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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第33話『涙一族が生み出した傑物達!涙一族 VS ルミルミ+シットリ!』
104/267

Dパート

教えに……。



「平和とは幸せなことである」



これはまだ涙メグが子供の頃。将来、この中で自分が一族を纏め上げるため、野心を持っていたとき。彼等に教える者は言う。



「そして、その幸せは侵略されやすいものである。人々が平和を愛し、武器や力を持たなければ、外敵の抗う術はない。そして、その外敵は自分以外の存在」



友達と笑いあえる存在も、競争相手となる時もある。

敵は意外にも近くにいるし、親密にもなれる。



「それは紛れもない悪。平和という幸せは滅びを意味する。敵を作り、敵を喰らい、さらなる敵を食い、敵を生まないよういれ」



情報を握れ、人々の感情を掴み、教育をさせるのだ。世の中は人間の身体のように緩やかな変化がおり、時として一変もする。



「力の全てから、認知の全てにも変わる。人々の感情を洗脳する時代はもう来ている。その時、一族にとって正しい判断をすること。一個体と考えず、全て共通の生命いのちを持っているのは我々。我々こそ、世界を束ねるべき姿なのだ」



その凶悪ぶりは一族の血を多く持っているからだろう。

その血に知識と思想を与えられたのも、一族の長からだろう。

窮地は色々あれど、いつだって涙メグという存在は……。



「それを束ねるため、確実なものとするために、……"妖精の国"にいるとされる」


涙一族のためだ。

数々の非道な行為も、一族の存在は全て、自分と思っているほどのイカレた思想。



◇      ◇



ゴポポポポポポ



「ふーーーぅ、あーっ、じゃね~~……」


ジャネモン化したルルの能力は、ハートンサイクルの力を強化したものであり。その強化のされ方は邪悪……。

彼女の背中につけられたのは自分をこうしてまで働かせる濃い邪念。そのタンクから兵器を生成していき、今そのタンクの形に両翼が生えてきた。鳥の羽ではなく、近未来的に……。



「聞いた事がある。ジェット・パックという飛行器具だな」



まだ完全にできているとは聞いてはいないが。それを凌駕しているだろう、理想的な再現をされている。

ルルは空中を自由に高速で飛び回り、その最中に球体の小型爆弾を落としまくる。レッドブルーの周辺なら聞こえはいいが



「あのジャネモン、あたし達まで狙ってない!?」

「ルミルミ様だって周り考えないでしょ」



どの口が言うのか知らんが、文句を言ってしまうルミルミやシットリにまで攻撃が届いている。どーしても、ルルの能力は個人を狙うよりも集団を襲う攻撃の方が向いている。




ドゴオオオォォォッッ



爆発。だが、ここにいる者達が吹き飛んだり、焼け死んだりするような雑魚ではない。業火の中でもレッドブルーのオカシイ笑いは途切れない。


「どーしたぁ?お前が生まれた理由は、この涙メグにもあるんだぞ。役立たず」

「!!」

「ジャネモンになってまで、恨むだろう。そんな人生はよ~」


ルルに対して言葉を飛ばすのは、まだ彼女がジャネモンのまま動いているからだ。


「……ルミルミ様。私は確かにあの涙ルルを利用した」

「…………」

「ですが、涙メグはイカれている。あいつこそ、この戦争の元凶」


シットリの作戦では、ルルは時間稼ぎ。……特にここに駆けつけるだろう、涙キッスを止めるための捨て駒。そんな役目であったが、メグはさらに煽っているのだ。

彼女の根源が涙一族に対する恨みでもあり、憎しみであり、自分が生まれてきたことだから。目に映る男に覚えがあり、名乗られたこと。凄く嫌な感じもたまたまじゃあない。


ルルは歯軋りし、まだまだ沸きあがる邪念を糧に兵器を生み出す。



「メグウウゥゥッ」



激しい叫びと共に、先ほどばら撒いた爆弾とは違い。ミサイルの軍勢を生み出し、



「あああぁぁぁっっ」



悲痛な叫びと共にレッドブルーに向けて放った。殺してやるという怒りを込めた攻撃に、



「うむ。良き良き」


レッドブルーは何もしなかった。ルミルミに殺されてやっても良かったが、この命1つで一族の悲願に近づくというのなら差し出そう。




ドゴオオオオォォォォォッッ




産まれてきた理由に対する邪念か。……死を恐れる理由と同じくらい、些細なことだな。

それを考えるために生きているんだろう。不幸になるのも、幸福になるのも。

考えられる頭を持ったその時から始まっている。



「先に逝って待つぞ、ナギ」



大した抵抗もせず。

多少、死に向かう苦しみを感じながらレッドブルーこと、涙メグはこの世を去った。

しかし、彼が確信したのは自分の死よりも涙一族の悲願が近づいたこと。



「死ねぇっ!ふざけるなぁっっ!!苦しめぇぇっ!!私なんかを作ったんだからぁぁっ!!」



殺してやるという邪念の元、涙メグを殺害したルルではあったが。その死の時間と、自分が彼によって作られた命と行為はあまりにも釣り合わなかった。

一つの目的を早々に達した事とは良いのだろう。

まだ錯乱を続けるルル。一方で、



「ルミルミ様。ナギにトドメを」



メグを足止めし、ナギをここまで追い詰めたルルの功績はシットリ達にとっては大きい。


「まだ息があるんだ」

「あ、……当たり前……だ……」


粘液に捕まり、袋叩きにされたナギ(ブラック)の姿。そこにはサザンもいるから



シュパァァッ



「拳を作ってよ、ナギ。サザン」

「ルミルミ様!なぜ、ナギの拘束を解いたのですか?」

「いいから。あんたはあのルルを始末しなさい。メグは殺したし、……力抜けたから」


連戦よりも精神的なモノが来たのだろう。やり方は違えど、自分の相方はルルのように利用され、自分達が勝つように……捨てられるんだろう。

死にやがったからこの争いの連鎖は終わらない。メグの死に際の笑いはそこにあった。ルミルミは今のルルのジャネモン化を見てようやく気付いたから



「どんなこと言われても、あんた達は殺す。それは確か」

「……そうか。力ずくで止めるしかねぇか……」

「うん」



ルミルミが手を下すことに意味がある。



「別に止まる気はないってこと。メグが死んでも、私はこの星を妖精達の星にする」



戦いはどうあれ、止まらないだろう。自分達が関わらずともだ。


「ううううぅぅっっ」


ルルの悲痛な叫びがしている。メグを殺し、次の標的を……醜く悪いように染められた記憶から掘り起こしているところだろう。

その様子を自分の身や状況よりも心配する、ナギ。そのナギを殺す者、ルミルミ。


「お守りすることは許可してください、ルミルミ様」


この状況を作った、シットリ。

怒られようが身を挺して、ルミルミを護る覚悟。彼女になら命をとられても、構わなかった。



ゾォォッ



その時、この場にいる全員が金縛りにあったかのような激しい殺意が流れた。

まだその気配は遠いが、驚くべき速さでこちらに向かってきている。

駆け上ってくるそいつをシットリが先に見下ろし、ルルが見下ろし、……背の関係で見えていないルミルミでも分かった。



「私の大切な妹になにしてんだ」



言葉が届いた時にはもう、シットリと彼女の間合いはほぼなかった。走りながら叫ぶように告げて、耳に届くよりも早く彼女が来ていた。




ドゴオオオオォォォォッッ



「!!?ぐおぉぉっ」

「ルルに手を出したのは、お前だな……シットリ」



シットリの長い身体を蹴り上げ、宙に飛ばした涙キッス。

重さこそそうはないが、あの巨体が浮き上がる蹴りだ。


「!」


奇襲で吹っ飛ばされたシットリを見るよりも早く、ルミルミの方は剣を握り、キッスへと向かっていた。キッスが片足になっている一瞬の隙をつき、彼女の頬を突き刺しに来たが、



ガギィッ



剣は突き刺しもされず、弾かれる。イスケを纏っていることも含め、恐るべき硬さにより普通の攻撃は通らない。そして、キッスもカウンターのようにルミルミの顔を左ストレートで打ち抜いた。



ドゴオオォォォッ



「キッス……」

「!!」


ルミルミをぶっ飛ばした後、父親であるナギのボロボロな姿を見た……。そして、すぐに近くにいるであろうカホの気配を感じないこと。妹だけじゃなく、家族全ての危機を瞬時に理解したキッス。

ルルのように邪念に満ちた表情ではないが、明らかに余裕を見せるいつもの表情ではなく、鬼のようにキレていた顔。怒りを見せつつ、上を見た。


「くっ……来たか!涙キッス!!」


宙に吹っ飛ばされたシットリであったが、その場で体勢を立て直し、地面にいるであろうキッスを視認しようとした。



バギイイィッ



シットリは目よりも先に身体に走った痛みによって、キッスの居所が分かってしまった。無数にある手の一本を引き千切られたからだ。

激痛と共にシットリの頭の中は怒りを生み出し、この恐怖にも怖気づかない雰囲気を出す。雄叫びをあげ


「おおおぉぉっ!!キッス、貴様あぁぁっ!!」



ドゴオオォォッッ



地面に両者が落ちた瞬間。シットリは粘液で纏われた手で彼女に襲い掛かった。ぶつかるだけでも並なら大ダメージ。防いでも、粘液がまとわりつき、行動を制限できる。なかなかに厄介な戦闘をとるシットリではあったが、



ブヂイィィッ


キッスは意に介さず。シットリの動きを見て、彼が攻撃した箇所を掴んでパワーで引き千切った。身体を2度も無理矢理離されるパワーに、絶命が迫るであろうに。シットリは怒りの中で冷静にキッスを見ていた。思考を巡らせる。



「ぐぅっ」



こいつ!ただ硬いだけじゃない!!私の粘液が徐々に自動で弾かれている、私の体もヒイロの剣を通さないほど硬さと柔軟さを持っているのだから、パワー1つで引き千切れるわけがない。

これは奴が攻撃している箇所までも、わずかに硬質化させ、ダメージを通してきている。



ブジュウウゥッ



シットリは流れ出る自分の血と共に、さらに大量の粘液を放出。直下に池でもできるくらいの量であり、キッスがそれに飲み込まれたのは怒りのせいでもあるだろう。

彼女の体には粘液がまったく付かないのではなく、徐々に剥がれていくという解釈は当たっている。力には力を、シットリは望むところだとキッスの土俵で戦う。



「砕けろおお!!」




粘液でキッスの身体を取り囲み、無防備となった状態に大地震を引き起こす衝撃を彼女に与える。




ドゴオオオオオォォォォォッッ



建物が更地になるほどの解体はあったものだが、……。この戦場ではもうそこにクレーターや爆心地の痕が出来上がるほど。

こうなれば、シットリの攻撃の1つ1つが周囲に及ぼす影響は計り知れないだろう。そう思っていた事が、シットリにあった。


「その程度でいいか?」


カホを葬った時以上の力でキッスに攻撃したというのに、何事もなくキッスはシットリの身体を握り締めていた。



ガガガガガガガっ



まだ衝撃で噴煙などが昇っている中、風が舞う。

キッスとシットリは丁度、クレーターの中心近くにおり。地面との高低差は明白なものであった。そんな場所で大規模な土木工事でも行なわれているんじゃないかという、震動と音。地震をも生み出すパワーはさすがというものであるが、より人工的で……悪く言えば汚いこと。



「おごおぉっ!?」

「まだまだ!!」



ドゴオオオオォォォォッッ


シットリの掴んだところを基点とし、キッスはジャイアントスイング。……だが、投げない。シットリの身体を用いて、地面の高低差を無くそうとしているのだ。ようするに、シットリを地面にぶつけまくっての道路工事。





ゴオオオォォォォォッッ



「!!」



ジェットパックで宙に浮いていたルルは無事であったが、大地の代わり具合に戦慄した表情を見せる。空から見ればとても分かりやすいくらい、地面が平らに沈んでいく。シットリの粘液が、石油のように湧き出てるかのように、空中にも地上にも撒き散らせ、それでもなおキッスが止まらない。



「許さない」



ドゴオオォォォッ



ようやく、シットリを離したかと思えば。キッスはシットリを再び上空に蹴り上げた。空中での自由が少ないシットリだからこそ、そーやっているのもあるし。地上でやればさらなる被害になっただろう……いやもう、結構凄いくらい暴れているけど……。

ともかく、反撃の態勢も自身の状態も、理解が追いついていないほどシットリの状況に対し。キッスは空中にて、



「5等分にしてやる」



ビリリリィィッ



シットリの身体を綺麗に5等分。手で紙を引き千切りように汚い痕を、シットリの長くて太い体に残してやってのける。これらのことがほとんど一瞬のことであり、SAF協会の最高戦力の身体を5つに分ける事を力ずくでやってのける。




ドゴオオォォッ



「うべぇっ……」



身体から大量の出血と粘液の放出をするシットリ。ほとんど無傷でいたシットリが、キッスの強襲1つでこの場から一時戦線離脱するほどのダメージ。

彼の意識が飛んだ……。



「シットリ!!」



自分を護ってくれたシットリがやられた事で、ルミルミは助けようとするのかと声を出したが



「自分でなんとかして!!」



治療をしてあげたい。だが、瀕死に近いナギの相手をしたいルミルミだった。それに、シットリを信頼しているのもある。


「1分!!ナギ、サザン!!あんた達の命はそれだけしか与えない!!」


もっとも、キッスの意識がルミルミに向かう事もある。一度キッスに、蹴飛ばされたが。ナギはすでにルミルミの視界に入っている。ルミルミの戦闘範囲に入っている。



ザシュッ



「…………父さん」



キッスは空中でシットリの身体を5等分にした後、ナギの近くに着地した。

娘の背中は、父の背中へ。娘がかけた言葉。


「ルミルミを任せます」

「……あぁ、お前はルルを救え。救えるよな!!」

「飛島もかつて、強力なジャネモンにされましたが、元に戻る術はありました。従来通り、邪念を祓うこと。その分だけ、私が受けいれます」

「よし!!ルミルミは任せろ!」


家族とか、一族とかでもなく。意外にも仲間という感じに近い。

信頼……。そして、その信頼は自分の妹であり、自分の娘でもある者にもかける。

父と娘はそれぞれ同じく、


「「必ず助ける」」


涙キッスが挑むのは、ジャネモンと化してしまった妹である涙ルル。



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