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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第8話『ゲキネツ!因心界VSキャスティーノ団、危険グループ”萬”の集結!』
16/267

Bパート

ブロロロロロ


火災が起きているこの建物。

屋上からは中からの煙が立ち昇る。巨大な換気扇がいくつも稼働中。

向かい合っているのは男と男のようで、男と女である。しゃあなし、ブレイブマイハートの特性の1つであるからだ。



ガリッガリッ



「マルカ、見とけ」

『録路』

「お前はやれるんだよ。俺が証明する、力を貸せ」



腹ごしらえのキットカットを済ませた。選んだお菓子はゲン担ぎってところか。

ナックルカシーは床を蹴り飛ばした。


「!!」


それは飛礫つぶてとなって、ブレイブマイハートへ飛んでいく。飛び道具を自在かつ簡易に放てる技量に驚く。身体能力という点の強化では、食事したばかりのナックルカシーが上か。その判断。



「っ」


ある程度。僅差くらいに思ってはいたが、嘘だった。情報とちょっと食い違う。食べたお菓子の種類によって差があるのかもしれない。飛礫を目暗ましにナックルカシーは飛んで、さらには頭上からブレイブマイハートに襲い掛かるまでの瞬間移動の如き、強襲。



ドゴオオオォォォッ



天井の大部分を崩落させるほどの踏みつけが起こった。

粉雪のクールスノーが凄いのか、あるいはナックルカシーの力を隠していたか。飛礫の目暗ましと、ナックルカシーの強襲に完璧な対応、ブレイブマイハートも素晴らしいものであるが、身体能力の優劣は見えている。

共に宙に浮いたまま。


「うおおぉぉっ、熱くなれぇっ!」


ジュウウウゥゥ



だが、それが全てとは限らない。

蹴りで崩れる床が熔け始めていく。身体能力も確かに高いが、それに合わせて通常の能力もあるものだ。

周囲が高熱を発し始める。


「!」


これがブレイブマイハートの能力。砕いた床すらその熱で熔かしきるのかよ。



「今、熱いよ!あたしの体と心は熱い!!」



先手を喰らっただけでなく、追いかける攻撃も遠いと判断。ブレイブマイハートの戦術眼と戦闘知能は見かけによらず、高い(どーいう事だ、おい)。直撃をもらう覚悟でのカウンター。ナックルカシーがそれにビクつくわけもなく、ガードの上から拳を叩きこんだ。



バヂイイィィッ


「!!、!?」

「っっ、焼くって知ってる?」


ブレイブマイハート本体の高熱は相手に"焦げ"を作り、お互いにくっつく要因を作る。攻撃した相手だけはこの熱の影響をモロに受ける。行動の1つを遅らされると、反応は2つ遅れる。デカイ図体のくせに動揺する。



タァァンッ



「!」


両者、同時に下の階の床に足を置いた時。ブレイブマイハートだけは床が熔けて行く。とんでもない高熱を纏っている。ナックルカシーは熱さをもらいながら想定を超えていると判断した。自分の攻撃を防ぐための腕一本で


「"熱掌ねっしょう"!」



ドゴオオオォォッ


ナックルカシーへの大ダメージを図った。高熱の張り手はナックルカシーの図体をぶっ飛ばした!!


「ぐおおぉっ!?熱っ熱っ!」

「っ」


高熱攻撃に悶える。

先に動いたのはブレイブマイハートであるが、床が溶け出さないように動いただけである。こちらも想定外だった。予想以上に


「あんたの攻撃。強いじゃん。腕が一発で折れた……」


ここで。戦いの勝敗の決め手は。"想定外の大きさ"が決めていた。

両者痛みに苦しみ、動けるが戦意に向かえない状況であった。ブレイブマイハートはゆっくりとした足取りで、打撃の痛みが惹くのを待つ。それでは一歩、二歩遅れる。

その差を理解し、ナックルカシーは栄養補給の菓子を取り出し、食べる。これで体を回復させ、追撃、トドメを刺す。選んだのだから、勝算があるに決まっている。

懐に手を入れた時、ブレイブマイハートの表情は、しまったという表情だ。忘れていたところだった。


「!?」


だが、それはお互いになった。

ナックルカシーは、ブレイブマイハートを甘く見ていた。

スカるお菓子。崩れては溶け出し、飲み物みたいに服もビチャビチャ。


「!」


嘘だろ!?

あいつの熱のせいで、菓子の緊急用も全て熔かされたのか!?液体になってやがる!

想定してねぇぞ!!


「?」


ナックルカシーの明らかに動揺した顔。彼が練りに練るタイプである事が、裏目に出た戦いだった。

決め手が出て来ない事を不思議に思いながら、ブレイブマイハートだって戦う必死さがある。なぜかは理解できなかったが、痛みが惹いた瞬間に足はナックルカシーに向く。

次で決められる。


「おおおぉっっ!」

「!!」


ガードしても熱は伝わる。次の攻撃をもらえば、……


「"熱掌ねっしょう"!!」



ドゴオオォォッ



ブレイブマイハートの攻撃をガードして見せたが、先ほど以上の熱で焼き尽くされるナックルカシー。


「ぐおおおぉぉっ!!?」


蒸発していく汗。水分。

それでも死ぬにはまだ早いと、心に残る執念が彼にあった。



◇      ◇



ブレイブマイハートとナックルカシーの死闘開始から少し前。

こちらの戦闘開始は彼等よりも早かったが、些か違っている。それはシークレットトークの特性だろう。戦闘向きではない。


「北野川。この小宮山初理を、覚えてる?」


シークレットトークVSペーピング・レンダー。


「誰よ?あんた」

「知らなーい」


戦闘は言葉から始まった。対峙する数は2VS1。

真剣な返答をしたつもりのシークレットトークの両名ではあるが、それが許せぬペーピング・レンダー。

背中から取り出した、自身のカレンダーの妖精、シシュウ。


「まぁ、どーでもいいわ!あなたが私とシシュウの命を決めたこと!」

『私達もあなた達の命を決める。それまでのこと!!』



怒りの表情に対して、やっとの思いって感じの顔で下種に笑いながら。




「あぁ、そんなこと?キッスと粉雪が帳消しにしてくれた事件の被害者だったの」

「それは覚えてないもんね、誰に妖精を使わせたかなんて」


挑発オンリー。双方、とんでもない表情でペーピング・レンダーと向き合う。どっちが正義かを言えば、こいつ等ではないのは事実。先ほど告げられた名前すら忘れちまったような、無関心ぶりに


「できない人間が罪」

「できない妖精が罪」


余計に怒りというのは湧いてくる。

それを煽る。精神攻撃の基本と言えよう。


「「それが本当に悪いのよ、弱者」」


因心界が人間界における正規の組織でありながら、北野川のような悪人がいる。元、罪人なのだ。

これまでの罪の帳消しを条件に、因心界に加わった人物。

貴重きちょうな能力故に異例の幹部としての待遇。

被害者達としては許される行為ではない。当時、高い金を積まれようともだ。でも、法的にも世界的にも許された。極少数の被害者達を除いて、正義は通った。


「因心界には捻じ曲がった正義がある。あなたがいる事を正当化するなど、許されない!それで私が罪になろうと、あなたを殺す!」


北野川の罪状。

第三者の人間と第三者の妖精への違法契約を結ばせた仲介、強要容疑。

適合しない者同士の契約はお互いの命に関わるだけでなく、心身の障害も発生する。

妖人としてもその力は不完全だったり、不安定だったりと、違法契約の罪とも言える事実が突きつけられる。


「そー?できるのかしら?」

「弱っちぃ人が無理してる」


言われたくないだろ?


「お前等の人生、合わせて50億だっけ?高い金で因心界に買われたじゃない」

「奪われたのは両腕かな?両足かな?首から上だっけ?」

「んー、もしかして。あなたの見た目、健康そうに見えるから」

「契約で寿命を奪われちゃったんだ(笑)」


ペースに入って来た。シークレットトークの本領が出てきそうな時、ペーピング・レンダーはさせじと彼女達に突っ込んでいく。身体能力は違法契約で出来上がったとはいえ、シークレットトークの2人を相手取れるものを持ち、武器を生成し扱うパワー。戦闘面ではペーピング・レンダーが上手うわて

筒となったある物を武器に襲い掛かる。


「おーっと」


受けに回ればやられる。

ヒットアンドアウェイと精神攻撃が軸となっているシークレットトーク。2人合わせての妖人であり、お互いが近づき、会話していく事でその力は発揮される。とんでもなく厄介な能力。


「あなたのお父さん、札束を見て目の色を変えたんだね」

「お母さん、立派なマイホームをもらえて、幸せに暮らしてるんだね」

「一人のポンコツ娘が売れて、老後も安心」

「子供が売れるだけで、一家離散は救われたのね。感動で涙流れます」


対象者の秘密を暴く能力。それは対象者本人の意思に関わらず、対象者の近くにいる事とシークレットトーク2人の会話を成立させる事で引き出せるというものだ。それも対象者自身が知らない事であろうと、欲する秘密に関しては情報を見聞できる。

記憶でも記録でもないため、純粋で正確な秘密を得られる。罪を帳消しにしても、手元に置くべき人材であり、才能。気に食わない理不尽。

ペーピング・レンダーの握り締める力は増して、筒をシークレットトークの本体の方へ振り回す。



「やあぁっっ!!」



戦闘向きではない。シークレットトークは自覚している。幹部の中での戦闘能力は下の下である。

もっとも、三強が突き抜けていて、佐鯨とヒイロ、野花が次点にいる。

相手の攻撃を空転させながら、


「チャンバラごっこを磨いて強くなったの?」

「ぷーぷぷ、避けちゃえばどーということないよ」


本体と分身は互いに自我を持ち、さらには情報を共有する。2VS1を強いられる状況、真っ当な戦いなら覆せなくもない。数の暴力を使うのなら、接近戦に成り得るものだ。安心安全の挟み撃ち。そんなセオリーがないのが、シークレットトークの異質な、しょうがなしの戦闘術。


「あなたの妖人の戦士名は"ペーピング・レンダー"」

「両手で握った物体を筒状に丸めたり、広げたりする能力」

「切り札は自分だけ、その筒にした物の性能を使用できるってわけね」

「今、手に持っているのはただの鉄っぽいけど」

「消火器を丸めて隠し、あたしに粉を浴びせる気ね」

「そんな美味しい秘密は大好物」


お互いが会話を繰り返す事で敵の能力さえ、暴く事ができる能力。


「ふーん、床とかも筒にできるんだー」

「これに私達を巻き込んで動きを封じれるんだ」


相手の作戦、思考すらも、秘密という形で先んじて知り、対応してしまう。

声を出すという条件なため、タイミングによってはペーピング・レンダーにも悟られる。


「はっっ!」


ベロンッ


「ほっ!」


両手で剥がすように工場の床を筒に変え、シークレットトークの本体を巻き込もうと狙った攻撃。範囲も狭いし、速度も遅い。上にも下にも逃げる箇所があればなんて事はない攻撃。

衣類をプレスする大型の機械の上に飛び移っての回避。ペーピング・レンダーはシークレットトークの本体のみに攻撃を仕掛け、能力封じを狙っている。互いの会話を止めるために、片側を集中して攻撃するのは理にかなっている。



「危ない!逃げすぎ!」



工場という場所と火災という状況が、間合いを重視しているシークレットトークに不利か。分身の身体能力も人並みを超えていても、追いかけるには適していない。

加えて、いきなり初手で奇襲を仕掛けたペーピング・レンダーの攻撃。能力に隠密性もある。工場に隠れるスペース、さらには紙のように薄い隙間さえ、通り抜ける力を持っていれば、優位は分かっている。


「だから能力が拷問向きなのよ」


戦闘にはならない。



◇      ◇



ブロロロロロロ



「はぁ~、長距離運転はやってらんねぇなぁ。狭いし、キツイし」

「だから、クッションを買い替えろって。運転席は家のようにしなきゃダメなんだ」


因心界VSキャスティーノ団の戦闘が行なわれている、ちょっと前の時間。

高速道路を走っている一台の大型トラック。

2人のドライバーが仕事中のところに



パァァァァ


「ん?」



通常ありえぬ、対向車線からの眩い白い光が届いた。


「なんだ!?」

「まぶっ」


何事かと思った瞬間、頭の整理が追いつかないほどの衝撃的な事に巻き込まれる。

まったく無関係で愚痴愚痴言いながら働く社蓄の皆様に対し、


「良い感じのトラックに移動できたな」

「へ?」

「な、なんだお前!?」


時速80キロは出ているトラックに対し、ガラスの一切を破壊することなく、狭い運転席に割り込んでくる形で1人の男の妖人が侵入し、


「お前等、飛び降りろ。あんまり壊したくねぇんだ」


ドゴオオォォッ


あろうことか高速道路で、人を2人も突き落とすというイカレた行動。

動きながら突き落としたのだから完全に即死であり、後続の車に激突したりもした。異常な行動が交通を麻痺させる。ジャネモンなんか使わずとも、人間の悪意1つで簡単に規律と秩序は乱れてしまう。

証明できるサイコパス。


「壊れちまったトラックの新型じゃねぇか。大切に奪い取れて良かったぜ」


人の命をなんとも思わない、強烈な存在。

それが


「そんじゃ間に合うか、録路~。トラックの修理費払ってもらおうじゃねぇか」


因心界とキャスティーノ団が戦っている場所に向かっていた。



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