Eパート
トゥー……トゥー……
【なんだ?】
【どーした?固まってww】
その日。10時54分。
1人のキャラクターが停止した。
FPSオンラインゲームの中で固まった1人のプレイヤーに、周囲のプレイヤーは心配と嘲笑の言葉を送るが。返信の一つなく、固まる。
最強装備を手にし、このオンラインゲームで最強に近いプレイヤーが。なんの宣言もなく、唐突に固まった。
プレイヤー側でなんらかの故障が影響だろうか。それとも運営側にBANでもされたか。
周囲の反応は色々であったが、最悪の想定は誰一人しておらず。
この中で誰も、それを覚えることはなかった。
プレイヤーが固まる10分ほど前。
彼が残した最後の文章は、
【俺の父親は政府の高官なんだぞ!お前等みたいなゴミクズなんか、簡単に捻れるんだからな!】
◇ ◇
「ふーぅ……」
田熊勇雄。
60を超え、定年退職となった。もう7年前になる。
1人の社会人としての重荷まで外れることとなった。
曾祖父から外交官として続け、祖父、父、そして、自分と……4代に渡って、国の礎に携わったものだ。それは誇りに思うべきものである、そーいう自負。
今は……。何をしているんだろうか……。
介護という、ものかな。教育という、ものかな。
分からないな。
仕事をしているよりも、ずっと、ずっと、ずーっと。
目の前の事を直視している。
私に残った、ただ一人の息子がいる。まだ、手のかかる子だ。
シャーーーッ
朝。その太陽の日差しが差し込む前に自室のカーテンを開ける。
そして、ドライシートを1枚取り出して、部屋の汚れや埃を拭き取っていく。本棚、PC、ケーブル、……細かいところを隅々と1枚でやっていく。それを終えてから、自分の部屋の扉を開ける。
息子は……今日は出かけていて家にはいない。普段、息子がいるのならこの時間帯に朝食を用意しておく。手で食べられて、手が汚れにくい食べ物と、お菓子、……野菜をたまに用意してもあんまり食べてくれない。魚はちゃんと骨を抜いてあげなきゃいけない。
だいたいは菓子パンと果物の一切れ、チーズなどの乳製品を、息子の部屋のドアの隣に置いておく。
居ない時は、まぁ。
先に朝食を作って並べ、家族で座って食べていたテーブルで頂く。
「いただきます」
質素だろうか。
息子と違って、ごはんとお味噌汁、おしんこ、焼き魚、卵焼き、……子供の頃から、朝食はごはんだったため、パンは苦手だ。パンを食べる時は、半人前のパスタを作っていた。
食事とは大事なものだ。家訓の1つ。
チャポン
食事を済ませたら、食器を水に付けた後。着替えをする。丁度、日が出てきて温かくなってくる。
自室でランニングウェアを着用、靴も運動用のシューズにしておく。
そして、出かける直前には5年前に亡くなった妻に
「いってきます」
ガチャッ
それから、早朝のランニングに出かける。働いていた頃から休日の日課であり、これでしっかりとした汗を流して、日差しを浴びる。あいにく、家の近くにはしっかりとしたランニングコースというのがないため、信号待ちもちょこちょこ起きるが。3~4キロは歩いたり、走ったり。時間にして、60分~90分。気持ちいい汗と周辺の状況を見聞していく。
家に戻ってからシャワーを浴び、自室で本を読みふける。自分が子供の頃、聴いていたクラシック曲を流して、優雅に過ごす。勉強や仕事から、ただただ時間を潰すだけなもの。時々、友人との電話や会食を楽しんで……
「…………」
そうして過ごしたい。過ごしたいものだったなぁ。
自分に恥ずべき息子がいる。
それを抱えては、人との会話が恐ろしくもある。仕事の会話ほど、希薄で心地良い言葉のやり取りはないのかもな。
ドンガンガンッ
帰って来た。確か名古屋か、岐阜か。ただの旅行ではなく、ネットで知り合った連中の集まり。
分かりやすくキャリケースを転がしながら帰ってきて
「帰って来たぞ!」
「おかえり」
「さっさと200万円をよこせよ、親父!先週の小遣い(300万)なんか、あっという間に溶けちまったよ!」
金の催促をする息子、田熊英吾。
一日中、ネットゲームやらに入り浸っている我が息子。2年ほど前からネットの出会い系かは知らないが、旅行と称して出かけるのだが……。最近は随分と金遣いが荒くなっている。
「英吾、お前なぁ……」
「るっせーな!俺がお前達のせいで、こーなってるんだぞ!!」
この部屋に音楽が流れていた事が幸いだった。
「金だよ!!金!!お前が稼いだ金を俺に使わせろってだけだよ!!」
「っ………」
部屋が汚れてしまったな。
「200万、300万なんて大した額じゃねぇだろ!親父は偉かったんだ!生涯年収、30億は稼いでるだろ!税金だってちゃんと収めてんだろ!?」
「それは誰でも当たり前のことだ」
「息子に投資するくらいなんともねぇだろうが!!金だ!!みんな!俺が金持ちだって分かったら、なんだってしてくれる!誰だろうとヘコヘコする!俺の親父が誰なのか分かれば、ひれ伏すんだ!」
「…………」
息子の、英吾の目はまだ、……自分の中で思う、最悪には染めてないようだ。
とはいえ、今行ってきた旅行とやらも、怪しいものだ。
17~34という年齢を部屋の中に過ごし、なんとか説得して外の世界に足を踏み入れたかと思えば……。これまでとは比べ物にならないほどの浪費をし始めては、心を自制する事も無くなって来てしまった。
「冷蔵庫にビールを冷やしてある」
「おっ、いいなぁ」
虎の威を借る狐。親の威を借る子。
酒を冷やしてあると言えば、すぐにそれを持ち出して自分の部屋へと帰っていく。20代前半は酒などまったく飲まなかった。確か、勧めたのは自分からだ。とにかく、引き籠っている息子の事を知るためにと、チューハイを飲み交わした。どうして困っているのか、どうすればいいか、色々と話していって。
そうしてお金も渡した、最新のPCを2年毎に買い替えてやった。欲しいモノを買ってやった。やって欲しいこともやってきた。息子の気持ちを応えていった、親のはずだ。
だから、どうか。
どうすればいいのだろうか?
息子はまともじゃなくなって来ている。手がつけられない、怪物になろうとしている。
そんな気がする。
◇ ◇
名古屋の某所で行われていたとされる、ちょっとアレな集まり。
所謂、出会い系のパーティータイム。
男達と女達の、アレな感じ。
「ブルーマウンテン星団がいなくなって、会場のセッティングも大変になった」
「これからどうやってホテルと男女を用意するんだよ。急速に少子化が進むぞ」
そんな大人達の集まりをご用意していたのは、ブルーマウンテン星団の猪野春や宇多田。大人達によるものであり、蒼山ラナは意外にもノータッチだったりする。彼の場合は、2次や夢見がちなところがあるからか。憧れもするが、リアルが大した事もないというものもある。
あーだこーだ、猪野春や宇多田、田所、安住の4名は実質の無職。ちょっとした稼ぎにもなり、乱入して楽しんでもいた。
「スリープハンズ教団も最近はめっきりなぁ……」
「あそこは2次元ってか、スピリチュアルってか……」
「リアル系はあんまりやってくんねぇよな」
汚いおっさん達が幼女や女子高生などの若い女性達や、異世界にいそうな人種の女性に触れ合い(ほとんど疑似)できるのはスリープハンズ教団の催眠的なモノ。それでは性が満たされない。そーいう男達が集まるところ。
「おーっ、月継ちゃん。今回も来たんだー」
「まぁな。しかし、名古屋ってどーいう事よ?新幹線で来ちゃったよ」
「それがなー。東京や大阪じゃやってくんなくてさ。まだ、あまり知られてない名古屋のホテルを借りたって事よ」
「良い子はいるんだよなぁ~?」
「そりゃあもちろん!名古屋だけじゃなく、静岡、三重、滋賀。可愛い子なんて日本中にいるんだ。気にしなくていいんだぜ」
「ははは、楽しませてくれよ」
古野月継はちょっとした常連さんであった。
色んな整形手術を受けてきた中で、こんなパーティーの存在を知った。美男美女もいれば、ただ性欲に飢えた男もいる。自分と同じように顔や体を変えたりとしている者もいる。それを悪くいう気などないどころか、彼からすれば、肯定的で。
「モテて、抱かれなきゃ、なんのため整形かよ」
そりゃあそうだ。うん、その通りだ。
月継を嫌う弟、明継だって。こーいう兄のどこか平等な精神には、兄弟としての繋がりを感じ取っている。
「ブスは抱きたくねぇけどな(ダイエットして、化粧してりゃあいいけど)」
サバサバ、ハッキリと。自分に対して、自信を持てるのがいい。
パーティーに参加しては楽しむとこに
「んがーーーーっ、反対するんごぉぉ!」
「?」
「お、お客様!落ち着いてください!ホントに用意できなかったんです!!」
参加者の一名。ホテル前で暴れるかのような、叫び声を挙げる。どこか汚いって感じより、不気味な印象を感じさせる中年。
「話が違う!!2歳~10歳ぐらいの幼子達とエッチなウフフをするって会場に、2000万ぶち込んでやってきたのにぃぃぃっ!!今日に限っていないなんて違うんごおぉぉっ!!」
「ロリコン野郎!周りの人に迷惑をかけるんじゃない!」
「私はペドだ!!」
なんだあのデブは~……という感じ。まさに
「危険人物が来てるじゃねぇか。なんだありゃ?」
「あー。今回初めての参加者です。ペドリストさんって方です。まぁ、ハンドルネームでしょうね」
「ふーん」
ぶよぶよのお腹に一つ目青ウサギのTシャツを着た中年の男であったが、月継はなんとなくなところであったが
「おーい、おっさん」
「むっ?」
「なーに文句垂れてんだ。俺が話聞いてやるよ」
「むむむ、お前さん」
気持ち悪いデブと整形とはいえ、イケメンが肩を組んでいるとなんか虐めの匂いを感じ取ってしまうが。月継はそんなことはしないし、優しい陽キャタイプ。
「可愛い子なんてお前が決めんな。女が好きに決めりゃいいんだよ」
「性癖は合わぬが、お前さんも悪よの~。その事には同意」
すぐに打ち解け合う。性癖は全然違うけれど
「幼さは未来の輝きだおっ。それを抱きしめる以上にできるのは、嬉しいんごぉっ!」
「おう!若さはまさに一瞬だもんな!あんたとは気が合うな!どーだよ、一緒に回らないか?」
「お前良い奴だな。匂いで分かる!変態だけど、良い奴なのは匂いで分かる!」
変態は変態同士、打ち解け合う。女性さんには分からないが、男性さん達には分かり合える、馬鹿っぽさがある。
そんなこんなで古野月継と、レイワーズのペドリストがコンビを組むことに。
月継もペドリストが言うように、小学生くらいの子が時折現れるというのを知っており、
「ブルーマウンテン星団ってのが仕切ってるらしくてな。俺は会った事ねぇけどよ、あんたもその筋でここを知ったのか?」
「そうだお!ロリを専門に集める、並河さんって人と話をしたかったんご!」
保育士をしながら、良い子に目を付け、ちょっと攫ったりしていた模様。
「性癖が合う人と契約をしたかったねぇ」
「契約?なんか知らないけどよ」
「月継とは違う形で友達になれたから、それはそれで良かったよ」
「俺もそいつは良かったぜ」
女を待つ間にお互いの性癖について語り合う、男達の仲。
ペドリストは自分の素性は語らなかったが、
「子供に価値は付けられぬ!もしも、子供に困った事があるのなら、このペドリスト!応えるんご!!お菓子を分けてやる!」
「ペドは根っからの子供好きなんだな、」
「うむ!……それはそれとして、保育士さんやシングルマザーもいいんでごわす!」
「そーいう人達がここで稼ぎに来てるぜ。へへへ」
「ぐへへへへ。子供の作り方を教えて欲しいですなぁ~」
とりあえず、若い人妻コースを選択する2人。
男女交代で入れ食い色々。そんな時に
「きゃーーーっ、田熊様~~」
「田熊様、ご指名をーーー!」
黄色の声援にしては年上が多いような感じが……。それがホテル内に響く。
初参加のペドリストにはまったく分からず、自分の事を棚に上げて
「何事だ?」
「……あ~、たぶん田熊ってのは、俺以上の常連だな。ちぇー、あいつ来てるのかよ」
「誰だ?」
ペドリストの疑問に応える前にさっさと選んだコース及び、ご指名された部屋に入ったわけだが……。中にいるはずの女性達も、月継達の相手をしないで部屋から出てってしまったらしい。
「あーっ、マジで空気読めよ。田熊~」
「何者よ?」
「話によると、政府高官の息子さんで、大金持ちだってよ。金遣いが荒い事と奪いとったりするのが好きな事で有名なクソガキだよ。……って言っても、俺より年上らしいけど」
「なるほど、つまりは?」
「ここにいる女達を金が買い取って、一人で入れ喰い放題って話。……はぁ~、セッティングする連中も金に弱いし、権力にも弱いから、あいつの言いなり。女もいつもの倍以上、チップも入れりゃあ自分から選びに行くよな~」
まったく、白けるな~って、感じになりながら。部屋の中にある冷蔵庫から缶ビールを取り出し
「ペドはビールはいけるか?ドリンク飲み放題は使っておこうぜ」
「オレンジジュースはあるかね?ストローもあると助かる」
「そいつはねぇから、メロンソーダで我慢しろ」
月継は生ビール、ペドリストにはメロンソーダ。ストロー付きでご所望。
カツーンッ
と乾杯。
月継は一気にビールを飲み、ペドリストはチュ~~っと、ストローから吸い上げ飲んでいく。
そこに女でもいればと思いつつ、
「ま、金だよな」
「……俺にもそーいう女がいるから」
「なんだよ、意外だな」
「好きではないな。なんというか、だから?、というか…」
常識的に考えられる事より、社会的に考えられること。
自分なりに集まって、使ってみたものだが。どーしようもない格差はいつもいつも目の当たりにし、在り来たりな良心が許さない部分を軽く小突いて壊してやってもみる。
何のことはなく、良心を持ち続ける事こそが悪だと言われたりも
「あーっ」
「?」
「アイドルとかとメチャクチャしてぇーなぁ。可愛い子とはいくつもやってるんだ。でもよぉ、長続きしねぇのは相手にも問題があるんだよな。やっぱり金なのか。金か~。でも、俺だって整形してイケてる男になったんだぜ。だから、ヤれるんだよ」
「ちょっと退いた見方だと、お前の発言はアウトだな」
高望み。いいじゃないか、夢で。
酔いと友達の前では何もかも打ち明けるもの。
「弟がいるんだけどよ。今、医者みたいなことして稼いでるし、金も貸してくれるんだ」
「できた弟だな」
「バーカ!無免許の医者だぞ!……って、そっちじゃなくて。あいつ、ずーっと仕事して楽しいのかね?何千万と稼げても、ずーっと病院住まいでストレスなくやってるんだって、とても俺の弟じゃねぇ!看護師さんに囲まれてマイペースでいるとか、人生損してる!絶対に後悔するタイプ!!」
金を持っていても使えない、使わないんじゃ、なんのために生きているのか分からない。
そんなことを指摘しようが無視される上に、こっちの方を非難してくる弟。両親も弟寄りで、だからこそ、顔も気持ちも嫌って踏み超えてやった。顔を代えてやって人生変わったパターン。
「有名人の可愛い子ちゃんと結婚してやる!」
鼻息荒く、月継の本命というか、理想な相手を聞いたペドリスト。
有名という部分は何でも良いんだろうが、周りが聞いてそれに共感してくれるような相手。それを求めている。
「っ……いつつつ」
「どうした、月継」
「なんか最近。腹が痛む感じがするんだ。痛い時には気持ちいいのだろ?」
「体は大事にしろよ」
あとで調べたら胃潰瘍で、ヤケ酒のし過ぎと言われるのであった。日頃のストレスも多少あるという。
月継が本心を語ったところでペドリストも何かを語ろうと口を動かした時
ドーーーーンッ
「なんだ?建物が揺れたよな、ペド」
「地震ではないな」
「そんなに激しい〇〇ッスしたのか。マジかい」
何が起こったのか分からなかったが、ジャネモンであるペドリストにはその原因が分かった。自分と対となる力、妖精による力。月継のボケをスルーしつつ、
「少し様子を見に行く」
「お?なんだよ。俺も行くぜ。乱〇現場に突撃も嫌いじゃねぇし。ここに居ても、女が入ってこない。自分から行かなきゃな」
1つは妖精。もう1つは人間達が率いる者達の仕業。
◇ ◇
ホテルの揺れに関わったのは、一匹の猿の妖精である。
「キキーーーッ(どうだ!これが俺の能力!!)」
”掴んだモノを動かす”能力!!
「キーーーキキキ(これがSAF協会、最強の妖精が持つ力だ!)」
掴める範囲に限定的なところを感じるが、掴めさえすればなんでも揺らしたり動かしたりできる能力。
筋力関係なしに動かすことができるため、ホテルの床を握るだけで自在に崩壊も可能。
「キーーーーーッ(暴力・金・女を全てを手に入れる!それが俺の夢)!」
サザンと涙ナギ、カホ達による、ブラック・カラー・ホワイトの能力の類似した能力。
あちらは空気や液体なども触れることができ、空中歩行や打撃無効の液状生物などにも対応できるという汎用性の高さも魅力的である。一方で、この妖精。……ゴックブの能力は、シンプルにパワー特化。
先ほどやったように、ホテル全体を揺れ動かせるほどのパワー、適合者次第では大地を揺らし、周囲を壊滅させるにまで成りうる。
「……んー、なんか違うんだよな」
「きっ(なに!?)」
「こー……そのー……。俺が求めている力ってのは、筋力じゃなくてなぁ、ちょっと保留させてくれ」
SAF協会の最強と豪語している妖精、ゴックブ。白岩にぶっ飛ばされていこう、その消息は不明であったのだが。彼も彼で、自分の適合者を捜していた。
自分の性質に合う人間。非常に暴力的かつ傲慢な性格を持つ者。その者のまで自分の能力を披露したのだが
「無双する感じのスキルはないか」
「きーーっ(我が力で無双など容易いぞ!)」
田熊英吾という男性は、ゴックブとの契約を一時保留した。
金はあり、女に困らず、足りない暴力をより強化できるというのは良いが。こんな生物が他にいるのなら、他を見てからがいい。よくを言うなら
「親父の金で妖精とか買えるんじゃね?面白いかもな、それ」
選り好みする機会があるというもの。即座に決断しなくてもいいという立場。
そして、それはゴックブの同じ。彼がここを訪れたのは
「きーーーーーーっ(まぁいいさ!お前でなくても、ここには俺と適合しやすい感性の持ち主が多い!後で契約しろって言うなよ!)」
似たような問題を抱える人間達が、このパーティーに参加していること。ゴックブとしては
「きききっ(暴力・金・性欲に飢えた人間達がいい。俺の力を最大限に引き出し……。まずはヒイロの適合者である白岩を殺して、次にあのデブを倒してやる)」
田熊以外にも代わりがいるという事。
ホテル全体を揺らして不安を煽っているようで、探す人間達を品定めしているとこ。とても悪い言い方をすると、なんか婚活のような感じである。
「な、なんだったんだ!今の揺れ」
「地震じゃないようだしな」
「せっかくのパーティーがー」
ホテル内で、ゴックブが引き起こした揺れに驚く人達がいる。廊下に出て周囲を見渡すよう。そんな動揺を見せている人間達に用はないと、ゴックブは
「きーーーーっ(いらねぇ人間共が!そのブロンドヘアーを引き裂いて、食い物にしてくれる!)」
「わぁっ!猿が襲ってきた!!」
食料だとしか思わない獣のように、人間達に飛び掛かっては。
ドゴオオォォォッッ
廊下の天井に突き刺さる蹴りが炸裂する。
「きっ…………」
「……銃社会じゃない夢の国だと聞いていたのに、猿はいるものか」
「イケないおサルさんねぇ」
近くにいた3人組の男女の人間達に襲い掛かったゴックブであったが、”通常”の人間の1人に逆に蹴り飛ばされ、ホテルの天井に顔を突き刺される醜態。ナメて襲い掛かったからの逆襲。
この人物達。よくよく見てると、日本人ではなく、ヨーロッパ、アメリカ系の外国の人達であった。
「”貢物”の用意ができていないと困るんだ」
要約すると、人攫い集団にして傭兵部隊。
「騒ぎを起こしたのはお前達か?」
「!なんだい、おっさん。自慰行為は部屋でやっていろ。こっちは仕事だ」
「……待て。あいつの雰囲気と、着ているTシャツがオカシイぞ」
ぶつかるのは、レイワーズの中でも変人と言える者、ペドリスト。
お互いに謎の存在がホテルの廊下で対峙した。




