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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第48話『五つ巴③、録路VS金習』
179/267

Bパート


「殺しに来た……そんだけ」



此処野はタバコを咥えて、火をつける。……雨が降ってるのに、タバコがシケないのはどう考えてもオカシイ。

月継の能力か何かと分かった此処野は、アタナを右手で握りはしているものの戦闘態勢をとらない。


「あー」


一方で月継の方は。経験の浅さ故、力量を把握していない。だが、それをひっくり返すくらいの外道。


「俺の質問、答えてくれよ」


話しかける。そのモーションには、人としての言葉がこもっていたが、行動は奇襲のみ。


『ジゴゴゴゴ』


両足が蛇になった姿。月継の上半身は向かう素振りもなく、蛇だけが此処野へと突進しており。月継はそれに”待った”といった反応すら見せない。狙っていた。

大きな口を開けて此処野に噛みつこうとするも、


バシイィッ


アタナすら使わずに此処野は蹴りの一発で弾き飛ばす。


『ジゴゴ!?』

『ギョギョギョギョギョ!』


多少の抵抗。蛇はそう意識したのか、答えを聞かずに此処野に襲い掛かり、月継としても


「テメェが何者とか聞いちゃいねぇ!!死ぬか、死ねか!どっちも同じだよ!!」


雨の効果が効いちゃいないのを何とも思っていない。月継自身はまだ、動いてはいないが。自由自在に動かせる両足の蛇に此処野を任せていた。だが、


「すぅ~」


咥えたタバコを口から吐き出した後、息を吸い込んだ此処野。

ここまで殴打で応戦していたが、やり方を変えた。だが、アタナはまだ使わない。


「はーー」

『ギョギョ!?』


大きく吐き出したのはタバコの煙。それを正面から浴びた、右足側の蛇は怯んでしまった。一方で、左足側の蛇も煙に動揺してしまい、やや後ずさる。そんな隙を見逃さないで此処野は、右足側の蛇の頭を全身で捉え、



「殺すのは俺の方だ」


ベギィッ


『ギョギョ!!』

「ぐえっ!?」


此処野の膝蹴りの連発が蛇の頭部から、月継の体へとダメージがフィードバックしていく。口を抑えられては、蛇がとれる攻撃に制限が掛かってしまう。それを解放するべく、左足側の蛇が此処野に襲い掛かったのだが



「ほらぁっ」

『ジゴゴ!?』


此処野にはそれを読まれ、右足の蛇を投げつけることで牽制。両者が重なったところで、本命となる。


「アタナ」



ドスウウゥゥッ



槍のアタナが、2頭の蛇の頭を貫通するように刺さった。

その瞬間の叫びは大音量であり、周辺にいる猛者達がホッと安堵するくらいのもの。



「ぎゃああああああああ」

『ギョギョギョギョギョ!!』

『ジゴゴゴゴ!!』



頭をぶっ潰されるダメージが月継にフィードバックされ、本人にとっては忘れられないこと。


「おいおいおい。そんなんで死ぬんじゃねぇぞ、雑魚」


此処野からすれば、自分の技の1つも使わなかった雑魚という認識。彼との戦闘経験の差が大きすぎる……。だが、そーいうものを覆してくるのが、才能という性質の悪さ。

予想外の敵ではあったが、月継からしたら衝撃は少なかった。こーいうイメージってのに、敗北が少ない。まだ、生きているからこそ。


「うおおぉぉっ!逃げるぞ!!」

『ギョギョギョギョギョ!!』

『ジゴゴゴゴ!』


とりあえず、逃げる。態勢を立て直す。月継は慌てているようで、冷静だった。

蛇達は円を描くように動いて、アタナに突き刺された拘束をとき、すぐに反転して逃走。突き刺されたのに頭から血などは流れずに、再生しているような状態になっていた。


「……………」


此処野は急かずに、アタナを拾ってから月継達を見ていた。こちらも冷静であった。

それが月継を若干だが焦らせた。


「逃げるんだぞぉ~!」


やべぇやべぇ。なんだあのガキ!?瞬間移動に加えて、病気になんねぇのかよ!逃げたところで打つ手ねぇーー!けど、逃がしてくれねぇよな?あんだけ攻撃しておいて!どうやって、逃げる?蛇のどっちか切り離す!?待て待て、それって片足になるって事だからやべぇじゃねぇか!つーか、さっきの痛みがヤバっ!眠れなくなったーー!


愉快な思考をしつつも、結論から言って。此処野を相手に長期戦はヤベェと内心固まった。もしかすると、エフエーがやられちまったのかとも月継には想像がついた。

此処野の瞬間移動からして逃げもできないとなれば、立ち向かう。がむしゃらな判断ではなく、その場で適切な判断だ。

その判断を元にひとまず、距離をとりつつ、戦略を練る月継。



奴の瞬間移動からして、飛び道具はねぇ!!

かといって、病気になんねぇなら……。俺は命を懸けられる!



ヒュッ



「!」


後方から感じる眩い光と共に、月継が無警戒と思っていた此処野の飛び道具が来ていた。

今度は蛇ではなく、月継の本体の背中にだ。



ドスウゥッ


「ぐはぁっ!?」



槍を投げて来やがった!?そーいう使い方かよ!しかも、



月継の背中に突き刺さったアタナは、光となって消えていく。というよりも、投げつけた此処野の方へ戻っていく。とても冷静に、月継の行動を奪っている。月継は背中を刺された瞬間、アタナを奪ってやろうとした作戦もパーになる。そうなれば、月継はすぐに自分の命を懸けた。



『ジゴゴゴゴ!』


逃げる月継の蛇達は、突然。地中へと潜っていった。しかし、月継を地上に残したくらいの位置でだ。そして、月継自身も此処野の方へ振り返った。



「俺はお前に用はねぇ!病気になんねぇなら、どきやがれ!!」

「あ?やんのか、テメェ?」


不利なのは明らかに月継の方であるが、対峙した瞬間の覚悟には自分に酔ったものだ。

此処野は焦っていない。余裕でもあると思うが、月継なりの心理戦を仕掛ける。両足の蛇達を地面に潜らせたことで、此処野と同じ背丈になったところを含め。



「来るなよ!お前が踏み込めば地雷のように、俺の蛇が”地中”から襲う!!」

「…………」

「いくらテメェが強かろうと”地中”からじゃ、防げねぇだろ!」

「ほーっ」


此処野は月継の言葉で地面の様子を見た。

月継の足が地中に埋まっている気配は、此処野でも感じ取れない。

それを察して、此処野は大胆に向かってくる。


「待て待て。それはねぇーだろ」


月継がそー警告したにも関わらず、此処野は平然と直進するのだ。

ハッタリであると、見抜いた?あまりに気配がないから?

此処野の想定していない愚直な前進を見た月継の表情と言葉は、



「おいおいおい!!近づくなぁ!」


なんで止まらねぇ!?ハッタリだと見抜いたってか?攻撃が来ないと、思ってるのか!?


「急いでんだ」


ここまで月継の両足の蛇が軸となって、戦闘という逃亡を行っていたが、ジャネモン化した際に現れた月継の背びれが青色に光始め、雨雲を肥大化させつつ、その重さ故に地上へと近づいていた。

此処野のほぼ真上。さらに背をとれるようにと静かに雲が接近している。

此処野が近づくと半分、月継は後ろに下がる。相当に近づかれる事を嫌っており、もはや、”地中”の地雷の嘘は見抜かれた。だが、ないというわけではない。



ボンッ



『ギョギョギョギョギョ!』

『ジゴゴゴゴ!』



地中に潜っていたはずの蛇は、手品の一種である切断マジックのように、地中ではなく月継が作り上げていた雨雲の中へと移動していた。一種の空間移動ができる能力を持っていた(月継は不可)。蛇達にとっては発生させられた雲も、体の一部のように操れるのだろう。

地中からでも上空からでも、万が一の戦闘が行える汎用性の高さ。確実に此処野の背を襲った蛇であったが、



ドスウゥッ



此処野のアタナが狙い澄ましていたかのように放たれ、二頭の蛇の体を貫通。体を内側から外側へと広げさせていた。内部を開かされ、



「て、てめぇ……やりすぎだろうが……」



蛇達のダメージが月継にフィードバックされるまでの間に、此処野に愚痴っていたこと。

此処野は



「手加減してるぞ。お前が弱ぇのは想定してねぇ」

「……だから……てめぇ……」


断末魔が酷いだろうからか。此処野は月継が叫ぶ前に、彼の喉に向けてアタナを突き刺せた。これ以上の問答をするつもりはない。



ブスゥッ



黙って聞け。

そーいうことが此処野には



「3つ」



月継とのつまらない戦いで感じた事がある。

この手のタイプは好きになれない。どっちかというと殴り合い、血が流れ出る事の方が嬉々として喜んでる。


「お前、殺し合いの経験が少ねぇ。奇襲も戦略も、なんとなく読めるんだよ」


此処野が月継の最後の奇襲も、言葉の嘘に惑わされなかった理由もある。此処野から見て、月継の意識と視線はこれから命を奪うであろう此処野に向けられておらず、自分の攻撃に意識がいっており、後方……それも上から来るってのは予測できた。


「真剣勝負だ。手はガチっと握らねぇと力みがでねぇ。終始手を握らないお前が、その勝負を俺に仕掛けた時点で負けてんだよ」


此処野の能力が明らかな武人寄りであり、月継の能力が妨害要素を多分に含んだ性質。

接近戦は本体であるエフエーがカバーするという戦闘スタイルが、本来の形である。短期戦かつ接近戦になった時点で月継の勝利は難しい。そこを知らずに、月継が能力の制御ができた喜びに浸ったのが悪いだろう。

執拗に追いかけて、位置まで特定して殺人を実行する此処野とは、とんでもなく相性が悪いとしか言いようがない。

経験・能力の相性。

どれをとっても、月継には不利であったが。

此処野の静かなやる気を出す理由があった。



「1番言いてぇのは、あのデカおっぱいのアホを苦戦させた事だよ。お前みたいな奴に、あいつが苦労するわけねぇんだよ」



こんな奴に苦戦していた、白岩の姿を嗤うためだ。



此処野神月 VS 古野月継



序盤は病にさせる雨で、街全体。白岩や寝手を苦戦させるほどの実力を見せたが、此処野とぶつかった事で圧倒的な戦闘力の差を見せつけられ、体を内側から割られるようにされて死亡する。




◇           ◇




「ずるいなぁ~」


寝手は此処野に対して、随分と姿勢の低い煽りをする。まるで君の手柄だけじゃないとして


「君があの雨の中で平然とできていたのは、僕が抗体をばら撒いたからなのに。此処野がすぐ倒しちゃったら僕の頑張りが意味ないじゃん」

「うっせー、馴れ馴れしい。お互い、仲良くするタイプじゃねぇだろ。寝手」


その煽りを此処野は無視。そんなこと知らねぇって態度は確かだ。

病気になるとはいえ、長時間もの間、当たらなければなんともないと言える。

此処野とルミルミの2名は到着して間もなく、雨雲にも警戒を見せていた事で短期決戦にした理由にも繋がる。

とはいえ、寝手の功績は街の住民達を手当てした事にある。



「敵の能力は、あくまで病気を引き起こしやすくなるだけで、病気事態は本人の自己治癒に委ねられてるみたいだ」

「結果的に死者がいないのは寝手のおかげですよ!」



トラストとアセアセの診断から、住民達は回復の傾向にある。

そこに寝手の抗体が関係しているのは確かだった。


「住民の事はいいんだけどさ。大事なのは彼女の方だろ?」


それとは関係なしに、ルミルミの到着後に寝込んでしまっている白岩にムノウヤは話題にした。

今、SAF協会が一同に集まって、寝込む白岩の横で会議中。

白岩を治療しているのはルミルミである。


「うん。これでしばらく大丈夫だよ、白岩」

「……ありがとう……ルミルミちゃん」

「……ヒイロくんにも言っておくからさ。さっさと帰ってこいって」


白岩の症状には、彼女の相方であるヒイロに原因があるらしい。

元因心界で最強候補の一角である彼女が、この状況で弱り切っている事をどう思うか。トドメを刺そうとする素振りを出してもいいトラストも、その気配すら出しておらず。此処野に至っては彼女に顔は背けるも、視線はちょくちょくと白岩に向けていた。

話しを切り出すのは当然ながら、


「ごめんね。みんな。心配かけちゃって」


ルミルミからの方である。


「今。あたしが知る限りの事なんだけど、レイワーズの連中は上手い事やってくれてる。今、あと欲しいジャネモンの種類は6つ」


レイワーズを生み出したというより、ジャオウジャンを生み出したきっかけにはルミルミとシットリにある。

彼の完成には、151種類のジャネモンを生み出す必要性がある。

”邪念”の王を冠するのだから、それほどの事を図鑑に載せなきゃいけない。

なんでルミルミが、そいつを作りたいのか。そーいう理由はまだ此処野達は多くを知らない。でも、ルミルミは話を続ける。


「その内、3種類はSAF協会にある。寝手くん」

「え?」

「此処野くん」

「ん?」


人間の事を嫌っているルミルミ。秘密主義のシットリが、人間2人を少なくとも重宝していた理由の1つ。


「君達はジャネモンになって欲しい!君達2人が、まだこの世に現れていないジャネモンなんだ!」


シットリの当初の作戦じゃ、2人共。有無を言わせずにジャネモン化させて、図鑑を更新する予定だったんだけどね。


ルミルミが内心で留めずに告白したのは、キッスとの関わりでこのSAF協会の事は仲間だと信じての事だ。ルミルミの急な発言に寝手と此処野は……



「えーーー?僕、そーいう理由でシットリにスカウトされたのかな?なんか複雑だなぁ」

「……なんとなく、想定もしていたが。ルミルミちゃんの口から頼まれる事は、想定してねぇや……」


2人共、妖人となっているが。ジャネモンにもなれる事は、蒼山が実証している。その怪物になる事に抵抗は少し見せつつも、思っているより驚きがなく。むしろ、そっち寄りの人間達だ。寝手や此処野よりも


「ルミルミ様!寝手をジャネモンにしたら、私はどうなるんですか!?」

「知らないよ」

「えええーーー!?」


寝手の相方であるアセアセが、滅茶苦茶驚く。なんだかんだ言いつつも、友達以上の仲である。そんな寝手をジャネモンにするなんて、心配でしょうがないアセアセだ。そして、ルミルミも知らないって返した事を受け、寝手の方から


「心配しないでよ。僕は、そっちよりも怪物だよ?」

「寝手~~~!!なんで落ち着いてるんですかーー!?」


アセアセの心配よりも、楽しくなってきている事を実感している寝手だ。それ故、安心させようとするには不安過ぎるような言葉だ。

寝手の方は了承らしく。


「……条件付けていいなら、やってやる」

「ありがと。此処野くん。あたし、此処野くんの事。結構、認めてるんだからね」

「シットリやダイソンが言うなら、まずやらねぇけどな」


此処野も、条件を付けるが、ジャネモン化には了承したようだ。

その2人がジャネモンにならないと話が進まない。そして、もう1つ気になる事をトラストは訊いた。


「……あと1種は?お前が持ってきた、あの檻の中にいるのか?」

「ううん。シットリとダイソンの知り合い。それに、ジャネモンになってもらう。因心界に匿われる前にやらないとね」

「手元にはいないわけか……」


ルミルミが檻の部屋ごと、涙一族のルーツから運んできた妖精達ではないようだ。もちろん、ただ助けたのではなく、協力して欲しい事が彼等にもある。

最後の1種はシットリ達の知り合いの妖精に、残りのジャネモンになれる奴がいるらしい。



「じゃ、3種は僕達の中にいるわけだね。レイワーズの残りが……5人かな?彼等の”宿主”や親族などがジャネモンになるとかで、残りの3種揃うかな?」



ムノウヤは指で数えながら、レイワーズの生き残りを数える。

SAF協会の情報で倒れているレイワーズを知れるのは、メーセー、ムキョ、エフエーの3名だけだ。

怪護は行方不明となっているが、イチマンコは倒され、キョーサーも敗れて死亡した。

まだ無事でいるレイワーズは、ハーブとペドリストの2名だけである。ただ、2名共。ここまで大事件を起こすような事はしておらず、因心界達とも大きな交戦がなく、不気味なところもある。

やや無計画なところもあるが、ルミルミは即答で



「おそらく、そうだね。だから、レイワーズの残りの連中の尻に火を付けてでも、ジャネモンを作らせる。それが残りのジャネモンには早いから」



早いところ、”宿主”を見つけてジャネモンを作って暴れて欲しいのが願い。

因心界が対応していた事が多いが、ここでようやくSAF協会とも対峙した。


「だから、残りのレイワーズを見つけて、”宿主”を作らせて図鑑を完成できる状態にしたい。こっちからもレイワーズと戦う」


目的が同じようで微妙に違っている。そんな中でレイワーズと正式に戦うとルミルミが発言したのだからか。


「それいいね。僕、ノッた!ルミルミちゃん、僕が戦ってくるよ」


戦闘狂の此処野よりも一早く。レイワーズに思うところがある、寝手がその案に乗った。その上で


「丁度、彼等の1人に心当たりがある”場所”がある。僕とアセアセが行って、そいつを追いつめて、ジャネモンを作らせればいいよね?」

「……やり方は任せるけど、無事に戻って来てよ。寝手くん」

「サラッと私を連れていくんですか!?寝手!私達だけでレイワーズと戦うなんて!ちょっと、危険過ぎるんじゃ!?」


アセアセはあっちこっちで、あわわわって表情と行動。寝手のやる気はいいけれど、突拍子過ぎるし、ジャネモンになれとか含めて色々と……。でも、寝手は


「生き残った可愛い女の子達は、僕が管理してあげる約束。……それも忘れないでよ、ルミルミちゃん」

「別に」


SAF協会に付き合った条件を今更ながら確認する。もはやそれは、ただの遊び目的にしか聞こえない。

ここで一度。

因心界、革新党、SAF協会、レイワーズ、……そして、まだ明確な目的を表していない金習の勢力について。



因心界 (キッス・サザンサイド)は、SAF協会とレイワーズを倒しつつ、出現するであろうジャオウジャンをも倒すこと。

革新党(粉雪・南空サイド)は、SAF協会とレイワーズを倒しつつ、因心界と涙一族が確保していた妖精達を手に入れ、”妖精の国”への進出についても視野に入れたいこと。

SAF協会(ルミルミ・寝手サイド)は、ジャオウジャンを復活させて人類の多くを滅ぼすこと。邪魔をする因心界達をも倒したい。

レイワーズ(怪護・ハーブサイド)は、ジャオウジャンを完成させるためと、その要になるジャネモンの図鑑をルミルミから奪い取ること。その過程で人類を滅ぼしても構わないスタンス。

金習の一派は……。



5つの勢力の内、4つの勢力の思惑に、”ジャオウジャンを誕生させる”という狙いがあり、その後の処理についても決め事がある。

よって、それらを止めることはなく。復活した時点での対処に差があるくらい。



「寝手とアセアセの次の目的は決まったようだけど、僕達はどうすればいいかな?」

「待て、ムノウヤ。ルミルミ。その前に白岩を治療する理由を私達に教えてくれ」


はい、解散。ってなりそうな流れを強引に遮って、トラストはこの強者達の中で自らの意見を述べた。

ジャオウジャンを復活させるという目的があるなら、それを邪魔するであろう存在が白岩であることは容易に想像できる。ルミルミが彼女を助けるのは、弟分の大事な相方とか、気の合う奴とかじゃなく必要性を感じている。

SAF協会は個の集団に近い。それを少しでも繋がろうとするのは、トラストの……



「ジャオウジャンを復活させる。けど、白岩の力。正確には、ヒイロくんの力が必要だからなんだ」

「なに?」

「あいつが鍵になるのか?」

「それはない。ルミルミが所持してる図鑑がジャオウジャンの心臓になる」


かつてのジャオウジャンであるムノウヤがそーいう性質はないと発言をする。その事で、ルミルミが白岩を必要とする理由に……


「トラストにこんな事を言うのはなんだけど、シットリと話し合って決めていた事。ジャオウジャンを倒すのは、数多くいる妖精や妖人の中でも、ヒイロくんと白岩にやってもらいたい」

「は?」

「ヒイロくん。今頃、修行してるだろうからあいつならジャオウジャンを倒せる。……それはたぶん、ちょっと先のこと。言ったっけ?あたし、人類を滅ぼすのにジャオウジャンを利用する。滅ぼした後でジャオウジャンを止める役目にヒイロくんと白岩を選びたい」



ジャオウジャンがどれだけの実力になるかはここにいる誰もが未知数でしかないが、ルミルミの発言的に



「お前なら勝てるんじゃないか?」

「心臓はルミルミ様が握るんですよね?」

「なら、私はジャオウジャン様の一部として、その図鑑を回収しなければならない」



人類を滅ぼした後で、ルミルミがその心臓であるジャネモン図鑑を処分すれば、絶対勝利のはずだ。



「渡すわけないでしょ。これは絶対にあたしが持ってます!ジャオウジャンの好きにはさせないもん。手の内は教えてあげるから、ヒイロと白岩と戦いなさい!いい!?トラスト!」

「…………私にはできなくても、それを奪いに来る者達は多くいると思う。レイワーズはお前も標的にしている」



他人の心臓を預かるような話だ。ルミルミに対して、手加減やら躊躇を生む事はないだろう。特にこの情報が因心界に漏れてしまえば、散らばるレイワーズよりもなんとしてでもルミルミを見つけて、倒しにいった方が早い。



「ヒイロの全力とやらに、白岩が必要なのは分かるぜ。で、どーしてあんなに苦しんでるんだ?」

「レンジラヴゥの副作用もあるけど、ヒイロくんが白岩に対して過剰なエネルギーを渡しているのもあるよ、此処野くん。それを抑えるために、別の妖精達の力を使って落ち着かせる。だから、あたしは妖精を集めてる涙一族の里に向かったわけ。……ほら、前にあったキャスティーノ団も、元は白岩を助けるためのヒイロの組織だったじゃん」

「…………はぁ~、敵も殺せねぇのな」

「???」

「ふふふ」



そんなことはとっくに知ってるんだよって、此処野は不機嫌そうな顔をする。ルミルミに求めていた答えと全然ちげーのが、というより満点以上の花丸付きで答えが返って来たから、ソッポを向いてため息をついた。

そんな此処野の態度を察してか、ムノウヤがルミルミに提案する。



「じゃあ、白岩はルミルミちゃんに任せるとして、僕とトラストは寝手達とは別に、残りのレイワーズに会いに行く方が良いかな?トラストもルミルミちゃんには敵わないし、邪魔になるだろ?」

「……できる事は少ないな」

「此処野はルミルミちゃんと白岩の警護をしてた方が良いと思うよ」

「なんでお前が決めてんだ……って言いたいとこだが、白岩とルミルミちゃんがいるなら、向こうから殺したい奴がワンサカ来そうだから悪くはねぇな(単独行動しやすいのもあるけど)」


寝手にはレイワーズの1人の居場所に心当たりがあり、トラストはレイワーズ連中とのやり取りができていた。

此処野が2つのチームのどっちかに加わるよりも、待機・警護要員の方が色んな敵とぶつかれそうなのは確か。


「こ、此処野でもいいです!私と寝手だけじゃ不安です!!」


此処野の待機を聞いて、アセアセは自分達の不安要素を少しでも無くすため、こちら側に此処野を引き込もうと話を出すが、此処野は興味もないし。寝手も手出し無用という形で、チーム分けが決まってしまう。えーんって、泣いてしまうアセアセ。レイワーズの実力差を身に染みているため、怖いのだ。



Aチーム

ルミルミ・白岩・此処野。  この拠点にて待機。


Bチーム

寝手・アセアセ。  レイワーズの1人と接触予定


Cチーム

ムノウヤ・トラスト。 レイワーズの1人を捜す。



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