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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第49話『仲間に売られて潜入しちゃいますよ、イケない島の本気かよ!』
187/267

Dパート


エロシュタイン島へ入るには、VIPゲストルートか。商品としてのルートか。その2種類だけである。

VIPルートには、数少ない専用の”参加資格”の証明書が必要であった。



「えーっと……」



ブルーマウンテン星団が保有している”参加資格”は1名のみ。

これを持って、エロシュタイン島が保有している港から船に乗らざるおえない。

”参加資格”はそれはたまげるぐらいの金額で売られており、一度の購入でパーティーへの参加が自由にできる。……というほどだ。”参加資格”を盗まれようが、紛失しようが。特に再発行のないほどの金額を出さなきゃ、入手できないほどの価値。



「こちらがパーティーに向かう船ですよね?なんだか私、場違いで申し訳ないです」

「大丈夫大丈夫!!みこみこは可愛い!お買い物して、バッチリメイクもして、清楚なお嬢様になっているよー!私と一緒に楽しもーよー!」

「壌さんのお洋服も素敵です。私もそーいうの、一度は着ても面白いかと……ふふ。ビックリする徹さんも見たい」

「イケイケでしょ!まだまだここからぁっ!……っていう、美人2人が頼んでるんだよぉ~ん」



”参加資格”の数と購入者は、エロシュタイン島に記録されている。それとは違う名を持つ者が参加する事も良しとしてる辺り、参加方法は緩いのかもしれない。”参加資格”を係に見せた後、自分のフルネーム、出身国、紹介者などを登録。そして、乗船へ。

移動する船は決して大きくないが、それを護送する船が3隻。それも兵器を搭載している厳重ぶり。不審な動きがあれば、船ごと沈める事もある。VIP側は、世界の大物達・富豪・有名人。国に関わっている人物といったもの。

こんな豪華で混沌としたパーティーに、明らかな場違いと思っているものの……。



「ですから、そーいう事は……」

「なになによー!私はみこみこの補助者だよー!」

「いや、変質者でしょ?なんつー、カッコをしてるんですか?」



係の思わず、ツッコムくらいにはド派手で露出度がヤバイ服を着ている壌。そんな彼女が乗船の最中でトラブルを起こしていた。通常の船のやり取りではあっても、こーいうのはなかった。



「車椅子の方のご利用は……」

「あー、差別するんだー。プンプン!上の人を呼んでよー!」

「い、いけないですよ。壌さん。揉め事はやめてください!」

「揉めてないもん!普通にみこみこを乗船させないのが悪い!登録しているのは、みこみこ!」



後で知る事になるが、……表原からしたら、さらなる大激怒の行動。壌はなんと表原の母親である、巫女と一緒に乗船する気だった。初めて会ってから、意気投合して連れてくるという暴挙。当然、彼女の身の安全も第一。


「ボディガードだっているでしょ!!ここの参加者達!それと変わらないじゃない!」

「その方はちゃんと”参加資格”に人数が書かれていて、金額も払われているんです!」

「あなた達にみこみこのお世話ができると思うの!?私がいないとみこみこ心配だよ!男の子に車椅子の女の子を優しく扱えるの!?」


”参加資格”が2名で、ボディガードを連れているケースがある。それをしてないのに入島までさせろとは、運営側も困った者。しかし、巫女は車椅子での入港を希望。自由な参加を許すこともあり、障害の理由で拒否は難しい。

係の者が上の人間に問い合わせをする事に……。その間、巫女は壌に対し



「やっぱり、私にはいいですよ。本当の参加は、壌さんでしょう?」

「だめだめだーめん!まほまほだって行くんだよー。母親として、可愛い娘の姿を見たいでしょーよ!」

「それはそうだけど、……あの子、どこに行っちゃったのかしら?お父さんはホテルで酔ってるし……でも、他の子でも……」

「あっちはあっちで、あとで育つーりんと父親談義するよんよん!」



参加の遠慮を伝えたが、壌の独特なテンションに振り回される形で結局、向こうがOKするのなら行く決心を固めた。なぜだか分からないが、娘も参加するというのだ。子供は別枠と聞いて少し不安に思ったが、



「レゼンくんがいるし、そっちはそっちで大丈夫だよー!まだ近くに育つーりんがいるはずだし!」

「……そうですね。麻縫も少しは自由を楽しんでるもんね」



壌の事を信用して、麻縫とはそこで出会えると思っている巫女。彼女はエロシュタイン島がどーいうところなのかを知らされていない。

単純に仲が良くなったから一緒に行こうという壌の考え。これは80%、友達として思うところ(女性だって気になるとこ)。一方で20%は、自分が任務に当たる上で、本気でお客様としているわけには行かなかった。

参加者が自由に行動できるかというと、NO。それより入島はできるボディガードぐらいの立ち位置がいい。お客様は自分自身も含め、富豪クラスのVIP。お客様を傷つける事はそう出来ない。巫女にもそれ相応の対応があると思っている。


そーいう計算を、誰にも伝えないのはとても問題ではある。



「表原巫女さん。今、上の者と掛け合いました。船内でいる限りは、野花壌さんの乗船は認めますという通達がでました。島内ではお一人での行動となりますが、宜しいでしょうか?」

「え、壌さんは中に入れられないんですか?」

「島の中ってちゃんと車椅子で動けるのんのん?」


お客様が若い奴とは限らない。動ける奴等が来るのが想定されているため、車椅子での行動にそこまでの不便は現れない。しかし、島の中の事など係は知らない。しかし、


「いや、ダメです!できるのは船内までです!ホントにすみません!」

「壌さん………」

「う~~~んっ」


城の手前までみこみこと一緒に行けるかと思ってたけど、そこまで甘くないか~。

”参加資格”が1名様だけだし、猪野っち春っちの強欲~!でも、巫女が中に居てくれたら


「じゃあ、みこみこ!このお守りを大事にねっ!」

「え?あ、はい……」

「何かあったら飛んでくるからねっ」


壌が巫女に渡した謎のお守り。……というより、極小のGPS機能が詰まっており、巫女のいる位置情報が、島の外で待ってサポートに徹する育のところに送られる。島内ではVIPも含めて、電子機器の使用は禁じられ、船内で回収されてしまうからだ。裏社会の重要施設。大切なVIPにもそれに努めてもらう。しかし、意外な事に銃やナイフといった護身用の携帯はOK。暴れる相手もいるという事であり、自分の身は自分で護れるよう努めて欲しいのだ。



表原巫女は車椅子で城内まで入場する予定。

一方、野花壌は船までの同行は許されるも、エロシュタイン島へ入る事は禁止とされた。



ま、それを超えるレベルをやるのだから、カンケーない。壌の任務は、ロバート裁判長の始末だ。船を監視される事も想定している。




◇           ◇




ブロロロロロ



「お母さんと一緒にお買い物できたのは良いんですけど」


壌と巫女が船に乗り込む少し前。別行動として、表原は育と一緒に車で移動中。その前に家族と一緒に食事をしたり、パーティーに出るからと服選びと……



「お金も出してくれるなんていいですけどね……。あたし、14ですよ!なんでこーいう露出の強いっていうか?」

「若い内に着ないとダメになっちゃうよ。体が」

「どーいう意味ですか!」

「ははははは、いずれ分かるよ」


プクーっと頬を膨らませる表原。可愛い服を選びたかったのに、完全に汚いおっさんが想像しそうなエロい服をチョイスされた。というか、壌が選びやがった事にご立腹。


「お嬢様っぽいのがいいのに~……こんな薄くて大事なトコしか護ってくれない下着と、短いスカートって~~」

「お子様の好みと男の好みは違うんだよ」

「何冷静な口調で、女の子を絶望に叩き落してるんですか!?」

「そーいうジャンルもあるんだって!っていうか、そーいう子をね。商品としてだね」

「人権があるもんでしょ!!!やっぱり、あたしは止めたい!!」



嫌です嫌ですって断ったが。折衷案として、両方買ってあげるという対応に完敗してしまう。その上、母親の巫女も壌が選んだ服にちょっと興味津々という。


「だから、お前。……母親に似てるけど、内面は父親似なんだよ」

「うるさーーい!レゼン!!」


細かくは言えないが、表原は間違いなく父親似の性格であり、Sっ気は薄い。巫女は意外と根に持って、行動ができるタイプだった。

車内ではまだ普通の服だが、


「現地着く前に着替えは済ませてくれよ。俺は席を外してあげるから」

「あーーーーっ!こんな下着姿同然の奴、知り合いに見せたくないのに~~!」

「上着はちゃんとあるだろ」

「羞恥心だって有るよ!」


取引される前には着替えておくようアドバイスされる。

後部座席に座る表原は、改めて自分が着る服を見るのだが……、可愛いとは思えん。派手……ってか、ゲキ恥い。こんなの大人になっても着たくない。大人になるって分からない。



「ううぅっ」



壌と巫女のVIPルートと異なり、商品としての人身売買ルートによるエロシュタイン島への潜入となった表原とレゼン。

人身売買のルートはVIPルートとは違う船で行く事になる。外装だけはいいが、中身はかなりボロい観光船だと育は言う。人身売買の乗船には、”売り手”OR”売人”OR”仲介役”のいずれからの招待・承認が必要である。


基本は各国の売人を通して団体の子供・女性達で乗せられるケースが多い。

”売り手”は直接、子供の親族が販売人となり、仲介役は売り手の存在を隠して販売する方法だ(親に売られた事を子供に秘匿にするやり方)。

売人ルートであると多くの人間が運び込まれる分、扱いが良いとは言えない。しかし、”売り手”OR”仲介役”の場合は、扱いの良い運びをされる。1ルームに2人か3人と入れられる。

船の中での行動は部屋の中では自由。しかし、許可なく部屋から出ることは取引の失敗に繋がり、危険な目に遭う。そして、エロシュタイン島の到着までに20~30分毎に、見張りと目利きが来るそうだ。”売り手”から仕入れた人間は身なりや身分などもハッキリされており、何より綺麗な扱いとなり、そこから金額が上乗せされるとのこと。



表原は、野花育が”仲介役”となって、売られることになっている。



「育さん!!なんか凄いことになってますよ!」

「お金はホラ……君達に買ってあげた服に回すから」

「別料金で請求しますよ!あたしが独占します!」

「じょ、冗談冗談。……俺が”仲介役”の資格があるからな。本当なら島内まで入りたいけど、俺は壌ほど動けないからサポートに回るよ」

「けど、人身売買の資格持ちって。あんたも危険な奴だな」

「俺は仕事で!エロシュタイン島はな、政治的にも利用されてるんだ!まだ子供はそーいう事を深く知らなくていいよ!若さが一番!」



軽く言ったが、世界の悪党に繋がる話。レゼンは



「表原には関わりを持たせるな、あんた」

「分かってるよ。それは護る」



知らない話は知らない方がいい。随分と踏み込んでいるが、恥ずかしさなんかで済めたら天国なところなんだろう。



キーーーッ



目的地に着いた。すぐに育は、相手との話し合い。その間に表原はしょうがないけど、可愛い服じゃなくて、エロい服をアクセサリーも添えて着用。全身鏡で見たら恥ずかしくて死にそうになるが、


「うーっ」

「俺が服の中に隠れるスペースもあるし、これでいいだろ」

「けどさ~」



その後、育と怖い警護の者達と一緒に船へと運ばれる。その時、育はこの人達は自分が信頼できる連中と教えてくれた。だが、彼等も船の中にいるだけ。島に入ってしまったら、何もできないとのこと。


「今日は218名の輸送だ」

「随分と多いな。団体が入ったか?」

「売人側が187名、売り手と仲介役で31名だそうだ……パーティーだもんな」




こちら側の船には、商品としている人間達以外にも、アイテム、ドラッグ、危険物などを積載している。

商品の人間達の中にはすでに”ソレ”を使っていないとダメな人達もいる。

富豪達の、質の悪い趣味だ。


「表原麻縫。君はこの部屋に入れ」

「は、はい……」


案内されて入れられた部屋は、机と椅子、毛布。窓なしという……、囚人の移送にしか思えない作り。これでも良い方とは……。

1人で占有できるのなら広いと思えるが、あと2人来るらしい。

自分のような恰好だとしたら、



「まだ同情できるんだけど」

「……奴隷ってのは、服を着てるだけでも良いもんだ」

「そーいうものなの」



レゼンの言葉通り。売人側の人間達の環境は、表原がすぐに泣くくらい悲惨なものだ。結末が分かっているような、どす黒い絶望が積められた感じ。体の寒さよりも人生の凍結ぶりが伺えるくらいにだ。彼等はきっと、……。



ガチャッ


「あ」


待っていると、自分と同じ部屋になる人達が2人やってきた。

男女のペアだ。

女性の方はこれまた自分と同じく、恥ずかしそうな顔をして、猫耳と猫のしっぽ。すごーい水着を着ている。ちょっと寒そうに両肩を震わせている。男性の方は凄く高貴そうな、どこかの御曹司にも感じさせるオーラ。なんでここに運ばれたのか分かってなさそうなくらい、由緒ある家から来た身。雰囲気がこっち側には思えない。


「す、座っていいですか。寒いなぁ」

「ど、どうぞ」


女性がそう言って表原と向かい合うように座る。その声と恰好には



「んん?」

「ん?」


表原も服の中に隠れていたレゼンも、少し首をかしげ


「……あれ?」


相手の恰好がとてもイヤらしいもんだから、全然知らない人だと思っていたんだが……女性の方は聞き覚えのある声に、表原達と同じような呟きを……。そして、誰よりも早く見抜いたのは男性の方で


「君、……表原ちゃんかな?」


ずばり的中させた。


「ええっ!!?」


よりにもよって、自分を知っている人間に出会った。それもこんな格好で、こんな状況で。まだ、任務だからと割り切っているキッスや粉雪ならともかく。偶然にも出会うことで



「ね、寝手くんとアセアセさーーーん!?」

「な、な、なんでSAF協会と出会うんだよ!?」

「こ、こっちの台詞ですーー!?なんで表原ちゃんとレゼンがーーーー!?」

「……前の一緒の船に乗ってたのには気付いてたけど、同席になるものかな~~~?」



周りにもビックリするほどの大きな声をあげるのは、無理もない。そして、表原にとってはこんな辱めを知ってる男の人に見られた事で、相当なパニックになった。超死にてぇって、……恥ずかしいってホントに死にたいと思った。

この2名の出会いは、偶然ではなく、仕組まれたもの。それをなんとなく早期に察したのは寝手であった。そんな事ができるとしたらだ。




ブロロロロロ



無事に表原を人身売買のルートで潜入させた育。車を運転しながら、



「色仕掛けをして、相手に協力を求めるんだ。表原ちゃん。服は島に入ってからで良いんだよ」



野花財閥の乗船名簿を育が見た時。

死んだはずの伊塚院長がいる事を知り、ちょっと調べてみるとSAF協会の寝手達であったのに気付いた。金習側の人間ではないし、実力も確かであるが故。上手に扱えばこちらと利害が合うかもしれないと、育が表原と寝手達を同部屋にしてくれたのだ。




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