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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第6話『マジカニートゥの初陣!妖精達はセンスがないし、戦闘ってやっぱり怖い』
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Aパート

「おいおい、僕を忘れちゃ困るぜ。粉雪ちゃん」


粉雪達の戦闘が始まろうとする瞬間



「ええええええぇぇっ!!?」


初観戦する表原が驚愕するのは当然である。

ホントについ先ほど、車に撥ね飛ばされて起き上がってきたところにも驚き、かかとおとしを喰らってようやく倒れたのかと思えば



「ふーっ、ふーっ」



鼻息が荒い理由は、血すら流れていなかった事を証明するかのような、白と赤き意志。



「戦う粉雪ちゃんのパンチラ写真ショットは、僕にとっての遣り甲斐なんだ」


蒼山ラナはたったそれだけで立ち上がり、傷を一瞬で回復させるコメディ&メタを披露。


「な、なんなんですかあの人!?た、立ち上がった!!あの傷で!」

「どれだけ執念あんのよ」


妖人の素質は何かが壊れた事で生まれるもの。蒼山にも相応しき、性格の捻じ曲がりがあった。


「1話跨げば、人間は回復するんだ!」

「……そこのところは相変わらず凄いわね」


これで2VS2。数の上でも互角となったわけだが……。


「でも、私の加勢にゴミは要らない」


ドゴオォォッ


「へぶうぅっ!?」


続きを始めるかのように粉雪は蒼山にアッパーカットを決めるのであった。


「1話跨いで復活するなら、始まった瞬間に痛めつけなきゃ」

「なんて怖いことを言いなさる!!」


トドメの回し蹴り。タフさはあっても、格闘センスはほぼ皆無。人間同士の戦いでも、コテンパンにやられる蒼山である。



「もう怒った!僕、もうキャスティーノ団に行く!敵に回ってあなたのパンチラ写真を撮ることにする!!」

「ご自由に」


どこでもあるだろう。なんらかの理由で味方から敵になる展開。

しかし、こんな謎の理由で味方から敵になる怒涛の展開。

果たして、


「よし!やるぞ!録路くん!ジャネモン!!」

『……………』

「……………」


なんら違和感なく、敵と一緒に並び立つ蒼山。

この急展開に敵である録路達はどう思うだろうか。



「なにしれっとこっちに加わろうとしてんだ、オラァッ!!」



バヂイイィィッ



圧倒的肉戦車である録路から繰り出される張り手の一発で、蒼山はぶっ飛ばされる。

味方からも敵からも、邪魔扱いの刑。

本来であれば、もっとこう。やりようがあったはずであるが、この感じがそうさせないんだろう。



「ぐぉっ……きいたぁ……」



それはきっと肉体的なダメージより、心のダメージなんだろうと予想してしまう。

地面に転がった蒼山に立ち上がる力は、この1話分の間では回復できない。


「蒼山くん」

「!野花さん……」


そんな蒼山に天使の施しのように、手を差し伸べる野花がいた。


「あなたは優しい。因心界随一の良識人だ」

「ええ。分かってる」



傷付く蒼山の手をとって、バスのトランクを開け。



ポイッ ガシャンッ



「粉雪の邪魔になるから、トランクの中でゆっくりしてて」


蒼山を放り込んで、鍵を閉める。

ドンドンドンっと、必死過ぎる行動と声を出す。


「出してっ出してっ!!暗い!怖い!狭い!!酸欠する!窒息する!!僕、健全なパンツ大好き男子高校生ですよ!!子供扱いしないで!荷物扱いしないで!!」

「大丈夫。1話経ったら、蒼山くんは回復してるんでしょ?」

「まだ始まったばっかり!Aパートの序盤!!開始して3分くらいで!絶体絶命!!」

「喋り過ぎると酸欠するの早いよ?」

「そーいう安全なところからの冷静な心配止めて!!ごめん!!悪かった!!出して、野花さん!!」

「…………ムカついたから、そのままにする」

「お願い!!出させてーーー!!」



蒼山が五月蝿いので、表原には申し訳ないがバスから降りてもらって、外での観戦。


「ごめんなさいね」

「いえ、あんな人でも因心界って組織に入れるんですね……」

「幻滅するでしょうけど。彼、人格以外は素晴らしいところがあるのよ」

「それほぼダメじゃないですか。人格がダメとか、人間として終わってますよ」

「お前が言うなよ、表原アホウ」

「むっ……ちょっとは下の人間を見た気がしますよ!世の中には意外と、自分よりクズって多いんですね!」


今回は表原と粉雪、録路のターンであるため、蒼山と野花はお休みである。


「とんだ邪魔が入ったわね」


いや、あんたのところの仲間なんだけどね!!


「ふっ、抜き合いと行こうかしら。一瞬で勝負をつけましょう」



粉雪が取り出したのは、2匹の妖精。首輪をかけられ、ストラップまでつけて粉雪から離れないように、"ある種"の大切さがされている。テンマの口元にホッチキス。フブキの口元にセロハンテープ。


「テンマ、フブキ」


ボォッン


2匹の妖精が同時にある物に変身する。

一方で、録路も粉雪の提案に乗る構え。


「面白ぇ。1分で片付けてやるよ。マルカ!やるぞ!」

『う、うん!相手が相手だけど……頑張って!録路!』



録路の後ろから現れる、オーブントースターの妖精、マルカ。


ガシャンッ



録路はオーブンのマルカの中に入り、こんがり体を焼かれていく。

録路の体型が悪いからだが、豚が焼かれているようにしか他所には見えない。



チーーーーンッ


「『このナックルカシーに食えねぇもんはねぇ!』」

「…………」


初めて、自分以外の妖人を見て。彼等の変身シーンを見た表原は


「ろくな変身がない!?」


誰もが思っている事を当たり前に吐く。


「オーブンの中に入って焼かれながら変身なんて!どーいうこと、レゼン!?」

「やっぱりドライバーが最高だろ?」

「お前等妖精のセンスを疑ってんの!!夢ぶち壊しじゃない!特撮ヒーローを憧れる男子の、想像をこうも壊すなんて……酷い!!誰が焼き豚の悪役に憧れるんですか!?」

「だよな。まったく、あんな変身があってたまるか。改造のかの字もない。あれじゃ調理じゃねぇか」

「今、なんて言った!?」


まるで反省してくれない妖精達。

改善して欲しい、変身フォーム。とはいえ、録路の見た目は口にした通り悪く。まさにその面構えは悪役に相応しいものであった。表原の期待は、因心界のエース。網本粉雪の変身である。


「粉雪。クールスノーは因心界唯一、妖精2頭を使役する妖人なんだ」

「!2つの力を1つに合わせるってわけだね!?」

「ああ。本来、そんなことは人間じゃできるはずなかったが。彼女の資質は妖精2頭の力を組み合わせても、十分に肉体に適応したんだ。彼女が強いのも理解できる」

「一体、どんな変身が……」



テンマは綿に、フブキは注射器に。それぞれ変身した。

粉雪は左袖を捲くって、綿になったテンマで丁寧にポイントを消毒。

そんな姿を見た表原は目が丸くなってしまった。


「……え?なに?」


注射器となったフブキが、消毒された場所に打ち込む。



「『てつき白染しろぞめ、クールスノー』」



注射器の打ち込みと意味を叫んだ瞬間。

髪色と髪質、髪量の変化が目に見えて起こる。肉体の構成も内側にて、大幅に人間のものから得体の知れない生物が手にする身体能力を宿す。



「闇に満ちた悲しいおデブちゃん!このクールスノーの雪で、全てを冷凍保存してあげる!」



本人が愛らしい言葉と決めポーズをとっても。表原を始め、多くの人達が夢見ている変身とはまったく違う。スター選手ですら、この呪縛は解けないのだろうか。

ありったけ、思った事を突っ込んでくれるのが。この物語のツッコミクイーン。


「変身じゃなくて、変貌じゃないのーーー!」

「表原ちゃん。真面目にツッコんじゃダメ」

「あれ!端から見たら、ヤクチューじゃないですか!注射器で変貌って、……教育上最悪じゃないですか!?いいんですか!?最強の妖人があんな変身で!正義の使者より悪の使者なんですけど!」

「モラルを気にしたら因心界成立しないから!中身が大事なの!」

「少しは妖精も勉強させた方がいいですよ!見せ方とか演出とか!」

「なんで馬鹿に勉強しろって言われなきゃいけねぇーんだ」

「五月蝿いよ、ドライバー馬鹿!!」


なんか。1人だけ世界が違うところに来てしまった感。

寂しくもあって、激怒したのに現実は変わらないという、それでも日常感。




シンシン……



クールスノーへ変身すると、雪が降り始める。

それだけの規模がある。

街中での戦闘。



ガリッ


「ハードに行くぜぇっ。MAX」


クールスノーの雪を降らせる天候変動に対して、ナックルカシーはお菓子を1つ。口にする。その差は明らかであるが、間合いというものは録路にとっては優位なもの。肉弾戦に持ち込めれば、雪が降ろうが関係はない。

むしろ遅行な効果と見ている。



ドゴオオォッ




「えっ!?」


あの太った体が目にも止まらぬ速さで動き、極太の腕がクールスノーの体を捉えていた。

オーバーなアクションをこの目で見た表原は驚きしかなかった。

一発一発の打撃がパワー重視でコンボに持ち込めない。受けながらも、衝撃を流しつつ。体勢を整えるクールスノーの格闘センスは、この体格差を覆すだけのものがあった。

それは攻撃に転じても同じ。

変身した事により、ハイヒールとなった彼女の靴。それを活かして、点の攻撃。拳では衝撃が逃げる故



グサッッ




「うぇっ!?ハイヒールのかかとで相手の腹を刺した!?」

「突き刺せるようにクールスノーは靴を加工してるの」

「怖っ!!」


ドン引きのグロ攻撃である。しかし、クールスノーにとっては通常攻撃と差し支えないとして、ナックルカシーを相手に使っている。

驚くとすれば、その突刺を一発決めた後に素早く引き抜く上手さ。連続に繋げること。スピード、回転、急所を打ち抜く精確度。



ドスッドスッドスッドスッ



「しょ、少女ものの格闘じゃない」

「ハイヒールで蹴っても痛くねぇだろ?刺して抉ってなんぼじゃないか?」

「あんた達、殺傷意識高すぎ!!」

「いちお。私達、少女って歳じゃないんだけど……」


数十秒のガチンコ勝負も、気付けば一方的な戦闘能力の差を表す出来事だと思わせるもの。

血を流すナックルカシーと、嘲笑うクールスノーの差。


「くすくす、……勝てないわよ。あんた如きじゃあね」


通常攻撃の差。通常防御の差。

どシンプルに、ここにいる強い奴が強いを表した戦闘。



ガリッ



体感した本人がよく分かっている事であるが、ナックルカシーは菓子を食らう。

すると、クールスノーに与えられた傷がみるみる内に消えていく。治っていくのだ。

同時に


「すうっ」


ナックルスノーの両頬が膨らみ、


「ふっ!!」


菓子の中にあった堅いピーナッツを超高速で口から放出する。不意をついてクールスノーのバランスを崩そうという狙いは



「おっと」


ワザとらしく成功はする。

録路の攻め込むタイミングは間違いではなく、その豪腕でクールスノーを上から地面へ叩こうとするが。相手にはカウンターの余力が十分にある。


グサァッ



「ぐうぅっ」


ナックルカシーの左目を右手の中指でブッ刺す。鍛えられないところを効果的に仕留める格闘センスに苦労する。クールスノーはそんな反撃の体勢すら、作らせてくれない。

立場を分からせるかのように、顔面への拳。続いて、かかとおとしで


「地面をお舐め。焼き豚くん」


草でも下に生えていたら、食えとでも言っただろうか。

ナックルカシーを完全にダウンさせる。ほぼ無傷での完封。



「強い。……けど、グロい」

「クールスノーの戦いは徹底してる。急所は当然突くし、油断もしないんだから!」

「物凄く殺伐としてますよ!野花さん!」

「一番強いって、そーいうところからも私達と違うの」



左目から流れ出る血に、ナックルカシーは液体ほどの量を察知し、血飛沫ちしぶきにしてクールスノーに放つ。その一滴一滴を人差し指と中指を合わせた程度の防御の幅で、全て受け止める。


「のろいのよ、豚」


顔が上がろうとする時に、蹴られるってのは効く。勝敗が分かっていながらも緩みのない追撃。



ガジイイィッ



「!!」



バギイィィッ



顔面への攻撃を予測し。ナックルカシーの上下の歯が掴み、噛み砕いたのはクールスノーの右足のハイヒールのかかと部分。相手がバランスを崩した一瞬で、殺意を見せる。

数コンマ、クールスノーの意識は防御に向く。しょうがない代償であり。ナックルカシーは逃さずに


ドンッ


「あら?」


クールスノーも驚きの逃亡を選択した。



「止めだ。退くぞ、マルカ」

『そうだよそうだよ!こんなにボロボロになるナックルカシーを見たくないよ』

「ちげぇ。そろそろクールスノーのフィールドになる。勝ち目が薄くなる」


格闘しながらも全体を見渡す眼力。

通常状態でもその差がハッキリしていたが、長期戦はもっと不利になる。クールスノーの戦闘能力の厄介さは、能力を知っていても対処がし辛く、本人の格闘技術と身体能力によって接近戦でも異常な強さを誇る。しかも、接近でも対応できる能力もある。

今の内ならば、録路が上回っている身体能力で逃亡可能。


「逃げれるデブは厄介ね」


菓子の余力も想定できる。

あの身体能力に追いつくには自分のフィールドが完成しないと、クールスノーには無理だ。


「お、追い払った……。やった!……でも」

「あれが私達の追ってるボスなんだけど。状況判断が優れてる。戦う時は戦って、逃げる時は逃げる」

「お、追わないんですか!?危ない人なんでしょ!」

「車で追っても無理ね。捲かれる」


勝利するも、完勝とはいかず。本当の意味で手強い相手なのだ。




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