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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第34話『東京駅奪還編決着!蒼山と涙の関係!』
107/267

Bパート

まいったな…………。これは勝てそうにもなく、逃げれそうにもない。ルルも救えないぞ。



ドゴオオォォッッ



「!!ぐぅっ……」



シットリの攻撃で身体にヒビが入り、イスケも機能を失った。これで初めてキッスはルルの爆撃を身に染みた。

焼ける痛みも、血が吹き出て止まらない怖さも。だが、


「お姉ちゃんは、あたしの事を知らない!あたしを何も知らない!!」



発狂した叫びを上げ続ける、ルルの姿が一番頭に堪えた。だが、どうやら彼女を止める術が……今の自分にはないと冷静な結論を出している。

この状況でも妹に手を挙げないという姉の矜持であり、誇りだった。



「水を差されたが、まぁ、あれも役にたったものだ……」


一方でシットリは身体を休ませる。ルミルミも同様だ。2人の回復力ならば、仮にルルが邪念を使いきって倒れたとしても、キッスはヘトヘト。トドメをさせる。

姉妹で仲良く戦ってくれるのは、シットリ達には好都合。


「ふー……ふー……」

「ルミルミ様は手出しせず、お休みになってください」

「気を抜くと寝ちゃいそう。大丈夫。運んでよ、シットリ」

「ええ。勝った後に……」

「うん」


ルミルミは…………おそらく、ただの休みではなく、睡眠期にならないといけないだろう。しかし、シットリはまだ戦闘が可能な状況。周りにキッスの味方はおらず、唯一そうであっただろう妹のルルは姉を恨むように攻撃を行う。



盤面は詰んでいる。



ここからSAF協会に勝てる見込みがない。



「うううぅぅっっ」

「ルル……」


"攻撃するのを止めてくれ"などと、キッスはルルに言わない。妹が感じていた姉に対する恨みを感じ取っているだけ、そーいう表情でルルを受け止めている。その姉妹のやり取りを


「な~~~~にっっ」


この絶望的な戦場で何ができるか言われたら


「してるんですか、ルルちゃん!!」


涙ルルを助ける事だって、答えるつもりで来たんだろう。

そんな答えを持っていながら、大蛇のジャネモンとなったルルを蹴り飛ばし、キッスの窮地を救った主人公。



「じゃねぇぇ~!?」



ドーーンッと、叫びながらルルは飛ばされる。そして、キッスの前に立ったのはマジカニートゥとナックルカシーの2人。


「なんでルルちゃんがジャネモン化してるんですか!!」

「……やべぇな。こりゃあ思ったより」


野花を病院に送り届けてから参戦した2人。


「マジカニートゥ、ナックルカシー……」

「お。まだ動けるのかよ、お前……身体にヒビができてんぞ」

「当たり前だ。これしきで倒れたら、因心界のトップはやっていない」

「だ、大丈夫なんですか!?キッス様!危なくないですか!?」

「平気だ。ありがとう」


やられっぱなしだったキッスも、マジカニートゥ達がやってきて立ち上がった。

キッスの戦意とマジカニートゥ達の乱入でシットリは、


「ちっ、1分くらいは時間を稼げ。役立たずめ」


戦場の戦略を立てていたシットリにとって、懸念であったマジカニートゥとナックルカシーの2人がやってきた事は、出たとこ勝負があった。アイーガとダイソンでは実力と相性がやっぱり悪いかと、……。再び気を整えて、戦闘態勢に入った。


「ルミルミ様は手出ししなくて大丈夫です。私1人で、キッス達を仕留めますので」

「……ふーん。じゃあ、任せちゃうよ!シットリ。あんた、ヒイロくん以外には負けないもんね」


新しく因心界に加わった事で、どーいう行動をするか分からない録路空梧。

本気を出せばなんだってやる能力を持つ、レゼンと表原麻縫。

対策を考えるほど怯えている証拠。2人をやや甘く考えていたのは、シットリがそこまで警戒していない自信でもある。


「!っ…………」


レゼンだけでなく、マジカニートゥにだって伝わる。あのルミルミは動けないようだが、シットリはめっちゃ動ける……そんな感じは伝わる。そして、シットリはナックルカシーに訊いた。


「おい、ナックルカシー!お前、俺と戦うつもりか!?頭良いだろ!!この俺に勝てねぇって、分かってるだろ!!その2人を護る価値は、お前にはねぇー!!」


シットリの声は脅しではあるが、頭がとても冷静な行動だった。飛島や佐鯨といった、因心界に正式に加わっている彼等にはこんなことは効かずに向かってくるだろうが、録路は蒼山や北野川のようなタイプ。

価値を考えれば、この場面。


「逃げるなら見逃してやるし。こっち側に来ても、歓迎するだろうよ。此処野や白岩もいる!命を賭けるところか?」


SAF協会に白旗を揚げるのが、命を護れる考え。

心臓や脳といった部位を護るような考え。

ナックルカシーは


「だから!俺はお前等が嫌いだって言ってんだろ!此処野は弱い者虐めがしてー、白岩は仕方なくヒイロに従ってるだけ。お前等を慕ってる人間なんざこの世にいねぇーよ、なぁシットリ!」


なんも感じないで、シットリにもルミルミにも……癇に障る言葉で返した。


「録路さん」


一瞬、裏切るんじゃないかなーって。実は心の中で思っていたマジカニートゥ。彼に対して、失礼だったと思う。一方でキッスは、やっぱり録路を因心界に入れて正解だったと自分の判断に自信を取り戻した。

続けてナックルカシーはシットリに伝える。


「俺は、俺の意志を大事にする。今は俺とマルカの命よりお前と戦うことが大事なんだよ」

『そ、そうだーーー!!シットリ!!あたしはやってやるぅぅっっ!!』


オーブンの妖精、マルカも。蓋をパカパカさせながら、ヤケクソ気味だが戦意を鈍らせない。ナックルカシーは袋からポテトチップスのケースを取り出し、蓋を外して戦闘態勢。


「時間稼ぎはそれくらいか」

「…………少し、人間としては褒めていた奴だったがな。残念だが、それでこそ私が認めた人間の一人だろうな」

「お前の負傷具合……。いつもより力は落ちてるだろ」


シットリが説得をしたのは少しでも身体を回復させるためでもある。勝機はあると、ナックルカシーは判断していた。

袋の中のポテチを飲むように平らげた後、シットリに向かっていった。両腕を膨らませ、シットリの身体を腕で上から叩きつける。その威力でシットリの身体が地面に押し潰されるも、


「キッスの足元にも及ばねぇ」


シットリはしっかりとナックルカシーの身体に粘液をつけ、カウンターで彼を弾き飛ばす。ナックルカシーはそれを受けても、すぐに受け身をとって、シットリに向かい合い。


「………ま、お前の攻撃も白岩やヒイロほどじゃねぇな」

「!!」


言っていいことは、ちゃんと考えろやと……。シットリがナックルカシーへの意識を高めた。ナックルカシーのダメージも菓子を摂ることで、かなり回復してしまう。限界はあれど、長期戦は必死だ。事実ではあるが、比較対象は互いに化け物だ。

挑発のつもりだろうが。


「お前に用はねぇぇっ!!キッス!テメェの命を奪いに来たんだよ!!」


録路を殺したところでSAF協会に良い事はない。キッスを葬れば、涙一族は完全に無くなる。この作戦の全ては、涙キッスの命を奪うところまで計画されたもの。

シットリがナックルカシーの妨害を覚悟してでも、キッスに立ち向かうのは当然だった。


「あまり舐めるなよ」

「!!」


わずかではあるが、キッスの顔色は変わり。勝機を失って絶望するかのような雰囲気はない。

身体のダメージは深刻ではあったが、キッスの拳がシットリを吹っ飛ばした。


「っっ!……随分とパワーダウンしたな」

「お前を倒すには十分だ」


虚勢でもキッスもここで、本来の目的であるシットリの命を狙いにいった。そうするしかここで救えない。


「じゃねぇぇっ……うううぅぅっ」


大蛇のジャネモンとなったルルが起き上がってきた。そして、周辺の瓦礫に身体を巻きつかせ始めた。ジャネモン化に加えて、妖人化した、ハートンサイクルの能力までも使役してくるだろう。



グニョニョニョ



ルルが兵器を作り始めている。

その形、その性能、……一言全て、凶悪と言えるだろう。

ジャネモンとしての実力は相当なレベルだ。そして、キッスはルルと戦えない。


「マジカニートゥ!!」


情けないなどと、そーいう想いは少しもなかった。

キッスは怨み狂うルルの目の前、聞こえる声で……マジカニートゥにお願いをした。


「ルルを助けてやってくれ!!」


妹が怨み、羨む……そんな想いとそんな期待を、……カンケーない人に。ムカつく奴に……。

されている。


「分かってる!キッス様!!」


妖精のレゼンはキッスのお願いに応える。なんとしても救ってやると、……そして、マジカニートゥは


「いや、無理です!!ちょ、ちょ、ルルちゃんがメチャクチャ強そうなジャネモンになってるじゃないですかーーー!!」


あわあわした表情を曝け出し、後ずさりも見せる醜態。

おいおい、カッコよく行こうって時にビビったのかと、レゼンは呆れ。お願いをしたキッスに至っては


「ちょっ!えええぇぇぇっ!!頼むよ、マジカニートゥ!」


シットリとナックルカシーが戦っている最中に、キッスはマジカニートゥに視線も声を向けて。コントの如く、動揺を曝け出す。


「私はルルとは戦えない!申し訳ないが、マジカニートゥが戦って、ルルを浄化して助けて欲しい!お願いだ!妹を救ってくれ!」

「嫌ですよ!あんな大蛇のジャネモンと戦うのなんて!だいたいなんで、ルルちゃんがお姉さんであるキッス様の邪魔してるんですか!!この状況を説明してください!!」

「色々あったんだよ!!シットリのせいだ!」

「無理です!怖いです!!そもそも、あたしだって……仲間と戦うなんてできません!ルルちゃんは大切な友達です!!」

「マジカニートゥ…………いや、仲間であろうと、私の妹であろうと。その力を向けるときは来るものだ!思い切ってやってもいい!!」

「できませーーーんっ!!仲間を……ルルちゃんに本気の攻撃なんて、あたしにもできませーーーん!」

「……じゃね……」


マジカニートゥとキッスのやり取りに、ルルは思考停止に陥った。なんなんだ、あのマジカニートゥは……そーいう表情となって、作り変えて生み出した兵器を使えなかった。

だが、そんな油断を逃さず。



ビイイィィィッッ



マジカニートゥの本気の空間を作る、菱形の基点ダイヤがシットリもルミルミも入るほど……かなりの広範囲で空間ができるように、散らばっていた。




ガギイィィッ



空間の完成と同時に、マジカニートゥは叫ぶ。


「"きらり~~ん!レボリューション"」


マジカニートゥが突如として、ルルに襲い掛かった!!

その襲い方は暴力ではなく、暴走!



ドゴオオォォォォォッ


「じゃねぇぇっ!?!?」


わけもわからず、ルルが生み出した兵器が大爆発を起こし、彼女だけがダメージを負った。マジカニートゥのあの弱腰の演技は


「本気の空間を張ればこっちのものだよ!!ルルちゃんの力は何度も見て来たしね!!それを封じる空間にすれば、余裕で勝てるもんね!」

「卑劣過ぎるだろうが!!マジカニートゥ!」

「なんなんだ君の戦い方は!ルルの事を大切な友達だと言いながら、準備が整った瞬間に攻撃するなんて、仲間とも思っていないな!!」


全ては本気になる準備のための、時間稼ぎ!

仲間を欺き、仲間を騙し、卑劣な行為を平然とやってのける。とんでもねぇ才能を見せ付けるマジカニートゥのそれはルルのジャネモンを軽く超えていた。

続けるようにマジカニートゥは満面の笑みを、爆破に巻き込まれたルルに向けた。キッスが言っている通り、マジカニートゥは



「この中で本気であたしが勝てそうなのは、ルルちゃんだけですよ!!というか、勝てるわけないでしょ、あんな赤ちゃんとナメクジにーーー!!もう戦いたくもない!!」

「消去法!?戦う相手を消去法で選んだのかよ!」

「ルルちゃんは、あたしから見ても勝てそうな相手なんで!!パッとやっつけて、助けちゃいます!!レゼン!弱い者虐めをするから、協力してよ!」

「どんな要求だ、お前ーー!俺の評価まで下げんじゃない!!」


マジカニートゥVSルル(ジャネモン化)。

開戦。


◇      ◇


キッスとルルの違い。

周囲からは運命的な差があると思われているし、それは紛れも無く事実ではある。だが、2人の決定的な違い。……人為的な違いが2人にはあった。

語れることと、語れられないことが歴史にはあり。自分1人のことにも、それはある。



【キッスの血液型、遺伝子、……など。それらから調べても、間違いなくお前の子だよ。メグがそこまで調べたんだから、事実であり、奇跡な事だ】



彼女が生まれるきっかけを語るに辺り、関わりが出てくる他人が1人いた。


【俺に関係はないぞ、ナギ】

【ラオ…………まぁ、そうなんだろうけど】


ブルーマウンテン星団、統括、蒼山ラオ。

1対1では当時の最強と言われた男であり、宇多田や猪野春といった曲者達を纏め上げたカリスマ。そして、涙ナギも認めていた男。

時には仲間や友達として、……時には敵としてぶつかり合った。


互いに纏め上げた組織の、"№2"を空位にしていたのは、互いがそこに入れるためだった。


【キッスのデタラメな力は俺より、お前に似ている】

【…………否定はしない。俺があの子を護りたいという気持ちもな】


キッス出産の経緯を……細かく辿ると、度を越えた18禁要素となるので割愛させていただくが。

蒼山ラオの口から


【カホの中で。俺とナギの精子が争い、お前が勝っただけ。それだけだろう】

【異常な反応に心当たりがあるとすりゃ、そこかもな……根拠はない】


オス同士の激しい争いの果てと、何百年に一度の奇跡などが合わさって、生まれた。


【これより俺とお前が関わり続ければ、キッスが気付くかもしれない。それ以上にメグが核心に迫るかもしれない。もう仲良くはできないな】

【それしか解決がねぇのか?まー、……国を背負った以上は……恩のあるお前を殺すってのに……】

【本気で怒らせるためとはいえ、俺はお前のカホを抱いたんだぞ】

【許せないが、それはそれ。これはこれだ。もーちっとよぉ……】


キッスが様々な勢力の人間を引き入れている背景には、ナギの性格と蒼山ラオという存在が陰にあった。

悪にも人権を与えるかのようなやり方は、南空が非難していたところもある。

涙ナギの言葉をして、蒼山ラオにこう持ち掛けた。


【俺とお前で世界征服をしようって、語り合ったじゃねぇか。お前の黒色、俺の白色。どっちでも良いじゃねぇか。征服の色なんざ、気にすんな】


これはキッスが生まれて間もない頃。ブルーマウンテン星団が涙一族と戦っている間、涙ナギが蒼山ラオと接触。

このまま因心界の中にブルーマウンテン星団に入ってもらうか、あるいは逆であろうと構わないという意見をナギは出したが


【ダメだろうが。お前は甘すぎる。それに】


その場しのぎでしかない。正直なところ、ブルーマウンテン星団がやりすぎている。それに


【俺は少しホッとしているところもある。あの子を見た瞬間、……そーいう気持ちになった。どー言えば分かるか、ナギもその内分かるという気持ちがある】


猪野春達を纏めたカリスマが腑抜け始めた。というのもあった。

それほど大きな存在の誕生であったのだ。

敵同士が手を取り合える時間など、そう長くはないとお互いに察知しており。涙キッスがまだ不安になる時の間だけ


【俺は協力できる】



蒼山ラオは協力してくれた。



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