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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第39話『ジャオウジャン、動き出す!8名の王、レイワーズが大暴れ!』
129/267

Aパート

 "伝説"

 

 特定の場所、地域に生まれる異常現象。その言い伝え。

 それを現す人物1人となれば、相当なもの。よほどな人材。

 こっからは"伝説"のジャネモンを誕生させては、滅ぼしていくというのが物語になる。

 

 「ルミルミの所持していた"図鑑"はすでに134体。残り、17体」

 

 

 ジャネモンには色々なタイプがあり、身体の構造などが若干ずれていても同じ種族のモノがある。151種類もの邪念を怪物ジャネモン化させることがジャオウジャン復活への目的。それには極めて珍しい邪念や、凶悪過ぎる精神を持った連中の怪物ジャネモン化が必要だった。

 

 

 残りの17体。

 それは蒼山の怪物ジャネモン化と同じく伝説クラスの、希少さを持つ連中。普通のイカレ者、邪念の仮面を付けている一般人へいみんには成しえないこと。

 そのクラスがこれから現実となって出てくれば、相当な脅威。とはいえ、それほどの人材を見つけてくるのは、相当な時代を生きていかなきゃ揃わないレベルだ。そこでもう1つの手段がある。

 

 

 「その内8体は、我が取り込んで生み出せる。残り、9体」

 

 

 弱いジャネモン達に邪念を取り込ませ、進化、融合を繰り返し、ジャオウジャンが伝説クラスのジャネモンを生み出す事だ。ルミルミ達の協力もあり、融合素材は沢山入手しており、生み出す事が可能な8体がいる。

 

 「その9体の内、ルミルミとシットリによれば、3体は手持ちにいる。これで6体」

 

 さらにルミルミにはまだ、図鑑に載っていないジャネモンをすぐに生み出せるのが3体いる。いずれも伝説クラス。

 ジャオウジャンが捜し、生み出すことに必要な邪念の種類はたったの6種類。……たったと言ったが、時代の中で1,2しか生まれないクラスの伝説のジャネモンに成り得る存在だ。この時代が豊作である事を願うだけだ。

 願ったところで動かなければいけない。

 

 ジャオウジャンは自らで8体を生み出すとしているが、それは部下ではなく、自分を8体に分裂させるという所業だったりする。

 

 

 「ふうううぅぅぅっ」

 

 

 8体の個。分裂することも必要であり、誰が生き残るかどうか。尖りきった個性を持つのもどうかと思うものだ。

 

 

 バギイイイィィィッ

 

 

 謎の球体に包まれていたジャオウジャンがついに、それを破って飛び出した。同時に濃い紫色を放った邪念の霧が現れ、それぞれ8つの生体に形作ろうとする。

 この8体の完成で、図鑑の種類が更新される。

 一番に形作られたジャネモンは言う。

 

 「……つまりは、この8名が……次のジャオウジャンの権利を得られる、選ばれた者達という事だ」

 

 

 "名誉"の邪念。

 メーセー。

 黄緑色の身体と暗い黄色の髪をした自信家な生物。ヒーローやスーパーマンを連想させるような格好にしては、顔つきはかなり悪党。さかしいことをしているのが隠せていない。

 

 

 

 「方針も目的もまだ、定まってはいない」

 

 

 "思想"の邪念。

 キョーサー

 青と赤がペイントされたマスクと顔。そのペイントの2つは人のような形をしているが、この存在は人の形とは言い難い異形。軍服のおかげで、人の形を保てていてるが、その下は不吉で不気味。耳はヘッドフォンのような形で、彼の肌は冷たい灰色で機械のような印象もみせる。

 

 

 

 「…………(コクリ)」

 

 

 "虚無"の邪念。

 ムキョ。

 無口で頷く姿は機械であるが、顔は眼帯こそつけているものの至って少女に近い。栗色の髪と緑の瞳、顔の色は本当に少女であるが、彼女の首から下で形付けられているのは、ロボットのような装甲だ。背にはプロペラを着け、身体の関節近くには銃口のような穴が空いている。

 

 

 

 「自分は幼子おさなごにしか興味はない」

 

 

 "性愛"の邪念。

 ペドリスト。

 ピンク色のバンダナをつけ、一つ目青ウサギが描かれたTシャツを着ている男。少年だったら可愛らしさもありそうなものだが、……残念ながら中年の汚いおっさん姿。レンズがとても分厚い眼鏡で、その瞳は分からないが、汚れたおっさんである。この8名の中では、人間に近い方なのが悲しいものだ。見るからに汗臭そうで危険人物と分かってしまう。その格好は近寄り辛く、欲望も含めて誰も寄りたくはない。

 

 

 「我々は血も身体も同じとする家族・血縁と同然。仲良くやるべきだ」

 

 

 "家族"の邪念。

 怪護かいご

 年老いたドラキュラのような顔つきと、血の色で染められたようなコートを羽織っているのが特徴的。胸に奇妙なマークが刻まれている。穏健的な態度が分かるくらいには、他のメンバーと比べると、とても落ち着いたお爺ちゃんのようだ。

 

 

 

 「同感。争うこともあれど、目的は共に同じ。自身を完成させること」

 

 

 "信者"の邪念。

 エフエー。

 幸薄さちうすそうな色白好青年。顔付きはとても良いが、彼は両腕がない侍である。そして、後ろ髪にはペットのようにくっついているのだろうか、緑色の龍がついているというお姿。

 外見の良いところだけを見れば、イケメンの侍であるが、……外見の悪いところを見れば、両腕がなく、凶暴そうな龍が髪にくっつき、着物の帯には真っ赤な血のような痕がついているなど、他の危険人物となんら変わりないものだ。

 

 

 「家族?……はぁ~?そんなもん、ガチャガチャって奴よ。個々でやりたい連中の方が多いんじゃない?勝手に仲良くなるのもいいけれど」

 

 

 "札束"の邪念。

 イチマンコ。

 金髪の美女なのであるが。手には札束。胸元にシワクチャのお札をいくつか詰め込み。派手好きというよりお金好きが目立つ姿。魅力的な美脚と露出度の高いボディスーツはかなりのセクシーさを感じるが、イケイケで豪快そうな顔つきと札束、金色のコートと指輪など。金が彼女を装飾したかのような化け物。

 

 「!うあああぁぁっ!!俺の頭の中を読み取ったなああぁぁ!!俺の言いたい事を貴様等は言っているなああぁぁっ!!」

 

 

 "権利"の邪念。

 ハーブ。

 頭を抑え付けては、口と目をかっぴらいて発狂する姿は奇人・ゾンビ。そんな姿を重ねられるような、全身が青褪めた身体の青年。生気を感じさせない赤髪に、身体にはいくつも外傷があり、不気味な火傷の痕が目立つ。人間に近く、青年の面影を感じさせてくれるのが、いかんせん奇天烈な言動から誰も近づきたがらない。

 

 

 彼等8体。ほぼ人間の身体をしたジャネモンであり、"伝説"とされるだけの実力を有している。すぐ様に殺し合いでもすれば、周囲の被害は尋常じゃないだろう。

 とはいえ、生まれたジャネモン。……というより、分裂したジャオウジャン達。それぞれの個性ある邪念をむき出しにしたままでは、身体が擦れるように弱っていく。

 同じ・類似した邪念を抱える宿主が必要だ。

 

 ここらへんの構造は、妖精達の生命活動と似ているところがある。

 

 

 「お互いの名前は分かった。しかし、この集まり。ジャオウジャンと呼ぶには、私自身でもあり、揉めそうだ」

 「………………(興味なし)」

 「SAF協会やら因心界など、グループの名が欲しいわけですか」

 「そんなことよりキッズペロペロしたい」

 「クソキモッ。あんたは私に近寄らないで……まー、いいんじゃない?メーセーの案に賛成」

 「ああああーー!!俺も提案しようと思ってたんだーー!!貴様っ、思考を読んでいるなっ!!」

 

 

 この中でまともに話しができそうなの、数人しかいねぇ……。

 

 「ならば、"家族"の邪念を持つ私から提案いたす。今は令和れいわの時代。それにかけて、"レイワーズ"という名はどうかね?」

 「安直あんちょく~~!!でも、悪くないっ!」

 「ああああぁっ!俺もそう思ってたんだーー!!お前も俺の考えが分かるのかーーー!!?」

 「香草ハーブ。お前、さっきからうっせぇ」

 「……………(同意)」

 

 

 ジャオウジャンから生まれた、強力なジャネモン集団、"レイワーズ"。ここに誕生!

 

 「私は"覇血王政権"が良いと思うんだが。"二十四皇征にじゅうしこうせい"の上位感」

 「カッコイイと思うが、どーいう読み方をすりゃいいんだ?カッコイイ漢字を集めただけじゃん」

 「メーセーよ、"覇血王政権レイワーズ"って、ルビでも振っておけ。そー書いても構わない」

 「キョーサー。あんた、一瞬でてのひらを返したでしょ?」

 

 若干、反対意見が出てるものの。概ね、同意。

 反対っぽいことを言っていたメーセーだったが、提案をしただけに場を仕切り

 

 「では、"覇血王政権レイワーズ"。身体に感じている通り、まずは我々の食料となる邪念を持つ人間達が必要だ。一度、解散し。1年後……。この場に宿主を手にし、集まるというのはどうだ?残りのジャネモンも生み出す必要がある。最低限の情報共有は常に必要なものだ」

 「全てのジャネモンの図鑑が完成したら、誰がジャオウジャンになるか。決めたいから集まりたいものね」

 「………………(共食い)」

 「邪念を多く集めた者が、その王となる。単純だ」

 「途中で死ぬなよ。回収できないとなると、パワーダウンになる」

 「復活すれば関係ない。図鑑埋めに貢献し、脱落してくれるのなら、大いに結構」

 「だが、その図鑑を持っているのはルミルミだ。残り3体の居所も、奴が握っている。少々面倒だ」

 「あああああーーー!!俺だってそう思ってた!!みんなみんな、俺の考えをををっ!」

 

 

 ジャオウジャンの復活を目指す、8体のジャネモン。覇血王政権レイワーズ

 

 

 「では、ひとまず。"覇血王政権レイワーズ"は解散と……」

 

 それぞれバラけ、まずは宿主探し。そして、図鑑に埋まっていないジャネモンの発見を目指す。これから起こすのは、テロのような大事件の数々。

 

 

 

 ◇        ◇

 

 

 関西の地。

 高級住宅街が並ぶ土地であり、高級車が平然と走行し、お嬢様やお坊ちゃん、社長さんとその婦人といった、優秀で貴族のような人達が住んでいる。

 世間でいう勝ち組達が住んでいる地域。年収は少なくとも2千万の連中が住んでいる。

 大きな病院、有名私立学校の数々、高級な舌を楽しませる飲食店、満足させるレジャー施設、ゴミのない綺麗過ぎる街並み。

 

 

 ブロロロロロ

 

 

 「フレンチ……」

 「食べたいものねぇ~」

 

 

 戦いに終わりがあっても、死ぬまで生きるは続く。

 高級車に高齢な老夫婦が乗る。運転手などつけず、老旦那が運転する。助手席に杖を置いておくなど、やや健康状態に不安を感じさせるようなところだが。外を歩いている人達からはそんなものが置かれている事など見えず、良識のある運転手なのだろうと思うだろう。

 

 「週2で食べに行きたいな」

 「早く行かないと込みますよ、お父さん」

 「分かってる分かってる」

 

 この地域でも超有名な人物である、お爺さん。地域の大病院の元院長かつ経営者であり、日本中に彼の優秀な弟子達もおり、医師界の重鎮。

 本人もまた、有名な政治家や芸能人のガン摘出手術。有名スポーツ選手の難病治療など、……その貢献度は計り知れないものがある。医師界を牛耳り、今は勤めていた病院の経営や政府界隈の連中から金を渡したり、受け取ったりで悠々自適の生活をしている。

 

 

 憎まれる事などありはせず、自らを責められることなどない。

 我は神に等しき、人間で有り続けた自負。矜持。

 

 

 なにせ自分は、天才であり、結果を出して、勝ちを掴んで終わった。

 一切の敗北者などではない。

 豪邸に住むことも、高級車を乗り回すことも、高級料理を嗜むことも、若い看護師達を毎週水、土で自宅に招き、裸を強要しても許される。

 若く勢いある会社や、我が実績も知らない威勢のある反抗的な医師達ですら消してやった。独占的な思考は、必ず正義。楯突く奴は指1つ、たった一声で消してやれる。

 

 成功が築いた、超正義。……彼以外は悪だと知らず。

 なぜなら、何も失敗した事がない。

 老化から来る足腰の異常は歩行に影響を与えたが、杖さえあれば歩くことができる。震える手でも、箸を持つ事、車のハンドルを握る事も許される。

 

 もうすでに身体に来る老いですらも、この自分を責めることは許されない。

 

 顛末てんまつ

 

 

 「はーい、手を挙げて渡りましょうねー」

 「はーい」

 

 

 少し先の青信号。親が誘導役をし、子供達の帰宅をサポートしてあげる。

 そんな時だ。

 彼は何を思ったか、どー思ったか。

 思考は必ず、『ブレーキ』を選んだと、神にも逆らえない絶対的な自信。それなのに車は信号の手前で猛スピードを出した

 

 ブオオォォッ

 

 「え」

 「危ない!!」

 

 

 ドゴオオオォォッッ

 

 

 誘導役の親1人、子供3人。ブレーキの痕すらつけずに撥ね飛ばす。さらに車は直進し、

 

 「おおおぉっ!?」

 

 対向車の高級車にぶつかり、車はさらに暴走し、ハンドル操作も上手くいかず、歩道へ

 

 

 ドゴオオォォッ

 

 

 ガードレールをぶっ飛ばし、その近くにいた歩行者2名を負傷させ、また対向車車線に入って

 

 

 ドスウウゥゥッ

 

 

 乗客のいるバスにぶつかって、ようやく停車するのであった。

 中にいた老夫婦達はビックリしたという表情を作るも、車が止まってからの一言は

 

 「あ~、撥ねちゃった……」

 「もー、フレンチのお店。あと30mでしたよ」

 「食べるの遅れちゃうね」

 「お店で待ってますわよ」

 

 とても事故を起こした運転手と、一緒にいた同乗者には思えない発言をするのであった。

 現場は当然のように大混乱。

 警察、救急、それぞれが迅速にやってくるほど。そんな中、杖をつき、ゆっくりと事故を起こした車から出てきた老夫婦。

 

 「息子に連絡してくれ」

 「はいはい」

 「それとフレンチのお店にも、私は行くからね」

 「分かってますから。待ってると言ったでしょ」

 

 

 コツンコツンッ…………

 

 

 「やれやれまったく……車が止まらんから」

 

 ボヤキつつ。杖をついて、事故現場に向かう。あまりの出来事でこの老齢でも身体が興奮し、衝撃で痛めたところを奮起させている。

 しかし、すでにどれくらいの怪我をしているか。自分は、自分の事は分かっている。倒れて血を流している被害者や、周囲に寄ってきた人達に声をかける。

 

 「あー、大丈夫ですかね?お怪我はないかい?私、足が痛いんだ~」

 「ッ…………」

 

 

 伊塚いづか院長。(正式には元院長)

 

 若き日はその医療技術で数多くの患者を救ったり、難病治療の発見など、医師界を支えた人物の1人。しかし、老齢に達した彼は常軌を逸した矜持プライドを持つ、邪悪な人物へと変貌していた。そこに至るまでには彼があまりにも天才であり、成功者であったからこそ。

 

 

 そうに違いなく、そう容易く保てる、邪念ではない。

 恐るべき、"名誉"欲。

 

 

 そんな伊塚に急接近をするジャネモン。

 

 

「面白い爺……もとい、夫婦……イカレてやがる」

 

 

 "名誉"の邪念を司るメーセーが、伊塚院長を発見。自分と抜群に合う人間と出会えた。

 

 


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