Cパート
誰でも……
「あたしを産んでくれって、あたしは言っていない!!」
そーいう事を思う。そーいう事に巻き込まれているものだ。
生きている事に喜ぼう、楽しいことをやっていこう。そんな前向きな言葉など、耳に残したくないほど色んな生き方に苦悩する。
この世にどれだけ、……そーいう。産まれたいことを悦び叫んで、生きていく者がいる?ほとんどは、夫婦のイチャつきからだろ。
【涙キッスをもう1人作れ!!ナギ!!カホ!!】
【あたしの身体をなんだと思ってる!!】
【メグに俺達の子供なんか任せん!!】
涙キッスの生まれは偶然の産物。現在の科学技術じゃあ解明できない、奇跡の存在。
あの存在なら千年は言うに超える出来事を乗り越えるだろう。一族の悲願を彼女なら成しえる。涙メグはまだ幼かった涙キッスの人権の全てを奪おうと、一族総出でナギとカホ……因心界の一部と争った。
その中で意外にも、ナギ達に味方をしてくれたのが、ブルーマウンテン星団の蒼山ラオであった。
因心界と敵対していたが、彼と宇多田や猪野春などを始めとした強力な存在が涙一族と戦い。これにより、メグは仕方なく涙キッス本人を諦めた。
もっとも、目的は諦めておらず。あらゆる手段で一族の悲願を成しえようとした。
その中でまだ間に合うと思い、交渉材料としてナギとカホに訴えた。
それが産まれたいと願ってもいない、涙ルルが産まれるきっかけ。
【やらん!!俺達の子は俺達の子だ!!】
【そーよ!あんた達の人体実験に産まれる子なんかいない!】
【子供なんか1人いればいいだろうが!!ナギ!お前達の身体でもう1人のキッスを作れ!!それが和睦の条件だ!!】
【負け認めて、和睦交渉ってどーいうつもりよ!】
涙キッスを奪おうという事にブルーマウンテン星団は阻止する動きを見せたが、ナギとカホの間で新たに子を儲け、メグに譲渡するという案には動かなかった。
ただ、ナギとカホの2人は涙一族の事もあり、子を作ることを決めるのにまた数年を要する。
その間。
涙一族との停戦。
二人にとって恩もあるが、幻の性犯罪組織、ブルーマウンテン星団の解散と蒼山ラオの討伐。
因心界という組織の成長及び、キッスが力と意志を安定させたこと。
2人の相方の妖精となる、サザンとルミルミが妖精の国に戻ることを決めた事……。
新たな世代も頭角を現し、自分達のやれる事がもう少ないと感じたところで
【ナギ。これからは……】
【ああ】
キッスに続いて、新たな子を儲けることを決めた2人だった。
自分達の戦いを終わらす子。その子を立派に育て上げようとナギとカホは思っていた。
因心界としての権力を保持しながら、二人が戦闘に出ることはめっきり減った。その間にも網本粉雪(当時の彼女も因心界の№4)の革新党との連携確認や、キッスへの移行準備、新たに妖精の国の王となったサザンによって、自分達に匹敵する存在を人間界に召喚してもらったこと(これはヒイロのこと)。
順調にナギとカホの黄金世代は、新世代にゆっくりと入れ替わっていった。
全てが終わった時、2人は因心界を引退し、無事に涙ルルを出産した……。が、ここでまた問題を起こしたのが涙メグであった。
【その子を俺達によこせ!!】
【しつけぇーな、メグ!!マジで!!お前、結婚してんのに人の子をせがむんじゃねぇよ!】
【私の妻子は私のもの、お前の子は私の道具】
【どーいうルビをつけてんの!?】
涙一族が自ら約束していた和睦内容を無視し、涙ルルを誘拐しようとする事件が度々発生。
彼が一度引き下がったのは、サザンがいた事と蒼山ラオがあの時にいたこと。因心界から引退したナギとカホから強引にルルを奪い取るのは難しいことではなかった。
その問題に約束だったことを理由に、今度は革新党が涙一族と戦う。
【"ナギ"の子を奪い取るなんてサイテーよ】
【粉雪!革新党は関係ないだろう!お前等も絶対に許さん!】
網本粉雪を中心に涙一族と戦う。この戦いにより、革新党と涙一族の仲はより険悪になる。網本粉雪が手を抜かない人間であるため、涙一族の大半は葬られたし、革新党も大きな犠牲を出した。
さらにルミルミがSAF協会を立ち上げるだけでなく、強力な部下達を率い、ジャネモン達も生み出して混乱を作る……。
【表立って因心界と関わらないでくれ、メグさん。私達はあなた方と付き合ってる暇はない】
【ダメだ!!ホントは、私はあなたに夢中なのだ!その子で妥協している方だ!調べさせてくれ、実験させてくれ!!】
まだ子供時代の涙キッスからお願いされるも、メグはそれを拒否。
そんな喧騒の日々。赤子のルルは抱きかかえられたり、キッスと手を繋いだりして、涙メグと会っていた。トラウマになるくらいこの人が嫌いになっていた。
どんなことをしてでもメグは止まらないと思っていた。
そんな彼に怯えつつ、両親に優しく育てられるルル。涙一族でもあるため、平凡や普通といった家庭を感じるようなものではなく、因心界などに所属して妖人として生きていく。妖精を手にし、自分の力を高め、いつかは自分を護ってくれる姉のようになる……。
涙キッスという涙一族の悲願の完成形がいるわけだが、ナギとカホも正式な本家の血筋ではない。本人も家族も偶然が産んだこと。それを気にしないつもりでいるのも、辛いものだった。
期待はその時はまだ、あったんだ。
【!っ……数値はホントに正しいのか?】
妖人としての強さ。人間を超えているか、数値化できる実験。拷問染みた事ではなく、人という枠で測っている事は誰にでもあること。
【間違いはありません。メグ様】
【ふざけるな!!こんなこと、……これが現実か!?普通の……ただのガキじゃねぇか!!】
【はい。涙ルルは涙キッスとは異なり、私達と同じく"通常"の人間です】
その調査だけでも、涙ルルは決して特別な存在ではない普通の人間に近いと示された。
【キッスも……ナギも、……カホも……。一族として、血筋はどうあれ化け物だったというのに、なんだこの平凡なガキは!!】
涙メグはすぐに認めなかった。凶行に走る。
当時、7歳のルルを家から連れ去ったのだ。
暴力、権力、……力の限りで涙ルルを奪い取り、自分が認めるために彼女を調べ、可能性を探した。ルルは助けられるまで泣き続け、食事も排泄もままならぬほど、彼に対するトラウマを植え付けられた。
15日間だけではあったが、これまで涙一族が自らの悲願のために、一族を含めて人体実験をしたことをルルは受けた……。
【この実験はキッスにとって、平然と顔も身体もいられるレベルだ。……まぁ、すでに過去何百人と脱落してるんだが】
【た、助けて……やめて、ください……】
【やめる?……なら、お前の役立たずを止めろ!!お前はナギとカホの子であり、キッスの妹だぞ!!】
【っっ!】
【なんで貴様みたいなゴミクズが産まれる!!死にたくないのなら、死なないところを見せろ!!お前は生きられるかどうか、私はそれしか興味がない!!お前の事なんかどーでもいいんだよ!】
耐え切れぬと分かっていて、死ぬことも思っていた。
だが、姉が救ってくれた。
【私の大切な妹になにしてんだ】
キッスはそれでも慈悲をみせ、メグを瞬く間に半殺しにし。今回の件に関わったものを全て葬った。彼女を怒らせれば、涙一族は終わってしまう。
メグもまたようやく。この事を諦めた。
実験室から救い出されて、キッスは弱ったルルの身体を優しく抱きしめ、
【よく頑張った。ルル。遅くなって、悪かった……心配いらない。怖かったら、私が来る。気にせずに生きるんだ】
救ってくれた人はその気持ちだけで来たのだろうけれど、私は違った。
涙ルルにとって、姉の涙キッスは………。
◇ ◇
たとえこの後、始末されても構わない。
しかし、私もみんなもルミルミ様を失うわけにはいかない。その手で殺したい相手を殺せずとも、復讐を成し遂げたことにさせる。
あなたは、ここで死んではいけません。
ヌチャァッ
「おおおおぉぉっ」
半分以上も崩壊している因心界の本部とその周辺では……。涙ナギ(ブラック)とルミルミのタイマンが行なわれ、ルミルミが分割してしまったエネルギーを掴んだ涙カホ(ホワイト)。勝勢を感じ取り、辛うじて生き残っていた部下達と共に戦況を見守る涙メグ。
幾度もブラックの"黒龍強打"を叩きこまれ、回復が追いつかなくなるルミルミ。これ以上は見ていられないことになるだろう。
ドゴオオォォッ
「っっぅ!……」
『決着だ!ルミルミ!』
「!だ、黙れぇ!……サザン!裏切り者……!」
サザンからの勧告をルミルミは断る。
頑固者に思えるが、ほんの少し……。きっと、この場で誰よりも。もう我慢できぬと、ルミルミは吐血と共にぶっちゃっける。
「サザンが!!サザンが立ち塞がることが!!あたしにとって、どれだけ矛盾に思うかぁっ!!仲間にっ!!お前が仲間だからっ!!」
ナギもカホも、因心界を離れた身だ。サザンという妖精がいようと、全盛期とは言えない力。少なくとも体力は落ちている。
それでもここまで一方的にルミルミを押していたのは、ルミルミの心の迷いが身体に現れ、無意識に判断と思考をも阻害していたのだろう。状況によってはルミルミが2人を瞬殺したかもしれない。そーいう意味で
「なんであんたは平然と戦えるんだぁっ!!クソぉぉぉっ!」
ルミルミが戦っているのは、自分自身との戦いなのだろう。
その過程で死なれることを恐れる。
吐いた本音は
「カッコイイよ、サザン……」
実力で劣る相手が、揺るがない覚悟で立ち向かってくる。
殺さないで殺す気で向かってくる。あいつを殺したいと口でほざくも、殺せない自分と違う。認めない事だけは決めても、時間の問題。
まさにそんな時だ。
ヌチャァッ
「?」
宙に浮いているホワイトの足に纏わりつくような、気持ち悪い液体がかかった。下からぶつけられたかのようにつけられ。
フワァッ
「!!!ナッ!」
風をきる音、身体が感じる軽さは……。カホの脳裏に叫びたい、伝えたい人の名前だった。
「ギィィッィ!!」
その名を恐怖から助けてほしいという思いで叫んでいた。その言葉にナギも、メグも、……ルミルミもまた、視線を向けた。
その先には体長数十mにも及ぶ巨体にまで一気にサイズ変更をし、この奇襲のために潜んで近づいていたと思われるシットリの姿が。
ドゴオオオオオォォォォッッ
大地の下から山でも誕生したかのように因心界の本部が盛り上がり、さらに周囲の建物を半壊させていく地震も続いた。さらに因心界の本部は崩れ、宙にいたナギは巻き込まれずに済んだが、メグとその部下達はさらに下へ落ちて行く。
「メグ様を護れ!」
「!いや、問題ない……」
この衝撃に加え、天から地上に打ち落とす攻撃を直撃したカホ。
彼女が上に飛んでいったのを見た。だが、彼女が抑え込んでいたルミルミのエネルギーが下からルミルミ本体に向かってくる。
「カホーーーーーーー!!!おいいいっ!!!返事しろおおぉっ!!」
ルミルミの事を忘れ、彼女の身を心配し、ナギは叫んだ。
だが、それよりも早く。彼女にも力を分け与えているサザンにはすぐに気付いた。
まるで反応がない。一気に力を失った言葉で
『ホワイト……カホ……』
呟いていた。
そして、ナギは冷静さを欠いて、彼女がいるであろうところへ飛んでいった。そこに近づく事がどれだけ危険か、分かっているつもりでも行った。そして、カホの無残な姿を見るよりも先に
「涙カホは死んだ……」
「!!」
ヌチャァッ
シットリの身体から放った粘液がナギの腕と胸にかかった。その瞬間、自分の抵抗する力を上回る力で空へ投げ出され、
「おおぉっ!!?」
「こんな感じで死んだぞ」
ドゴオオオオォォォォッ
地面に叩きつける度に大地を揺るがす衝撃。地形をグチャグチャに変えてしまうほどの、シンプルなパワーがナギとサザンの身体を襲った。
「!ぐおおぉぉっ!!?て、テメェは……」
「卑怯とは言うまい」
『ば、馬鹿な……なんで、シットリがここに……!』
「それはサザン様に言えること。不思議に思うことではないかと」
「!!」
シットリの奇襲をモロに受けたナギとサザン。しかし、狙い通り即死させたカホとは違い、ナギはかろうじて致命傷をさけて、立ち上がってきた。
「お前っ……テメェっ!!」
光景による怒りだった。シットリの身体には取り込まれるように、両眼を開いて頭から血を流し、息もできていないカホの身体が粘着されるようにいたのを見た、ナギ。
ボロボロな身体でも拳を作り、シットリに向かっていった。
「"黒龍強打"」
「!」
受けて立つとシットリも構えたが、ナギの背後から剣を持って来たルミルミが襲った。当然、ルミルミの意識を外していたナギが、回避をまったくとれず背を斬られた。
膝を地面についてからルミルミに言われる。
「相手を間違えるな、ナギ!サザン!!」
「っ……」
「申し訳ありません、ルミルミ様」
「いいよ。シットリ。……来てくれてありがとう」
「いえ。その事ではなく、私もナギを始末することに加わります。あなたを失わせたくない。この状況を作るためだけに私は考えをめぐらせました」
「…………」
どーしてここにシットリが来れたのか。ルミルミ自身も分かっていない。確かに東京駅にいたはずなのに、気付かれることなくここへ。テレポートしてきた感じでもない。
シットリもまた、危険をおかして助けに来た事を知ったルミルミは、
「ごめんね。ちょっと、あたし。やられてるから……力をかして」
「ええ。トドメならばお譲りします。メグ達の方には楔を打っておきました」
実際、2対1で戦っていたルミルミ。……メグ戦との連戦を考えれば、組織そのものを1人で相手にしていた。甘えじゃなく、こんな酷いことも当然だって進めてくれた。
ナギとサザンにとっては、絶体絶命。カホを失ったことでその分の力を得られるわけでもない。だが、
「ペチャクチャペチャクチャ……余裕をかましてるんじゃねぇ!!」
『悪いがシットリ、ルミルミ』
元、最強。
因心界を纏めた男と、その妖精はこの窮地に対し、冷静さと情熱を同時に高めた。
ダメージを感じさせないほどの気迫だ。
わずかでも生き残るため、勝つために。諦めるという選択を消し
「『俺達は死なねぇぞ!!』」
「虚勢だぞ」
「あたしとシットリが、どんだけ強いか知ってるでしょ!」
ここにシットリがいるということは確かに驚く。連絡も、情報も来ず、キッス達が敗れたとは考えにくい。
声は彼等と渡り合うような強気なものではあったが、頭で組み立てたものは強気とは違った動きを求めていた。周囲をより警戒し……シットリ以外の他に誰かいるか。
サザンは気付くし、ナギも何かを嫌なものを感じた。
「!!」
『下に……とてつもない邪念を持ったジャネモンがいるな。メグが来ないのはそれか?』
「ゆっくりと知っていくんだな。死にたくなってる気持ちが幸せだったと思ってろ」
シットリの計画の周到さ。全てが悪い方向だと知れる。
◇ ◇
「ぷっ………」
ナギとサザンが、ルミルミとシットリと対峙している。およそ、17秒前。
「ぷははははははは!!」
涙メグは涙をこぼすほど、爆笑していた。なぜこの危機にこの男は笑うのか。目の前に現れた意識を奪われたジャネモン……もと、
「涙ルル!!貴様、ホントに役立たずだな!!シットリにされたか、その姿!?」
涙ルルを見て、心から笑っていた。
人の形を綺麗に保ったジャネモン化であったが、彼女の意識はなく、ジャネモンの原動力である邪念によって動く怪物。
「あーっ……あっ……じゃー………ね……」
発する声の力もない。今、自分が何をしているのかも本人には分かっていないだろう。
惨い姿であるが、
「実にらしい。役立たずらしいぞぉ、その姿ぁっ!」
彼女の良さとして、メグは笑っていた。とはいえ、ルルから放たれる敵意を無視しているわけではない。生き残った部下達に指示を飛ばすメグ。
「時間を稼げ」
「は」
「私達の計画において、涙ルルは良い犠牲になった」
涙キッスの計画。
シットリの計画。
結果を見れば、出し抜いたシットリの作戦はこの時まで良かった。だが、今回の作戦では敵対もしていた4つの組織が手を組むという状態であった。緊急時の対応は各々のトップが判断していいものであり、メグが行なった作戦はシットリの思っていた行動とは違っていた。
それは予想以上にメグがルルを嫌っており、なおかつ一族への崇拝が高いこと。
奇襲、2対1。これだけつぎ込んで、ナギとカホを倒す。この2人を倒さなければ、メグを倒す道はないとシットリは思っているほど、メグは手強い。
だから、
「『翼を授けよ、レッドブルー』」
妖人化、レッドブルーとなり。空間操作を始めるところまでは予想通り。部下達を盾として、ジャネモンとなったルルの攻撃を浴びてもらい、範囲を展開していく。
ビーーーーーーッ
「!?」
「メグの。レッドブルーか……」
「あいつ……」
1分も経っていないが、その間にナギ(ブラック)はルミルミとシットリの両名から激しい攻撃をもらう。ここにまで空間を張っている事に嫌な予感は3人共していたが、レッドブルーの行動はそれよりも上をいっていた。……狂気過ぎる考え。
パァァッ
「ふははははっ!」
ルミルミ達の戦場へ瞬間移動してきた、レッドブルー。それも1人ではなく、ジャネモン化したルルを連れてやってきたのだ!
「!!」
変わりすぎた姿になったルルを見て、これ以上ない怒りが噴火したナギ。一時的ながら、その怒りを込めた拳がシットリをふっ飛ばし、ルミルミを蹴り飛ばし。叫ぶ時間を作った。
「ルルっっ!!おい!!しっかりしろ!!」
ルルがジャネモンになっていること。カホが死んだこと。目の前で起こる出来事の数々に、嘘じゃねぇと分かるレッドブルーの言葉。
「ナギ!!今からこの役立たずを、お前の目の前で私が殺す」
「メグゥゥ!!テメェっっ!!」
やったのはシットリだ。分かっているが、娘を助けることに戸惑う父親なんかいるか。
そして、レッドブルーはルミルミにも告げた。
「ルミルミ、お前のやりたかった事は私と同じなのだ」
「!!」
「これが正しいのだ」
相手の作戦を逆手にとり、要のルミルミの精神を揺さぶった。シットリがこのことまでも秘密にしていた事が二重に、ルミルミの精神を臆させたのは事実。
怒りに任せてレッドブルーのところへ跳んだナギ、その彼の横から粘液がぶっかけられ、あらぬ方向に身体を持っていかれる。
ドゴオオオオォォォッッ
地面に叩きつけられるナギ。見下ろすのは
「お前の相手は私達だ」
「こ、この……」
シットリ!予想外の展開でルミルミの戦意が削がれたが、十分なぐらいナギの集中を欠かせ、ここまで肉体的にも追い詰めた。
加えて、シットリのダメージは少なく、この状況で全力で戦える存在がいるのは大きい。
「や、やめろ……」
自分の体へのダメージよりも、まだ息のあるルルの心配をするナギであったが、シットリは容赦なく倒れるナギに追い討ちをかける……。
そして、レッドブルーはジャネモン化したルルを見て
「どう"死ぬ"か?」
笑う。笑う。
「ぷはーーーーーっっ!!あははははははは!!」
生きるか死ぬか、信念を捨てるか護るか、助けられるか助けられないか。
人の窮地に様々あれど。
涙一族の本家である、彼のとった行動は
「さぁ、来るがいい。私を楽しませろ」
一族のため。その血のため。自分を顧みない。
これまで非道な行為をしてきても、平等にしていたと誇らしげに彼は語るだろう。




