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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第46話『五つ巴①、ムノウヤ+トラストVSエフエー』
168/267

Cパート


「……なるほど」

「へーーっ」

「ほーー」



キッス達はサザンから、妖精がどーいう存在だったのか。そして、”妖精の国”というのが、どーいう形で誕生したのか。キッスからすれば、涙一族のルーツについても知れた事で。


「一言、良いですか?」


概ね、満足な話を聞けたわけだが。どーしても言いたい事がある。



「ふざけてるんですか!?妖精を生み出した、その神様とやらは!!」


なんの弁明もありませんと、サザンは申し訳なさそう顔で頭を下げるのであった。

そりゃあ、


「侵略の目的は、他人の恋路を邪魔する目的で……」

「邪魔してたと思ってたら、とっくに二人は付き合ってて……」

「つまりは、侵略する場所そのものを間違えていて……」

「悪事がバレた挙句に、仲間の神様達から追放されたと……」

「アホじゃねぇか」



録路の一言が全て。

どーして大事な確認を怠ったんだよって、言いたくもある。神の力を持ってしても、使う奴がアホだとダメだってのは。さすが、妖精という生命体を生み出した、考案者らしい一面かもしれない。



「恋は盲目にするっていうけどね」



北野川がため息交じりに呟く。



「ヒイロもその事実を知っていて、今まで私に黙っていたのか」



ヒイロもヒイロだ。そう思ってしまう、キッス。

どうして周囲に相談をしなかったんだと、ホントに悔やまれる。

その真実に対し、サザンはお願いとして頭を下げる。それはルミルミにも言っている。


「だから、こー……私達は人間と共存していなかければ生きていけない。ただ、人間を滅ぼそうなどという気は毛頭ない。図々しいと思われるだろうが、妖精と人間との関係を君達の協力で以前と変わらぬままにして欲しい」


いや、ホントに図々しいんですけどってキッスの表情が物語っている上で


「無理です」

『それを言わないでくれよ、キッスーーー!イスケもなんとか言ってくれ!』

『……俺がキッスを説得できた試しはない。というか、無理だろ。サザン様。状況とかもろもろ含めて』


その関係の修復はもはや不可能。もう始まっており、これまでとの関係性を元に戻すのは


「私達、因心界だけではどうにもなりません。すでに粉雪を始め、世界の関係者達は妖精の力に興味を示している。それはあなたも知って来た事じゃないんですか?」

『私はそれを見てきたわけじゃないが!少なくともセーシ先輩だけは、人間が滅びかけた時を知っている!それがどれだけ大変な事か分かるだろう!』

「事の重大さに対して、一つ組織で請け負える責任ではない。あなたが怯えているのは、人間が滅ぶよりも危険とされる妖精達が死んでしまうこと。ルミルミとシットリの思想の方が、正義かつ王道。あなたとヒイロの思想は、どちらかというと姑息ですね」

『ひっでー言い方!!』



ルミルミからすれば、妖精を護るがために人間を根絶やしにしてやらぁに振り切ったのに対し。サザンは色んな言い訳を重ねながら、キッス達に頼ってる始末。


「サザン。ホントにカッコ悪っ」

『捕まってるのにそーいう事を言うな、ルミルミ!!お前がもう手を退けば……』

「そーいう事しません!もう計画は動いてるもん!」

「ルミルミの言う通り。妖精とジャネモンの差は、そこまでないとすれば、世界があなた方をより恐れる事に時間は掛かりません。レイワーズの連中も真実を知ろうが止まらない」


現状を語りながら、キッスだって考えを練っている。

一方で取り巻く人達は、自分の妖精達と共に見守っているところに



ポンッ


『!』

「気にすんな、マルカ。お互い利用し合ってる、そーいう関係で良いだろ」

『録路……あたしもそれでいいよ』


録路は別に警戒などせず、マルカという個人を受け入れているところ。


「おーい、サザン。お前等の真実とかに興味はねぇけど、ヒイロの奴はどーしてるんだ?」

『あー。今、修行の旅に出てるところだ。レイワーズとの戦いが激しくなり、やがて、ジャオウジャンは誕生するかもしれない。その時のため、実力を磨いているらしい』

「……こっちは表原と野花で現場をやりくりして、テメェのアホな話を聞いてやってるんだ。さっさとしろって、伝えておけよ」

『あ、ああ。言っておく(っていうけど、私も居場所知らねぇーんだけど)』


この場にヒイロがいれば、上手い案を出してくれるだろうと思っていた。それと、彼の存在がいないと人間有りきの動きになる。果たして、サザンの話を上手い具合に、革新党の粉雪達に伝えて理解し合えるものか。むしろ、利用されかねない。

意志というのは、引き継ぎだけとは限らない。

サザンが危機を感じて話したんだ。



「今、終わらせる方針でいきたい」



キッスが向けるべきは人間側の方。レイワーズやSAF協会の始末。


「それでも、すぐに結論は出ませんが」

『!!』

「あなたに従いましょう。その代わり、妖精の事はそっちでなんとかしてください。あっちもこっちもできない」



ルミルミのやり方に賛同はしない。しかし、サザンの求める要求の全てに応えられないとして



「その約束は叶えましょう。その証拠として」


キッスは捕えているルミルミの檻に向かっていき、檻を掴んだ。それに気付いたルミルミも体を低くして檻の手すりに寄りかかる。軽々と持ち上げた瞬間、軽やかなステップを踏んで



「そっちもそっちで上手くやっていろーーーー!!」

「うわーーーーー!!結構気持ちいい~~~!」

『ルミルミ捕えた檻ごとぶん投げたーーーー!!?どんな解放の仕方してんのーーー!?』



キッスにしか分からないように、ルミルミを檻ごとぶん投げて逃がしてあげる。みんなの一言


「豪快なんだけど、お姉ちゃん……」

「ホントに逃がしていいの?」

「というか、ルミルミ心配なんだけど」

「あれくらいじゃ死なない。自然回復もある………」



こっちはこっちで。サザンが約束を果たした。だから、ルミルミも”自分の約束”を忘れるんじゃない。

お前が”ここに来た理由”も叶えてやったんだ。

上手くやってくれ。



「ルルはちょっと来て。あと、北野川達はしばらくゆっくりしててくれ」


サザンとの通信を切って、その道具の片付けをする最中。

キッスはルルに特別な要求をし。北野川達には、今日はここでゆっくりしていいよう伝える。


「一緒に本部に戻ろう」

「まったく」

「できる限り、早い方がいいぞ。表原が戦闘不能なんだからよ」


それは分かっている。

それでもキッスはルルを連れて、ここにある自分の部屋に彼女を連れていっては



「すぅ~………すぅ~~……」

「お姉ちゃん……。特別だよ……」



ルルの膝枕に酔いしれて、しばらくの睡眠に入るキッス。ルミルミを相手に数日の監視を一人で行っていた負担はかなり大きく、長い休暇をする事に。ルルも完全に寝静まるまで、姉の想いに仕方ないけど応えてあげるのであった……。



キッスの安眠はしばらく続くのであった。




◇            ◇




シュルルルルル



その薄布な着物で、スローテンポな曲に合わせて踊る舞子達を流し目にしつつ。酒と豪華な食べ物、美女達と共に会談と決め込む悪徳政治家。

高級料亭を貸し切って、国に影響をもたらす政治家2名が対面する形式で話をしていた。


「……椰子葉やしは。金習様へのみつぎはどうなっている」

「順調ですよ。濡利ぬらりさん」

「順調……とは、それで満足して良いのか?」



生ビールを一口飲んでからその順調とやらに満足はいっていない濡利。



「土地の買い占めを、”おおむね”などという言葉で済ます気か?」

「無茶を言わないで頂きたい。”おおむね”、完了しました」


椰子葉からしてみれば、結果として、買収・買占めは上手くいっている。

濡利からすれば、その行為に警戒心を強める者達が増えている失態。もっと穏便に済ませよという……。

椰子葉は、ビールを置き。豪華な食べ物が置いてある台を見つめる。

それに気付いた濡利はそそくさと、自分と食事を後ろに退くようにしつつ


「やるなら、食い物の皿を畳みの上に移動させてからにせい」

「…………ふん」


濡利に言われてか、椰子葉は仕方なく、食べ物を安全な場所にどかしてから、その台をまた眺めては……。

大きく両目をかっ開き、歳を心配するレベルに血管沸き立たせ


「関係ねぇだろおぉっがぁっ!!妖怪爺ぃぃっ!!」


台を蹴り上げ、激高。近くで踊る舞子達も驚いて止まってしまうほどの変貌。癇癪。それを恥と思わず、人に当たらず、物に当たってるんだからいいだろうとして、台を粉々にしていく椰子葉。


「うがああぁっ!!テメェの方が献金・美女・接待を受けてもらってんだろうがぁぁっ!!」

「……………」

「何にもしてねぇで偉そうにしてんじゃねぇぞ、クソ妖怪爺っ!!もう降りろ!!いつまで政治家やってんだ、テメェ!!」

「……五月蠅いぞ、椰子葉」

「はー、はー……」

「捻り潰すぞ。小僧」


癇癪した激怒に対して、小さく短い怒りで応える、濡利。

激しい怒りを撒き散らした後の椰子葉は落ち着きを取り戻しては、


「それで、なんか文句があるのですか?」

「ふむ。近々、金習様が日本に来られると伝えてたな?」

「ん?あぁ。そうだったかもしれん」

「その接待というには、少々規模が大きくてな」

「規模?」


椰子葉は何も知らない。そーいうところがまだまだといったところ。

恐喝・激高などの、剛腕ぶりを買ってはいる。


「儂はもう長くはないから見届けることはできんが、金習様が動くそうだ」

「……」

「”有事”」

「!!!」



濡利の言葉に椰子葉は驚く表情と、舞子さん達のキョトンとした顔。椰子葉の激怒に対しては人間的な驚きを見せたのだが、


「……ルールを守って頂きたい。遊女は遊女らしく、決められた金額で契約を守ってもらいたい」


濡利が立ち上がり、舞子さん達の中にいる一人の女性に近づいた。

妖怪とも揶揄された老齢であるが、それこそ人の表情を良く見ていた。


「な、なんでしょうか……」

「君はどこに所属かね?こちらの金で買われた女だというのに、それを反故ほごにするならば許そう。しかし、両得というのは図々しいと言わんかね?」


国のスパイ。しかし、この場合。濡利と椰子葉にとってのスパイでしかない。


「”機密情報”を”開示”できない世の中で、それを成そうというのは人を捨てねばならん。私はこの国とか、どーでもいいのだ」


濡利は丸腰ではあるが、その後ろに控えている政治的な圧力・権力。

どこぞの正義機関に所属してようが、今はただ一人のスパイ。この場でどのような事が起き、逃げきれると思うか。

スーツの裏地から何かの薬品を取り出し、それを近くのお酒に入れて、スパイに飲むようにと促した。

濡利なりの”逃げ道”であり、意を決してスパイは飲んだのだ。



ドタァァッ



「口は閉じねばな。……舞子さん達。女将を呼んできて頂きたい。その後の君達の処分も追って分かるだろう」

「!!ひぃぃっ」

「女将様!女将様ぁっ!」



女スパイは濡利に何かを飲まされて、泡を吐きながら死んでいった。その死体や、濡利の言葉を受けて、残りの舞妓さん達はここのお店を任されている女将さんを、血相を変えて呼びに行った。

警察案件と言えど、消されるもの。

残ったのは、濡利と椰子葉。死体が一人。

椰子葉が仕方なく、戸を閉めてから


「……で、”国取り”か」

「そう言うな。”一帯一路”と言え。間違えるな」

「やってる事、変わらねぇーだろ?やり方が多彩でも」


その計画とやらは、詳しく流れて来ていなかった。今のようなスパイがいるように、濡利や椰子葉への信頼も決して厚くはないのだ。というより、誰一人として、”金習”という存在は、”金習”以外を信じやしない。

先ほど、自らを長くないと言ったが。


「この日本はどこかと付けばいい。どっちもどっち。価値観・正義は、立場で変わる」


濡利もまた。本心、金習の支配に興味はない。金をもらい、情報をもらい、女をもらい、そして、協力をして、権力を得た。犬と言われようと可愛いと思えるくらいに、


「ならば、強い奴の下につく。……それは世界で言うなら、”金習”だろう」

「おーーっ、断言するのな」

「あの方がどーいう”存在”か。知っているんでな」


強い主人につくのが普通。

国の上に立つものでも、世界で見れば、ただの1人にしか過ぎない。



タァンッ   タァンッ



「金習様が直々にやってくる。我々はそこで……」

「!妖怪爺。誰かこっちに」



ガララララララ



「悪徳政治家はこーいう料亭好きよねぇ~、おじさん達が世界の悪だくみ~って感じぃ」


足音は大きく、戸を開ける音も大きく。舞子さん達がいるような日本文化を感じさせる中、現れた美女というのは欧州系。ド派手な姉ちゃん。そして、彼女の左手には血まみれの、おそらく女将さんが着ていたであろう着物が掴まれていた。


「誰だ姉ちゃん?……立派なもんぶら下げて」

「知らない顔だな」


異質な存在である事は察していて、恐ろしさはなく。


「私達のボディガードは君にやられたのか?それも静かに」


状況が分かっているのか?そーいう平常心が態度にも現れている濡利の姿と、イヤらしい目をしつつも、それでも自分の役目を理解しているような立場で、あくまでの敵意を出す椰子葉。

やってきた女性というのは、


「ふーーんっ、これはまた。お二人共、随分と邪悪だこと。関心しちゃう」


レイワーズのイチマンコであった。

濡利と椰子葉の2人がキョーサーから紹介された標的。こうして間近で対面して、自分と似ているような凶悪・醜悪な邪念を抱える者達。詳しくとか。そーいう尋問やらで語る、言葉でない方がいいと。イチマンコは血まみれの着物を二人の前に放ってから


「あんた達って、この国の事とかどー思ってるわけ?」


濡利と椰子葉に、イチマンコの正体は掴めなかったが。暴力を示されての問いに。

椰子葉は、落ちた着物を拾ったかと思えば



ブチイイィッッ



「何が国だボケェ、ゴラアアァァッ!!」



着物を引き契っては、マスメディアには晒さぬであろう、本性を叫び始めた。


「税金で働く仕事だとおぉぉぉっ!!塵芥ちりあくたの払う税のくせによおぉぉっ!声と態度がでけぇぞ、負け犬共!!!増税してもテメェ等からは少ねぇんだよおぉぉお!!たんねぇんだよおお!テメェ等のカスが稼ぐ金なんざああぁぁっ!!あと女あぁぁっ!!若さとガキは違ええぇぇんだよぉぉっ!!」


激しい声で露わにする不満。椰子葉のその声に対して、話し合いができるようにか。濡利は淡々と、イチマンコに返してやる。



「外から得られるものと自国民の声と金を天秤にかければ、知らない方がいいほどにとても残酷な差がつくということ」

「……そこに転がってる女って、どっかのスパイ?あんた、淡々と似たような事言ってた気がするけど?」

「そうしても、決して届かぬリターンがある。裏切るに、誠意を見せるに、十分過ぎる見返りが、外からこの国の中枢に届く。民の声よりも、世界の力だ。私は間違っているかな?」

「国民からしたら、あんたが一番嫌われてるでしょ」

「党内では有数の権力者である。仲が悪かろうと、切れぬ関係を持つ。お仕事というのはそーいう細い糸と細い糸を、結んでは絡ませて、なんとか回すものだよ」



絶対的な世界があれば、気付かれようとも動じない、裏切りもある。


「明確に裏切らない事だね。メディアもやるだろう。流すべき真実、流さない真実、どちらでもない真実。……それらを混ぜて、人々に不安に近い信用を持っていただく。それが視聴者に根付かせる、メディアのあるべき姿。ニュースは都合よく。娯楽や情報は精度良く、興味を持つように……そーいう風に分けないと、人は他人の情報を意識しない」

「クソね」


ため息をこぼす。あいつの爺臭さは傍には置きたくない。しかし、それをふっ飛ばせるくらいに自分の求める、”金”に惹かれているこの良すぎる邪念を放つ。

相手に対しても、自分に対しても。

イチマンコはその一言をして。

ここへやってきた目的を果たす。



「あんた達。どーしてやろうか」

「……どーするのかね?君だけ聞く側に回っているのも、困り者だよ」

「なんだぁ、姉ちゃん。俺達の相手をするってのか?お前がどれだけ強かろうが、俺達の後ろはそんなもんじゃねぇんだよ!国を束ねる存在ってのは、ただの影響力じゃねぇぞ。世界の影響力だ!」



一触即発。しかし、生死は分かってても。無事に済ませない地獄を予感させる。

イチマンコはそれを甘く見積もっていては、このような誘惑する言葉を出す。


「あんた等がやってる事も、下っ端じゃない。雑務兵が」


強がろう。偉かろう。

そーいう比べっこの最上位の椅子は1席しかおらず。その席からの声に、周りが踊っては怒鳴りと涙を流す事になる。

強そうに、偉そうにする。濡利も椰子葉も、そーいう席に座っている人間。

自覚はしていない。国という基準ならば、相当な地位。でも、世界で見れば……。

おおよそ、多すぎるくらいの敵がいよう。誰かからは仲間と思われているより、群衆の1人として数えられていよう。


ないわけでもないが。……世界を知る。



「面白い事を言う。やってみるといい」



濡利はイチマンコの言葉にノッてやるように見せつつ……。




◇           ◇




「お~~~い。エフエー。……これはなんだよ~~」

「ジャネモン化だ。”宿主”とはちょっと違う。パワーアップ?フュージョン?といったところだ」



怪護と連携して、SAF協会を強襲する予定であったが。

どうやらエフエー達が遅れてしまったようだ。



「気が進まねぇな」

「だから、”ON”と”OFF”ができる手段を伝えた。より強力なモノになると、”暴走”してしまう。私にも、友達には薦めない」

「見た目は大事!だもんな!」



出会って数日というのに、かなり砕けた仲間意識を持った2人。

お互いが思っていた以上に気が合う。特に古野月継の方は、素というか、人間的な緩さ・隙を他人に見せるだけのものになっているほどだ。それにエフエーも悪い気はしておらず。怪護のミスを、こちらの遅れと表現して捉えている。

こーいう時間もいい。


2人は今。白岩達がいる町の、隣町の民宿で過ごしていた。

エフエーは真剣そうな表情で話す姿勢に対して、月継の方はこの地域の旅行ガイドを読み老けていた。こんなところまで来たら、旅行者ということ。



「奴等の中には、私の部下が1人。中立が1人いる。……それでさっき入った部下の情報では、1人がどっかに消えた。2,3日は帰って来ないらしい」

「確か全員で6人だったか?」

「こっちが倒すのは1人だけ。……とはいえ、戦わなきゃ進まない事もあるだろ」



エフエーの立場からすればトラストはこっち側。そして、ムノウヤも何を考えているか分からないが、こちらの行動を邪魔する事はない。単純な戦闘力なら最強かもしれないルミルミは不在。戦闘狂の此処野も、どこかに行ってしまった。

タイミングを合わせたかったが、アセアセが受けていたダメージは大きく、寝手も多少なりとも疲労がある。エフエーには分からないが、トラストからの情報では、相当遠い距離から能力を発動し続けた負担があり、寝手の実質的な素質で補えていたもの。彼が肉弾の接近戦を得意としていない事も含めれば、近づけさえすれば無力化しやすい。


SAF協会の面々は何かが来ることは予感できてても、誰が敵なのかが分かっていない。



「女なんだよなぁ?標的……」

「そーいう表現は止めろ。温泉ページ見ているな」

「へへへ。会うのを楽しみにさせてもらう」


”宿主”に死んでもらっては困るのだが、月継がかなりのノリ気。


「1対1では止めておく。私とお前で行く」


全力で相手するべき存在だと、エフエーは認識している。


「勝手に死なれても困る」

「死ぬかよ。なぁ」

「ファルルルルル……」


エフエーの髪にくっつく龍を撫でて可愛がる、月継。

真剣さに対して不真面目な奴。エフエーはその反する立場に嫌悪は抱かず、リラックスしている。月継は簡単に



「俺が知らないなら相手も知らねぇわけだ。俺がそいつに近づけばいいんだろ?」

「……簡単に言うな」

「あとから来いよ」


月継の姿は、いくら”邪念”を抱えて危険に思われようと、外見は人間。エフエーよりも近づきやすい。

大雑把な意見ではあるが。

初手で月継が白岩と戦い、続いてエフエーが参戦するといった感じ。



「問題はお前がどこまで近づけて、どれだけ白岩を相手に持ち堪えられるかだが……」



持ち堪えているのはもちろん。エフエーが待機している場所取りも……


「まー、関係ねぇさ!ちょっくら、ナンパ気分で行ってくるーー!」

「いや、聞けよ!!」

「ファルルルル」



こんなグダグダな作戦会議で終わってしまうものの。結局、しっかりするのは自分だということか。エフエーはツッコミを後に嬉しそうなため息をついた。



「まぁ、月継が近づけさえすればいい」

「ファルルル……」


実際、それである。エフエーの脚力を持ってすれば、急接近する事は容易い。

トラストを利用すれば、その近くまでなんなく行ける事だろう。


2人は具体的な過程は決めずに別行動をする事になったが、作戦実行となる時間だけは決めていた。



”18:00”



白岩印に勝負を挑む。



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