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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第43話『凶悪タッグ形成!?古野兄弟と涙姉妹が、結構違う!』
149/267

Aパート

因心界 VS レイワーズ。

両陣営の戦闘は、いずれも因心界が勝利となったが。

レイワーズの実力もまた、”個”という状態で因心界や世界に大打撃を与えている。


クールスノーが”宿主”を手にしたムキョを完封した実力差で勝利をしたが、逆に彼女ほどの実力者でなければ、1対1は危険と言えるもの。

黛、北野川の2名の戦線復帰はまだ先のことである。



その実力者が残り6名。

元を辿れば、1つの存在であったため。協力という手段もあり得ること。

事態はなるべく、早急に。

そうでないと


「黛ちゃんは退院したんだ?それは良かったね」



レイワーズのみを危険視するわけにもいかない。こちらと協力し合う可能性も否定できない。

チームの動きがまったく読めないのは、レイワーズよりも……SAF協会。

シットリ、ダイソン、アイーガという、3名の妖精と主力が失われたとはいえ、まだ在籍しているメンバーの実力は因心界の”十妖”と同格やそれ以上と言える。

特に困っていることで、全体に言えることは、



”未だにルミルミの所在が分かっていない。”



という問題である。



「引き続き、情報収集を頼むよ」


ホテルの一室で因心界の内部に潜入させた人物から生の情報を受け取る、寝手。

ルミルミの事を彼が持っているネットワークと、因心界の情報から捜しているのだが……。一向にその動向は判明しない。もしかすると、”妖精の国”にいるんじゃないかという予想もしている。


「というか、いい加減教えてくださいよ」

「何が?」

「いや、あの因心界に誰を潜入させたかって事です!!黛ちゃんも助けるとか、何者ですか!?」

「えーー?まだ分かってないの?」

「ちょっ!酷くないですか!?私のこと、ただのメイド扱いですか!?お茶とか奉仕するだけじゃないですから!」



情報収集の合間に漫画を描いたりしている寝手。こんな田舎で作業をしたのは初めてで、いい気分転換として取り組めていた。一方で相方であるアセアセは、寝手のサポートをしているのにも関わらず、彼が得ている情報をなーんも教えてくれず、ちょっとご機嫌斜めであった。

たまには、寝手も散歩をさせるべきだと思っていたのに。寝手はここに着くまでに筋肉痛になって、2日ほど苦しんでいたとか情けないという思いもした。それをまったく恥じずに引き籠るとは……これはホントにいけない。




チュンチュン



ピーーーッ クルックルッ




野鳥の鳴き声がするほどのド田舎。

山と海を同時に味わえる、長閑のどかな場所にルミルミを除いたSAF協会はやってきていた。ムノウヤからの提案でこんな場所を訪れ、リッチにホテルを数部屋借りて、旅行気分といったところ。


「うわー!おっきいっ、カボチャ!」


そのカボチャよりもデカイのが彼女の胸にあるんだが……。

旅行気分の延長で、白岩は畑仕事の体験をさせてもらっていた。ホテルの料理に使われる野菜の収穫作業のお手伝いでもある。料理はとても下手だが、こーいう力仕事はそこそこ向いており、とにかく楽しんでるご様子。



「んー……気持ちいいなぁ」


そんな白岩の様子を監視する任もあるのだろうか。ムノウヤは白岩が畑仕事をしている近くの林道にある、1本の木の上で、用意してもらったハンモックに寄りかかるほど、リラックスした状態で寛いでいた。

林の中を通ってくる風と、虫や野鳥達の声に癒されているのだろうか。

そんなリラックス中のムノウヤと違い、ムノウヤのいる木の下では、トラストが神経を集中させるように、座禅を組んで精神統一をしているようだ。



「……………」



シートを敷いて、体が汚れぬようしている。

その上で気を高めている。

ここにいるメンバーの中では、まだまだ実力不足。ジャオウジャンのためにも、白岩を殺さなければならない任がある。白岩の一瞬の隙を突きたいところであるが、



「気を張り詰めるなよ、トラスト」

「黙っていろ、ムノウヤ」


……分からない。

ムノウヤが、自分自身に関わってくる理由。

自分が考えても、自分と”地位”が異なるからこそ、答えは見つけられないのかもしれない。

自分が出来ぬ。ムノウヤにその気もない。……ならば、あの男はどうだ?と、わずかな期待をしているのだが。





ドバアアァァッ



海の沖に上がった魚の群れ。本来、海中を泳ぐべき魚達が海面近くまで来るのは、何かの異常事態や危機を感じ取っての、生物が持つ逃走本能から。

それからしばらくして、海面に浮上する男。



「ぷはーー!だーっ!」



此処野神月は海で修行をしていた。闇雲に白岩の命を狙ったりなどしていない。明らかに自分との実力差、戦力差を理解している。白岩がこうして近くにいてくれるのなら、いつでも殺し合いができる。奴は自分が殺すまでどこかで死ぬことはないっていう、彼女への信頼があった。

戦闘狂、殺戮を愛するような男が、柄にもなく熱血なところを見せる。


「ふー。まだまだ、上手くいかねぇな。”あいつ等”みたいにはできねぇ」


対白岩に特化するような、修行ではない。

単純に自分をレベルアップさせるためのもの。殺意や狂気がまだまだ足りてないのも含め、戦闘技術や自分の戦闘手段の見直し、身体能力の向上。それらを含めて、海中という人間が生物として離れた場所を利用しての特訓。


此処野は再びに大きく息を吸って、海中に潜っていく。彼がやっているのは、海の中に泳いでいる魚達の誘導であった。槍の妖精、アタナを利用し、自分の思うが儘に相手を誘導。

その完成形までは、まだまだ遠い。また魚相手にできても、それよりも知能に優れた連中に通じるものになるまでか。



”自分らしさを貫いた方が良い”と、以前の戦いで白岩からアドバイスをされたが。

此処野は認めねぇ。

あくまで自分のやり方で白岩を超え、自分の全てを否定する奴を殺してやりたい。



SAF協会の面々は、今のところはまだ。

いろんな意味で大人しくしていたのであった。




◇          ◇



SAF協会が休暇をしている近くの地域では、ある存在達が会合をしていた。



「ファルルルルル」



後ろ髪とくっつく龍が鼻息を荒くし、やってきた相手を睨みつける。

大人しくなどできないほど、気がたっている。しかし、その龍を従える彼は相手の要求を尋ねる。



「……話とはなんだ?怪護」

「順調とは行かぬようだな、エフエー」


尋ねてきた相手は怪護であり、エフエーは彼との対話だけは認めていた様子だった。


「”宿主”は見つかったか?」

「……いや、生憎。そーいう貴様はどうなんだ?」

「私のところは、契約するまでといったところだ。時間次第だ」


お互いの近況報告という感じではないのは、すぐに分かった。

メーセーとムキョが敗れて死んだ事を悟っているレイワーズは、


「組もうという事か?」

「うむ。トラストの居所は分かっているんだろう?大方、引き返して来たんだろ?」


エフエーの邪念から生まれている、トラスト。その彼の居所はエフエーには掴めてはいたが、


「無言の詰問中だ」


トラストの動向次第。レイワーズとして別れる前に、トラストに対しては白岩印を殺害するよう命じていた。にも関わらず、トラストは未だにその任務を達成できず、彼女と行動を共にしている。

その行動に怪護は


「止せ止せ。ムダな争いは止めておけ。ムキョを単独で葬った粉雪と、同格と言われている相手だ。トラストが戦ったところで結果は見えておるし、お前1人で戦っても結果は見えている」

「白岩に対抗できる”宿主”があればいい」

「それでもメーセーとムキョが敗れた。力が足りんのだ」


あの存在を危険視しているエフエーに対して、怪護はあまりにも危険と諭すも……上手くはいかない。

命令した事を諦めるというのは、屈辱がある。怪護とエフエーの邪念の質の違い。

怪護はそこを分かった上で


「私とお前で白岩を殺す。単独であれと戦うのは止めておけ」


自分とイチマンコが粉雪と対峙した際。2人で相手どって、敗れるという予測していた怪護だ。エフエーの力量はイチマンコよりも上と判断し、手を組めれば白岩を殺害できると言っているもの。

確かに”宿主”を手にしたレイワーズが二人掛かりで相手をすれば……。

そんな単純な手の前に



「!」

「カハァァッ」



龍が大きな口を開け、”邪念”を糧に口の中に風を圧縮。

明らかな攻撃意識。そして、そんな話を確かにするのなら。怪護の実力を再度、確認するためだ。

怪護は龍の動きに気付き、左手を前に出して構え。やってくる風をその手だけで防ごうとしているのか。龍は圧縮した風を放出する。



ドォォォンッ



風の速さと音は、風とは思えないほど”重たい”もの。

周辺の大地が地震でも起きたかのように、ゆっくりと長い風が吹いた。



メリリリッ



防御した怪護も数メートル後ろへ押され、その先の木々や建物に至っては10m~20m。建物の基礎、土地そのものが動いてしまうほどの、風のパワー。それを受けた怪護は


「”信者”ってのは、風みたいなものか。実にらしいなぁ」

「…………」

「いつの間にか、誰にも忘れられちまう。あっという間に去っていく」

「その言葉。風にも成れないゴミ共の戯言だぞ」



話しの分かる相手。だが、仲良くできそうもない。

怪護の挑発にエフエーがサラッと流してやったのは、怪護の実力をおおよそ把握したからだろう。もちろんだが、エフエー自身はまだ何もしておらず、怪護も組むに値する力を理解した。

もちろん。


「仲良しなんて柄じゃなかろう」

「そうだな」


”信者”の邪念は、時に反発し合う。同族同士、殺し合いもする。

そいつを怪護は把握していて、一定の距離はおいて、エフエーとの協力をこぎつける。結局、イチマンコと組めなかったため、実力と話の通じるエフエーと組めたため、怪護としては上場の成果であった。無論、


「先に私の”宿主”を見つけることだ」

「おうおう、それでいい。いや、そうして欲しい。ただし、お前がその分。因心界を惹きつけてくれ」


エフエーの”宿主”を強化する事が先という条件に対し。怪護が出している条件は、エフエーが”宿主”と共に因心界と戦えというものだった。

時間差があるものの2か所同時に、レイワーズが暴れ出せば因心界は戦力を割く必要が出てくる。

長期戦になれば、怪護の力はより強くなるのだろうか。メーセーのような厄介なタイプかもしれない。対して、エフエーの方はムキョのように直接的な戦闘向きと考えると、この作戦はまったく悪くない話だった。



「場所はどこだ」

「ふっ。引き返すなら、今だぞ。聞いたら行け」


エフエーが求める”邪念”を持つ存在。”宿主”の居所は


「関係ない。勿体ぶるな」

「それはな……」



因心界からしても、SAF協会からしても、レイワーズからしても、とんでもねぇー場所を言われた。

確固たる情報ではないにも関わらず、エフエーはそんな死地を聞かされ、始まる戦闘の喜びを隠せない顔をした。



◇           ◇



「いらっしゃいませー」


コンビニ店員だって、やってくるお客様に挨拶を忘れてしまう。それでも、生真面目にそれを続けるコンビニ店員さんがいる。


「どうぞー。お酒ですねー」


ピッピッ


「それでは年齢確認のボタンにタッチをお願いします。タッチ決済でしたら、カードを翳してください。……ありがとうございました」


動作も挨拶も、初日から比べるととてつもなく良くなっている。本当にコンビニ店員がいる、っていう表現はまずい気がするが、店を任されるだけの人物に成長しているのは確か。


「お次の方、どうぞー」


スムーズな接客。見事なレジ打ち。そんな業務をしている横から、とても失礼な言葉が飛び交う。


「ちょっと。こっちにも対応してくれない?私の方が近いでしょ?」


なんて態度の悪いが、魅力的なプロポーションと派手な服を着た女性がレジの出入り口横から、その店員に呼び掛けた。それは仕事を放棄して、こっちの対応しろっていう雰囲気。

それに対しても、


「お客様。申し訳ございませんが、レジのお並びはあちらからです」


みんな、順番に並んでいるからと。優しく女性を諭す店員さん。……いや、


「あーーー!?あたしだよぉっ!!ハーブ!!」

「私個人には関係ないんで、まずはレジに並んでください」


コンビニ店員をしているハーブとしても、やってきたイチマンコには気付いている。しかし、そんな私情を仕事中に挟まない、社会人として、社畜としての鑑となれる対応。

ブチ切れそうな顔になりつつも、柄にもなく、仕方なく化粧品を片手にレジに並ぶイチマンコ。順番がやってきて


「お次の方、どうぞー」

「ハーブッ!!」


化粧品をレジの上に強めに置きつつ、イチマンコは彼に確認をとる。


「あんた。なんで未だにコンビニ店員なんかやってんの!?”宿主”探せよ」

「一点、298円になります。俺は自分のやりたいことをしてるだけだ」


コンビニ店員と自分を二つに分けているように、イチマンコと話をするハーブ。誘導の声を出さずとも、イチマンコはしっかりとタッチパネルを操作してくれている。


「ムキョが死んだのよ!あんた、ここで暢気に働いてると死ぬわよ!?」

「働く者は、死を傍に置ける。死なないために、生きるために働いている。諸行無常」



長いスパンで思えば、ハーブの言葉は生きるそのもの。カッコつけが入っているが、



「はっ!?死ねや!!」


イチマンコ。即興の暴言をハーブに吐き捨てる。

そう言いつつ、ちゃんと化粧品を買ってあげる。


「私が手を貸してやろうと思ったのに……」

「!」


本当はその言葉が本音。

それを聞いた瞬間、ハーブはいきなり頭を抑え込んで両目を大きく開けて、悶絶するように



「ああああああぁぁっ!!!俺もそう思ってたーーー!!その言葉はカッコいいものーー!!」

「いきなりデカイ声を出すなー!」


周りのお客様にも迷惑がいくくらいの声で喚き始める。(幸い、いなかったけど)

ホントにこいつなんなんだ?って、イチマンコも呆れてしまう。怪護も言っていたが、話しが通じる相手がレイワーズには少ないと言っていて、比較的社会に溶け込もうとするハーブに希望を見い出したが、


「ムキョもメーセーも死んだんだーーー!!悲しいぃぃぃっ!嗚咽と涙が止まらないぃっ!!俺は悲しいぃぃっ!!ホントなんだーー!」

「こんなとこで泣くんじゃないわよ!」


仲間意識はレイワーズ内では高いモノの、あくまで同類という感覚。

協力できるような奴じゃない。利害の一致がとても楽なんだなって思える相手だ。

涙と絶叫、発狂した後。ハーブはスッとした表情で両目から落ちる涙を拭った後、


「あと1時間で仕事終わるから、情報交換をしよう。イチマンコ」

「いきなり落ち着くなーー!!」



今度はイチマンコが情緒不安定な反応をする。

認めたくはないが、ハーブとは似たような”邪念”の持ち主。

怪護やエフエーとは話しはできても、彼女とウマは合わない。メーセーとキョーサーの二人は信頼できるもんじゃない。ムキョは何も反応をしてくれなかっただろうし、ペドリストに至っては金を払ってでも近寄って欲しくないほど、気持ち悪いから止めた。

気持ちよく暴れるなら



「レイワーズ、最強のあんたが。バカ真面目に人間のフリして働いてるんじゃないわ」



レイワーズの中で、”最大の力だけは持つ”存在の暴れぶりをさかなにする。



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