要求する。母親もいる状況で何をさせようと言うんじゃって、表情をする。
そんなやり取りを待っているほど、ペドリストとキメラ鼠は甘くはなく。寝手を力で潰そうと襲い掛かったが、
パチイィィンッ
泡のように、寝手も表原達もペドリストの前から消えていく。透明になる能力ならばもっと前から使っているはずであり、この状況で使って来た事と自分への仕打ちを感じるに、仲間への危険回避にしては不可解。
しかし、
「幻覚だぉ」
ペドリストに見せられているのが幻覚というのなら説明のつくところが多い。
寝手の能力を知れたというのは大きいが、
「そっちも早く見せてくれよ。お前の”匂い”は、僕に分かってるぞ」
手札を晒したような行為。
まだ、ペドリストの後ろに寝手達がいる。この幻覚に翻弄されてくれる内はいいが、巨体も相まってパワープレイで来られると、寝手も小さくされている表原達にも危険が及ぶ。そして、ペドリスト自身も……そーいう行為を好んでいない。
小さくて可愛いモノを潰すこと。それも自分自身がやってしまうことを……。
ペドリストとキメラ鼠が沈黙し始めつつ、
「…………君」
どう応えるか。それを待たずして寝手は、今のペドリストが自分と戦えば勝てない理由に近いものがある。その一つに、能力の解析がペドリストとロバート裁判長の方も済んだからだ。
それはペドリストにある違和感を掴むこと。表原巫女が何故、ペドリストの能力とロバート裁判長の能力を無効化できているのか。
「ペドリスト。君の能力の肝は、自分より”小さい相手”は、自身の能力から除外してるんじゃないか?」
小さいモノ・可愛いモノが好きな生物。
大きな体を持つペドリストであるが、今、寝手の意見を真に受けるとすると
「ええ!?その理屈はおかしくない!?」
「あの人、小さくされる私達よりはるかに大きいですよ!」
表原やアセアセなどに、小さくなる現象が発生する理由の説明がつかない。しかし、ペドリストの体は壌の一蹴りによって、生物としては不可解なヒビを作っている……。そこから導き出される、ペドリストの本当の姿。
ペドリストの沈黙のまま。寝手は促す。
「あまり気持ち悪い変態を装うなよ。薄っぺらいよ」
その言葉にペドリストは、自分の皮膚を掴んだ。寝手の言う、薄っぺらいところを剥がすように……
ビリリリリリ
「よく……、ここに僕がいると分かったね」
大きな体を持つペドリストの体が、彼の衣類ごと剥がれる。中からその姿を現した時、
「うっそっ!?」
「まぁ」
「うえええぇぇっ!!?な、な、な……すごぉっ」
寝手の後ろの女性陣が仰天するほどの人物。別に知っているわけではない。あまりのギャップに驚いているのだ。
その上で寝手は
「ふ~~ん。君、僕と似てるなぁ」
「かもな」
男同士に通じるシンパ。……もとい変態同士だ。
しかし、それを瞬間的に
「同類に見えるかーーー!!寝手くん!!な、なんですかその美少年!!」
表原はペドリストの中にいた、その美しい者について早口で言う。
「白色美肌で小2くらいの可愛いくて幼い子供と、君が並んでいいわけないでしょ!!」
「めっちゃ良いショタですよ!!彼!!青髪ショタで上半身裸とか、良すぎます!」
小学校の時点でイケメン・ブサメンの棲み分けがされている事だろう(悲しいなぁ)。
そのイケメン枠でも一番に入りそうなくらいの、美しすぎる容姿。本当に気持ち悪いおっさんの中にいたとは思えないほど、美少年過ぎる。
なんでそんなイケメンがあんな気持ち悪いおっさんに扮していたのか。……それと、ショタモードに目が行きがちであるが、彼の着ていた青色一つ目鼠のイラストの子も、随分と可愛い妖精チックな姿になってペドリストの肩の上に乗っている。
「可愛い~」
「ほ、本当に中にいたの……凄く可愛いのに……」
可愛すぎるコンビに、表原達は騒いでいるところ
「静かにしてくれっ!!」
不満げに。
ペドリストはその声を注意した。おそらく、黄色の声援なんてよりも、理解してくれる1人が欲しい。彼の意識は表原達にではなく、寝手一人に向かっている。とても最低限で優しくて威圧なき注意。
「僕は、僕のやりたい事をしたいんだ!!」
幻滅するような事は言わなくていい。代わりに相手となる彼が言う。
「互いに性欲湧いてるんだから、外野は黙ってろ……ってさ。麻縫ちゃん」
「気持ち悪い感じに翻訳しないでよ、寝手くん!!」
「その人がそう思ってるわけじゃないでしょ!!寝手だけでしょ!!」
イケメンに……美女に……。
憧れ。
それを良しと思っている人もいれば、どーでもいいと感じる人。寂しく生きていくのはできないけれど、寂しい時が恋しくもなる。
こうしてぶつかり合う事を望んでいて、こうして気が合いそうな友達を。
「君と僕は似てない。だからこそ、気が合うだろう。……複雑だなぁ」
心の中。
どうせなら君じゃないレイワーズと戦いたいって思っていた。
寝手は、……ペドリストが今でも精一杯隠している気遣いを、掃ってみると良いって……
「……僕に限った話ではないけれど。おっぱいが大きくて、猫耳メイドな可愛い女の子が好きだ。人は定番でいい」
目はずーっと、ペドリストの方に向いていて、タイプとなる女の子を語る寝手。その言葉は明らかに彼の妖精である、アセアセの特徴を表しており、頬を赤らめながら照れるが気色悪いって思うアセアセ。……純粋に男って気持ち悪いなぁという表情になる麻縫。
「君も小さいモノが好きだろうけど、男なら分かるだろ?」
「……おっぱいは大きい方がいい!しかし、デカさに囚われて、形が悪いのは良くないと思うんだ!」
お前等ホントに、キモいオタク特有の気色悪い女子への会話をしてんじゃねぇ。
小さいもの好きのペドリストも男の性別を持つが故、女の子の一部に興味ある意見を述べる。その時の表情は、……女子には分からない男らしさがあるもの。こーいうのでいいんだ。
自分の邪念(動力)は、周りから見た自分で出来上がっている。
周りにそう思われて欲しいという憧れで、自我なく動いてしまう生き物。
それに解放された時、本当の自分になれる。
ストレスは姿形になる。ペドリストがとても醜い姿を演じたのは、内面はずーっと人が思うほど醜く理性よりも本能に近く、忠実でありたく、周りにも気を遣ったこと。寝手に乗せられている事を不快に思わず、むしろ楽しんでいる。
戦わなきゃいけないのが、残念に思うくらい楽しい。
「そんなお前と戦うとは…………僕には覚悟ができている!!」
ペドリストの強い言葉は、仲間になれそうな奴と戦うためのこと。
対して、寝手は
「……まだ、僕には足りていない。ペドリストを倒すくらいの覚悟がほんの1人分……だから」
後ろを護る人達がいる中。
口に背中があるように、……寝手は言っている。
その言葉ならこのアセアセが……。変態の演説によるフリもしてもらったわけだしと、彼女が声をあげようとしたところ。
「麻縫ちゃん。僕は君を好きになった」
戦う覚悟よりも、その覚悟はあんのかと言いたい。
「………はぁ?」
「えっ」
「君から僕に助けを求めてくれると、覚悟が満たされる。どうかな?」
・・・・・・・・
場が凍った。
特に表原麻縫本人は、冷凍食品並の冷たさになっていた。しかし、徐々にレンチンされるように体が熱くなっていき、
「あ、あ、アホか!死ねお前っ!!!」
「あ、暴れるな!表原!ここ、お前の母さんの上だぞ!」
どこに好かれる要素があるのか分からないのだが。表原からすりゃあ、なんであんたに好かれなきゃいけないんだ。超迷惑なんですけど!って気持ちが大分強い。
告白されるなんて初めての事でもあるが、お前なんか頭の片隅にも入れちゃいない、ど変態!
拒否をする。それはそう。
寝手も強引なOKはもらうつもりはなく、マイペースに
「お付き合いからでいい。君の姿も心も好きなんだ」
「……聞けよ!!こっちの意見に耳を傾けろ!!お前、死んでいいんだよ!!」
麻縫の全力の拒否をしてきても、寝手は気にしない。唐突な告白にアセアセは顔を青ざめていた……私は関係ないのかっていう気持ち。レゼンもレゼンで、寝手の行動がこのことを目的としていたらと納得はできるんだが……。唯一、寝手の事をよく知らない母親である、巫女にとっては
「良かったじゃない、麻縫。彼氏は出来るに越した事ないのよ」
「お母さん!!あの人、マジでヤバイ人なの!!すっごい変態なの!さっきの口上は絶対に事実なの!」
「男性ってそーいうのを隠してるものよ。お父さんもそーだったし」
現状の好き嫌いは置いとくとして、異性との付き合いは大事だとやんわり伝える母親。
そんなところまでまだ、理解はしていない麻縫にとっちゃお断り。少なくとも、寝手はありえねぇ。だが、寝手は聞かなくても良かったのだ。
「定番よりちょっと、好きや欲しいの気持ちくらいだよ」
異常な愛し方ではない。あくまで友好的な言葉を出す。
アセアセとはまた違って意味での、パートナーとして麻縫に告白したとも言える。顔が真っ赤になる麻縫はもうヤケクソだ。相手が寝手だから……ゴニョゴニョとした付き合いをイメージしたが、今は男友達というレベルのものだと分かって
「寝手くん!助けてぇっ!!」
「覚悟は決まった」
「……はい、助けてよ!!あぁ~、気持ち悪~」
「そこまで言ってやるなよ、表原」
麻縫の言葉を後に、寝手が取りだしたのは自分自身をジャネモン化するアイテムであった。
妖人化だけでは足りておらず、それだけでは本気のペドリストには敵わないと悟っていたからだ。
おまけ:
表原:お、お、お聞きしていいですか?
ペドリスト:なに?(なんで緊張を?)
表原:な、なんで、普段から姿を隠してるんです?こっちの方が良いと思いますよ!絶対!
ペドリスト:……僕はこの姿が嫌いなんだよ。縛られる感じが
表原:え?……まったく、分からないんですけど
ペドリスト:うーん、尊敬できる人に癖のある子が好きだと知ったら、イメージダウンするだろ?芸能人とか、自分自身が看板じゃないか。看板を汚すなんて真似は無駄に命に関わる。
表原:でも、周りもきっと応援すると思いますよ
ペドリスト:その周りの事さ。周りの言葉や思いは、自分自身の事じゃないんだよ。
表原:……きっと、あなたを理解するって難しいです
ペドリスト:理解を求めてたら、自分の好きを止めちゃうよ。理解される共感が幸福な事も事実だけれど




