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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第41話『北野川+黛 VS 伊塚院長 + メーセー!お屋敷大バトル!』
141/267

Eパート


【じゃあ、”勝つって約束する?”】


それは


【もし、あんたが負けた時。おそらく、あたし達も勝てなくなる】



伊塚院長のお屋敷に乗り込む前。

北野川、カミィ、黛は話し合っていた。敵の力量がどれだけのものか、測定できていない。だが、時間をかけてられない以上。この突入でどうやって勝つか。相手の能力をある程度は把握した上で


【だから、……教えたくないんだけどさ。嫌われるし……】

【なんなのよ、北野川】


まだ作ったばかりの仲間。その事以上に、激しい戦い故の……いや、……。


【北野川はちょっと躊躇してるだけにゃ!勝つためにはそーいうのも必要にゃ!】

【?】

【あーもぅ、カミィはいいなぁ。……あたし達の”切り札”を黛に教えてあげるわよ。だけど、それを知って生きてる奴は嫌な奴等(キッスと粉雪)と死んでる奴等(佐鯨とアイーガ)だけなの】


聞けば、確実に嫌いになってしまう力だ。

白岩には嫌われたくないから、直接教えた事はない。

それでもと、付けたいような気持ちだったが


【教えなさいよ。なんでもいいし、別にあんたと仲良くデートみたいなことはないからね】


そんなに特別をするなと、教えることを要求。この単純さというか、どこか馬鹿っぽいというか。年下のところとか、自分の在り方のままでいようとする感じが、北野川をちょっと残念にさせつつ。

ため息をついてから


【あたし達の力には記憶・秘密を消し去る事ができるの。それも長ーく、むかーしの事までね】

【へー、情報改竄みたいな?羨ましくないけど】

【体の病気とかは消えない。けど、短時間のモノなら、あたしとカミィと……今はここにいないけど、あたしの分身が揃えばすぐにできる。けど、相手の事を少しは知ってないと発動できない。敵には効かないって事】

【それをあたしにするって事?なんでよ?】

【負けた時。おそらく、敵はあたし達もあんたも洗脳するに決まってる。だから、生かしはすると思う。洗脳を解くには結局、敵を倒さないといけない。そーいう相手の心理を逆手にとって、奇襲をする。合図はあたしを洗脳しようと、動いた時。すでにあんたが敵に洗脳された場面で使う】

【舐めてんの!?】

【保険よ、保険!!言ったからね!!あたしは、さっきあんたと握手したところまで記憶と秘密を消し去る!だから、その時を忘れるけれど。すぐに勝ち誇った敵をぶっ倒して!いいわね!?】


こんな人に嫌われそうな力を説明したというのに、当の黛は


【あたしが敵を倒せばいいんでしょ?操られたら、あんたが助ければいい!そうじゃない?】

【……単純ね。あーあ、ホントに……】

【まったくにゃ】

【難しく考えない。けど、先にお礼を言う。ありがとう】

【!……】


もし、洗脳されてしまい、北野川が解いてくれたとしても、お礼を言う事はないだろうから。知った今に言っておく、黛だった。

自分が絶対に勝つという自信とは別に。仲間というのなら感謝は当然という発想から来た感じ。黛もどこか北野川には、仲良くなれそうな雰囲気があった。


【……忘れないならさ。黛。あたしの事、あねさんと呼んで讃えなさいよ。年上だし】

【えー。……そー言わないようにしちゃうよ】


慕われたいって感じで両者は、戦いに臨んでいた。




◇             ◇



屈服した時、北野川の感情はある種の幸福感と高揚感に満たされ、完全に自我を失った。

しかし、その直前。言葉とも感情とも違い、



『あとは任せた、黛』



仲間を信頼していたこと。

伊塚院長達が油断をし、自分とカミィ、分身体、黛をこの部屋に揃えてしまったという油断を突いた。汚い人間達が持っている汚い趣向を優先してのこと。


「ははははは、これで問題はないだろう!」

「そのようだな。ここに呼び寄せた連中には無駄足になったが……遅すぎるな」


シークレットトークの完全な洗脳を成しえ、この屋敷の騒動が一段落ついたそんな時だった。

完全に心を支配した者の1人がメーセーに対して、エレメントアーチは



バギイイイイィィィッッ



間合いを詰めては、隙だらけの顎を突き上げる。その勢いは地下の天井を突き破って、地上に吹っ飛ばすまでの一発。


「???????」

「はあぁっ!?」


勝ち誇った2名にはこの唐突な出来事。制御不可のことに混乱をした。ただ、……この場ではただ1人。



「あいつをぶっ飛ばせばいいんだね。北野川!」



シークレットトークの誤算は洗脳されてしまった分身体とカミィが”そのままの状況”であれば、この展開は実は成しえなかったこと。必要だったのは、3人の会話に対象者を入れること。しかし、そんな誤算もまた別の誤算で解決できた。伊塚院長の覚醒、完全なる洗脳がここに来て裏目へとなり、エレメントアーチの洗脳が解除されてしまったのだ。



「な、なにが起きたんじゃ!?」


そーいうことをまったく出来ていない伊塚院長のパニックは凄まじく、ここでエレメントアーチに攻撃をされるものならヤバイとし、すぐに屋敷から逃げ出すという選択をとった。パニックを別の意味で起こしているとすれば



「………………」

「………………」

「………………」



シークレットトーク達。その他、ここに連れて来られていた洗脳された者達は、あるじの命令をひたすらに待つだけの人形と化したこと。そして、徐々にではあるが、伊塚院長が発生していたカリスマを合わせ持った邪念が失われていったこと。

エレメントアーチにまったく迷いがないのは、スッポリと記憶と秘密を消され、今初めてメーセーと対峙した。外にぶっ飛ばした後、跳んで追いかける。


「ぜーったいに仕留めてやるわ!行くわよ!チアー!」

『うん!この力を見せてやる!』



メーセーを空中でさらに殴りつけること、2発。本格的な戦いは初めてであったが、エレメントアーチの、彼女自身の性格がモロに現れた攻勢を見せる。



「ホラホラホラ!!」



連打連打!防御しないし、意識が混乱しているのなら、容赦しないとする猛攻。

地上に落ちたメーセーに対しても緩めることなく、6連発!そして、ようやく。



「ぐうっ」



メーセーの意識が戻った。何が起こったのか、そんなことはもう考えてないからこそ、敵となったエレメントアーチに目を合わせた。



「っ!」

「はっはー!気が戻ったー!?」



容赦ない目潰しを躱したメーセー。体勢を整え始めるが、その最中で左肩に付けられた”水”の刻印が”潮”の刻印に変化した。エレメントアーチの実力を体験しているメーセーにとって、これ以上は絶対に増やしたくない。

しかし、


「あっはーー!右脇腹!あま~~い!!」



ドゴオオォォッッ



フェイントに使わず、ただただメーセーの構えが左を守るような形に、隙を突いての蹴りを叩き込む。左肩に付けた”潮”の刻印を早々に外し、お腹付近に”風”の刻印をつける。



「ぐふっ!?」


こいつ、いつの間に駆け引きが上手くなったんだ!?

まさか、自ら溜めて作った刻印をフェイントにするとは……。だが、あれだけのモノを外してくれたのは有り難い!


「なに得意気な顔をして!?」


っていうか、さっきからこいつに出てくる刻印って何?

あたしの能力なの?その割にこいつがどこか、警戒しているような……。

まぁいい。めんどくせぇー。あとでチアーに確認とろ。



”初めて”戦っているエレメントアーチと、”二度”戦っているメーセーには誤解が生まれていた。そして、メーセーにとってこの戦いの予測できなかった誤算は、エレメントアーチとして戦う黛が、”初めて”と言える戦闘であった事だ。

相手が何をしてくるか分かっていれば、それに対応するのが戦闘だ。戦闘に限らず、勉強も運動もそうだ。ところがエレメントアーチは自分の長所や能力を理解せずに、気持ちよく戦おうとしていた事。メーセーの動きが何かをカバーしている動きが逆に、別の場所に隙を生んで。




バギイイィッッ



「ごおぉっ」



接近戦において、致命的なミスを連発。そして、さらに混乱。

メーセー、わけが分からない。理論、定石、特徴を無視してくるエレメントアーチの戦い方に苦戦。

立て続けに攻撃をもらって、膝をつく。



な、なんだ!?こいつは、同じところを攻撃して威力を増させる能力だろう!?なんでそーいう能力を使わない!?接近戦にしておけば勝てると思っているのか!?ふざけやがってこの馬鹿女!!そんなアホで単調な戦い方でこの俺が敗れるなんて、認めるわけないだろうが!!



「チアー。あいつに現れる、”水”とか”地”の刻印はなんなの?」

『あれは相手に攻撃すると付ける事が出来て、重ねて解放すれば大きな力を生み出す。一度に一つの属性しか使えないから』

「えー!?それ先に言ってよ!?」

「!っ………」


な、なんなんだ!?ホントになんなんだ!?こいつ、痴呆症も抱えてんのか!?自分の能力をこの場で妖精に確認しやがるのか!?っていうか、妖精も何を言ってやがるんだ!?実践してただろうが!!


馬鹿にされている状況。本人達にその気がないのが伝わるのが、余計に拍車をかける。それは感情において、怒りを生み出し、メーセーの思考は短絡的なものへと変化させる。ここで距離をとっていれば、まだ選択肢が増えていた事だろう。

だが、メーセーはあろうことか突っ込んだ。馬鹿な相手に負けてたまるかという、愚かなプライドもあった。



ガクッッ



「!」



しかし、体はそーいかなかった。洗脳するためとはいえ、手当を受けていたエレメントアーチとそうでないメーセーには大きくダメージ量が違っていた。向かっていく最中に膝が笑い、またしても無防備に。それを十分過ぎるカウンターで殴り飛ばしてしまう、エレメントアーチ。



ドゴオオォォッッ



「刻印付けるなら、連打の方がいいわけね?一発より!」

『うん!』


ようやく、エレメントアーチは理解した。そして、単純な馬鹿野郎とお互いに思っているメーセー。吹っ飛ばされた先にあった、庭の畑に突き刺さっては



「伊塚ーーーーーーー!!?なにやってるううーーーーーっっ!!」


怒声と共に憤怒の表情で、なんと伊塚院長に対して怒っていた。起き上がると同時に周囲の様子を冷静に確認して、その叫びをしていた。

馬鹿を相手に馬鹿をするほど、馬鹿な事はない。

プライドを捨てた、プライドある者がとる行動。


「さっさと洗脳した奴等を屋敷に呼び込めーーーー!!この女を足止めしろおおぉぉっ!!」



複数いれば足を引っ張り合う事もある。メーセーは伊塚院長を頼ったが、宿主とはいえ、老齢。動きは遅いし、この混乱に怯えもある伊塚院長はメーセーの窮地など知ったこっちゃない。むしろ、メーセーがエレメントアーチを惹きつけている間に逃げようとしている。



「クソが!!」


何が起こってる!?あいつ等は何をしやがった!?

なんで伊塚が命令している外からの人間やジャネモン達がここにやってこねぇんだ!?結構、時間が経ってるはずだぞ!

俺のダメージを抜く時間を稼げ!!じゃねぇと、俺が死ぬだろうが!!俺が死んだらテメェの能力も弱体化するんだぞ!!



悪態をつくメーセーにエレメントアーチは容赦しない。怒りを吐き散らす相手に、ようやく自覚した自分の良さを活かしていく。戦闘スタイルがこれまたガラっと入れ替わり、さらなる混乱を生むメーセー。”地”の刻印を囮にするかと思えば、”地”の刻印を重ねていき、”岩”を作って発動する。



『”落石”』



メーセーの真上から避けようのない岩石を具現化させてぶつける。フェイントに使ったかと思えば、当たり前のように使い。


「なるほど!面白い!!」

「ぐっ……」


エレメントアーチが一方的に攻めまくった。落石でメーセーを怯ませたと同時に、空へと打ち上げるアッパーをかます。

宙に飛んだ、メーセーの目に映ったものは



「はぁー、はぁー。ここは逃げるんじゃ……」

「い、い、伊塚あぁぁぁっ!?自分だけ逃げるのかああぁぁっ!!」


そんな叫びなど知ったこっちゃないと、伊塚院長も地上に来て、車のある駐車場へと急ぎ足で向かう。伊塚院長もどうして外から呼んでいるはずの人間達が来ないのか、分かっていない。今はそこに一部の頭も使いたくはない。徹底的にしている行動。

一方のメーセーが怒りを堪えられないのは当然。


「ふざけやがって!」


反撃できるような状況ではないが、逃走する術はまだ残されている。



「ふーっ、はーっ」



勢い任せにガンガン攻めていたエレメントアーチ。自分達の記憶からは、今まさに戦いを始めたという感じなのだが。体が若干重い。手当をされたとはいえ、完全な回復ではない。連続攻撃のあまりに呼吸の乱れが生じている。

メーセーはその攻撃の隙に、左手に光を溜めこみ始めた。


「”閃光掌”」


空中から強烈な光でエレメントアーチの視界を暗まし、その隙に逃亡。エレメントアーチは状況に気付いていないが、動きが遅く、洗脳した人間達も周囲にいない伊塚院長を狙うという判断。切り捨てするのはお互い様である。

その望みに賭ける、メーセーの行動は…………




パァンパァンッ




背後から2つの銃弾を受けて、潰える。



「あ?」


火が放たれていた従業員の寮の影からの狙撃だった。自分達が洗脳していない人間による銃撃を受けつつも、そいつを後ろに振り向いて気付いたメーセー。伊塚院長とは少し若く見えるが、爺。


「……………」

「だ、誰だ。テメェ……」


その仕方のない行動をエレメントアーチが逃すわけもなく、



「必殺に行くよ!」


空中から、さらにメーセーを空中に留める蹴りの連打。

1,2,3,4,5,6,7,8,9,10!!

打撃と共に”風”の刻印。



「ぐふううぅっっ」



積み重なったダメージ、奇襲の連続、……メーセーの体はボロボロとなっており、そこにトドメとなる。

”風”の刻印10個。変化した文字は、”裂”。



『”裂風破”』




ボオオオォォォォッッ



メーセーの内部から竜巻を発生させ、体を破裂+拡散させる”風”の奥義。ダメージが蓄積していたメーセーにはこれを耐えうる事などできず、技通りに体を四散させられる。



「ごほおぉぉっっ」



お、俺がここで死ぬ?こんな奴等に……俺は、レイワーズの”名誉”の邪念を持つ、メーセー様だぞ。その俺が最初の脱落者?俺が死ぬ、



「い、いや、……いやだあああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


認めたくないと込めた拒否の叫びが彼の断末魔となった。そして、メーセーを失ったことで伊塚院長が敷いていた支配力は大幅に弱体化していく。

それは伊塚院長、本人にも分かること。



「くっ。使えぬ奴!」


なんとか駐車場に辿り着き、”自分がいつも乗っている車”に乗り込んだ。追いかけて来るな、再起を図るチャンスはまたあるとして、急いで逃げようとする。

それと同時に



「はーっ……あっ?んん?」


エレメントアーチもメーセーを倒した事によるホッとした気の緩みで、忘れていた疲労+戦いの疲れにより、その場で倒れては妖人化までも解除され意識を失ってしまった。

伊塚院長は黛のダウンに気付くことはなく、慌てて車を発進させて、屋敷からの脱出を図った。その去り際、正門の方へと銃を片手に向かってくる奴。メーセーを後ろから射撃した人物が伊塚院長の顔を出した。


「!!なっ」

「…………」


銃を持ちながらも、銃を車に向けなかった。だが、それでも。伊塚院長は車で移動しながら、奴に訴える声を出し


「お、お前の仕業か!?南空!!!」

「さっさと消えろ、エロ爺」


伊塚院長はこの異変の正体には南空が関わっていると理解した。そして、南空の横を通り抜け、正門を出た時。道端で倒れて転がっている人間達を見て、確信と同時に愕然とした。


「誰のおかげで今の地位があると思っているううぅぅっ!!覚えてろおおぉぉっ!!」


伊塚院長が呼び寄せたはずの人間達が気絶していた。催眠ガスのようなモノをまき散らしたとかではなく、全て純粋なる個人武力を持ってして、数多くの人間達を制しさせ


「っ……”天然”の化け物めっ。南空。覚えておけ。私は貴様のお気に入り、”粉雪の秘密”を知っておるんだぞぉ」


ジャネモンに対しては容赦なく、チェーンソーで切り刻むという行為。

南空は1人で、大群であっただろう人間とそのジャネモン達をそれぞれ分別して処理するという離れ業を見せる。粉雪の一秘書と思われていた老人ながら、その戦闘能力は妖人のそれと遜色がないのかもしれない。



屋敷からの脱出に成功した伊塚院長。メーセーを失うも、そんなものを些細にも感じ取らない。

一方で南空は、



「……これで北野川と黛の始末ができる」


因心界と伊塚院長をぶつけ、疲弊しきった美味しいところを漁夫の利といったところ。

かろうじて勝利しても……。




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