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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第43話『凶悪タッグ形成!?古野兄弟と涙姉妹が、結構違う!』
150/267

Bパート


「だ~から~」


因心界の病院にて、繋がっているかのような両目を細めて、古野は毎回恒例のように粉雪に問う。


「粉雪さんねぇ~、やり過ぎですよ~。私とサングも疲れましたよ」

「相変わらず、そーいう説教は止めてくんない?というか、私は今回何もしてないんだけど?」


毎度毎度粉雪は、表原などをボコボコにしてから病院に連れて来るもんだから、古野からしたら凄く迷惑なこと。しかし、今回に限っては……。粉雪は連れてきただけである。本人はそこまで手出しをしていない。

粉雪によって運ばれた者は2名。その1名は、



「特に苦労しましたよ。”邪念”で支えられた生命力を、人間本来の生命力に切り替えるって事は……」

「やればできるんじゃない」


ムキョによって、”宿主”とされてしまった女子高生であった。

彼女は凶刃から命を助けられたものの、ムキョの力によって生き延びただけに過ぎず、ムキョが死んでしまった今、とても不安定な状態になってしまった。

そこで古野に診てもらい、ムキョの力とは別の何かで生命を維持する手段をやってもらった。


「失われた箇所は、別の誰かの細胞や骨を集め、結合させました。その代償に、死にかけの人間を問答無用で患者に対しても使うのは、少々気が重いんですがね」

「いいのよ。よくやってくれたわ」

「私自身もやったことはありません。これ以降の経過のほどは、革新党にお任せしますよ?命だけは助けただけです。……超眠い」



2日ほど、寝ずに治療する結界を張っての集中治療だった。

移植作業って言えば、話しは早いだろう。


「……………」


治療が終わった女子高生はまだ眠っている。

死にかけたり、蘇ったりを繰り返した以上、記憶が混乱するだろう。命を助けるまでが古野の仕事で、そこから先は本人と粉雪達に委ねる事にした。

手術に苦労して、自分でも口にしたように仮眠でもとろうと思っていたのだが、


「で?無事に手術が終わったからって、私を呼んだのはなんで?暇じゃないんだけどさ」


粉雪に説教するため、呼んだわけではなく。別の事情があって、古野は粉雪を呼んでいた。

ギブアンドテイクといきたいところだが、残念ながら古野に与えられるものはなーんにもない。眠い中、こーいう事を口にするのは勘違いを生みかねないが


「会って欲しい人がいるんですけれど、会ってくれます?」

「私に?」


なんか喧嘩売ってる?って感じな態度になる粉雪だが……。

そーいう気持ちは一切ない。ただただお話をしたいというだけ。

その相手ってのは、


「あー……私のあにと、軽くでいいんで、喋ってくれませんか?向こうから頼まれましてね」

「あんたに兄弟がいたのね?お兄さんが」

「丁度、胃潰瘍いかいようでここに入院してまして……うっせーの、なんの……」


自分の家族というだけあって、気恥ずかしさのようなものがあるのか。あんまり人に紹介するもんじゃねぇという、古野の返事。キッスとルルの姉妹が仲が良ければ、仲が悪いもあるから。粉雪や表原などの1人っ子からすれば分からない問題。

話しするだけで、こーいう無茶をしてくれたわけだから、するのが筋ってもの。

その前に……



「お、お前等。どーいうことだ!?」

「あの騒がないでください。病院なんで、ここ」

「ふざけるなぁーー!!人の体を勝手に使って!!悪魔っ!!」

「通り魔しといて何言ってんのよ?自分の体で女の子を救えただけ、良かったと思いなさい」



女子高生の危機を作っては、救ってみせたのは。あの通り魔さんである。

この男もまた、なんとか生存しており、革新党の手当てを受けて無事に命は助かった(両手が無くなったけど)。その後、さらに古野に体を利用されて


「こ、腰が上がらない!俺はずっとうつ伏せで過ごすのか!?」

「半年以上は寝たきりになりますよ。背骨と背筋を主に借りたんで。1年後には歩行ができるかと思います。騒いでるとその期間が伸びますから、大人しくしてください」



労働していた中年になると、ヘルニアで肉体労働に支障をきたす人もいるから、そんなに残念がるなって古野は伝えるが。働いて来なかったんだから納得できんのは分かる。


「じゃあ、いいですか?」

「いいわよ」

「おいコラ!無視するなーー!!助けろーーー!!お前等は人殺しか!」



とりあえず、大丈夫だろって事で古野と粉雪は一緒に別の病室へと向かう。

疲れからか古野の足取りがちょっと重い。それに合わせるように粉雪に


「会わせる前にですね」

「ん?」

「私の兄のことを、他の方には言って欲しくないんですよねー」

「それは言って欲しいとも言えるんだけど」

「北野川ちゃんも、今こちらに転院したんでそうなのかもしれませんね」


好奇心で探られるんなら、まぁ構わないのは確かだ。

問題なのは知らずに探ると痛い目を見るという事だ。会いたいのが女性だというところも含め。古野は仕方なく、一枚の写真を粉雪に見せてあげた。古野もおっさんに見える姿だが、26歳でまだまだ若い。若き日のサラリーマン時代に撮った、家族写真がそれ。


「これはあなたと、あなたのご両親……それでお兄さんか」

「まだ”完全”じゃない時です。そんなに驚きませんね」


両親と古野、……その兄が映る写真を見ると。

言いたくはないが、全然似てない顔である。体格はほとんど同じであるが、両目が寄っている古野やその両親と異なるお兄さんの顔に。


「……整形ってこと?」

「察しが良いですね。周りの人には内緒ですよ」


本名がたまたま同じというのは、珍しくない。それを口にしなければ、絶対に分かりようがない。

病室に近づくと聞こえてくるのが、看護師さん達の黄色い声が


月継つきつぐさんって、どんなお仕事されてるんです?」

「独身ですか!?彼女いますか!?」

「お住まいってどこですか!私はー」

「ははは、一つずつ話すよ」


弱った人間、年老いた人間がやって来やすい病院に、美青年が入院してきたとなったら、テンションが上がらない女性などいない。声をかけて付き合いたい女性が沢山いてもおかしくないぐらい、超イケメンの30代男性。20代前半に見えるイケメン。

粉雪のタイプではないが、まぁ女性的な目線から見ても


「人気が出そうな男ね」

「……6回ほど整形手術したら、それくらいになってないと釣り合わないでしょうね」


古野月継ふるのつきつぐ

古野明継ふるのあきつぐの兄であり、整形手術をして相当な美形を手にした男である。その容姿は、古野のご両親から受け継がれている、寄り目や老けを感じさせる顔つきではなく、若々しくて両目もキリっとした大人。

家族の事を黙ってれば、弟さんがここに勤めてるなんて誰も分かりゃしない。

一旦、古野と粉雪は廊下に引っ込んで。兄に対してこう言った。


「表原ちゃんのお父さんとその辺が似てるんですけど。家庭を持たないバージョンというか」


表原もこの病院で長い事いたもんで、自分の家族の事を少しだけ古野に話したりしていた。その話の中で、アイドル好きというか。流行に目がないという父親がいると知って、古野も自分の兄を想像させていた。

共通点として


「アイドルオタク。……というか、気が済まない男なんです。あ、私と一緒にしないでくださいよ」

「ヤリ〇〇?」

「そうですね。顔で騙される奴が悪いと、兄弟揃って言いますけどね」



借金をしてまで整形をするのも、始めとして。色んな女性関係を持っており、ホントに古野の兄なのかと疑うくらいの破天荒な生活を今日こんにちまでしている人物。今は製造業に勤めているのだが、4年前は自分の整形した顔を使ってヒモとして暮らしていた事もある。

いちお、ギャンブルからは23歳で足を洗った。金を荒稼ぎするのは楽しいが、女性に楽しませてもらう方がもっと楽しいからだ。金も使わなきゃ、ただの紙と硬貨。



「裁判沙汰になりますが、女性達から3000万円ほど、騙し取った快感がギャンブルを超えちゃってるんですよね。よく、真面目に働くようになってくれました」

「それくらいはいいんじゃない?女も男も騙すしさ」


さすがに粉雪かってところ。

古野はちゃんと会わせても大丈夫だろうって分かっていた。

騙しもするし、騙されもする男。

それが特徴的なのが、古野月継という男。


「で?あの男は、私にどーしたいつもり?言葉次第じゃ、問答無用にするけど?」

「だからやり過ぎはダメですよ。私にもモテる男の考えは、分かりゃしないんで。粉雪さんなら分かるんじゃないんですかね?」



有名人を口説いての金儲けか。単純にファンなのか、よく分からないところ。

粉雪は人払いをお願いして、月継との面会をOKにしようと思ったが。意外なことに



「古野先生ー。隠れてないで来てくださいよ」


兄弟だから分かるのか。一瞬しか顔を出さなかった古野明継に、月継は気付いて声をかけに来た。

別にお前に用があるわけじゃないんだけど。

呼ばれた以上は顔出しをし、それに続くように粉雪に来た。


「……看護師の皆さん。申し訳ないですが、自分達の勤務があるでしょう」

「あ、はーい」

「もー」


古野の一声でさっさと看護師さん達が本来の業務に戻る。同じ苗字なのに……この顔面の差と心の差。


「ははは、冷たいねぇ~」

「私はお前なんかに構わないで、寝たいところなんだけどね」


兄弟の仲が悪いのを見ると、キッスとルルの姉妹はホントに恵まれてるなと、粉雪は後ろで思える。こんな言葉を真正面でぶつけて、周りにはなるたけ秘匿と……。

古野も古野で、この兄の意向を踏まえて


「月継さん。粉雪さんを呼んできましたよ」

「見れば分かるって!もー、俺。タイプなの!こーいうバインとした魅力あるどSなお姉さん!恥ずかしいけど、Mっけだから。看護師さんに上から見られるのもいいが、うへへへへ」


男の本能丸出しだなって。Mについては、半分半分なんだろうが。


「明継が世話になっている。あなたの事は結構前から知ってて、いつか話したいなと」

「あら、そうなの」

「俺がガキの頃。あなたはモデルとして雑誌に載ったりしている時から、可愛いなーって、時が経って急に政治家になった時はさー。もー、応援したいって」


南空の養子となってからは政治家として必要な看板や、社会の仕組むを早く知るためにそーいう仕事を引き受けてたんだけどね。野花財閥のツテとかもあって。

でも、あの時不満だったのは一度も歌を披露できなかった事と、話しがせっかく来たのに歌ったのは野花壌さんだったということ。

あの人、変装スキルも高いからね(私の背が高いのもあるけど)。


「応援は嬉しいわね。それも、結構前の話じゃないかしら?その時から気に掛けてくれるなんて、ありがとう」

「あんまりいい表情をしませんね」

「気のせいよ。明継くん」

「……………」


私、こーいう顔でも26歳で。兄は5つ上なんですけどね~。粉雪さんは30代前半かと思ってたんですけど、兄がそーいうのを見てたのは中学生頃でしたっけ?

下手すると、粉雪さんって40代、50代ですか?

モデルの方も、整形とは言いませんが、年齢の詐称疑惑など珍しくないですからね。

まぁ、詮索は止めましょう。



「一度会って、話しをしたいし、握手やサインなんかくれたらなぁ~」

「サイングッズの転売はダメよ?私、そーいう古参の方も大事にしてるから」

「いやいや!そんなことしませんし、一度たりともしたことない!なぁー、明継!」

「そうですね。私もそれは保証しますよ」

「けど、残念。規則上、やらないし提供できないの。私の方でイベントがあったら、あなたを少しだけ優遇してもいいって事にしてあげるわ」

「そ、そんな~」


こっちもこっちであんまり残念そうな声を出していない。



「ま、こうして美しい人と話せたのも収穫かな。いやー、ホント好み。癒す女性の代表、看護師さんよりこーいう働く女性の代表って雰囲気がさ。ホントにホントにね!握手もサインも、次にしよう!」

「ふふふ、ごめんなさいね。じゃ、私はこれで。明継くん、ちょっと来なさい」

「はいはい」



粉雪と古野明継は、この場から去っていく。そんな二人のやり取りを見て、



「俺も”妖人”になればよかったなぁ~。この前、変な”妖精”に絡まれた時、断っちまったし……。関わりてぇ~な、粉雪さん達と……いい匂いがする」



何やら不審な言葉を話す、月継であった。




◇          ◇



粉雪 VS ムキョ。

その戦闘以降。レイワーズの動きは一気に静まった。彼等の想像以上に、因心界が強い。特に粉雪への警戒は高まった。

まずは”宿主”を手にして、力を蓄える……。だが、上質でなければならない。



「俺が病院の警護?黛と古野、怪我をしているが、北野川もいるんだろ?」



録路が因心界の本部で、キッスに指示を出されていた。



「念のためだ。嫌な予感がしている」


キッスの直感。それが8割ってところなのだが、


「ルルを配置できない」

「それお前個人の都合じゃねぇだろうな?」

「そそそそそそそ、そんなわけないだろう。一緒の任務だけれども!」


動揺してる。それはほんの少しのスパイス程度の気持ちでしかない。

ただ、キッスからは



「私とルルはちょっとな……。とりあえず、私達も”急に”いなくなるかもしれない」

「?」

「野花が本部を護ってくれる。録路は病院を護っていろ」



レイワーズの行動がけんに回った。奴等が元は一つの存在だと判明しているため、同類の生死くらいは察知できると判断。

北野川と黛が、メーセーを葬ったのは大きい。

あのタイプが他者との協力をしていたらと思うと、被害はあの時以上になる。

とはいえ、そーいう周囲を出し抜くタイプが1人とは限らない。

完全に協力する者。時に裏切っての協力をする者。そもそも、一匹狼な者。

こいつはレイワーズに限った話ではないが、粉雪に関してはキッスも自由にやらせている感じ。立ち回りを誤るとヤバイってのは、薄々気付いている。

粉雪の動きが明らかにオカシイというのは、事後報告を見れば明らか。




「敵が来るってんならいいぜ。だが、俺は護る気ねぇからガンガンやるぞ」

「被害少なくな」




キッスのこの読みは、数日後になって的中する。

レイワーズを捜してくるだろう、因心界の面々を一同に釘付けにするなら、重要な施設を襲撃するのが手っ取り早い。捨て駒を用意させるといった、そーいう非道な作戦を立案し、やらせるような輩がいそうな気がしてはいた。



「で?キッスは何してるわけよ?スカウトじゃないでしょ」

「分からないわよ。ルルちゃんと一緒に行動してるのが、多いくらいで」



一方で、粉雪も野花と直接会って、キッスの動きを確認していた。しかし、野花からしても分からないという言葉が返ってくる。

野花の立場は、因心界所属ではあるが革新党にも籍がある。というか、粉雪からしたら野花はこっち側の人間と思っている。



「私に働かせて、自分はゴロゴロしてるのって酷い話ねー」

「かもね。……って、私もずーっと待機なんだけど。事務作業ばかり」



ルルと一緒ってのが、これまでとは結構異なるパターン。普段はある程度、距離をとっての交流だった。キッスがルルの強さをより認めたのもあるだろう。

相変わらずルルは、惚けてそうだなと粉雪は感じ取っていたが、



「ま、それならそれでいいか」


粉雪もまた動かない。

彼女達、革新党は少なくとも、ハーブの居所を把握できている。この事はキッスに秘密にしているが、野花にはこの時に話していた。

勢い良く戦いそうな感じに思えたが、


「レイワーズの出方次第。妖精達の出方次第って事で」

「…………粉雪はやらないわけ?悠長なのは……」

「それは、サザンやヒイロの方でしょ。いい加減、出てこいっての」


ハーブとの戦いを避けた粉雪。

写真だけじゃなく。直接、ハーブを偵察した感じ……。ムキョより実力があるのは確かだった。

サシなら負ける気はしないが、相当な被害を起こせるという意味でキッスとハーブの戦いを願っている。

革新党にレイワーズの処理を全て押し付けるってのが、正直、止めてくれってところだから。次はキッス達に出番を譲っている感じだ。




◇            ◇



レイワーズを二人撃破した報告は、キッスからサザンに伝えられ。

その後、情報交換を取りやめた。あまり地球との関わりを持つのは危険だと、サザンが感じたからだ。

やっぱり



「アダメさんの処理が悪いからですよ~」



人間と妖精の繋がりが深い、涙一族との関係もちょっと溝を感じさせる。

世界改変なんて事を察知されたら、人間達が妖精の存在に不審な点を思うのは無理もない。

とんでもない力を人間達に与えるのは確かだが、その真意を掴まれたら、どうなるものか。


「ルミルミとシットリはそれを知っているんです。シットリは死に、ルミルミがそれを人間に伝えるとは思いませんが。……”目的”のため、実行ができる人間と出会ったら……分かりますね?戦争ですよ、これもう」



サザンの危惧している、止めようのない殲滅作戦が始まってもおかしくない事。

そんなアダメは


「だから、私は~~~。私だって、一生懸命!ルミルミ捜してるじゃん!マジであいつ、どこいるのよ~~!?」

「いっそ、あなたを人間界に落として、吊るしてればルミルミが来るかもしれませんね。殺しに」

「怖い事言わないで!あいつ、私の想像以上に強いんだけど!!」



泣きながら、術式?、もしくは未来の技術的なものを利用し、なにかを制作していた。


「最悪に備えた準備してるし、ヒイロだって修行してるんだし……。って、サザン何もしてないじゃん!」

「私だって、ナギとカホがいなくなって、もう何もできないんですよ!あなたの”やらかし”と、”妖精の秘密”を人間にバラしましょうか?絶対、八つ裂きです!」

「あーーーーっ!!私の黒歴史を勝手に見るからだぁ~!」

「それが真実だったなんて、私もルミルミも思いもしませんでしたよ!!知りたくもなかった!」



…………。やはり、遠い昔に、アダメは何かをやらかしたらしく、それが妖精達に影響を及ぼしているらしい。

その事実を秘匿し、別の選択を模索しつつ、現状を維持する事に勤めているサザン。

その事実を秘匿にするが、事実を覆して、現状を変えようとするルミルミ。

そして、……。




◇           ◇



人間達も、レイワーズも、SAF協会も、妖精の国も。

様々な思惑を持って生きている。

それぞれが均衡している中で、ほぼ同時に動いてきたのは偶然だろうか。




ザッ




「あの中にいる気配」

「ファルルルルル」

「怪護の言っていた事は本当のようだな」




因心界の病院近くに、その姿を現したのは……隠しようもない龍を髪に束ね、口には小太刀を咥えての、バトルモードでの見参。

レイワーズのエフエーがある目的のために、無謀にも乗り込んできた。




「……なんだあの、変な恰好の野郎は?」

「奇妙な風貌ですね」



ポテチを食うデブの録路と、寄り目で老け顔の26歳男性、古野の台詞。

どこか2人に嫉妬があるんじゃねぇの?って、勘繰りたくもなる。

っていうか、お前等の見た目もある意味でどーなってるんだ?って、隣にいる女性陣2人は思う。

相手となるエフエーを見て、二人の女性は



「顔が結構、イケてません!?ちょっとジャニ系みたい!好み!」

「そー?私は、あーいうのいいわ……。顔はいいけどさ。なによあれ」



面食いなところをサラッと述べる、黛。一方で、龍がくっついていたり、両腕が無くて口で小太刀を咥えている姿に、人の顔もいいけれど、行儀も大事でしょって思っている北野川。

彼等4人で迎え撃つ、エフエーとの激闘。




それと同じく、別の場所では。



ウーーーッ



ウーーーッ




あるサイレンが施設に鳴り響く。侵入者を感知した事によるサイレンだ。


「来るとすれば、ここだと思っていた」

「お姉ちゃん。あたし……」



そして、そのサイレンは因心界の本部にいるキッスとルルが持っていた通信機器からも鳴った。

その時。ルルは不安を感じたが、キッスは心配ないとルルの手を握った。


「大丈夫だ。力を貸してくれ」


サイレンが鳴ったそもそもの場所に問題がある。ここの警備はとても厳重なものとしており、代々伝えている侵入者への処置が施されていた。

侵入者はキッスの予想とは違い、正面や空からではなく、地下から侵入してきた。モグラの移動みたいに地面を掘ってやってきたのだ。しかし、そこにも当然のように警戒網があり、すぐにそのシステムが作動。

そのシステムは本来、キッス達には適応していないのであったが、キッスにその適応方法を伝授されていたのが幸いだった。



ブンッッ




「え!?ちょっ……」


そんな声を挙げたのはキッスとルルの近くで雑務をしていた野花である。……いや、何が起こった?って感じ。

雑務をほっぽり出して、キッスとルルは文字通り、野花の目の前で消えてしまった。

2人を瞬間移動させる防衛システムだ。



キッスとルルが瞬間移動したその場所は、




ポチャン




「風情がある広い庭だろ?」

「……存分に戦えます」



侵入者含めて、ある場所へ強制的に移動させるものであった。

涼しい風が吹き、大きな鯉がいくつか住んでいる池があり、和風なお屋敷があって雑草と石畳の地面。竹林でできた山々が見え、野鳥や昆虫達の鳴き声もする田舎。

状況が整うと同時にサイレンは止んだ。

この施設。この場所。キッスとルルじゃなければいけなかった場所は、



「お前の、マキさんの因縁がある場所だ」

「…………あんたも妹みたいに思ってるから、今は戦う気がないんだけどなぁ。メグの防衛を利用したね?」


涙一族、涙メグが所有している家であり、研究所。キッスもルルも、涙一族達がここで育った場所であった。

ここには様々な情報や研究成果、一族の歴史などがあり、それを管理していたのは主にメグであった。彼が死んだことでここの警備が危うくなったが、侵入者が来る前に警備を変える事に成功。

涙一族が総出で護りたいものも、ここにはある。


本来だったら、メグが敵と1対1でタイマンする罠を。キッスとルルの、2対1で戦う事を要求させる罠。


それでも、相手が相手だ。



「ルミルミ」

「どいて、キッス。あたしの目的はあんたにはカンケーない」

「そーもできないのが、成長そのものですよ」



キッス + ルル VS ルミルミ。


涙一族の地で激突する事になる、最強と呼ばれる者同士の対決。




おまけ:


古野:今回の話は予定されてなかったんですよね。

キッス:うむ。ホントなら私とルルのイチャイチャを

ルル:それはないよ、お姉ちゃん。ホントだと、表原の出番だったんだけど。あたし達が自由に行動できると都合が悪い事になるからって事で、急遽入れたって感じだそうです。ルミルミの動きも明かした方がいいから、お姉ちゃんと戦う感じになったんだよね。(出番が後ろだし)


古野:なるほど

キッス:それはそうと、古野。お前、兄弟設定とか合ったのか?

古野:実は第一部のキャスティーノ団との戦い辺りから決まってたんですよ。それが微妙ながら明かされるところ、書いてるんですよね。気付かないと思いますが

ルル:プロット段階で決まってたんですね……って、ちょっと!

古野:どうされました?

ルル:あの、初期設定だと古野さんがお兄さんで、弟さんがジャネモンになる設定なんですけど

古野:はははは、明確に作者が間違え(勘違い)てましたね。逆にしちゃいましたが、それもいいかなって思います。





挿絵(By みてみん)

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