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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第41話『北野川+黛 VS 伊塚院長 + メーセー!お屋敷大バトル!』
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Aパート

伊塚夫人に持たせていたスマホの映像が途切れた。

どいつが自分達の敵かどうかを把握した上で、地上に叩き落された後に切れたことで結論。


「殺されちまったな、あの婆」


人の妻に対して、それが誰の影響によるものか。分かった上で言っているとしたら、最悪な奴だ。

”レイワーズ”の一人。メーセー。


現在は伊塚院長のお屋敷で厄介になっており、じっくりと関西全域を支配していき、行く行くは日本全国。伊塚院長の威厳と地位を利用し、人間達の制御を図ろうとしていた。

妖人でなければ、多くを洗脳でき、こちらに敵意すらも向ける事は許されない形になる。

恐怖と隣り合わせではあるものの、支配される安心感がある。

ジャオウジャンを完成させるためにも、この屋敷の周囲から強化していければ、どうすることもできないだろう。

近づく奴等の排除を伊塚夫人に任せていたが、


「役に立たねぇ。一人殺すか、恐怖で洗脳させろよな(一人できたけど)」


あいにくの失敗を報告する感じではない。自分の宿主の様子を伺っているのだ。

契約を結んだことで、伊塚院長の姿は……老人のままではあるが、人間の耳からネズミのような〇の耳となり、短いが黒いしっぽ。肌の色も臍から上は黒ずんだようになった姿になっていた。

メーセーの報告でどんな反応をするか。

彼は、



「わりと、まぁ」



激怒するのか、悲しむのか。



「どーでもいいのぉ」


無関心。

それを誤魔化すか、あるいは無意識なのか。伊塚院長は、


「毎日、歳をとった奴に関わるほどの、生きた拷問はないからのぉ」

「……………」


こいつ、自分の事はどーも思ってねぇのか……?

大病院の元院長だろう?国から勲章を授与されるレベルの。

サイコーにイカれてやがる。

人間はどこまでも、狂っては進化する。


「ってことは、あんたはついこないだ会った、俺を信用するということか」

「勘違いするな、私は正しい。全てにおいて、私こそが正しいのだ。お前を信用するとか、正しいとかは思っていない」


今どうしてか。

関西全域の支配を忙しているか。

それはある記者会見と、それに伴う証拠提出がある。また、この情報を知ったからこそ、因心界が出向いたというのが正しい。



◇           ◇



週刊誌よりも、もっと緻密な情報を載せている情報本がある。

野花財閥が運営している情報であり、裏社会の情報が流れ込んでくる。


眼鏡をかけて、車の後部座席でそいつを黙読しているのは網本粉雪。

車の運転手を任されているのは、野花桜だった。南空が粉雪の指示によって関西で活動しているため、彼女が運転を任されている。

今、東京の革新党本部で活動している時だ。


「南空さん、間に合いますかね?」


野花の問いに、粉雪をガムを噛みながら


「あの人がしくじる事はないわ。……でも、時間は分からないわね」

「伊塚院長の権威も侮れないのに、それと噛み合うタイプの力って。相性抜群のジャネモンと組まれたら、とんでもないね」

「その過程で北野川が死んでくれたら、いいんだけど」

「ダメでしょ。さすがに。仲間なんだから(粉雪は思ってないんでしょうけど)」


粉雪からしたら、北野川の能力を買ってはいるが、危険視はしている。サザンのあの隠し玉についても危険はしているが、多くは把握できていないため、目の前に分かる奴に危険をする。


「伊塚の爺との相討ちが理想ね」


あの爺は典型的な老害だしね。困った事には頭が良く回りやがる。

革新党のヤバイ情報の一つを握っている以上は、この大チャンスでちゃんと葬ってほしいわね。南空。

出来る事なら、それを把握できる北野川もなんだけど。


「で、本気で伊塚院長はやるつもりなんですか?だって、関西支社総出って、相当な人数と情報操作が必要なのに」

「できるからレイワーズと手を組んだ。余程、あの交通事故は自分の名誉を傷つけるんでしょうね」

「だからって……」


車に重大なトラブルがあった証拠を車のメーカーに作らせ、警察と法律の正しさを持ってして、自分の罪は何一つなかったとする。

メーセーの力を用いれば


「もう映像ですら挙げられているのに、火消しにも限界がある」

「人間忘れるのは案外簡単だし。……それに、一々悪さを記憶するかしら?それとも辿って監視するものかしら?裁かれても、助かるでしょうに。でも、あくまで伊塚の爺は、自分の名誉と勲章を護るための暴挙をしている。関西の支配が完了したら、それを伸ばして、全国民を納得させる気ね。まぁ、無謀」


まさに無謀。無謀であるが、どこかに伊塚院長の心に火を着けた何かがあるし、老齢でもやろうとする辺りは若さも健在だろうか。

国から讃えられるべき人物たる所以。悪い意味でも良い意味でも。

野花が少し気になって、


「さっきから伊塚の”爺”って、言っているのは、なんか私の知らないところで繋がってるとか?」

「あ、気づいちゃった?」

「当然」

「野花にしたら大したことじゃないわよ。詮索はNG」


そこのところが北野川までも嫌う理由なんだろう。

詮索はしないが、口に出すとは言っていない。伊塚院長が色んな意味で有名であるのは知っているが、革新党に関わる秘密を知っているというのは意外だった野花。

革新党とは別として、こっちは野花家として思っていること。


「純粋な助平爺だから、罪を問われるべきかなって」

「……厄介事に絡む爺よねー」


野花財閥のご令嬢も、伊塚院長には色んな意味で手を出し辛い。

色んな情報を共有している事もそうであるが、顧客の一人でもあったからだ。

蒼山ラナというど変態がいるせいで、影こそ薄むが。

大金持ち+名誉+男+爺……という、どうしても湧いてしまう性欲の強さ。若さへの渇望には呆れつつ、それを商売にもしている家族の娘であると、


「父さんの常連客だからなぁ」

「ふーっ、それ言ったら壌さんと体の関係があるかもね」

「!や、止めてよ!!私の母親をなんだと思ってるの!!その娘が一番感じているけど!」

「さすがにないでしょ。壌さんは、南空さんにだって手を出した事ないんだから」


若き頃とはいえ、60近い猪野春の童貞を卒業させただけでも、色々もうヤバイんだけどな。


「本気で南空と北野川達を応援するわ!私は!」



◇        ◇


伊塚院長の屋敷はとても広い。

大型マンションが2つ収まるくらいには広い敷地面積があり、3階建ての伊塚院長達の家。その隣に2階建ての客人を歓迎する建物もあり、鯉が泳ぐ綺麗な池と手入れがされた庭、住み込みOR泊まり込みのための使用人達が使う家が敷地内に存在。さらにはそれらを大きな正門と小さな裏門だけしかない囲いが施されている。

普段は伊塚夫妻共々、3階建ての自分の家で過ごしており、この屋敷の手入れなどは使用人達が行っている。

客人招くためにある建物には、基本は無人とされているが。夜になると一変する。

屋敷に入ってくる黒塗りの高級車。

使用人の中でも認められた人物だけが、これに応対し、乗っている女性達を案内する。



【伊塚様、今度売り出すアイドル達です。お連れしました】

【よ、よ、……こ、今晩は、めかけとして……です。名を広めてくれるためにです】



人身売買を始めとした、不純異性交友。

伊塚院長の疼く性欲と若さへの渇望を抑えるため、やってくる若い女性達。20代、10代後半。年齢差は80以上もあることも珍しくない、常軌を逸したもの。

ほぼ全裸。ギリギリの下着姿で、伊塚院長の前に並ぶ、流行る予定の女性アイドル達。伊塚院長は始める前に、やってきた女性達の体に顔を近づけて、まるで犬のように


【すんすん……25以上からは臭いがキツイんじゃ】


君は、セーフ。君も、セーフ。

そういった中でただ一人。


【……ん?……君は25歳を超えているのぅ】

【え。えっ】

【肌と髪の臭いは分かるが、君の乳と〇〇〇の臭いと色合いは、25歳を超えている。なぜ、君が私に抱いてもらえると?】

【わ、私は……私は、24です】

【違う。お前は31歳と3か月じゃないか。こいつを摘み出せ】

【!や、やめて……!】


自らは爺の臭いを発しながらも、女に求める若さと美貌を求める伊塚院長。NGの臭いは”早期”に摘み出す。

毎週、水曜日と金曜日に性の晩餐を開く、豪遊。

酒、薬、女、……欲を解放するけだものへと変わりゆく。

やってくる女達も、伊塚院長という存在と手元に来るお金に目が眩んでは乗る。

そんな末路を先に知っていて、屋敷の外の車で待っているのは二人の男。その1人は野花財閥を支える、重要人物。



【あんな爺に抱かれたところでそうなるとは限らないが】

【野花財閥の社長婿がこのようなところにいて宜しいのですか?】

【こっちもこっちの事情がある。まぁ、気分は良くない】



伊塚院長に女性達を度々紹介しているのは、野花育であった(ご本人が来ることは稀)。

育だけの事ではない。大手会社や通信事業なども、伊塚には贈り物を渡しに来ることは珍しくない。


【”エロスタイン島”の選定に、あの爺を選んだだけだ】

【”エロスタイン島”……!あ、あの……如何わしい島?闇社会の情報を握る、ハニートラップの……】

【伊塚はその会員なんだよ(俺も会員だけどな)】

【ホントにそんな島があるんですか】


もう90を超えた爺。

海外旅行はできる程度であるが、また別の目的での海外進出は難しい。そこで会員の力を使って、お試しを使ってもらっている。


【日本担当会員は4人といない。その1人が伊塚の爺だ】

【ただのエロ爺じゃないんですね】

【それが先に来るか?……まぁ、そうか。週に1,2回とはいえ、夜に若い女達を屋敷に招いていればな】


爺の趣味を悪趣味とは言えないくらいが、ヤバイところの島を知っている。

そこでも存在感を放っており、育曰く。


【医師としてだけじゃなく、政治方面の情報にも精通している。奴が勲章を持てるだけの情報と影響力、金、実績を手にしている。それだけに限らず、もう過ぎ去った若さまでもこうして手にし続けてるとする】


永遠の若さと語るに、変わらずの性欲はどこかには必要か。

復活の炎を絶えず、昇るように放ち続けるか。

伊塚院長はあまりに人の黒いところを知っているから、処分に困るものだった。

野花財閥も彼に対しては、人が働くというのをバカにするほどの莫大な援助をしているし、彼から得られる情報と医療の支えは重宝していた。こちらが困れば、彼は助けたし、彼が困ればこちらも助けた仲。


しかし、あの交通事故から一変。

むしろ、より固執こしつ



◇         ◇



北野川達が奮闘&伊塚院長の屋敷まで向かっている間の出来事。


関西有数の自動車会社。

生産から販売なども行っている場所では今、伊塚院長の命令によって奇妙な出来事が起こっていた。


「か……か………」

「あっ………ぐ………」


操られた人間達の表情は絶望的に干からびたようなもの。

明らかにこんな命令なんてオカシイって思える事であるが、伊塚の圧倒的な地位と報酬から出される命令は、信頼の全てを失うものである。それが誰にだって分かるのに、伊塚院長の”名誉”を護るため、罪を被ること。

技術者たちはそんな命令でも、自分の命も、同僚の命も、家族の命も、……全てが賭けられていて、従わざる負えなかった。



「一度でも屈服すれば、伊塚の思いのまま……か。変わらんな、クソ爺」



南空は伊塚の交通事故と、関西での異変を知ってから関西に単身で乗り込んでいた。

関西で働く”革新党”の部下ですら、伊塚との接触で洗脳されてしまった。普通の人間では絡めとられる可能性がとても高い。が、高度な操作や命令は伊塚院長が限定的に決めねばならない欠点も見抜いていた。


南空は潜入した会社で調査しているのは、伊塚院長の命令で社員が製造している車だった。

その車は伊塚院長が、事故当時に使用していた車種とまったく同じものである。ただ、今彼等が製造しているのはブレーキに”不具合”が存在している車だ。リコール対象になるべき車を作っているのだ。

わざわざ、事故を起こしやすい車を製造しているのは、


「伊塚の爺。完全にメーカーの責任にして、自分の名誉を護ろうとするか」


製造したメーカーは事故当時から、車の不具合などないと公言している。警察達も運転ミス、あるいは伊塚院長の不注意などを指摘する証拠は挙がっている。人の子供を亡くした事を始め、大きな事故として取り上げられ、伊塚院長の地位と名誉、勲章さえも失われそうな状況。いくらでも渡せる金でも動かずでいた、ご遺族とメーカーをどうにかしなければならない。

しかし、メーカーが提供していた車に欠陥があれば、自分の金で動くべきだったと後悔するもの。



【安全な車を作って頂きたいものですね】



そう語らせるような、運転者になろうとする伊塚院長の表情が浮かんでしまう。

メーセーの力を借り、ジャネモンの力を得て、成そうとする目的だった。


南空は、そんなことなど。許すわけもない。いや、本人以外がそれを許すわけない。

もし、こんな事故をマスコミを通して、世界に少しでも広がれば……。伊塚院長の思うがまま。成功すれば、より名誉を求めて世界中を混乱させるだろう。伊塚の名誉を護るためだけにいる、人間達にされる。


南空がこの場所から車を走らせ、伊塚院長の屋敷へと向かった。



「仇をとってやる」


意識を無理矢理操られた者達へと送る、南空の言葉だった。




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